魔防隊七番組の風呂場で優希は一人髪を洗っていた。
(一本角のパワーはすごかったな。無窮の鎖の肉体での戦いに磨きをかけないと。せめてSDPやファフナー装備が使えれば・・・・・そう言えば試してないな。京香さんに今度時間があるときに頼もうかな?)
そんなことを考えていると後ろから朱々が飛びついてくる。
「悩んでるねー、ユッキー!」
「朱々ちゃん!?」
突然の不意打ちに驚く優希。
「なんでいきなり!?」
「いやー、お礼言いそびれちゃったからね。この前は危ないところ、助けてありがとね。」
「・・・・・当たり前だよ。」
優希は洗面器にためたお湯でシャンプーを流す。
「生きて帰るのが目的なら、守るのも当然。」
「そっか・・・・・・じゃあお礼に背中流すね!」
「いやもう終わってるからいいよ。気持ちだけ受け取っておく。」
「え、先に体洗うの?」
「まぁね。」
優希はそう言うと脱衣所へ向かう。
しかし目の前には下着姿の日万凛がいた。
「おい、副組長。」
第一声がツッコミになる優希。
日万凛は片腕をチェーンソーに変化させ優希を追いかける。
「ついにねじ切られる日が来たようね。組長が手を汚さなくても自分がやるわ!」
「入浴中の立て札を確認しないお前も悪いだろ!いい加減認識しろ!」
「もっと男が入ってますってハッキリ札にしておきなさいよ!」
「理不尽!」
そんな追いかけごっこをしている二人の前に突如空間をゆがませ二人の女性が入ってくる。
「こんにちは。七番組は元気だね。」
優希は状況を瞬時に判断した。
「えっと・・・・すまん日万凛。この方は?」
「六番組よ。」
その言葉で理解した。
そして二人は自己紹介を始める。
「六番組組長出雲天花。」
「副組長の東八千穂じゃ。」
副組長の名前と顔の特徴で姉妹であることを認識する優希。
そんな優希に天花は顔を近づける。
「君が噂の奴隷クンか。」
「そういう噂かは存じ上げませんが、七番組の管理人をしてます。それよりただ挨拶をするためにこちらへ?それとも別件ですか?」
「後者の方。できれば京ちん呼んでくれない?」
「親しい間柄なのですね。わかりました。その前に・・・・・・この格好を何とかしないと。日万凛、前の服籠に全部入れたのか?」
「え、ええ・・・・・・」
「じゃぁ問題ないな。SDP選択、鏑木彗。」
優希は脱衣所の方に手を伸ばす。
天花と八千穂は優希の行動に首をかしげる。
「来い!」
優希の手に日万凛が脱いだ服が入った籠が来る。
「ほい。俺は流石にここじゃ着替えれないから脱衣所向かうわ。SDP選択、四島零央。」
優希は空間跳躍をする。
「まさか組長と同じ能力を使う奴がおるとはのう・・・・・・」
「ううん、違うよ。彼の力はそんなんじゃない。それに複数持ってるだろうしね。」
驚く八千穂に対し天花は冷静に分析する。
七番組寮内に設置されている応接室で互いの組長が対峙し、その後ろには他の隊員が立っていた。
「うん、奴隷クンは美味いコーヒー淹れてくれるね。」
優希は一礼をする。
「本題はなんだ、天花?」
「国からお達しがあったでしょ、京ちん。手ごわい人型醜鬼が出てきた問題。魔防隊は組ごとに個性があるから場田原で動いていたけど、今後は連携を密にせよって。」
「ああ、それか。」
京香もその話は聞いていた。
しかしそれは実質総組長からの指示であるのだが。
「・・・新型の醜鬼だろうが何だろうが、滅してしまえば問題ないはずだ。」
口を開いたのは八千穂である。
「聞けば七番組の副組長は人型醜鬼に襲われ気絶したとか。情けないのう。」
八千穂は日万凛を見る。
「お前は東家の名に、泥を塗るばかりじゃな八千穂。大人醜家に帰って来い」
(ん?なんで家に帰って来いって言うんだ?普通は逆なのに・・・・・・)
優希は谷内の穂言葉に違和感を抱く。
「とはいえ一旗醜鬼も手ごわいよ。部下の安全を優先した京ちんの判断は正しかったよ。」
「三番組も遭遇したらしい。」
「うん、組員たちは深追いした挙句にボコられて、三番組はしばらく行動不能らしい。しかも証言からすると、京ちんたちが遭遇したのとは別個体。」
「人型は一人ではない・・・・・か。確かに組同士の連携が必要だな。」
「京香組長の存在は頼もしいが、背中を預けるには不安な者もおるな―。」
