奉仕しないと帰れない部屋に囚われた男の業務記録 作:dolph
次があったら断頭台を外します
魔族はその生態故に社会性がない。しかし、皆無ではない。
アウラ自身が魔王に仕えていたように、魔王亡き後のアウラが三体の魔族を従えていたように。魔力量だけで強いる一方的な関係であっても他者と関係を持つ事はある。
曲がりなりにも築いた小さな社会から他者との関係を学び、最適なものを選ぶのは人間と同じである。基本的に群れない魔族には必要性が薄いと云うだけで。
部屋に囚われたアウラも学んでいる。早急に把握する必要があったのは男の危険性だ。脈絡なく叩かれたのを覚えていれば、手品か魔法のように突然短剣を突き付けられたのは忘れられない。以降の付き合いから粗暴なところはなく、先の暴挙も必要あってのものと説明された。必要がなければ暴力を振るう事はないようだ。
服従させる魔法が逆転した事で男の命令には絶対服従を強制される。しかし、利用者に関すること以外で命令される事はない。
利用者に関すること以外ではかなりの自由を許されるし、何かを頼めば聞いてもらえることもある。『ちゃんと聞いた。叶えるとは言ってない』とは言われない。断られる時はそもそも不可能であるか、時間がない時くらいだ。
はっきり言って一利用者であった時よりも遥かに優遇されている。そして本来の利用者たちをどのように持て成しているか知れば、自分の扱いは何だったのかと頭にくる。残念ながら最早どうにもならない。
やはり何度考えても大魔族である己が、魔力が全くないこの男の下にいるのはおかしい。理不尽である。これがターニャやラムだったら諦めがつくが、魔力皆無なのを常に見せつけられると行き場のない思いが溜まってくる。自分が上であの男が下であるのが正しい形であるべきだ。しかし、自分の魔法でありながら服従させる魔法を解呪する方法がわからない。わざわざそんな事を研究する意味がなかった。わかったとしても術者にして被術者でもある自分がどうにか出来るとは思えない。
ならば魔法が関わらないところで上下関係を築けばいい。
アウラは、ここを訪れる利用者たちからヒントらしきものを見出した。答えは薄っすらと輪郭が浮かんできただけで姿は見えない。しかし、答えは絶対にあると確信していた。男が利用者に関すること以外で唯一命令した訓練はその手掛かりである。
▼
「それ、いつもするわね。犬みたいよ? あんたにピッタリじゃない」
訓練で男が始めにするのは、アウラの首筋に顔を埋めすんすんと匂いを嗅ぐことである。
「これをしないと不安なんだよ」
「匂いで私を確かめてるわけ? ますます犬みたい」
「どう思っても結構」
「あっそ」
アウラはふんと鼻を鳴らす。
様々な経験から学んできた男は余計な事を言わなかった。
「今日も良い匂いがしてるよ」
「当然でしょ。お風呂入ったばかりじゃない」
「……そうだな」
そのお風呂にアウラを初めて入れた時の事である。野暮らしだったアウラは、まさに獣臭を放っていた。応接間に無臭の魔法が常時発動していなければ数日間は残ったと思われる濃い臭い。幾ら姿かたちが整っていても、臭いがあれではどうにもならない。
風呂に入れて入念に洗って粗方の臭いは取れたが、体臭とは文字通り体から湧いてくる臭いだ。大元の体をどうにかする必要がある。そこをどうにかするのが食事だ。体は食べたもので作られる。
野生動物がライバルであったアウラにそんな事を気に掛ける余裕があるわけがなく、食べられるものを食べて生きてきた。知りたくもないので男は聞いていないが、上等な食生活でなかったのは確かだ。美味しいものが食べたいと泣いて、美味しいものを食べて泣いたくらいなのだ。
そこを劇的に改善し、肉食ばかりなので果物や香草を多めに食べさせ続けた。
そうして不快な臭いが消え、良い匂いになって、好みの匂いになりつつあるのが今のアウラである。
