※この作品はR-18です。

学園一の美少女の裏側はドMな正癖を持っていた   作:Tifa Lockhart

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寝取りマッサージ師VS寝取られたクリエイター

 カタカタカタ……

 

 カタカタカタ……

 

 カチッ

 

 数十台の机が並ぶ大きな教室。

 

 廊下からは見えにくい一番奥の端の机。

 

 PCに向かってキーボードを叩いている。

 

 カタカタカタ……

 

 …………

 

 ……

 

 ピピッ! 

 

 携帯電話のアラームが12時を告げる。

 

 10時から教室に入って、あっという間に2時間が経っていた。

 

「よし、とりあえず終わるか」と言って立ち上がり、リュックにPCを詰め込む。

 

 そして電気を消して教室を出た。

 

 教室の前のエレベーターに乗り込み、地下1階のボタンを押して食堂に向かう。

 

 大きな食堂の電気を点けて、奥の見えにくいテーブルへと向かう。

 

 エアコンは点いていないけど、コンクリートに囲まれた地下1階はそれほど暑くはなかった。

 

 煌々と明るく光る大きなフロアの一番端の席に座り、リュックからおにぎりと水筒とPCを出してテーブルに並べる。

 

 誰もいない食堂で黙々とおにぎりを食べる。

 

 両親に大きな金額を借りた手前、贅沢はできないから3食とも素食で済ませていた。

 

 もうすぐ学校が始まるけど、生活のリズムは変わらないだろう。

 

 土日は図書館がやっていることを知り、ずっと外で勉強ができる環境が整えられた。

 

 アパートにいるのは、以前に比べて苦痛ではなくなっている。

 

 でもずっと家にいると、デスクトップPCの動画が気になり集中できない。

 

 何度も消そうと思ったけど、どうしても躊躇ってしまう。

 

 心臓が潰されるほど辛い気持ちでも、動画の彼女は魅力的で、僕の性欲を爆発させてしまう。

 

 そしてそのあとは凄まじい罪悪感に苛まれる。

 

 “元”彼女を手淫で汚してしまうのは、いけないことだし、消さないといけないけど躊躇ってしまう。

 

 だから家にいない方が彼女を思い出さずに済んだ。

 

 そしてまた教室に戻り、PCに向かってキーボードを叩き続ける。

 

 カタカタカタ……

 

 …………

 

 ……

 

 ◇

 

 ピピッ! 

 

 携帯から閉館を告げる音が鳴る。

 

「16時50分。もうこんな時間か……」

 

 まるで器械のようにルーティーン通り行動して、ノートPCを鞄に詰込みむ。

 

 立ち上がって廊下に向かう。

 

 喜びも悲しみもなく、無感情に行動する。

 

 僕みたいな男にはこういう毎日が合ってるんだ……

 

 こんな、無意味で何もない毎日が続くと思っていた。

 

 ピロッ! 

 

「えっ……」

 

 携帯の着信音が鳴る。

 

 電話でもLINEでもない。

 

 メールの着信音。

 

 このメールの送り主はだた1人。

 

 僕から翠を奪った犯人。

 

 彼女に対して怒りは湧かないけど、 上山に対しては怒りしか湧かない。

 

 しかも今更メールをよこして、さらに僕を痛めつけようとしているなんて……

 

 震える手で携帯のロックを外し、メールを開くと“すぐに連絡をよこせ“と言うタイトルだった。

 

 恐怖と欲望が混ざり合い、メールの内容を見るか迷う。もしかしたら動画の続きが見られるのかもしれない。

 

 もう、終わったんだ。だったら見ても見なくても一緒だよ。と思いつつもメールを開いてしまう。

 

 “今すぐ連絡してくれ。直ぐにだ。○○○-○○○○-○○○○“

 

 電話番号? 

 

 何なんだよあいつは。これ以上僕を苦しめてどうするつもりだ。動画じゃなくて直接絶頂の瞬間を聴かせるもりか。

 

 学校の中は静まり返って、周りには誰もいない。

 

 背中を反らせるほど大きく息を吸い。

 

「はぁ────ー」

 

 背中を丸めるほどに吐き出す。

 

「ふぅ~~~」

 

 意を決して電話をかけた。

 

 プルルルル……

 

 ピッ! 

