奉仕しないと帰れない部屋に囚われた男の業務記録 作:dolph
部屋に囚われた男は、利用者がいなければ書斎にこもる。
利用者に合わせて頭の中で更新すべき情報が幾らでもある。特にターニャのような戦時下の利用者は注意が必要だ。間違った情報を伝えると生死に関わる。
しかし男の努力に関わらず、残念な事に不要となってしまった知識もある。男が読んでる書物もそんな知識の一つだ。ふと思い出し、気紛れで手に取った。とある魔法使いの手記だった。
書斎に所蔵される書物には条件がある。それは一定数以上の読者がいる事。もしくは時の試練を潜り抜ける事。
出版物はほぼ自動的に前者の条件を満たす。印刷技術が発展していない世界だと必然的に後者の書物が多くなる。
男が読む手記は後者だ。一度読んだので内容は全て覚えている。最初の数ページを捲って記憶に間違いがない事を確かめ、鐘が鳴った。
利用者の訪問を知らせる鐘である。
物理的に空気が振動して鳴る音ではなく、頭の中で響く音。そのため、熟睡していても起きてしまう。
寝てる時に起こされるのは忌々しいが、あるべきところへの帰還が近付く福音でもあった。
男は手早くベストを身に着け、燕の尾のように後裾が長いジャケットを羽織る。読み掛けの手記はほったらかしだ。放置しても勝手に元あった場所へ帰っていく。
男が書斎を出ると手記は独りでに宙に浮き、本棚に戻った。手記の著者は「フランメ」とあった。
▼
応接間の白いドアが輝き、ゆっくり開く。
男からはドアの向こうが見えない。暗い時があれば眩しい時もあり、朧に霞む事も鏡面になっている事もある。
鐘の音やドアの向こうの景色から来訪者を識別することは不可能であるため、誰であっても良い様に油断はしない。万全の態勢で待ち受ける。
ドアの向こうの誰かは、躊躇う様子を見せずこちらに踏み入ってきた。
「ここは何かしら?」
「ようこそお出で下さいました」
男は訪問者へ恭しく頭を下げる。見知った顔ではない。初めて訪れる女性だ。
一見して妙齢の美女。一番に目を引いたのは艷やかなピンク色の頭髪である。豊かな髪を幾つにも分けて編むのは大変そうだ。奇抜な髪色ではあるが、双子の姉妹なのにピンクと青の神秘を越える者は早々現れないと思われる。
髪を見たのだからその上も見える。彼女の側頭部から一対の湾曲した角が生えていた。これも驚くに当たらない。前述のラムとレムも角を持つ。男の身近にも角を持つ者がいる。
顔立ちは整っており、やや吊りがちな目が勝気な印象を与え、自分への自信を伺わせる。
体のラインを見せる黒いドレスは良い。とても似合ってる。しかしどのような意図があるのか、腹部の真ん中に菱形の大きな穴が空いて形の良いへそを見せている。へそを出すのだから肩も胸の谷間も出している。背が低いのでそれなりの大きさに見えた。白いスカートは裾が広がるのはいいとして、裾が太ももの半分より上に来てる。
まるで夜のお店に出勤途中のような装いだ。強気そうな顔立ちといい、おじさまにおねだりするのが得意そうである。
そこまで観察して頭部の角に戻り、男は気付いた。
そうか、サキュバスだ!