「で、この訓練って何の意味があるわけ?」
「何度も話したのを忘れたのか?」
「覚えてるわよ。でも実感が全然ないわ」
「まずは健康のため」
「ここでご飯食べてれば問題ないんじゃない?」
「次に皮膚感覚を鋭敏にするため」
「そこがわからないわ」
訓練と言っても、内容は男がアウラに施すマッサージだ。アウラの体を緩急つけて圧し、撫でていく。
始めは喉元から鎖骨に沿って肩まで撫でる。アウラは背中を男の胸に預けているので、男の右手がアウラの左側を、左手が右側を。後ろから抱き着いているようなものだ。
「後半になると違ってくるのがわかるだろ?」
「あんなところを触れば当然じゃないの?」
外部から刺激を受ければ体は反応する。風呂で洗われた時はそうなった。アウラはそれと大差ないと思っている。
「単に触るのと順序良く触るのは違うし、その前に準備すると更に違う。アウラへの訓練は準備段階だな」
「ふーん。で、私の魔法の効果的な使い方って何だったの? この前ターニャ様と笑ってたでしょ」
話が脈絡なく飛ぶ。こう言うところは魔族であっても女であるらしい。そして魔力量が自分より上だと自然と敬称をつけるのは魔族らしい。
「服従させる魔法の事か? あんなの間諜一択だろ。対象が死んでも支配できるのは大したものだが、どうしてそれしかやらないんだ」
「間諜? スパイってこと? そんなの何に使うのよ?」
「……それだからターニャ様から平和な世界の平和主義者と言われるんだよ。ここに来る前はグラナトと云う領地を攻めてると言ったな?」
「あんたのせいで台無しになったけどね」
鎖骨の下の次はアンダーバスト。乳房の膨らみには触れず、乳房の曲線に沿って撫でていく。今度は左右逆転だとやり辛い。右手は右を、左手は左を担当する。
「対象は誰でもいい。魔力も何もない一般人が最適だ。それを使って領内の内情を探る。同時に別の人間を外へ誘導し、それにも魔法を掛ける。一日十人に掛けられたら一年で三千人以上だ。それだけの人間が領内で暴れたら大混乱に陥るし、いざとなったら人質にもなる」
「……でも戦士としては役に立たないわ」
「お前ら魔族は決闘病にでも掛かってるのか?」
「勝てば何でもいいわけ?」
「当たり前だ。それとも魔族は人間と戦争のルールでも定めてるのか?」
「そんなのあるわけないじゃない」
「なかったから魔王が駆除された後の魔族はすり潰されるしかないわけだ」
「……本当にやな奴」
「お前は語彙がないな。魔力の鍛錬より読書を勧める」
「余計なお世話よ」
アウラの語気が荒くなってきたのは、マッサージの効果で血行が良くなってきたのもある。湯上りなのでいつもより効果が出ているようだ。
それに口調程怒っているわけではないらしい。体からは力が抜けて、男に委ねきっている。
「それは失礼。さて、準備の準備はこれくらいでいいだろう」
「んっ……。理由を付けたところで、どうせあなたが触りたいから触ってるんでしょ?」
今日のアウラは執拗に念を押してくる。彼の方とお会いした事で聊か不安定になっているのかも知れない。大魔族なのにどうなんだと思わなくもないが、500歳程度ではあの方からすれば子供だろう。
それに、こうなった女性の言葉を否定していい事は何もない。男にあえて否定する理由もない。
「なっ、なによっ」
男はアウラの髪をかき上げ、落ちないよう尖った耳に掛ける。
匂いを嗅いだ時のように顔を近付け、今度は耳へ唇を寄せた。
「俺がアウラに触れたいからだ。隅々まで触らせてもらう」
「そっ……、そう。好きにしなさいって言ったわ」
声が掠れたのは耳元で囁かれた声がこそばゆいからだ。突然耳をくすぐられたら驚くのは当然だ。それ以外は何もなかったと、アウラは自分で自分を確認した。
内面から戻って来れば男に触られているのがわかるし、触られている部分も見える。
