※この作品はR-18です。

学園一の美少女の裏側はドMな正癖を持っていた   作:Tifa Lockhart

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完堕ちしたエルフとクリエイター(仮)の別れ

 世の中は夏真っ盛り。

 

 学生たちは青春を満喫できる最高の夏休みだ。

 

 世の中の恋する男女は、汗をかきながら楽しんでいるのだろう。

 

 でもどんなに暑い夏だって、部屋にいれば涼しく過ごせるんだ。

 

 いやいや。2年前は僕みたいなオタクに訪れるはずのない、甘酸っぱい恋を楽しんだよ。

 

 あの時は暑かったな……

 

 夏休みに2人で劇の練習をした教室。

 

 外では陸上の練習をしていた。

 

 傾きかけた太陽で2人が照らされる。

 

 汗でベタつく体なんか気にせずに劇の練習をしていたんだ。

 

 そして一緒に食べたアイス。

 

 冷たいコーラ。

 

 僕の肩に寄りかかる彼女の頭。

 

 決して弱音を吐かない彼女は、僕の心に寄りかかったんだ。

 

 そして彼女を好きになり、彼女も僕を好きていてくれた。

 

 おどおどしていた僕を元気付け、支えてくれた2年間は、人生で最高に素敵な時間だった。

 

 将来の無意味さを嘆いていた彼女の、心からの笑顔を見たくて応援していた。

 

 何も出来ない僕が人の役に立つと言う意味を与えてくれた。

 

 そして彼女は夢を見つけてくれて、未来に向けた考えを持つようになる。

 

 お互いに夢を持ち、将来に向けて一緒に歩いていた。

 

 そう。

 

 同じ道を歩んでいたんだ。

 

 お互いを支えあって死ぬまで横に居てくれる。

 

 僕は彼女を支え、彼女は僕を支えてくれる。

 

 はずだった。

 

 でも彼女にとっては違ったのかもしれない。

 

 もちろん週末は楽しいデートをして、夜は体を重ね、恋人らしい濃密な時間を過ごしていた。

 

 彼女は僕を抱きしめ、愛してるとも言ってくれる。僕も、もっと愛していると言って愛を確かめあった。

 

 それがずっと続くと思っていた。

 

 よく考えたら、僕みたいな男には手の届かない女性なんだよ。

 

 高校でも大学でも、毎日告白されるほどの美貌。

 

 家は経営者のお金持ち。

 

 頭も良くて、運動もできる。

 

 本当に現世に転生した、万能のエルフなんだ。

 

 エルフと人間は一緒にいられないでしょ。

 

 種族も違うし寿命も違う。

 

 理解しようとしても、考え方だって分からない。

 

 僕が性癖を出さなくたって結果は一緒だったよ。

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 腫れた瞼を擦るとピリピリと痛みを感じる。

 

 擬似の寝取られなんてしなきゃよかったのかな……

 

 きっとそうだろう。

 

 これも全て僕の性癖のせいだ。

 

 彼女を他人に抱かせる真似事なんてしたら嫌われるに決まってる。

 

 普通の男なら、他人に触れられるのも嫌なんだから。

 

 いまさら後悔しても遅い。

 

 彼女は嫌いだったはずの元教師、上山に寝取られたんだ。

 

 同人誌と全く一緒のシチュエーションじゃないか。

 

 マッサージの勉強じゃなく、セックスの勉強を教えられる、よくあるパターンだ。

 

 嫌いだった教師を愛おしそうに見つめ、恥ずかしげもなく跨り、一生懸命に腰を振っていた。

 

 自分の快楽のためだけに、僕にも見せない乱れた顔で、腰を振り続けたんだ。

 

 喉の奥で気持ちよくなるフェラも、Gスポットとポルチオを突く交尾も、潮を吹くほどの出し入れも、上山から教えられたんだ。

 

 僕にしたフェラだって、腰の振り方だって、あいつにヤラれたのを僕にしてたんだね。

 

 僕で潮吹きしたことないから、物足りなかったよね。

 