彼が知るサキュバスと違って背に翼はないが、それくらいは誤差と判断した。
彼女は嫣然と微笑み、おもむろに天秤ばかりを取り出した。
「決めたわ。あなた、私に従いなさい」
「出来うる限りご要望にお応えします」
男が彼女を観察していたように、彼女も男を品定めしていた。
優雅に佇む男からは全く魔力を感じない。均整がとれた肉体をしているようだが戦士の体ではない。強くはないだろう。
しかし、造形が非常に整っている。色合いも良い。彼女の同族は皆整った容姿を持つが、ここまでは見当たらない。飾っておくだけで楽しめる。
栄養状態も良さそうで、血肉は美味に違いない。食べてしまうと容姿を損なうが、最低限の意思を残して苦しむところを鑑賞するのも悪くない。最後は頭だけ取っておけばよいだろう。
「
彼女が唱えるなり彼女の胸から黒い炎が浮かび上がり、天秤の片側に乗った。
男の胸からも炎が浮かび上がる。白く沸き立ち、輪郭が虹色に輝いている。彼女の炎とは天秤の反対側に乗った。
乗った瞬間、天秤は男の炎に傾いた。
十数秒の沈黙が場を支配してから、彼女が呆然と呟いた。
「な、なにが起こってるの? なんで? 魔力なんて全然ないじゃない。どうしてこんな……。ありえない……!」
「何が起こっているのか私にもわかりかねます。よろしければご説明願えますでしょうか?」
男が問いかけると、愕然とした彼女の様子が変わり整然と話し始めた。
「私の服従させる魔法が発動した状態よ。私の魔法は対象の魂と私の魂を天秤にかけ、魂が軽い方に重い方への絶対の服従を強制する。魂の重さは魔力量が大きく関わってる。魔力を全く感じさせないあなたが、500年生きた大魔族である私より魔力量が多いなんてありえない。一体何をしたの? まさか魔力を隠していた!?」
服従させる魔法の名の如く、彼女は男の質問に抗うことなく詳細に答えた。後半は彼女自身の言葉だろう。
「私に魔法の才能は皆無と太鼓判を押されていますよ。絶対の服従と言いましたが、どこまで服従させられるものなのですか?」
「それは……」
彼女は一瞬だけ口籠った。それが彼女の意思が彼女の魔法に抗えた全てだった。
「全てよ。私は服従させた対象の首を自ら落とさせてきたわ。優れた戦士だと意志の強さによって私の命令に抗う時がある。そうさせないために首を落とすの。首がなくても私には服従したままになる」
「へえ……」
男の呟きが、彼女には恐ろしくて仕方なかった。
生殺与奪を完全に握られた状態だ。彼の気分次第で、彼女が口にしたように首を落とされる可能性がある。今までの彼女はそうしてきたと言ってしまったばかりだ。
何故天秤が彼方へ傾いたのか、彼は魔力量を偽っていたのか。そんな事はどうでもよくなった。
今この場をいかに切り抜けるかが彼女の全てだ。
男が話した通り、男には魔力がさっぱりない。
しかし彼女は決定的に見誤った点があって、彼の意思は非常に固い。意に沿わない事は絶対にしない。意思の土台となる精神力は、激辛評価に定評がある極悪悪魔がその手で確かめ脱帽した。彼女の魔法が通っても、命令に抗われる可能性は非常に高かった。
そして実のところ、抗うどころか完全に無視できる。これは彼自身も、彼の真の主も知らない。真の主の主である偉大な魔法使いだけが知っている。他にない彼だけのユニークな特性として、探知系魔法に引っかからない。加えて精神操作系の魔法を無効とする。偉大な魔法使いはその特性を得るための条件が異常なほど厳しい事を知り、ぶち切れた事があった。
彼の特性が彼女の魔法を完全に無効化するのか、それともいつか支配されるのかはわからない。
その時は、彼が魔法の効果を感じた瞬間に彼女の体内にある最も太い神経線維の束に冷たい刃を押し当て、魔法の解除を迫るくらいはするだろう。力はなくても、剣の技量は抜群に優れている男である。
ここまでは天秤が傾いた原因と全く関係ない。
天秤が傾いたのは、彼がこの部屋に囚われているからだ。すなわち部屋の一部となっている。