男の手が、アウラの乳房を包むように触れていた。
「今日は効果がわかるところまでするか」
▽
魔族の体は魔力で構成されている。それが顕著に現れるのが生まれる時と死ぬ時である。それ以外は通常の生物と変わらない。精神ではなく肉体の事だ。
何も食べなければ腹が減って飢えるし、怪我をすれば血を流す。痛みを感じる。快不快も感じる。汗や涙等の生理反応もある。肉体の反応は人間と同じであり、程度の差は個人差と言って差し支えない。
泥が詰まった風船人形ではないらしい。本魔族も強くそう主張した。
タワシにも等しいスポンジでゴシゴシやっても平気だったので非常に鈍感な可能性を危惧していたが、訓練の効果はきちんと出ている。丈夫だから鈍感なわけではないようだ。
「腕や背中をする時もあるけど、胸はいつも触るわよね。胸が好きなの?」
「好きだね。アウラにも好きになってもらうための訓練だ」
「悪いとは言わないわ。でも頭をマッサージしてもらった方が良いわね」
男の手指はアウラの乳房を下から掬うように、けども触れるのは指先だけで乳房の形をなぞるように撫でている。
刺激は弱くとも胸を触られているのに、アウラの言葉に艶めいたものはどこにもない。生殖活動をしないため性欲がなく、社会性がないので羞恥心が死んでるだけはある。
「そんなに気に入ったのか?」
「ええ。あなたにして貰ったのってあれだけじゃないかしら?」
「髪も体も洗ってやっただろう?」
「一人で出来るって言ったわよね? さっきも一人で入らされたわ」
「今度してやろう。俺の帰還を優先させてもらってる事だし」
「帰るのと引き換えなら一回だけじゃ割に合わないわ。十回にしなさいよ」
「それだと毎回になるだろうが」
「いいじゃない。頭を洗うなんてすぐでしょ?」
アウラは背が低く小柄で、必然的にアンダーバストが小さいので胸が大きく見える。
乳房に触れる面積が少しずつ増えていき、アウラが気付かない内に乳房がたわむようになってきた。そこまで至ると手指は撫でるのを止め、五指を広げて揉み始める。
撫でられてる時は力の強弱に気付かなかったアウラだが、揉むようになればさすがにわかる。しばらくの間、自分の乳房を男が揉むのを無言で見ていた。突然、凄い事を口走った。
「ターニャ様やラム様は揉むほどないわね」
男は一瞬硬直した。
「お前それ絶対に誰かの前で言うなよ」
「どうして?」
「アウラが死ぬからだ」
「絶対に言わないわ」
アウラに女性たちがおっぱいの大きさへ掛ける思いを教えても無意味だ。まず理解出来ない。しかし、発言の結果何が起こるか教えてやればきちんと覚える。
なお、この男はかつてアウラよりも酷い発言をしたことがある。迂闊に口走ると死を賜る事が確実視される内容で、周囲から必死になって止められた。その報いが時空を越えて飛んできたらしい。
「それよりも気付いてるか? 訓練を始めたばかりの頃じゃすぐにこうなる事はなかった」
「何の事よ?」
「わからないならわかるまでこのままだな」
試すような物言いが気に入らず、アウラは自分の体を見下ろしてすぐに気付いた。
アウラが着るのは、海夢がデザインだけを重視して選んだエロ系メイド服。被服面積の小ささと生地の薄さが特徴だ。透けはしないものの、体のラインを余すことなく外へ伝える。
普通に着ているだけなら注視しないとわからない。けども今のアウラは、男の指と指に挟まれた乳房の先端部に小さな突起を浮かばせていた。アウラの体感時間では昨日の海夢が同じようになっていた。
「乳首が立ったってこと? それくらいならお風呂で洗われた時も立ったじゃない」
「その時は直に触ったよ。今は服を着たままだし、乳首にはまだ一度も触ってない」
「そうだけど……」