わざとあおるように言う八千穂。
そんな光家に優希は深いため息をつく。
「なんじゃ、言いたいことがあったら言うてみよ。」
八千穂は優希の顔を見て話す。
「まず、戦ってもいないのに勝てるとは随分自信ですね。」
「なに?」
「後一人のエースに頼る戦法は瓦解しやすいですし、それならばここの個性を生かせる施術やそれを補佐するための手段をあなたは講じられれるのですか?」
「随分な言いようじゃな。男の分際で。」
「そこは関係ないでしょう。それに、貴女の場合言葉に色々問題がありますしね。」
「ほお・・・・・・・・言うのう。」
最後の皮肉の意味を理解していない八千穂。
「後三番組の方ですが、気になる点が。」
「なんだ?」
優希の疑問を京香が聞く。
「どうして殺さなかったのか、です。戦いにおけるもっとも有力な武器は情報。ならそれに対して警戒するのであれば情報を持つ人物を殺す。これが手っ取り早い。」
「確かに・・・・・・・じゃあ奴隷クンはどう考える?」
「可能性は単なる気まぐれ、余裕の表れ、最後に力量を知るの三つです。気まぐれの可能性は無いに等しいでしょう。もし二つ目だとすればかなり危険ですから叩けるうちに全力で叩かなければ後々厄介。最後の方に関して言えば捕まえられるチャンス、でしょうかね?」
「どういうこと?」
天花は優希の考えが気になった。
「最後の方がもし可能性としてほぼ確定であれば、もしかすると三番組の人型醜鬼は命を奪ったことがないと考えるべきです。命を奪う瞬間、相手も俺たちを見ますから。」
「まるで経験があるみたいだね。」
「ええ・・・・・・・・・・・まぁ。」
優希は視線を逸らす。
「ですがこの可能性はかなり低いのかもしれないです。魔防隊に対して七日、人間に対してなのかがはっきりしない以上、二番目を考えておく方がいいかと。」
「つまり君としては敵は脅威になるから出し惜しみはしない方がいいと?」
「付け加えれば慢心も、です。相手にとって全力を出さない相手ほど倒しやすい相手はいませんから。」
優希の言葉に天花は納得する。
「優希の意見は頭に入れた方がいいだろう。ならば現時点での互いの戦力を把握しておく必要がある。」
京香のその言葉に天花は驚く。
「隊員同士の魔都交流戦をしないか?」
優希と日万凛と八千穂、そして天花以外は驚く。
「京ちんらしいパワフルなコミュニケーションだね。いーよ。」
京香の申し出を承諾する天花。
「上に申請しておく数日で準備は整うだろう。」
「その時は残りの面子も連れてくるよ。」
天花は席を立ち、その場を去ろうとする。
「またね、奴隷クン。」
なぜか優希にだけ別れの言葉を言い、二人は七番組の寮から去った。
そしてなぜか日万凛は優希の肩を掴む。
「今の流れで、あんたはこの東日万凛の奴隷になることが決定したわね!」
「はい?」
優希は言っていることの意味が分からなかった。
六番組のリビングで一人パソコンに向かい作業をしている一人の人物がいた。
天花の能力で近くにゲートが開き、二人が現れる。
「ただいま。」
「おかえり。七番組と交流戦をすることになったのだろ?」
「さすが未来予知の能力。私としては楽しみなんだー。」
珍しく意気揚々な京香にその女性は疑問を抱く。
「珍しいな。組長がそこまで楽しみだとは。新人でも入ったのか?」
「新人なんだけどちょっと違うかな?奴隷クンって管理人なんだけど、なんか能力を使うの。しかも複数。」
「それは組長以来の発見ではないか。」
「うん。でも発動条件が変なんだよ。」
「変、とは?」
「SDPって言った後に名前を言うんだよ。」
その言葉を聞いた途端に彼女は立ち上がった。
「どうしたのじゃ?」
「・・・・・・・・・・すまない、能力を使うことに驚いた。組長、一つお願いがある。」
「何?」
「もし、彼に緑の結晶が現れたら私を呼んでくれ。対処できる。」
その言葉に目を細める天花であるが承諾する。
そして一人となった彼女は手を動かさず呆然と考えていた。
「お前なのか、優希。」
それは運命が導いた出来事であった
君は知るだろう
世界との繋がりは時として思いもよらぬ縁を結ぶのであると
そして時としてそれは祝福であるのだと