もしも彼女がこの部屋を支配しようと思ったら、魔力量が今の千倍あっても足らない。彼女の世界の魔法使い全ての魔力量を足しても掛け合わせても乗算しても到底足りない。
見る者が見れば、彼女の行動は羽虫が羽ばたいて太陽を消し飛ばそうとするのに似ていた。
「なるほど。あなたは私の言葉に絶対服従する。抗う事は出来ない。そういう事ですね?」
「その通りよ。……ねえ、お願い、酷い事しないで。あなたを服従させても殺すつもりはなかったわ。とっても綺麗だったから飾っておくつもりだったの。本当よ、嘘じゃないわ」
「それが嘘でないのでしたら、どれが嘘だったのですか?」
「そ、れ、は」
「いや、結構。どうでも良い事です」
彼女は、殺すつもりがないのが嘘だったと告白させられる事無く、言葉を遮られた。
「私からの要求は些細なものです。このノートに名前をサインしてください。ここを訪問した証となる以外の意味も効果もありません。そうしたらそのドアを通ってお帰りを。それだけです」
「……そんな事でいいの?」
「ええ、但しここへは何度も訪問していただきます。ドアの鍵をお持ちですね? 鍵の使用条件を説明しますから、サインしたら帰る前にお聞きください。それ以外にもこの場での荒事を禁止します。ご安心を。私はあなたの安全をとても心配しておりますから。あなたを傷つけることはけして致しませんよ」
「本当に? それだけで?」
「ええ、勿論。私は嘘は吐きません」
自害させられるかと危惧したが、ノートにサインするだけでいいらしい。
そのサインを見て、男は絶妙に顔を歪ませた。彼女の名はアウラであるらしい。同名の方ととても親しくさせて頂いているのだ。
アウラはノートに記帳して、鍵の使用条件を聞き、白いドアを通って元居た世界に帰った。面白いものを見付けたと思ったら散々な目に遭ったが、命は助かった。
魔法で服従させるどころか服従させられたのはとても屈辱だ。週に一度通うのも面倒である。しかし、ノートにサインするだけで帰してもらえる。
屈辱で面倒でも、安全の対価と見るなら安いものと思った。この時は。
二度目の訪問で全てが狂った。
「あなたは魔族だそうですね。人を欺き、肉を喰らうとか」
「その通りよ。……だから私を殺すとか言わないわよね? この前私の安全を心配してるって言ったでしょ? 嘘は言わないのよね?」
「言いませんよ。しかしそうすると困るのですよ」
「私が人間を殺すから? でも私があなたを害する事は出来ない。魔法で禁じられている。何も心配する事ないじゃない」
「私の事ではなく、あなたの安全と言ったでしょう? 魔族は非常に脆弱な種族だ。このままだとあなたの安全に懸念がある」
「…………え?」
人間を殺すと言ったのを聞き流されたのが意外なら、魔族が脆弱と言われたのは屈辱だ。男が何を言っているのか、アウラにはわからなかった。
「魔族が人間と比べて優れたところは、魔法を使える事。肉体が頑強である事。寿命がない事。生きた年月に比例して魔力量が増大する、すなわち強くなる事」
「生きただけで魔力が増えるわけじゃないわ。私の魔力量が多いのは研鑽によるものよ」
「それはどうでもいい。しかし魔族には社会性がない。集団ではなく個の強さが全てだ。よって、未来がない」
「なんでよ。私が今までどれだけの人間を打ち破ってきたと思ってるの?」
「だから、そんな事はどうでもいい。魔族最大の問題は魔王が討たれた事だ。魔族で最強最大の個体が駆除された以上、現在の勢力がどうだろうと確実に衰退する」
「なんでそうなるのよ。魔王様は確かに死んだけど、力がある魔族は他にもいるわ」
「魔王に匹敵、或いは凌駕するのかな? いたとしても魔王の二の舞になるのは確実だ。ただの一魔族が魔王並みの力を得るのにどれくらい時間が掛かる? 駆除された魔王は何年生きた? 討ったのは勇者ヒンメルと聞いたが、その時の彼は幾つだ? 仮に三千年と三十歳としたら、人間の方が百倍の早さで強くなる」
「ヒンメルみたいなのが簡単に生まれてくるわけないわ」