乳房を掴む指と指の間が狭まっても、乳首には触れようとしない。下乳に触れて搾るように触ってきても、先端までは届かない。それどころか絞られて熱が溜まっていくかのようで、服の下で張り詰めていくのを感じる。
「だから何なのよ?」
「訓練の効果が出つつあるってことだよ」
「あっ」
左右どちらの手からも中指が伸びて、先端をちょこんと触れた。
触ったと思っただけで触ってない。中指の腹は乳首の上に乗せられているのに、触られてない。ベアトップの薄い生地を通して、指の熱だけが伝わってくる。
アウラは思わず胸を突き出したが、指との距離は変わらない。他の指は乳房を掴んだままなので変わりようがない。
「なっ……なによ、これ。前はこんなのしなかったじゃない……」
「今日は効果がわかるところまですると言っただろ?」
「ひゃっ!? くすぐったいじゃない!」
アウラの左耳は出したままだ。またも耳元で囁かれ、今度は軽く唇が触れた。エルフのように長くはないが、尖った耳がピクリと揺れる。
乳房はふにふにと揉まれ続け、中指はずっと乳首の上に乗っている。それが小さな円を描き始め、呼応して固く尖ってきた。
「で、胸の方はくすぐったいか?」
「くすぐったい、の? わからない……。もっとはっきりしなさいよ!」
今までの訓練では、乳房を揉まれることはあっても乳首を弄られる事はなかった。触られたのは風呂で洗われた時だけだ。その時と同じでくすぐったくはあるが、それだけとも言い切れないもどかしさがある。
「わからないのをわからせるための訓練だ。そろそろ教えてもいいかな」
「じゃあ教えて」
「口で教えるんじゃないよ」
「あっ!」
男はアウラのベアトップに指を引っ掻けた。締め付けてるわけでもカップが付いてるわけでもなく、立体縫製と魔法の力でアウラの乳房を包んでいたベアトップは、指一本でペロンとめくれた。
魔族の姿が優れているのは体もだ。支えられなくてもアウラの乳房はつんと上向き崩れない。
柔肌は透き通るように白く、染みや傷は一つもない。白いからこそ色づいた部分がとても目立つ。
「魔族は日焼けするのか?」
「急に何よ。しないわ」
「それでか。綺麗な色をしてるよ」
乳首は髪より鮮やかなピンク色。充血して尖らせた今は透明感を感じさせる。
服の下から現れたアウラの乳首は、アウラが驚くほどに固く勃起していた。こんなになるのは当然初めてだ。自分の体がこんなになる事を、アウラは知らなかった。
未知への警戒と、自分の体に自分も知らない変化を起こした男への警戒が首をもたげる。
「んっ」
乳房を直に触れられ、警戒が驚きに取って代わる。服の上から触られていたのとは何かが違う。それが温かさなのか感触なのかはわからない。違う事だけはわかり、さっきまで感じていたくすぐったいようなもどかしさが一層強くなった。
今度の触り方は上から親指が下りていき、下からは中指が下乳を滑って上がってくる。親指と中指で挟もうとしているものを、アウラは呆然と見守った。
「――っ!」
アウラは咄嗟に口を押えた。温かくて優しいと感じていたのに鋭い痺れらしきものが走り、声を出してしまいそうになった。
羞恥心が死んでるので、聞かれるのを恥ずかしく思ったわけではない。しかし初めての感覚を与えられ意図せずに声を出してしまうのは、何かに負けた気がしてならない。自分が上に立とうと思った矢先なのに、それでは敗北宣言を出すようなものだ。
そんなアウラを、男は不思議そうに見ている。
「誰かが聞いてるわけじゃない。声を抑える必要はないだろう?」
「あっ、あんたには、負けないんだからぁっ!」
「ふぅん?」
アウラが何を頑張ってるか知らないが、男はする事をするだけである。
親指と中指で摘まんだ乳首をくにくにと転がし、軽く引っ張る。その度にアウラはんっんっと喉奥で鳴き、体を固くした。湯上りだったので薄っすら上気していた頬は真っ赤になった。後ろから抱き着いているので体温が上がっているのを感じる。体温が上がったせいで甘い体臭が濃くなった。
