優希は管理人の仕事を一変通り終えると資料を読み込んでいた。
過去に起きた魔都災害の資料に目を通すのは魔防隊であるためである。
(月山大井沢事件・・・・・・これが京香さんが戦う理由か・・・・・・)
いつかの任務の終了の際に話してくれた京香の心境と思い。
形式的にしか知りえな情報だが、向こうの世界にも通じるものがあった。
向こうの世界の日本はフェストゥムにより生殖機能を失い、そして核によって滅んでしまった。
それから続く戦いの中で島の人間の多くが死んでしまった。
島の外でもそれは繰り返され、何人もの人間が人としての死を迎えれらなかった。
(生物としては謎が多いからな・・・・・・・・・正直言えば調べたいんだが危険があるし了承も得られないだろう。)
優希は手に持つ資料を机に置き、コーヒー(ミルク入り)を口へ運ぶ。
「ユッキー、何してるの?」
そんな優希に朱々が声をかけてくる。
「ん?ああ・・・・・過去の資料を読んでたんだ。いない間にやっぱ起きるものは起きてるんだなーって。」
「まーねー。あ、これ組長の?」
「ああ。前に言ってたから気になってな。表面的な情報でも知っておいた方がいいと思ってな。」
「へー、まっじめー。」
朱々は優希を感心する。
「でも組長は今のそう組長のやり方が気に入らないみたいなんだってー。」
「確か安全策でやってるんだよね?」
「そうそう。でも組長は殲滅を目的としているから。」
「どっちも正しいんだけど・・・・・・・・何とも言えないな。」
京香の意見は間違っていなかった。
この魔都でしか採取できない資源である魔都の桃は世界に一定量を供給されてはいるがそれでも欲しい連中はいる。
中には違法な研究機関や犯罪組織にも使われているケースが多いそうだ。
「こうも犯罪が多いと何と戦っているのかがわかんなくなるな。」
「ほんとだねー。」
向こう世界でも同じことがあった。
フェストゥムと戦っているのに人間同士で戦わなければならない状況があった。
人類同士手を取り合えばいいのに欲をかいてしまい、滅びる道があった。
下らない作戦のために、大勢を犠牲にした。
その犠牲の上で成り立つ平和を手に入れた。
(きっと大丈夫。あの人たちなら作れる。もしまた起きたら、その時は助けに行こう。)
「ユッキー?」
「ああ、ごめん。ちょっとね。」
そんな時寧が優希に声をかける。
「優希さん、伝達があります。」
「拝聴します。」
優希は姿勢を正す。
「今から私たちは会議に出席します。その間朱々さんと留守番をお願いします。」
「わかりました。道中気をつけてね。」
「はい!」
寧はそう言うとその場を去った。
「ユッキー、この後どうするの?」
「この資料を片付けたら残ってる業務とかするかな?朱々ちゃんは待機してていいよ。」
「えー、一人でってヒマー。ユッキー遊んでくれない?」
「俺ゲーム古典的なののしかできないよ。」
「例えば?」
「囲碁と将棋とチェス、あとはそれに近いものかな?」
「オセロとかは?」
「してたよ。」
「ここに置いてるからしようよ!」
「いいけど・・・・・・・・俺強い方に分類されるよ?」
「言ったね?じゃあギャフンって言わせてやるんだから!」
それから数十分後
「・・・・・・・・・・・・・」
「嘘は言ってないよ。」
「・・・・・・・・うん、そうだね・・・・・・・」
朱々が俯き、優希は朱々の方を見ていた。
朱々が俯く先にはオセロの盤面、白い盤面があった。
全部白の光景は流石に辛い。
10連続敗北はメンタルが崩壊する。
「ユッキーって強いんだね。ユッキーより強いのいるの?」
「いる。」
「マジで!」
朱々は顔を上げる。
「マジマジ。鏑木彗って言って年下なんだけどジークフリードシステムを使いこなせる人間の一人。」
「そんなにすごいの?」
「四つの盤面をそれぞれ違う相手で倒すことができるし、知能も高いから。でも最初のころ自信がありすぎて、ミスをした時もあった。」
「あったんだ・・・・・・」
「うん。でも彼、好きな人にげんこつ喰らって、両親と喧嘩して、ぶつかって、成長したよ。」
「へー・・・・・・・・・・・ん?好きな人?」
「ああ。一個上の西尾里奈って子がいてね。結構鈍かったよww」
「え、それ詳しく。」
朱々が興味を持った時であった。
寮全体を揺らす振動が発生する。
二人は急いで外に出るとそこには巨大な醜鬼が突如として出現し、寮を目羅っていた。
「あたしが行くからユッキーは待機してて!」
朱々は外に出て詩人の能力、玉体革命を発動する。
巨大醜鬼と同じ大きさにまで大きくなったその光景を陰から見ている者達にはまだ気づかなかった。
朱々が最大限まで大きくなると一気に接近する。
「はいどーーーーーん!」
踏み込んで右の拳一発で巨大醜鬼を倒す。
(確かにパワーはすごい。でもなんかおかしい・・・・・っ!)