「生まれたら百倍の早さで強くなって魔族は駆除されるんだよ。生まれなくても、人間には社会性があり集団としての強さがある。次の魔王が育つまで待ってくれるわけがないだろう」
「そうなる前に私が殺すわ」
「出来るわけないだろ。頭に泥でも詰まってるのか?」
「それはお前が私たちを知らないだけよ」
「結構。そういう事にしよう。だから、アウラ。お前は服従させた者たちを全て解放しろ。解放したら魔力を完全に隠し、隠れ潜め。そして鍵が使用可能になったらここに来い」
「な…………」
アウラには受け入れがたい命令だった。
アウラはかつて勇者ヒンメル一行に退けられ、ヒンメルが死ぬまで雌伏を余儀なくされた。ヒンメルの死と共に活動を始め、不死の軍勢を育て、現在攻略しているグラナト領へ王手を掛けた所なのだ。
「いいかよく聞け。お前は弱い。力じゃない、頭がだ。力をうまく使えないから、どうあってもお前の思う通りにはならない。力を振りかざして生きるのは無理だ。使い方を知らないんだから。お前に出来るのは虫のように隠れる事だけだ。あいつらは葉っぱや小枝に擬態して……。いや、魔族には人間に擬態する事も出来ないか。魔族は虫以下なのか……」
男が愕然として頭を抱えたが、頭を抱えて叫びたいのはアウラの方だった。しかし、服従させる魔法による命令には逆らえない。アウラは歯ぎしりをしてノートに記帳する。
自分の世界に戻ったら悔しさに震えながら魔法を解除し、自身の魔力を隠してその場を去った。
▼
アウラは翌週も異界の部屋を訪れた。
「アウラ、記帳したら帰れ。鍵の使用条件を満たしたらすぐに来い」
アウラはその翌週も異界の部屋を訪れた。
「アウラ、記帳したら帰れ。鍵の使用条件を満たしたらすぐに来い」
アウラはその翌週も異界の部屋を訪れた。
「アウラ、記帳しろ。今どこに住んでる? そこは人里が近い。移動しろ」
アウラはその翌週も異界の部屋を訪れた。
「アウラ、記帳しろ。移動したか? そこは駄目だ。早ければ三十年。遅くとも八十年後には開拓が始まる」
「……八十年後の事なんて人間のあなたが気にしても仕方ないでしょう?」
100まで生きる人間は稀だ。アウラの前に立つ男は人間だ。アウラは至極尤もな事を言ったのに、男は意外な事を言われたように目を瞬かせた。
「そう言えば話したことはなかったな。俺は偉大なお方から老いぬ体と尽きぬ寿命を授かった。でも不死じゃない。ああ、いや、一度死んだことがあったか。それでも億年や兆年は生きないだろう。いつかは死ぬから安心していい」
「………………なによ、それ…………」
億年や兆年どころか、万年生きた魔族もいない。
アウラが今日まで男の命令に従ってきたのは、魔法によって逆らえなかった事だけではない。人間の男はいつか死ぬからだ。
ヒンメルが死ぬまでの五十余年を耐え忍んできた。この男が死ぬまで耐えればいい。そう思ってきた。
その希望が、今潰えた。
「ふざけないで!」
「巫山戯てないよ。嘘は言わないと言っただろう。それより早く記帳して帰れ。俺の忠告を忘れないように。鍵の使用条件を満たしたらすぐに来い」
アウラは絶望した。
毎週異界の部屋を訪れ、記帳だけして帰る。
人間が訪れる事も訪れた事もない辺境で暮らしているものだから、鍵の使用条件を満たす閉鎖空間を見付けるのも一苦労だ。洞穴があったら入り口を布で覆って場所を作る。洞穴すらない時は大きな穴を掘り、上を覆う。
人間を殺すどころではなく、その日食べるものに苦労する事もあった。
惨めだった。
500年生きた大魔族であり、魔王が生きていた頃は直下の七崩賢として尊崇を集め、魔王亡き今も力ある大魔族として不死の軍勢を従えていたと言うのに。今や手を泥で汚して穴を掘っている。
屈辱だった。
力を振るう機会を全く得られず、生きている意味がわからなくなった。
しかし、自死は選べない。魔族の本能が、どれほど惨めで屈辱に塗れていたとしても、それだけは選ばせない。
男の言葉に従って、ノートにサインするだけの存在に成り下がる。