今までの訓練はマッサージ止まり。愛撫まではいかなかった。
アウラがそれとなく訓練をねだるようになってきたので一歩進めたら、訓練の成果を十分発揮してくれた。
魔族なので恥じらいを見せず、加えて無反応だったらさぞつまらないと思っていたが、頑張って耐える姿を見せられると中々どうして悪くない。
毎日磨いてる柔肌は良い匂いがして滑らかで、自己申告したように揉めるくらいはあるのもいい。開発した甲斐あって感度は上々である。
「勝ち負けは関係ないと思うけどね」
「あっ! やっやめ……、くぅ……!」
好きにしろと言った手前、止めろとは言い難い。それに止めたい理由が負けそうだから、なんて言えるわけがない。
どうしてこの男は自分が知らない自分の何かを引き出せるのか。何もわからないままではいられないのに、聞く事も出来ない。
声を聞かせるのがなんとも悔しく、歯を食いしばる。耐え続ける内に得体の知れない刺激に慣れてきた。
不意を突かれると鳴いてしまいそうだが、口を押さえずとも声を抑えられるようになってきた。
荒い息を強引に抑え、上がりがちだった顎を前に向かせる。恐る恐る自分の体を見下ろせば乳首が痛々しいほど充血して尖っている。さっき見た時よりも酷い腫れようで、内側から何かが突き破って出てきそうだ。軽く触れるだけでも繊細に感じ取り、敏感に反応する。空気の流れすらわかる。
始める前と比べて、何かを変えられた確信があった。
「私に何をしたの?」
「何を、って。見ての通りだ。されてるのはアウラだぞ?」
それを言われるとその通りなのだが、自分にはわからなかった変化を、この男は予測しているように思えた。
「訓練の概略は最初に教えた通り。健康のためと、皮膚感覚を鋭敏にするため。効果を感じてるだろう?」
「ひゃんっ!」
乳房を撫でていた手が乳首を撫でる。口を押えていなかったアウラは、高い声を上げた。そして気付いた。
刺激に慣れたから声を抑えられるようになったのではなく、単に刺激が弱くなったから。
必死に声を抑えていた時は両方の乳首を弄られていたのに、今は右の乳房だけが撫でられている。左側は空いている。触れていた手はどこに行ったと探すまでもなく、意識すればお腹が温かい。
男の左手は短いスカートの内側に潜り、へその下にピタリと手のひらを当てている。注意しなければわからないほどに指先が絶妙に蠢き、全体ではゆっくり円を描く。
更に注意すれば、手のひらはショーツの内側にまで来ているのがわかる。激しくは動かないので気付かなかった。
「そんなところ触って何の意味があるわけ?」
「聞きたがりだな。俺が楽しいだけで十分だろう? それに今まで何回もしてきたんだ。効果は自分でわかるんじゃないか?」
「…………。あっ、ちょっと何するのよ!」
アウラが揃えて下ろす脚の間に、男の爪先が強引に入ってきた。それで男が脚を広げるとアウラの脚も開かされる。
「脚を閉じすぎ。そんなに緊張してるのか?」
「ちっ、違うわよ!」
言われるまで、ピッタリと太ももを閉じていたのに気付かなかった。開かされると同時に合わさっていた太ももの間に外気が入り込み、肌を冷たく撫でる。
「あっ!?」
開かされるだけに留まらない。
男の脚の間のに座っていたのに、脚を開き気味のまま男の太ももの上に座らされる。男の脚を跨いだ座り方で、アウラが脚を閉じると隙間に落ちてしまう。続けられたくないなら閉じれば済むが、二重の意味で中断出来ない。
好きにしろと言ってしまったのだから止めろとは言い難い。
それとなく打診するようになった訓練なので、嫌なわけではない。
初めての感覚は驚きが大きく、自分が知らないものを知られているのが不快ではあるが、感覚自体は不快ではない。
