学園一の美少女の裏側はドMな正癖を持っていた 作:Tifa Lockhart
とあるホテルの一室。
間接照明の薄暗い明かり。
キングサイズの大きなベッド。
乱れた布団。
大量の液体が付着したシーツ。
散乱した大人のおもちゃ。
遠くから、かすかに聞こえるシャワーの音。
部屋の隅にあるソファには、ベージュのコートを着た女性が横たわっている。
彼女は失意のあまり俯いている。
とうとう先生とセックスをしてしまった。
今日も数え切れないほど、絶頂寸前で止められ、気が狂う思いだった。
1回目と2回目もセックスはせずに、焦らさるだけの性感マッサージ。
イク瞬間に止められ、快感が落ち着くとまた責められる。
私が感じていることを分かっていて、毎回絶頂の直前で止める。
涙を潤ませ、先生を見つめ、目で懇願してもイかせてくれない。
私は”感じてない。気持ちよくなんかない”と強がっていることも全部理解していたのだろう。
1回目と2回目のマッサージで溜め込んだ快楽は、オナニーをしても解消できなかった。
快楽の先にある絶頂を思うと、何度自慰行為をしても満たされることはない。
そして今日が最後の行為。
マッサージ店の室内で、いつものように性感マッサージを受ける。
漢方薬を飲み、ほぐされたれた皮膚は敏感になり、触れるだけで痙攣する。
乳首を摘ままれると体が跳ねる。お腹を押されると、子宮に快楽の一撃が打ち付けられる。憎い相手のはずなのに、指とローションで感じてしまう。
今日こそは絶頂を迎えられると思っていたけど、考えが甘かった。
10回以上は直前で止められて、焦らし続けていた。
それでも私は、新を裏切る事は出来ずに、セックスしてほしいとは言わなかった。
先生は「ここまで耐えるなんて本当に凄い。これなら橋田と柊は本当に別れないな」と言った。
今更何を言っているの?このことを言ったら、軽蔑されるに決まっている。万が一許してくれたとしても、私への不信感は拭えない。
ただ、絶頂を迎えられない苛立ちと、全身が痙攣する疲れで反抗する気力もなく、睨みつけるだけだった。
「じゃぁ今回で最後だ。ホテルに行って激しいセックスするぞ」
心では絶対にイヤだと思っている。でも……
「……はい……今日で最後ですよね」
「あぁ、俺からセックスを求めるのは最後だ」
その後は、中に卵形の玩具を入れたままホテルに連れて行かれる。
でも私は先生のセックスなんて受け入れない。どんなに愛撫され、先生のモノを挿入されても拒み続けよう。
うそ。
違う。
ローションでも、マッサージでもない。
出来上がった体は、他人のモノを欲しがっている。心がどんなに拒んでも、先生のセックスを求めていた。
マッサージを受けている時も、ホテルで裸になった時も、先生の大きくなったモノから目が離せなかった。
だから後ろから挿入された時は、偽りの言葉で抵抗しながら体は受け入れていた。
その後も、”素直にセックスしないなら、徹底的に焦らしてやる”と言って、40分間もの間、たくさんのオモチャで焦らされ、何もせずに放置される。
心も体も限界が来て、自らセックスしたいと懇願した。体だけじゃなく、心から先生のセックスを求めていた。
体と心の抵抗をなくした後は、今までにない快楽が襲う。
ポルチオを突かれる初めての感覚も、Gスポットを擦られる痺れるような快楽も、初めて経験する気持ち良さ。
天国に上るような快感と、地獄に落ちる罪悪感が同時に襲う。
新から受けたことのない快感は、子宮の奥が覚えている。
言い訳できない事は分かっているけど、許してほしいなんて言えない。
でもどうしよう……彼にどう接していいか分からない。
気付いたらシャワーの音が止んでいた。
シャワーを浴び終え、着替えた先生は「もう着替えたんだな」と普段と同じような口調で話す。
「じゃあ先にホテルを出て、店に向かってくれ」と言って鍵を預かる。
「……」
1人でラブホテルを出る姿を見られるのは恥ずかしい。
先生は「2人で出るところを見られたいのか?」と言われ、先にホテルを出る。
何でそんなことを気遣うのよ……
私を犯したのに、気遣いなんてしないで……
◇
マッサージ店に入り電気を点ける。
2週間前は、私がお客様にマッサージをしていた部屋。
今日も先生は、患者に親身になって施術していた。
脅迫が無かったかのように、私にも教えてくれたのに。
椅子に座り天井を見上げると、影になる場所に小さいカメラが設置されている。
「でも……なんで先生が……私が悪かったの?マッサージ受けたのが悪かったの?」
先生は私が悪いって言ってた。体に触れさせたから?
私と新のことも、凄く喜んでくれていたのに。文化祭の劇を喜んでくれたのは嘘だったのかな……
絶対に別れるなって言ってたのに、なんで私を脅迫したんだろう。
先生は”抑えていた性癖が出てしまった”とも言っていた。
マッサージ受けない方が良かったのか、と思ってもどうしようもない。たった1回とはいえ、セックスをしてしまった。
悶々としていると先生が帰ってきた。
私は睨みつけて「早く動画消してください……」と言う。
「待ってろ」と言って、椅子に上り、天井のカメラを取り外した。
「柊は今日のことを橋田に話すのか?」と言いながらカメラを差し出す。
「言えるわけないじゃないですか!」
先生からカメラを預かると妙に軽く、中身が空洞のようだ。本当にこんなカメラで録画できるの?