優希の不安が的中する。
「後ろ!」
「へ?あぐっ!」
隠れていたもう一体の巨大醜鬼が朱々の背中を殴る。
「もう一体隠れてたのか・・・・・セコ。」
不意を突かれたものの態勢を立て直す朱々。
その時隠れていた醜鬼が巨大に醜鬼に飛びつき一つとなる。
先ほどよりも大きい巨大醜鬼へと変貌する。
「ひゃー、そんなこともできるんだ。面白!」
「馬鹿下がれ!」
直後、巨大醜鬼の拳が振り下ろされるが朱々は体を逸らし回避する。
完全に回避したかに思われたがシャツの胸元が破かれ、その破片が寮に落ちる。
(とはいえ・・・・・ちょっとヤバいかも!)
朱々が動こうとすると足元には普通の醜鬼が足にしがみつき、動きを封じていた。
「SDP選択、鏑木彗!」
優希はMk.XVIIに変身し飛行用スラスターを装備して旋回行動をとるとSDPを発動させる。
「来い!」
そう言った途端、朱々の足元に張り付いていた醜鬼の一体がMk.XVIIの目の前に現れ、ガンドレイクに寄り切られる。
「後三つ!」
一体、また一体と引き寄せては斬るを繰り返す。
「もう少し頑張れる?」
「うん!」
「いい返事だ!」
最後の一体を引き寄せ切り裂くと巨大醜鬼の頭上に上昇し飛行ユニットを解除する。
「SDP選択、春日井甲洋!」
ガンドレイクの刀身が巨大毒を纏う。
「離れてろ!」
「わ、わかった!」
朱々は直感的に指示に従う。
「消えろぉおおおおおおおおおお!」
Mk.XVIIから振り下ろされた毒が巨大醜鬼の肉体を犯しながら切られていく。
醜鬼は苦しみの声を上げ、肉体を溶かしながら消滅していく。
Mk.XVIIは刀身の毒を収めると元の姿へと戻る。
「あー、疲れた。」
優希は天を仰ぐ。
朱々も元の大きさに戻り優希に近づく。
「ありがと、ユッキー。」
「いいよ。それよりなんで油断したの?」
「いやー、一体だけだったから余裕かなって・・・・・・」
そんな朱々に優希はデコピンをする。
「あたっ!」
「甘く考えるな。いつも生きて帰れるとは限らないんだ。」
「・・・・・・」
重みのあるその言葉に、朱々は黙ってしまう。
「竜宮島にはな、返れなかった人が大勢いるんだ。」
「え・・・・・・」
「みんな戦闘で死んだ。巻き込まれた人も、戦った人も。誰もかれも遺体がないのが多かった。肉体がかろうじて残ってて、最後には島で死んだ人もいた。いつも見るのが辛かった。遺体の無い、空の棺桶しか残らなかった人たちが。力があっても守れなくて、何度も悔しい思いをした。だから朱々ちゃんにも、魔防隊にも言えることだが、絶対生きて帰るのを忘れないで。」
「っ!?」
優希のその目を見て、朱々の心の奥底にある何かが大きく跳ね上がった。
「じゃ、戻ろうか。さっきの戦闘でどっかおかしくなってないか確かめないといけないし。」
「あ、て、手伝うよ!」
朱々は優希の後ろを付いて行く。
これが最初の罪だった
君は知るだろう
優しさは時に人の思いに深く入ってしまうことを
そしてその優しが大きいほど、別れの時に深い傷をつけてしまうことに