日万凛たちが見つけた場所にはこれまで見たことがないほど多くの醜鬼たちが集まっていた。
全体を見渡せる場所で無窮の鎖の状態の優希は京香と共に待機していた。
(妙だな・・・・・最初のころに比べて大人しすぎる。何か裏があるんじゃ・・・・・)
状況自体に違和感を持つ優希。そんな優希に京香は声をかける。
「心配しているのか?安心しろ、七番組の必勝連携で壊滅させる。」
直後、醜鬼たちを大きな影が被る。
「まず朱々の一撃で相手に大打撃を与える。」
玉体革命で大きくなった朱々の拳が振り下ろされる。
そして怯んでいる醜鬼たちを日万凛のガトリングが追撃する。
「次に痛手を負った醜鬼阿知を日万凛が削っていく。すると醜鬼どもはたまらず合体していく。」
京香の言葉通り醜鬼は合体していく。
「大きくなったのを一網打尽にする。このやり方で行けば私たちに負けは無い。」
そう断言する京香。
しかし優希には気になる点があった。
なぜ人の姿をしていながらもこうも動きが単調なのか?
冷静に考えればこの醜鬼には人間に共通する点が数多くある。
人体的構造、動き。
それも人間に近く、猿やゴリラにも通じるものがある。
ならば彼らは単純な支持にも従うことから力が強いものに従うのではないかと?
優希がそう思い、朱々が醜鬼たちを薙ぎ払っているその場に接近する第三勢力が接近する。
「っ!?」
そのことにいち早く気付いた朱々が腕を振り払い牽制をするがそれには避けられてしまう。
そしてそれは朱々を一撃で吹っ飛ばしてしまう。
襲撃してきた存在に京香は目を奪われる。
それは過去、自分の家族や村の仲間を襲った醜鬼の姿であったのだ。
「あいつは!!」
京香の心が怒りで満たされる。
一本角の背中に乗っている女性は陽気にあいさつをする。
「パーティーに混ざりに来たわ!」
「なによこいつ、化け物っ?」
日万凛のガトリングが火を噴くが女性の髪により全弾はじかれる。
「なっ!」
「化け物と入ってくれるわね。私、口喧嘩は強いわよ。」
彼女は息を大きく吸い込む。
(まずい!SDP選択、水鏡美香!)
優希の判断、日万凛の反応が重なる。
日万凛は左腕を盾で防ごうとするがその前に彼女の咆哮による攻撃が襲う。
直撃寸前で障壁が展開されるが大きさが小さく、日万凛は吹っ飛ばされてしまう。
「はぁああ、気持ちいい。」
余韻に浸る隙を逃すまいと優希に乗った京香が後ろから彼女の首を狙う。
その殺気に気づいた彼女は京香の件を片手で受け止める。
優希も単純な拳を一本角に振るう。
「あら、強いわね。」
彼女は感心し、互いに距離を取る。
「ようやく会えたな、一本角!」
京香は剣先を一本角に向ける。
(こいつが京香さんの故郷を滅ぼした・・・・・・・・・だがなんだ?この違和感?彼女に対して俺は敵意を抱けない・・・・・・)
京香は倒れている二人を見ていなかった。
「醜鬼に乗る貴様は、何者だ!」
彼女は神を自在に操作し、神の隠していた魔都の桃を手に取る。
「敢えて言うなら、魔防隊と戦う者。」
(魔都の桃、一人一つが限界なのにアイツ・・・・・)
複数所持していることに疑問を抱く京香。
そんな京香のことはお構い彼女は尋ねる・
「・・・・・・・・・ところで、貴女私の弟知らない?特徴は世界で一番イケメンなんだけど。」
唐突に聞いてきた彼女に優希は若干戸惑う。
「私の弟はねぇ、小さいころからお姉ちゃんっ子でよく後をついて来たわ。将来は私と結婚するとか昔は毎日言ってたものよ。それでも少し大きくなってくるとやんちゃになって、でもそんな弟をビシッとしつけるのもこれまた楽しい日々だったのよ。」
(なんか・・・・・・・なんかまるで人間と話しているみたいだ。ブラコンな姉の自慢話をしてる・・・・・・・・ん?なんで俺、人間と話しているって思うんだ?)