「ねえ……もういいでしょ? これからもここに来るし、ちゃんとサインする。だから私を解放してよ。解放されてもあなたに危害は加えない。ここにも来る。あなたに不利な事はないはずよ」
アウラの顔には必死の色があった。
体中のそこかしこに泥汚れがあり、手指は爪の間に泥だか砂だかが詰まっている。それでも衣服に解れがないのは魔力で構成しているものだからか。
「そうだな……」
男は考える様子を見せた。
今のアウラと初めて会った時のアウラを比べると、幾分やつれたように見える。やはり魔族は文明的な生活を送ることが出来ず、野生動物のように野山を駆け回ることしか出来ないのだろう。
衣服だけは綺麗なのだが、それを着るアウラ自身は薄汚れている。とても惨めで同情を誘う姿だ。
「わかりました。解放しましょう」
「本当!?」
アウラがこの部屋を訪れるようになって初めて、声に喜色を滲ませ明るい顔を見せた。
これだけ喜ばれるなら、男も言った甲斐があったと云うものである。
「それじゃアウラ」
「ええ!」
喜び勇んで応えるアウラは、当然のように約束を守るつもりはなかった。
この男を殺せれば最高だが、得体の知れないこの部屋で出来るかどうかわからない。優先すべきは逃げる事だ。服従させる魔法が解除されたら、即座にこの部屋を飛び出て鍵を壊す。壊せなければ捨てる。二度と来るつもりはない。
ヒンメル一行に退けられた時も逃げたのだ。逃げる事を恥だとは思わない。生きることが、そして自由になることが何よりも優先される。
「ノートに記帳して帰れ。鍵の使用条件を満たしたらすぐに来い」
「え……?」
それは今までに何十回も言われて来た言葉。服従させる魔法を解除する言葉ではない。
「解放するって言ったじゃない! 嘘は言わないって言ったじゃない! なんで!? ふざけないで!!」
魔族は人間と情動が違う。人間から見れば欠落したものが多い。そんな魔族が声を荒げるのは、とても珍しい事だった。
「勿論嘘は言いません。確かに解放すると申しました。但し、実行するとは申しませんでした」
「…………」
「嘘は言ってないだろう? それなのにどうしてそんな風に叫ぶ? 解放されると期待したのか?」
「…………」
「魔族について書かれた手記を読んだよ。そこには『魔族は言葉で人を欺く猛獣』とあった。しかしこれは嘘だな。騙すにはそれなりに頭を働かせる必要がある。頭に泥が詰まってる魔族じゃ無理だろ」
「…………」
「ほら、早く記帳して帰りなさい。そしてまた来るように」
「………………ふざけるなぁ」
アウラは顔を歪め、震える手でノートにサインした。
どうして自分の魔法は服従させる魔法で、この男を殺せる魔法ではないのか。
500年生きて初めて自分の魔法に疑問を抱いた。
▼
アウラは怒りと屈辱で死にそうになっているが、そうさせている男はとても機嫌が良かった。
魔族と同じように、この男にも全く悪意がない。とも言い切れない。サキュバスだと思ったのに全く違う種族で、落胆させられたのは確かだ。それが影響して少々強めの言葉になった可能性は否めない。それでもアウラの安全をとても気に掛けているのは本当だ。
その点、魔族であるアウラは体が丈夫で環境が厳しくても生存可能である。唯一の懸念が人間たちに所在を知られ、討伐隊を組まれる事だ。それも人間の生存圏から離れたところで生活させることにより解決した。
とても手が掛からない優良な利用者である。サインだけして帰ってくれることといい、毎回二人で来てくれるラムとレム以上かも知れない。
アウラの利用だけで五回は帰還できた。これからもずっと通い続けて欲しいものである。
しかし、好事魔多し。ノートに警告文が浮かび上がった。
注意であれば無視をする。しかし警告とは、破ればペナルティがある事を意味する。
アウラはとても楽が出来たのに、接し方を変えなければならないようだった。
しかし、頭に泥が詰まった魔族である。そもそも生物であるのかどうかすら疑問だ。そこから調べる必要があった。
あとちょっと泣きます