ならば続けて欲しいと言えるかと云うと絶対言えない。自分が上にいるべきなのに、そんなお願いを出来ようものか。
「訓練を始める前は徒労になるんじゃないかと不安だった。効果があるようで何よりだよ」
「だからっ……、効果って、なんなのよ?」
「今のアウラそのものだよ」
「んっ、……?」
男の右手もスカートに潜った。左手が下腹を撫でるなら右手は脚の付け根にひたりと合わせ、けれども凍り付いたように動かない。アウラの予想では撫でまわすか、動いてないようにみせて動き出すと思っていたが、本当に動かない。固まっている。
アウラは小首を傾げ、男が言い辛そうに口を開いた。
「ここ……。ちゃんと洗ってるか?」
「洗ってるわよ!! 今度同じこと聞いたら絶対にただじゃおかないわ!」
火のように言い返した。
社会性がないゆえに真っ当な羞恥心がない魔族であるが、汚いと言われるのは自尊心を傷つける。
前回洗われた時は過酷な生存環境で気が回らず、外部からは見えない部分なので余計に後回しにしてしまった。しかし、そんなところに垢を溜めてしまったのは内心忸怩たるものがあった。
魔族は羞恥心が死んでるかも知れないが、恥は知っている。赤恥。あるいは恥垢、と言ってしまうとそのままだ。
「すまなかった。アウラは体全部を綺麗にしてるんだな」
「当然よ」
普通の女性なら如何にこの男でもこんな事は聞かない。なのに聞いたのは、魔族は油断ならないと思っているからだ。体の機能は人間とほぼ同じと確信したが、体を操る精神にどこまで差異があるのか把握しきれていない。念には念を入れている。
それがやり過ぎと気付くのは先の事である。
「ここは初めてだが下腹は毎回擦ってきただろ? アウラは楽にしてるだけでいい」
「そう、だけど」
アウラを座らせるために一旦手を抜いたので、右手も左手もショーツの上から。
左手は下腹に貼り付き、優しく撫でまわす。指に感じるショーツの手触りはとても滑らかで、サイドやフロントに細かい凹凸を感じる。股間に向かう角度も急だ。被服面積が小さく、お洒落なショーツを穿いてるらしい。海夢に影響されたのか、それともアウラが穿きたくて選んだのか。後者の場合アウラ自身が見るためなのか。それともこちらに見せるため、と思うのは自意識過剰であろう。なにせ魔族である。
右手が撫でる脚の付け根はアウラの秘部だ。さらさらの下着を穿いてるので手触りが良く、アウラの柔らかさを伝えてくる。少々蒸れてる。室温とは関係ないアウラ自身の熱だ。
左手は撫でまわす。右手は前後に動き続け、指の腹に湿り気を感じた。
何をされているかわからないアウラは、所在無げに乳房の下で腕を組み、スカートに目を落とす。
触られて体の奥に熱が溜まっているのがわかっても、それがこれからどうなるかはわかってない。時折不安そうな目で振り向いた。ソファーの上に座っていた時と違って今は男の太ももに座っているので、顔と顔の距離が近い。鼻と鼻がぶつかりそうな時もあった。
ふと、男は閃いた。
「アウラは普通に食事を楽しむよな?」
「あんたはいつも唐突よね。美味しいものは美味しいし、不味いものは不味いわ」
「それなら……」
「なによ? 途中で止めないで」
ちゃんと噛んで食べてるか、食感を楽しんでるか、などと聞こうと思ったのだが、これを聞いたらまた怒らせるかと思い口を噤んだ。食事風景を見る限り、食べ物の食感や歯応えも楽しんでいると思われる。味だけでなく、歯や舌で触れる感触を楽しんでいる証拠だ。相変わらずナイフとフォークが怖いようで、スプーン以外を用いる食事はしたがらないが。
重要なのは口で楽しむことが出来るという事だ。
「訓練内容の追加だ。歯を立てるなよ?」
「なに? んむぅっ!?」
左手の中指をアウラの口に突っ込んだ。入れたのは第二関節まで。指先に温かくぬめった舌を感じた。
「好きなように舐めて、好きなように吸っててくれ。重ねて言うが噛まないように」