 もちろん気持ちいいとは言ってくれた。でもそれは本当に心の底から気持ちよかったのかな。

 

 漏らすほどの快楽と、僕の普通のセックスは雲泥の差があるから、きっと物足りなかったはずだ。

 

 最近は疑似寝取られも求めてなくて、普通でいいと言われてたし。

 

 好きの気持ちはなくなって、全てに飽きてきたんだろう。

 

 体も心も、僕を見ることはないんだ。

 

 …………

 

 ……

 

 天井を見るのも流石に飽きる。

 

 でも部屋に目を向けると、彼女のいた形跡を探してしまう。

 

 形跡を探し出すと、枯れることのない涙がまた溢れてくる。

 

 それを3日間も繰り返していた。

 

 人間は3日食べなくても生きていけるんだな。でも食べてないのに何で体が重いんだ? 

 

 かと言って、勉強する気にもなれず、動く気力も出てこない。

 

 ゆっくりと体を起こし、腫れた目頭を拭きながら立ち上がった。

 

 体壊したらきっと心配するよな。

 

 ん? 誰が心配するんだよ……

 

 食欲はないけど、流石に何も食べないのは体に悪いと思い、ご飯に卵をかけてたべた。

 

 味がしない。

 

 失恋すると感覚が鈍るのかな。

 

 まぁ味なんてなくていいや。

 

 全部僕が悪いんだから。

 

 ピロッ! 

 

 携帯の画面が光り振動する。

 

「!! ひっ!」

 

 電話が鳴ると吐き気がしてくる。

 

 いやだ! だめだよ! 

 

 携帯を放り投げると、壁に当たりソファの後ろに消えていった。

 

 携帯が消えても、バイブ音は響いている。

 

「あぁぁ……鳴らないで……早く止まって……」

 

 僕を嗤うために連絡してるんだろうし、さげすみながら振られるに決まってる。

 

 だから電話もLINEも出られなかった。

 

 でもこのまま連絡しないと心配するかな……

 

 …………

 

 ……

 

 僕への気持ちなんてないんだから、心配なんてしないか。

 

 だったら僕から別れの言葉を言おう。

 

 どんなに辛くたって結果が同じなら早く楽になりたい。

 

 ゆっくりと立ち上がりソファーの後ろから携帯を拾う。

 

 着信12件

 

 LINE15件

 

 震える手で携帯を掴み、光る画面を見つめると涙が溢れてくる。

 

「ぅ……うぅ……あぁぁぁ……別れたくないよ……大好きなのに……本当に好きなのに」

 

 僕が悪かったって言えば、許してくれるかな。

 

 一緒にいてほしいって言えば、僕をもう一度見てくれるかな。

 

「どうしてもダメなのかな……」

 

 まぁ無理か……

 

 たった1年半でも、僕に歩幅を合わせてくれて幸せだった。

 

 人生の10回分の運を1年に凝縮したと思えば誰よりも幸せだよ。

 

 でも電話で話すのは無理だ。LINEで伝えよう。

 

 最後のメッセージは”新? 大丈夫? 話をしたい。本当にごめんなさい。もしLINE見たら連絡してほしい”と書いてあった。

 

 どうしよう……

 

 彼女の笑顔の次に、動画の淫な姿を思い出してしまう。

 

 でも……ダメだ。僕は必要ない。いない方がマシだ。

 

 震える指で1文字ずつ、文章を打っていく。

 

 “翠さん、今までありがとう。僕にはもったいない、不釣り合いな女性でした。1年半のあいた、僕を支えてくれてありがとう。幸せになってね。さようなら”

 

 送信ボタンを押そうとしても、指が震えて押せない。

 

「あぁぁぁ……別れたくないよぉ……あぁぁぁ……大好きだよ……本当に本当に大好きなのに……」

 

 これで全てが終わる。

 

 でも彼女にとっては別れたほうがいいんだ……

 

 ピッ! 