 

「橋田か! 橋田だな!」

 

「な、何ですか……今更……」

 

「今すぐ○○駅の公園まで来い。△△病院の前にある公園だ。今すぐ!」

 

「何で行かなきゃならないんですか。もう関係ないでしょ」

 

「関係あるから電話してるんだよ。後悔したくなかったらすぐに来るんだ。何分で来れる?」

 

「後悔って何ですか……そ、その駅なら30分くらいで……」

 

「じゃぁ30分だな! 待ってるからな! 走ってこいよ!」

 

 ピッ! 

 

 一方的に話して、一方的に切りやがって……

 

 しかし後悔って何だよ。これ以上後悔することなんてないよ。

 

 今更僕を呼び出してどうするつもりなのだろうか。

 

 寝取られ同人誌のように、目の前でイチャイチャしているところを見せつけるつもりか? 

 

 やっと心が回復してきたのに、また地獄に落とすつもりなのだろうか。

 

 僕の中のわだかまりが残っているのは、彼女の中に少しでも僕を思う気持ちが残っていてほしいから……だろう。

 

 だったら、最期の引導を渡された方が楽になれるのか……

 

 ◇

 

 指定された公園に向かうと、上山が1人で立っていた。2年ぶりに見る姿は教師の時と変わっていない。

 

 僕を見つけると、すぐさま駆け寄ってきて、恐れるあまり先に声を上げた。

 

「ぼ、僕を笑うつもりですか。てっきり、み……柊さんと仲良いところ見せつけられると思ってましたよ。はは……ははは……」と引きつった笑いが出てくる。

 

 どんなに虚勢を張ろうとしても、そもそも小心者の僕が強がることなんてできない。

 

「何言ってるんだお前は。それより何で柊と別れたんだ」

 

 こいつは僕から奪っておいて何を言ってるんだ。お前がいなければずっと付き合っていたはずなのに。

 

「何で別れたって……翠がお前を求めたからじゃないか! 僕じゃなくお前を選んだんだろ!!」

 

 今まで発したことのない大声を出して威嚇する。

 

 上山は意外そうな顔で僕を見ていた。

 

「バカ言うなよ。お前が寝取らせて、ヤらせたんだろ? まぁ……とりあえず座れ」とベンチに誘導される。

 

 こんな暑い中になんで公園なんかに呼ぶんだよ。せめて喫茶店とかファミレスとかあるだろ……

 

 上山はまるで教師のように、僕の方を見て、落ち着いた声で話す。

 

「橋田。お前から別れてどうするんだよ」

 

「確かに僕から別れた……でも本当に寝取られるとか、僕を嫌いになるなんて考えてもなかった」と言って睨みつける。

 

 彼は僕の言葉を聞き終わっても、僕を見つめている。

 

 そして一呼吸おいてから上山は言った。

 

「いいか。柊はお前を信頼しているから寝取られていたんだ。俺は聞いたんだよ。お前はどんなことがあっても、好きでいてくれる。お前が喜ぶから寝取られて、自分の性癖も満たされる、ってな」

 

「そんなこと言われたって……実際にあの動画じゃ……」

 

 僕の言葉を遮って言ってきた。

 

「柊は橋田の信頼があるから寝取られていたんだ。お前は寝取られの性癖。柊は背徳感の性癖。2人が補完できる性癖だから俺は……俺の性癖も出てしまったんだ。いいか! お前たちが、俺が仕舞い込んでいた性癖を出してしまったんだ。だから俺は柊を脅してまで……ヤッたんだよ。まぁ俺も悪いんだが……」と言って悔しそうに話している。

 

 僕から寝取ったくせに何言ってるんよ……

 

「俺にも昔は愛する女性がいたんだ。でも俺は、性癖が拗れて別れることになったんだよ」

 

 上山は自分の話を続ける。

 

 ◇

 

 俺は昔は真面目な教師だった。

 

 生徒に教えるのがが1番の楽しみで、日々成長する姿は本当に嬉しかった。

 

 今から10年前……2年生の女生徒から呼び出されて、結婚してほしいと告白された。

 

「いきなり”結婚してくれ”だぞ。できるわけがないだろ」

 

「か……上山に惚れる女がいることが……信じられないよ……」

 

 憎まれ口を叩いても全く反応がない。

 

 もちろん先生と生徒だ、結婚どころか付き合うことも出来ない。

 

