カンッ
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魔防隊七番組中に設置されている道場で京香と優希は木刀をぶつけ合っていた。
「ふっ!」
京香の振り上げる木刀が優希を狙う。
「っ!」
優希は地肌に手を添え受け止めるとそのまま下へと回し流す。
「くっ!はぁ!」
京香はその体制のまま強引に体当たりをする。
「ぐっ!」
優希はその攻撃を受けると畳を蹴り、後ろに跳ぶ。
「なっ!」
京香は意表を突かれる。
「ぐっ!」
想定よりも前に倒れてしまい態勢を崩してしまう。
そして優希は木刀の剣先を強化の首に当てる。
「ここまでです。」
「・・・・・・・・・ああ、そのようだな。」
京香は素直に負けを認め、立ち上がる。
「やはり実戦経験をしている分勉強になる。感謝する。」
「いえ。俺の場合色んな状況に対応できないといけなかったんで。それに・・・・・」
「それに?」
「ファフナーに乗っていても結局は自分の身体を拡張しているからこういた訓練もしてました。」
「なるほどな。」
京香もその言葉に納得する。
ファフナーの操縦は操作系を必要としない。
感覚の延長と巨大化をしている。
故に戦いでは身体能力が反映もされる。
「さて、今日はここまでにする。これから行く場所があるんだ。優希、付いて来てくれるか?」
「構いませんが、どこへ?」
「現世だ。」
「・・・・・・・俺一応服は持ってますけど地味ですがいいですか?」
「構わん。」
数十分後、京香と優希はご番組寮内にある門を通った。
五番組にある門は山形へと繋がっていた。
(驚いたな・・・・・・・・・まさか門がこうも広範囲の移動を可能にするだなんて。にしても確か山形って・・・・・・・・・・)
そう考えていると私服姿に着替えた京香が声をかけてくる。
「待たせたな。」
いつもの耳飾りを両耳に着けていながらも普段の魔防隊の服装とは一変し、花のある女性の恰好をしていた。
そんな姿につい見入ってしまう。
「どうかしたか?」
「すいません。いつもと違って新鮮って言うんですかね?つい見入ってしまって。」
「おだてても何もないぞ。」
「おだててませんよ?」
その言葉に京香は顔を少し赤くする。
「京香さん?」
「な、なんでもない。それより電車に乗るぞ。お前と私はパートナーとして登録してある。」
京香は優希を置いて歩き始めるため優希はその後ろを付いて行く。
天候に恵まれた今日、優希は電車に乗っていた。
女尊男碑の世界になり、世界の在り方は大きく変わったため電車も女性専用車両へと変わった。
先ほどのパートナーは女性一人が男性一人に飲み発行できるIDであり、その女性と一緒に行動する場合IDを持つ男性もある程度の権利が保障されている。
そのうちの一つとして女性専用車両への乗車が許可されている。
(いいところだな。とても穏やかで、平和な場所だ。竜宮島も海神島もこうだったな。)
不意に島での日々を顧みる優希。
そして優希はこれから行く先が分かっていた。
駅から降り、しばらく歩くと墓地に到着する。
多くの墓がある場所の一角に、慰霊碑があった。
魔都災害に遭った人々へのために作られた慰霊碑の前で京香は語り始める。
「月山大井沢事件で、現世に迷い込んだ鬼達は数十体いたが、中でも特別強力な奴がいた。今でもはっきり覚えている。そいつは角が異常に発達した奴だった。私は“一本角”と呼んでいる。」
京香の脳裏に焼き付くのは燃える村の中、大勢を殺し、自分の親すらも殺し一本角の醜鬼の姿である。
「魔都から迷い出た醜鬼共は当時の魔防隊により全滅したそうだ。だが当時の記録を何度読んでも“一本角”だけは門からまた魔都へと逃げ戻った。あいつだけは・・・・・・・・・周期の中でも特に許さん!刻んで倒してやる!」
京香の言葉に深い憎しみが込められていた。
「戦いになったら優希もそう心得てくれ。今日はそれを伝えたかった。」
京香はそう言うと慰霊碑に献花する。
「皆の敵は、必ず討つ・・・・・・・」
そう宣言する京香の背中はどこか悲しく、寂しそうであった。
慰霊碑を後にし、京香は魔都へ戻ろうと歩き始める。
「このまま魔都に戻るぞ。」
「京香さん、あそこで休憩してからにしませんか?」
優希はすぐそこにあったカフェを指す。
「魔都が気になるんだが・・・・・・」
「でも京香さん、ここに来るときにあそこのパフェの看板気にしてましたよね?」
「・・・・・・・・」
見抜かれていることに若干のむかつきを抱きながらもカフェに入る。
「思ったよりも強引だな、お前。」
「さっきの京香さんを見ていると、特にそう思ったんです。」
「私を?」
「ええ。京香さんは常に常在戦闘中です。それが悪いとは言いません。魔防隊としては正しいのかもしれない。でも京香さん、平和を今思い描けますか?」
「・・・・・・・・いや、できないな。先ほども言った通り―――」
「一本角ですよね?」
その言葉に耳自覚返事をする京香。
「その後は。どうしますか?先の話になりますが、京香さんもいずれは魔防隊を引退するでしょう?後輩の指導とか教官的な立ち位置とか。でもそれがすべて終わった後の自分を想像できますか?」
「無理だな・・・・・・・・君は?」
「そうですね・・・・・・出来たら姉に会いたいです。」