「先生これ……」
「あぁカメラ型の形をしたただの箱だ。このカメラで録画していない」
「う、嘘をついたの?」
「あぁ嘘だ。柊とセックスをするために。いや、性癖を確認するためだな」
「確認って……何なのそれ……」
先生は続けて言う。
柊は寝取られを受け入れることがどう言うことか理解してないだろ?寝取られを許すってことは、橋田にしか見せないペルソナを、他人に晒すってことだ。
そして他人に晒したペルソナを、橋田以外の他人に曝け出して、喜びを感じるんだよ。
彼氏じゃなくても淫らになる。
罪悪感を持ったままの背徳的なセックス。
他人に淫らな姿を見られる嬉しさ。
それを新に報告する罪悪感。
そう言う性癖を持った女か確認したかったんだ。予想通り……いや、予想以上だったよ。
「違う。私はそんな女じゃない」
「そんな淫らな女だよ。それを橋田も求めてるんだろ?」
彼は本当に寝取られることは望んでいないし、今までだって満足していた。
「それは……擬似的なことで、本当に求めてるんじゃない」
今までも満足してたんだから、それ以上しなくてもいい。
「賭けるか?」
「絶対にないから」
賭けになんか乗らない。彼が先生に寝取られることだって求めるはずがない。
「もし、橋田が求めていたら、俺ともう一回セックスしようか」
「そんなこと絶対にないし、先生とセックスなんてしません!」
これ以上要求を飲むわけにはいかない。動画もないなら脅迫されることもないんだから。
「柊はまた俺とセックスしたくなるよwポルチオの感覚を覚えてるだろ?」
ポルチオを突かれる感覚。
Gスポットを擦られる痺れ。
今までにない奥を突く感覚は忘れることができなかった。
「失礼します。2度と来ませんから……」
これ以上先生と話していても心が荒んでいくばかりだ。早く帰ってて全て忘れよう。
「失礼します」
「また勉強に来いよ」
「……」
何よ……本気で勉強していたし、先生のことだって……心から信頼していたのに。
マッサージ店を後にして家に向かう。
新に正直に言って、許してもらおうかな……
彼なら泣きながらも、許してくれる気がする。
ただ、許してくれるとしても、彼を傷つけることになる。その傷の深さは計り知れない。
やっぱり言えないよ……
もう終わったことと考えても、罪悪感は拭えない。
駅に向かう帰り道は、春の近づく2月の終わりでも、外の空気は寒く髪をなびかせる。
でも体が火照っていて、寒さは感じなかった。
新の声が聴きたい……汚れた私を受け入れてくれるだろうか。
携帯を手に持ち[大好きな新]を選ぶ。
落ち込んだ声を押さえて、元気に話さなきゃ。
プルルルル……
ピッ!
「新、今大丈夫?」
「もちろん大丈夫だよ」
声を聞くと嬉しさと罪悪感が同時に襲う。
「翠wこんな時間に珍しいね」
今すぐ抱きしめてほしい。汚れた体を浄化してもらいたい。でも汚れたままじゃ会えないよ。
「うん、明日なんだけど、朝から行って大丈夫……かな」
「もちろん大丈夫だよ」
彼は私の意見を否定しない。それは優柔不断じゃなく、私の意見を尊重してくれるから。
「……ありがとう」
「もう少し時間早ければ、今日会えたのにw」
会いたいけど、その言葉が辛い……
「……そうね。会いたかったけど明日ね。ねぇ、新……大好きよ」
「ふふwありがとう。僕も翠が大好き」
「じゃぁ明日ね……」
「うん、明日も寒いから気をつけて来てね」
「ありがとう……」
電話を切り、潤んだ目を擦りながら駅に向かう。
本当は今すぐ会いたい。
抱きしめて欲しい。
歩いてでも会いに行きたいけど……
私の体は汚された。
汚された体を、抱きしめられるのが怖い。
週末の繁華街は、明日が休みの人たちの、笑顔で溢れている。
酔っぱらったサラリーマン。
両手を繋いだカップル。
青春を謳歌する大学生。
当たり前のような夜の駅前が、いつもと違う風景に見える。私だけ阻害されているような。軽蔑された視線を感じる。
この空気から逃げ出したい……
◇
終電に乗り、夜中の1時に家に着いた。
今日の出来事を忘れようと思うたび、快楽と痴態が鮮明に蘇る。
考えちゃダメ。今日は早く寝て、彼に会いにいくの。
「……お風呂に入ろう……」
汚された体と心を洗い流したい。
紺のトレーナーと赤いタータンチェックのスカートを脱いで下着になる。
鏡を見るといつもと同じはずの体が映っている。まだ肌が紅い。ローションと漢方薬の効果が残っているのね。
紺の下着を脱ぎお風呂場に入ると、数時間前まで愛撫されていたお腹が鏡に映っていた。
まだ子宮に感覚が残っている。ポルチオを突く感覚は、突かれるたびに理性を破壊していた。
どうしてもさっきの行為を考えちゃう……
だめ……彼の事だけ考えていよう。
熱いシャワーを浴びながら彼の顔を思い出す。
満面の笑み。
繋いだ手の温もり。
優しい抱きしめ方。
「言ったほうがいいのかな……」
彼は本気の寝取られなんて望んでない。
擬似の寝取られだって心が痛いと言っている。
彼の笑顔と、子宮を突かれる感覚が同時に蘇り、罪悪感に苛まれる。
「新……助けて……私、どうしていいか分からないよ……」
シャワーのノブを捻り、雫が強く肌に当たる。
「今日はダメだ……」
力尽きて床にへたり込むと、肩を震わせていた。
鳴き声はシャワーが掻き消してくれる。
今は泣いてもいいよね。弱音を吐いていいよね。
新を裏切った事実は変えられない。
涙が流れるのは、先生に犯されたからじゃない。
一瞬でも快楽に流されたから。
新を想う気持ちを一瞬でも失ったから。
信頼していた先生に裏切られたから。