 だから断ったよ。

 

 彼女の顔がみるみる暗くなって、泣きながら帰っていった。

 

 突然告白されたって相手は高校生だ。教師としてはどうしようもない。

 

 でも次の日には明るく、いつも通りに挨拶してきたよんだ。

 

 もう俺のことをあきらめたと思っていたが……

 

 そして数日たった後にもう一度呼び出されてな。

 

「高校を卒業したら考えてくれますか?」って言われた。

 

 そりゃあ“考える“とも言えないよ。ただ期待させるだけで終わったら彼女の数年間が無駄になるし、俺だってその子の将来を支える自信なんてなかった。

 

 そりゃあ考えないことはないが、高校生の心なんてうつろいやすい。すぐに他の男を好きになると思っていた。

 

 だから曖昧な答えをしたんだ。

 

 それから1年半。俺を見る彼女の目が恋する瞳だとは気づいていたが、教師と生徒の壁は破らなかった。

 

 そして3月1日の卒業式に、また告白されたんだ。

 

 だから彼女の両親に事の経緯を話して了解を得たよ。ただし付き合うわけじゃなく、友達として付き合うだけだ。

 

 彼女も、彼女の両親も俺の先生の顔しか知らないから、俺の人となりを見極めてほしいと言った。

 

 それから2年くらいは健全な関係を築いていたよ。

 

「週末には家に行って食事したり、出かけて映画見たり。卒業したと言っても元生徒だ。簡単に手出しはしないよ」

 

「み……柊さんには手を出したくせに……」と言って睨みつける。

 

「それは置いておけ。話を続けるぞ」

 

 彼女の前向きな姿勢と明るい性格に“好意“が“好きな気持ち“に変わっていくのが分かったよ。

 

 料理なんてしたことない女性だったから初めは下手でな。でも母親から毎日教えてもらって、少しずつ上手くなって。

 

 努力している姿は本当に可愛かった。

 

 本気で愛するようになっていった。俺を支えてほしいって思ったんだ。

 

 そして彼女の20歳の誕生日に結婚した。

 

 幸せな夫婦生活だった。

 

 彼女も働きながら、家に帰って料理の勉強もしていたんだ。

 

 子供を作ることも考えたが、彼女は30歳くらいまでは働きたいって言っていた。

 

「ただ……彼女の職場で……事件があってな」

 

「事件?」

 

 結婚して4年目くらいに、仕事先の飲み会でセクハラされたんだ。

 

 胸を触られ無理やりキスをされて。同僚が止めていなきゃ本当に犯させていたかもしれない。

 

 泣きながら謝ってきたよ。でも彼女は全く悪くない。

 

 俺は怒ることなく許した。傷ついた彼女を支えようと優しく接していた。

 

 でも気になったんだ……

 

 彼女が胸を揉まれた時の顔。

 

 キスされた時の舌使い。

 

 どんな気持ちだったか。

 

 本当は感じたんじゃないか。

 

「それを聞いたとき、俺に見せたことない姿を見たいと思った。思ってしまったんだ。橋田も経験あるだろ?」

 

 確かに翠が誰かに抱かれている姿はいつも想像していた。僕に見せない姿。それが気になって疑似寝取られプレイをしていたんだ。

 

「…………」

 

 それでも我慢したよ本当に愛していたからな。

 

 でも立たなくなった。性欲はあるが、セックスをしている時に中折れしてしまう。

 

 俺じゃない男を求める姿。

 

 他人と嬉しそうにキスする顔。

 

 俺の近くにいるのに他人を求める心。

 

 そんな想像しかできなくなっていく。

 

 想像すればするほど、立たなくなっていった。

 

 それが1年くらい続くと“私は魅力がないから立たないの? “と泣きながら打ち明けられた。

 

「1年間毎日セックスしても彼女で行くことが1度もなかったんだ」

 

「そんなことって……」

 

 俺も本心を話したよ。でも話しちゃいけなかったんだ。

 

「他人とセックスしているところを見てみたい」

 

 そう告白している時から俺は勃起していた。それを彼女も見ていたんだ。

 

 インターネットで調べると、スワッピングサークルを見つけた。

 

 そこで、1回だけ他人と寝てほしいとお願いする。

 