「姉?・・・・・・・そう言えば君の姉は魔都災害で行方不明だな。」
「ええ。でも何となくですけど、生きてる気がするんです。直観的で根拠も何もない。でも今はそこから先としては・・・・・・・家族に会う。ずっと会えない状況でしたし、あって、笑って、怒られて、一緒にご飯を食べる。極どこにでもある当たり前をしたいです。」
「そうか・・・・・・・だが私は目の前のことばかりに集中してしまうな。」
「変えられない、ですか?」
優希の言葉に頷く京香。
「・・・・・・・変われますよ、きっと。」
「何故そう言い切れる?私はこれまで復讐するために生きてきた。」
「本当にそうですか?」
優希たちのテーブルにイチゴのパフェが運ばれる。
「もしそうだとしたら、貴女は今の立場にいないと思うのです。」
「どういうことだ?」
「日万凛や朱々ちゃん、それに寧ちゃん。皆性格も年齢もバラバラです。でも貴女はそんな七番隊まとめ上げてます。殺気のようなことをしているのだったらそうはならない。貴女のこれまでの人生には、復讐だけが生きる意味じゃなかった。そう、思うんです。」
「・・・・・・・・・・・・まさか君に気づかされるとはな。」
「正直言うと、京香さんに似た女性を知っているんです。」
「私に?」
優希はスプーンを手に取りながら話す。
「近藤咲良さんって言って、元ファフナーパイロットです。今は二人の子供の母親です。彼女はフェストゥムが最初に襲撃してきたその日に、父親を失いました。その日から彼女は復讐することばかりを生きがいに、戦ってきました。ですが、無理をしてしまったがために一時期は死にかけました。」
「そんなことが・・・・・・・・・・」
「でも治療法が見つかって回復して、竜宮島では教師をしてます。今はどうかわからないですが、きっと衛一郎君やフェイちゃんが大きくなったら、また戻るんでしょうね。」
「・・・・・・・・・」
他の世界の話であるはずなのに、どこか親近感があった。
いや、きっとどこの世界にも必ず一人はいる話なのだと思う京香。
「戦いの時は心に平和を、平和な時は戦いの心構えを。武器の陰に隠れず、相手の命を見ろ。」
「それは・・・・・」
「向こうの世界から教わった言葉です。生きる意味を、戦いに身に置くんじゃなくて、考えるんじゃなくて、抱くんじゃなくて、感じてください。今の京香さんには必要だと思います。」
「・・・・・・・」
考えもしなかったことを言われ衝撃を受ける。
今まで誰も否定もしなかった。
優希もそうだ。
だが優希は今自分の今後を心配してくれている。
総組長になること以外、醜鬼を殲滅すること以外考えてこなかったがこうして正面から言ってくれたのは優希が初めてである。
「まさかお前に気づかされるとはな。ありがとう、優希。」
「いえ、俺は特に何も。もし困ったら愚痴や相談くらいはできるので。」
「そこはもっと大きく出るべきじゃないのか?」
「さすがに責任を持てないので無理です。さ、食べましょう。」
「ああ。」
優希と京香はパフェを食べる。
不意に優希が京香を見るとどこにでもいる普通の女の子の表情をしていた。
そんな光景に微笑んでしまう優希。
「どうかしたか?」
「いえ、なんでも。」
優希はその場で誤魔化す。
二人がパフェを食べ終えると京香のスマホからホラ貝の着信音が鳴る。
「ホラ貝?」
「魔都からの緊急コールだ。ホラ貝一回はいのちの危機ではないが何かの緊急事態が起きたケース。休暇はここまでだ。門へ急ぐぞ!」
「はい!」
無窮の鎖を使い京香は優希の背に乗って魔都へと向かう。
「あっという間に着いたな。」
「現世じゃSDPを使えないのが難点ですね。」
SDPは端から見れば桃の能力と類似している。
それを男である優希が使っているところを目撃されれば大問題である。
「では私は着替えるから待機していろ。」
「はい。」
優希が外で待っていようとすると京香が待ったをかける。
「待て。」
「はい?」
「・・・・・・・脱がすのを手伝え。」
「・・・・・・・理由はわかっているけど、こっちも恥ずかしいです。」
優希は心臓をバクバクさせながらストッキングを脱がす。
(これ本当に俺が望んでいるのか?京香さんの能力にはまだ実証があるわけじゃないから・・・・・・・・て、考えがどうやってもまとまらねー!)
「・・・・・・・・変態め///」
京香のストッキングを脱がし終わり優希は部屋から退室すると魔防隊の服に着替えた京香は日万凛から報告を聞いていた。
「本日のパトロールに発見したものです。」
日万凛はそう言うとタブレットを見せる。南21kmの地点にクレーターのようなものが出現。すごい数の醜鬼がいます。」
その報告に二人は驚く。
「現在寧の千里眼が見張っています。」
日万凛羽委の方を見る。
「その地点から出る気配はありません。まるで巣のようです。」
「すいません、貴重な休暇を。」
謝罪する日万凛に京香は褒める。
「いや、でかしたぞ。巣とは潰しがいがあるな!新たな生態も判明するだろう。これは七番隊の大仕事だぞ。」
「確かに。それにその場所の調査をすれば醜鬼が集まっている理由もわかって今後の傾向と対策にも使えますしね。」
それは残酷な現実であった
君は知るだろう
大勢を助ける中で犠牲になっている者がいることを
そしてその中には自分の大事な人が巻き込まれていたのであったと