 

 震える指で送信ボタンを押してしまった。

 

 押しちゃった……

 

「ぅ……うぅっ……ぁぁあ……ああああぁ──」

 

 心を落ち着かせようとしても、自分のしたことに後悔が押し寄せて嗚咽が止まらない。

 

 持っていた携帯が滑り落ちる。

 

 立つこともできず、全身に悪寒が走り、心臓が激しく鼓動する。

 

 でもこれで良かったんだ……

 

 プルルル……

 

「わあぁぁ!」

 

 数秒も経たずに電話が鳴り、画面には[柊翠]と表示されていた。

 

 彼女の声を聴きたい。

 

 笑顔を見たい。

 

 肌に触れたい。

 

 抱きしめたい。

 

 でももう無理なんだ。

 

 ごめんね、僕は翠と話すことは出来ないよ。

 

 プルルル…………

 

 携帯のボタンを長押しして、鳴らないように電源を切った。

 

 僕は何も失っていない。元に戻っただけだ。

 

 2年前の僕に。

 

 ずっと1人で友達もいない。綺麗な女性に憧れるだけで何もできない陰キャの自分。

 

 短い間だったけどありがとう。少しでも笑顔を見られてよかった。

 

 生きているだけで疲れる。

 

 起きているだけで心が痛む。

 

 床に倒れたまま全く動けずにいた。

 

 このまま餓死してもいいのかな……

 

 …………

 

 ……

 

 ◇

 

 空の色が黄色味がかり、西陽が僕の目に当たる。

 

 眩しくて目を逸らして立ち上がった。

 

 餓死するなんて言っても、太陽の光を浴びただけで動くほど小さな決意なんだよ。

 

 ソファに座ると左側の空間が気になる。

 

 ここにはもう座ることはないんだよな……

 

 カーテンの隙間から入る光が徐々に薄くなり、暗闇に覆われていく。

 

 あぁ、やっと今日が終わる。

 

 あと何日過ぎれば楽になるんだ。

 

 外から走る音が少しずつ大きくなると玄関が開いた。

 

「新!」と彼女の大きな声が響く。

 

 1瞬嬉しさがこみ上げ、次に恐怖心と罪悪感が覆い尽くす。

 

 僕を笑いに来たのか……

 

「……あ……いや……」

 

 彼女が僕に近づくと同時に、逃げて拒絶してしまう。

 

 だめだ、怖い……

 

「こ、来ないで……」

 

 自分で選んだ言葉ではなく、勝手に口から発せられた。

 

 言いたいことと違っても、否定することができなかった。

 

「え……」

 

 彼女は、拒絶した僕の反応を見たのは初めてで戸惑っている。

 

「あ、ご……ごめん……なさい……」と僕は言った。

 

 彼女はその場に座り込み、僕を見つめる。

 

 あぁぁぁ辛い。一緒にいたいのに、僕以上に愛する人ができたなら、なんで来たんだよ。

 

「私こそ……ご……め……」

 

 彼女が何を言おうとしたか分からないけど、聞くのが怖くて手を出して遮る。

 

「みど……ひ、柊さんの居場所は……ここじゃないよ」

 

 なんて事言ってるんだ……全然思ってないのに……

 

 今すぐ彼女に謝って関係を続けたいのに……

 

「え……そんな……」

 

 彼女の赤い瞼から大粒の涙が落ちていた。

 

 泣かないでよ。振られたのは僕なんだから……

 

「僕は……ひ、柊さんともう付き合えないよ……」

 

「っ……ぅ……っ……ぁぁ……ごめん……なさい……っ……」

 

 彼女は泣きながら家を出て行った。

 

 こ……これで、良かったんだよね……

 

 どれだけ涙を流したか分からないのに、それでも瞳からあふれ出てくる。

 

 自分の犯した罪と、彼女の心変わりを落胆しても何も変わらないのに。

 

 全部僕が悪いんだ。

 

 彼女を傷つけ、蹂躙させて、心が離れていった。

 

 彼女を恨むことは出来ないけど、自分を恨むことは出来る。

 

 どうしようもない性癖。

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