 彼女は嫌がったが、お願いするだけで俺が勃起していることに気付いたんだ。

 

 しぶしぶ、1回だけならと了承してくれた。

 

 録画も録音もしないで、彼女からの告白を聞くだけの寝取らせだ。それでも興奮しすぎて何度も求めていた。

 

 彼女は”ごめんなさい”と言いながら、俺は”悪いことはしていない”と言って慰める。

 

 それでも彼女かから聞かされる行為は、今までにない興奮だった。

 

「でもな……性癖は……満たされることは無いんだ。始めは興奮したが、その興奮にも慣れてくる。橋田も……一緒だろ?」

 

「それは……」

 

 違うと否定できない。

 

「まぁいい」

 

 そして1回だけのつもりが2回3回と回数も増えていった。

 

 1回目は、ただセックスするだけだったが、2回目はそれだけじゃ満足できなくなる。

 

 他人に見られながら行為をさせる。

 

 複数の男に廻される。

 

 俺の目の前で行為をさせる。

 

 もっと凄いことを。

 

 まだ見てない姿があるのかと。

 

 さらに淫らな姿を見たいと……要求していった。

 

 彼女も求めていると……思っていたんだ。

 

 そして……ゴム無しで”しか”しなくなった。

 

 安全日を選んで中出し。

 

 次には安全日を避けて複数人からゴム無し。

 

 次には排卵日ギリギリに中出し。

 

 そして……結局妊娠した。

 

「全く知らない男の子供を身籠った。バカな俺はそれにも興奮していた」

 

「妊娠して興奮だなんて……」

 

 もちろん下ろしてくれると思っていた。これは寝取られ”プレイ”だから……

 

「だって俺の子じゃないんだぞ? でもな。妊娠していることが判ったら……相手の男に情が移った」

 

「情が……移った?」

 

 簡単に言えば俺を好きじゃなくなったんだ。俺にとっては”プレイ”だったが、彼女にとってはプレイじゃなくなっていた。本気になっていたんだ。

 

 そして俺とは別れてそいつと再婚したよ

 

 俺には寝取られの性癖があったが、彼女には無かった。

 

 それが普通だよ。世の中の一般的な男女は寝取られ性癖なんてクズのすることだ。

 

 それでも本気で愛する妻を失ったら……

 

 精神を病んで教師を辞めた。

 

 ◇

 

「1年ちょっと休んだよ。その後にやっと復帰だ。でも復帰はしたが”トラウマ”を抱えるようになった」と言って心臓を指さす。

 

「トラウマ?」

 

 寝取られを失敗してトラウマになるだなんて……本当に好きならあるのかもしれない。

 

「あぁ、制服を着た女性に興奮するトラウマだ……」

 

「じゃぁ盗撮したのは……」

 

「あぁトラウマが原因だ。なんて言い訳だがな……」

 

 確かにそれは言い訳かもしれないけど、性欲が抑えられない気持ちも分かる。僕だって本当に寝取られてほしいとは思ってないけど、それを求めていたんだ。

 

「だからと言って性欲に従順だったわけじゃない。自分である程度は認識していた。ただ抑えが利かなくなる自分にも気付いていた。だからその時に教師を辞める準備をしていてな。放課後や休日はマッサージの勉強していた」

 

 じゃぁ、その時に僕たちが……

 

 僕が目を見ると、上山は逸らして下を見る。

 

「そしてお前たちに盗撮を見つかった。でも元々資格持っていたからな。少ないながらに蓄えはあったし、足りない分は校長から借りてマッサージ店を始めたんだ」

 

「なんでマッサージ店なんか……女性を……手籠めにするためなのか……」

 

「馬鹿かお前は。そんな漫画みたいなことあるわけないだろ。マッサージ店の客は制服を着た女生徒は来ないだろ? じいさいばあさんか中年だけだよ。 俺の知識と経験を活かせて、性癖も出ない最適な仕事だった」

 

「柊が来るまではな」と言って僕を睨みつける。

 

「み……翠が……来るまで?」

 

「俺はお前たちに盗撮がばれた経緯もある。だから真面目に教えていたし、柊もまじめに勉強していたんだ。ただ……」

 

 確かに翠は楽しそうに勉強していた。呼び捨てだった上山を”先生”と呼ぶほどに信頼していた。なのに何でこんな奴に寝取られたんだ。

 

