七番組の寮のリビングで日万凛は優希が作ったラーメンを食べていた。
「このラーメンいい出汁じゃない。」
「チー油とか入れてるんだ。こってりしたのが好きみたいだしな。」
「自分の奴隷に相応しい腕ね。」
日万凛は優希の腕を褒める。
「そういやあの発言どういう意味だ?京香さんの能力で奴隷になるのはわかるがお前の能力、片腕を武器とかにするんだろ?」
優希には底が理解できなかった。
「今日聞いたでしょ。魔都交流戦が行われるのよ。自分はそれに勝たなきゃいけないの。」
「その交流戦って何なんだ?」
「簡単に行ったら腕比べよ。組同士の親睦会や意見が分かれたときに白黒はっきりつけるためにやったりするわ。複数の種目から体調たちが一つ選んで試合するのよ。」
「でも今回は互いの現在位置を知るために戦うってことだろ?」
「その通りだ。」
京香が優希の考えを肯定しながら入ってくる。
「今回はシンプルな一騎打ちを選ぶ。桃の能力を使っての真剣勝負だ。姉に腹が立ったんだろ、日万凛。交流戦を名目にぶっ飛ばしてしまえ!」
京香も割と肉体言語な方であった。
「ぶっ飛ばすチャンスをいただきありがとうございます組長!」
「必ずぶっ飛ばせ!」
組にはそれぞれの個性が出るというが、何と言うか似た者同士がいる気がする優希なのであった。
「試しとして優希とパトロールに行ってこい!即援軍に行けるエリアから出るなよ!」
「はい!」
日万凛は優希を引っ張りパトロールに向かう。
魔都の荒野をジープが駆け抜ける。
「それで、お前の能力で難で俺が奴隷に?」
「先に言っておくけど私のあの能力は相性がいいから使ってるだけよ。」
「相性?」
「あんたと似た能力よ。」
日万凛は運転しながらスマホの画面を見せる。
そこには三頭身にデフォルメされた京香が映し出されていた。
「自分で作ったのか?」
「違うわよ。青雲の志。他人の能力を学び己でも使える。それが私の能力。」
「一見強そうだがさっき相性って言ったな?もしかして――――」
「出た!」
優希が何かを聞こうとした時、目の前に醜鬼が現れる。
日万凛はジープの車輪でダメージを与えると距離を取る。
「組長の許可は取ってるわ。奴隷に変身して!」
「能力の把握は!」
「無窮の鎖
・一度鎖でつないだ奴隷は基本死ぬまで奴隷
・奴隷の働きに見合った褒美を与える必要がある
完璧でしょ。」
「だがその褒美は――――」
「体を張る必要があるって聞いたわ。上等よ!」
日万凛は最早話を聞くような様子ではなかった・
(あの一族をぶっ飛ばせるなら、こいつの代わりの掃除だろうが洗濯だろうがやってやるわ!)
彼女を突き動かす者には劣等感から来るものがあったのだろう。
脳裏には八千穂の顔が浮かんでいた。
その隙にもいくつもの醜鬼が現れる。
「たくさん出たわよ、早く!」
「後悔するなよ。」
日万凛の差出された手を掴み、口づけをする。
優希の身体は無窮の鎖の形態となるが京香の時とは違い細身で首から口先までをマフラーが覆う形態となっていた。
無窮の鎖・旋風
「組長の時と違う形態だわ。」
(SDP発動時のころを思い出す。あの時も個々の個性を生かすようになっていた。もしそうなら・・・・・)
優希は目の前の醜鬼に一気に接近すると高速右ラッシュを喰らわせる。
(スピード特化型の形態か・・・・・・・・・・反面力がが弱すぎる。一撃で倒すなら瞬間的爆発力がいるがその余裕は今は無い。いや、これならいけるか?)
優希は一旦距離を取ると手を鋭く伸ばす。
(腕を槍と思って使えば行ける!)
足の裏に力を籠め、一気に前へと突き出す。
突き出された手は醜鬼の頭を貫いた。
「やるじゃない!」
「いや、ダメだ!」
優希は後ろへ距離を取る。
(これは初見殺しの技だな。それに足が止まってしまう。なら今度は!)
今度は全速力で醜鬼の側まで近づくと腕を振るう。
今度は醜鬼の機微を切り落とした。
(若干速度は落ちるが使い勝手はいい。けどカウンターや防御が固い奴には使えないな。)
優希は冷静に分析をしていた。
(奴隷になる相手がハマればすごい能力だわ。これならアイツと戦える!)