自身が感じたことに違和感を持っていく優希。
そんな優希に構わす彼女は話を続ける。
「顔も最高の美男子だけど家事もどんどん上手になって行ってね、飴と鞭で鍛えた買いがあったわ。本当にどこに出しても恥ずかしくない自慢の弟な―――」
彼女の言葉を遮るようにいつの間にか合体した大型醜鬼が咆哮を上げる。
その行為が彼女の逆鱗に触れた。
「今、私が・・・・・・弟についてしゃべっているでしょ!」
彼女は神を自在に伸ばし、操作し大型醜鬼に髪を巻き付けると一瞬にして肉塊にする。
そしてそのまま肉塊を一本角へ差し出す。
「おやつよ。」
その言葉を皮切りに一本角はそれを食べ始める。
(明らかに他とは一線を期した強さを持ってる。仲間意識なんてものは無い。弱肉強食の世界で上に立つ位置の奴だ。)
優希は警戒する。
これまでの醜鬼とは全く違うのを、肌で感じた。
(そて彼女はそれを従えれるほどの強さを持ってる。ここは撤退を選択したほうが・・・・・・)
「お前が総大将か!」
京香は優希の鎖を掴み突っ込む。
京香の件と彼女の髪が激しくぶつかり合う音が響く。
「半分正解だけど、貴女は魔都について全然わかっていないのね。この呪いで満ちた世界を。」
彼女と一本角の連携攻撃が二人を押す。
防戦一方の最中、彼女はあからさまに口を開く。
「っ!?」
京香の脳裏には先ほどの攻撃が浮かんだ。
京香は逃れようと上へと跳んだ。
「京香さん、それは罠です!」
「察しがいい子ね。そっちもいい醜鬼連れているから、分断させてもらうわ!」
彼女の髪が優希を襲うと向く。
目と目があった瞬間、脳裏でいくつものやり取りが互いに走った。
「醜鬼じゃない・・・・・・・・え・・・・・・?」
一瞬のスキを逃さない京香は剣を振り上げ、首を断とうとするが紙一重で体を逸らされ回避される。
「そんな事が・・・・・・・!」
一本角に手を置くとそのまま去って行った。
「貴様ら!背を向けるのか!!」
その言葉に彼女は何の反応も示さない。
「いいだろう、脱げる村人を後ろから襲った報いだ!同じ目の遭わせたてやる、優希!!」
京香が読んでも優希は来ない。
「何をしている優希!追う・・・・・」
パンッ!
いつの間にか無窮の鎖を解いた優希が京香の頬を叩いていた。
京香を見る優希の目は、悲しく、辛そうであった。
そして優希は後ろを振り向く。
優希が見る先を京香も見た。
醜鬼に襲われそうになっている日万凛と朱々の姿があった。
「俺は、ここにいるぞ!」
優希はMk.XVIIに姿を変えると両手にルガーランスを装備して突っ込む。
「ユッキー!」
「朱々ちゃん、日万凛をカバー!」
「りょ、了解!」
優希は二人を守るように戦う。
その時京香は改めて気づかされた。
そして優希に言われたことを思い出した。
戦いの時には心に平和を。平和なときには、戦いの心構えを。
憎しみを抱き、怒りに任せ、大事なものを失いかけていた。
そんな自分のふがいなさに京香は自分を殴る。
「優希、朱主と日万凛の安全を確保した後残った醜鬼を殲滅するぞ!」
「はい!!」
優希は日万凛を抱えている京香も脇に抱え安全圏に戻る。
「ここから動かないでください。あとは俺が行くので!」
それは優希なりの気遣いであった。
Mk.XVIIは両肩にメデューサを展開しガルム44マグナムを装備して一斉掃射を行い醜鬼たちを殲滅する。
(優希、感謝する。私は怒りに我を忘れて、大切な部下を失うところだった。
そして殲滅が終わった後で二人は治療専門能力者の治療を受けていた。
「寧の報告によれば二人は明日にでも完治するそうだ。お前のSDPのおかげだな。」
「俺じゃなくて近藤先生です。」
「そうだったな。近藤先生にも感謝しないとな。でだ・・・・・・お前はこういうのを望むのか?」
優希は京香から膝枕のご褒美をもらっていた。
「多分、竜宮島での光景を思い出したからかもしれないですね。」
「どういうことだ?」
「近藤先生が咲良さんと一緒に過ごしていた風景を見てたから、それが平和なんだって思って。ポジは逆ですけど。」
「そうか・・・・・今回の出撃ではお前に言いたいことや聞きたいことが多い。会議をするぞ。」
「俺もそれに賛成です。」
京香は優希のほっぺをフニフニする。
「一本角は残念でしたね。」
「朱々や日万凛の命が優先だ。お前には感謝している。」
「けどビンタを俺はしました。」
「ああ。だがなぜだろうな、怒る気になれん。」
「そうですか。あの時、乗っていた女性ですが行方不明になっている姉に瓜二つです。」
「だが確証はないのだろ?」
「そのはずが・・・・・・・・・どうやらエスペラントとしての対話が可能でした。」
「エスペラント?」
「向こうの世界のミールと対話が可能な人間なことです。俺もその一人で、素質としてはそこそこですかね?」
聞いたことのない単語に京香は気になる。
「京香さんは対話をする定義って何だと思いますか?」
「普通に考えれば会話をすることではないのか?」
「では醜鬼とは会話できますか?」
「無理だ。そもそもあいつらに知性があるとは思えん。」
「そう。相手が会話をするか、言語を有するかどうかすらもわかりません。エスペラントは頭の中で互いに会話をするんです。」
「お前もやったのか?」
「・・・・・・・・・・・・いいえ、美和ちゃん。島で唯一の自然授精で生まれた女の子がやってのけました。正直悔しかった。自分よりも小さい子に、頼らないといけない自分に。」
優希の悲しそうな顔にそっと手を添える京香。
「優希、お前は私の間違いをあの時気づかせてくれた。そう卑屈になるな。」
「・・・・・・・・・ありがとうございます。」
褒美が終わり、京香は外の魔都を眺める。
「今まで単純だった醜鬼が進化をはじめ人型にまで現れた。この報告で揺れるぞ、日本そのものがな。」
京香の予想は現実となり、醜鬼の進化に対応すべく新たな命令が魔防隊に下るのであった。
それは残酷な世界の裏側であった
君は知るだろう
あらゆる平和に犠牲があることに
そしてその犠牲は関係のない全てへ向けられているのであると