「ただ?」

 

「柊に相談された。お前の寝取られ性癖について……」

 

「え! 僕の性癖の相談?」

 

「もちろん橋田の性癖とは言わなかった。ただ……自分の彼の性癖とは普通言わないだろ?」

 

 確かに言いにくいのかもしれないけど、なんで上山になんか相談したんだ。

 

「…………」

 

「何度か相談に乗った後に言ってしまった”先生には言いにくいけど、それなりに受け入れてるから”ってな」

 

 別れた奥さんは寝取られ性癖を受け入れられなかった。

 

 それが目の前にいる柊は受け入れていると言った。

 

 寝取られを求める僕。

 

 その性癖を受け入れている翠。

 

 制服を着た女性の性癖を持った上山。

 

 それですべての性癖が補完できた。

 

「それを聞いた時点で俺の性癖は抑えられなくなった。全てが上手くいくんじゃないかって」

 

 そんなに簡単に上手くいくのだろうか。翠だって寝取られに行っていた訳じゃないし、一度は断罪しようとしてた男に体を許すのだろうか。

 

「俺だって寝取って奪おうとしたわけじゃない。何度も確認したんだ”本当に橋田は柊と別れないんだな”って。何度も何度も確認したんだよ。それだけじゃない。お前に動画を送った後に、柊はお前のパソコンで動画を確認しているんだ。1本目も2本目も。お前はそれを見てオナニーしてたんだろ。柊には言わずに……」

 

「え……僕のPCの動画を……見てた?」

 

「あぁ、”携帯に送った動画をPCに保存して楽しんでいるみたい”って言っていたよ。”だから私も楽しめるのかも、ってな」

 

 そんな……だって……もう寝取られはしないって……

 

「楽しめるって……あ!」

 

 そうだ。

 

 その後に“私も寝取られしたかったんだ。でも我慢するの止めるね“って言っていた夜に僕のPCを見ていた……

 

 僕が本気の寝取られを求めていることを、その時に確認したんだ。

 

 3人の性癖がパズルのピースのように一致した。

 

「お前は“別れない“って約束したんだろ? 何でお前から振るんだよ! 寝取らせたくせにお前から別れちゃダメだろ!」

 

「そんなこと言われたって……動画の翠は……上山に……あんな目で見つめて……」

 

「諦めるなよ! 好きなんだろ? まだ好きなんだよな?」

 

 嫌いになれるわけがない。

 

 僕を偏見の目で見ることなく優しく接してくれる心。

 

 頼りにならない僕に寄りかかる姿。

 

 前向きな行動。

 

 僕にしか見せない笑顔。

 

 クールな姿で甘えるギャップ。

 

 全部忘れることなんてできないよ……

 

「す……好きに決まってるだろ! 諦めなんてつかないよ! だとしても……もう遅いよ……僕は彼女を振ってしまった。彼女はお前を……好きになったんだから……」

 

「何を言ってるんだよ……柊は未だにお前を愛して苦しんでるんだ……」と肩をギュッと掴んできた。

 

 そんな訳がない。だって、どんな本を読んだって、寝取られたら終わりじゃないか。僕を好きにいることなんて……ないはずなのに。

 

 涙が溢れ。

 

 手が震え。

 

 全身に悪寒が走る。

 

「そんなこと言われたって……あぁぁぁ……どうすれば……翠は……どうしてるんですか……ここには来ないんですか……」

 

 上山の袖に縋り、引っ張る。こんな奴にしか頼れないと判ってても言わなきゃならないんだ。

 

「お願いです、翠に……翠に謝りたい」

 

 許してくれるかはわからないけど、彼女に会って心の内を話してほしい。僕の気持ちも話したら戻ることができるのだろうか。

 

「近くにいるよ……」

 

 と言って目の前の建物を見つめる。

 

 目の前の建物は……

 

「え……び、病院……」

 

「あぁ、目の前の病院にいるよ」

 

 血の気が引く。

 

 まさか目の前の病院にいるなんて。

 

 てっきり僕を笑っているのかと思っていた。

 

 上山と幸せにセックスしているのかと思っていた。

 

 まだ僕を好き? 

 

 そんなことがあるのか? 

 

 何で病院に? 

 

 何も理解できない。

 

 僕の理解の範疇を超えている。

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