日万凛目の前の出来事に高揚していた。
そして醜鬼をすべて倒し、変身が解ける。
「ナイスな働きよ。交流戦の時も自分の奴隷として役立ってもらうわ。」
「他にも能力があるのに、これにしたのか?」
「いいじゃない。男が働ける場が増えたんだから。むしろ自分に感謝して――――」
そこから先の言葉が彼女からは出なかった。
彼女の意志とは関係なく、両手でスカートをめくり優希にパンツを見せていた。
「!?」
突然お自身の行動に日万凛は驚く。
「えええ!ちょ、ちがっ・・・・何これ何これ!?」
「・・・・・・・・やっぱ聞いていなかったんだな。京香さんから聞いた能力の代償だよ。」
その言葉に日万凛は真っ蒼になる。
「え!?えええ!身体を張るってこういうこと!と言うか身体が動かないんだけど!」
「一方通行な条件じゃないと考えると相互関係だから、認められるまぜずっとじゃないか?最悪俺が明後日の方向行ったらその状態のまま追いかける的な。」
「なななっ!」
流石に優希も考えた。
「し、仕方ないわね。」
日万凛はスカートを取り払うとパンツ越しに自分の股を優希に押し付け、倒す。
「・・・・これで、褒美になるってわけ?」
「むぐぐ!」
「んっ・・・・!いやらしい!」
褒美が終わった後、二人は気まずい雰囲気のままその場に座っていた。
「・・・・・・・・・・なぁ、何でそこまで勝つことに誇示してるんだ?特にお前の姉に。能力ももっといいのを選べばいいんじゃないのか?」
優希は自分から話を切り出す。
「無理なのよ。青雲の志に相性があるの。ほとんどの能力は裂開しすぎて使い物にならない。例えば朱々の玉体革命だけど、精々バストが3センチ変わるぐらい。」
「・・・・・・・・・・・・」
後の方は聞かなかったことにしようと思った優希である。
「組長も志のために頑張ってるのよ。自分だってあれしきのこと!」
意固地になってまでもやり遂げようとしている日万凛がどことなく、昔の甲洋を思い出させる。
「お前の志を教えてくれないか?」
「自分が生まれた東家は、魔都での功績が大きい名門なの。姉たちも優秀だし、分も期待されたんだけど、自分は大品試験を前に頑張りすぎてケガしちゃったり、緊張で熱出したりで気㏍を出せなかったの。桃の能力、初めはすごいって言われてたけど欠点おかげで落ちこぼれとバカにされる日々だったわ。特に八千穂からは毎日絡まれてた。」
(逆なんじゃないか、それ?)
なんとなくではあるが優希は八千穂がめんどくさい人間と認識していた。
「なぁ、気づいたんだけどお前の能力ってなんで劣化するんだ?」
「どういうことよ?」
「気になってな。俺のSDPはいわばお前と似てる。他の能力者の能力を模倣している。そこに関しては理解できるな?」
その言葉に日万凛は頷く。
「実戦以外で試したときにだが同じなのに違う理由が気になった。そこで俺は自分じゃなく、本人たちに聞いたんだ。」
「どういうことよ?」
「俺の感覚とお前の感覚が違うのは言うまでもない。なら能力にもその影響が出るんじゃないのか?」
「っ!?」
日万凛はもうお点であったことに気づく。
「やっぱり・・・・・・お前の能力は使える。だが問題なのは本質を知らないことだ。腕を武器にするあれもそうだが、なんで腕だけなんだ?」
「それは使ってる人間が・・・・・・・・あ!」
日万凛はそこで気づく。
肉体の一部を変える能力をちゃんと理化していなかったのであると。
「俺よりも姿そのものですら変えるやつもいたからな。あいつの方は見ただけで本質を理解してた。もう戦うことはないけど、敵対はしたくないな。」
「あんた、すごいわね。」
「いいや、すごくないよ。残酷な結末を選ぶことしかできなかった人間だ。」
「その最悪な結末って何よ?」
日万凛はずっと気になっていたことを聞いてきた。
「・・・・・・もう大分前だが、竜宮島は別の星から来た存在、アルタイルと共に海に沈んだ。アルタイルは無知な存在でな。アルタイルの持つ力で世界を祝福することで世界を救おうとした。だがそれにはエスペラントである美和ちゃんを犠牲にする必要があったと俺たちは結論付けた。」
「それって!」
「ああ、最悪な犠牲だ。9歳の女の子を犠牲にしなけりゃいけない残念な大人の選択だ。だが、それを否定する奴がいてな。こいつが生意気な奴だったが、犠牲を否定して新しい未来を見つける道を選んだ。あいつがいたから、俺たちは最前最高の未来を選べた。」
「・・・・・・・・・」
何も知らなければ、さっきの計画に文句の一つも付けれただろう。
だが彼が経験した世界はこことは違った意味で残酷な世界である。
だからこそそれを否定はしなかった。
「ありがと、話してくれて。」
「気にするな。それよりも大事なことに気づいた。」
「なに?」
「確実に相手を倒すための武器、必殺技ってところか。」
「確かに。アンタが試行錯誤して醜鬼たちを倒してるのを見たわ。」
「ああ。だが問題なのは早さを生かしつつ確実に相手を仕留める武器がないことだ。それがないことには勝機も見えないな。そういやお前の姉の能力って何なんだ?」
「東の辰刻。時間操作をしてくるわ。」
「単語からして厄介の名のはわかった。」
それは兆しであった
君は知るだろう
二つの世界を隔て、一つとなる力を
その力は今後の戦いに大きな影響を及ぼすことを