「はひすんおぉっ!」
入ってきたのは指一本で、それも指先が舌の半分に届かない。苦しくはないが楽しくもない。
何を言おうと出て行かないし、手を使って引っこ抜こうとすれば窘められる。アウラは仕方なしに唇を閉じた。
口内にある異物は小さなものだから不快という程でもないし、指をしゃぶるのは初めてではなかった。初めて食事を振舞われた際に、思いきり噛みついて血を啜った。奇しくもその時と同じ指だ。
思い出して強く吸うが、血の味はない。諦めて舐め回す。微かな塩気はすぐに消えた。関節の窪みだとか、肌と爪の境目だとか、爪の硬さだとかが感じられる。
舐め続けていると口内に唾が溜まり、喉を鳴らして飲み込んだ。そのタイミングで指が二本になった。やはり深くは入ってこないので苦しくはない。深く来ない代わりに動き出す。舌を摘まもうとしているらしいが、歯ごと口を閉じて可動範囲を狭めればしてやられる事はない。噛んでるわけではないので何も言ってこない。
アウラは細やかな勝利感と共に指を捕らえ、舐め回した。
その間も男の右手は前後に動く。指を揃えて全体を揉みほぐす動きで、どこかを重点的に責めたりはしない。じゃれ合いながら時間を掛けてるだけあって、大分ほぐれてきている。
指に感じた湿り気は、はっきりと濡れてきた。直に見れば染みが広がっているだろう。
ずっと手のひらが張り付いているので外気に触れることがなく、触れている箇所は温かいまま。生殖活動を行わないために性欲がないので自分で自分を慰めた経験もないようだ。そして変化は少しずつ。
アウラは温かく心地よいと感じていても、自分が濡らした事に気付かなかった。
「きゃっ! なによ!?」
男の太ももの上に座っていたのに、突然脚の間に落とされておしゃぶりもマッサージも中断された。
「胸も直にしただろ? こっちもだ」
「それって……。ちょ、ちょっと……」
「ほら、尻を上げて。ああ、一度立ってくれ」
「直にって、どこを……。あっ……」
言われた通りに立ち上がると、男の両手が短いスカートの中に入ってくる。
指をショーツの両サイドに引っ掻け、するすると下ろしていく。
男の手が触れていた部分が、最後までアウラに貼り付いていた。そこが離れる時に短い糸を引いて、アウラは自分が濡らした事にようやく気付いた。
粗相をしたわけではない。絶対にない。なのに濡れてる。濡れてる範囲も微妙だ。そう言った濡れ方ならもっと広範囲だし、臭いもある。
濡れてるのはほんの一部でやたらと広がる気配はないし、匂いも薄い。何がどうなっているのか本当にわからない。
「折角だからそこの鏡を持ってきてくれ」
アウラから抜き取ったショーツは丸めて机の上に。コルセットベルトの上に着地した。ちなみに黒のレースだった。
アウラは固い動きで机の上のスタンドミラーを取って帰ってくる。アウラが置いた鏡だ。
「アウラはこの位置で鏡を持ってるように」
男の太ももの上にもう一度座らされ、鏡は股の前で持つ。スカートを捲れば、アウラの目に自分の股間が飛び込んできた。
「濡らしたことがないのか?」
「あ……あるわけ、ないでしょ……」
鏡の中で、男の指がアウラの割れ目に近付く。ふにっと盛り上がった陰唇に触れ左右へ引けば、隠された内側が鏡像に映る。
「魔族に必要はなくとも機能はあるみたいだな。それなりの刺激を受けたり気分が高まればこうなるのは正常だよ」
アウラの耳には「正常」しか届かなかった。
先日は諸事情あって垢が溜まっていたが、ごく普通に洗う部分だ。500年も生きているのだから、自分で広げて洗った事は数えきれない。何度も見てきた。それなのに初めて見る。
充血した乳首より赤みが濃い内側は、見るからにぬめって部屋の明かりに照り光る。下側の小さな穴はアウラの意思に寄らずに収縮し、蠢いているようだ。生々しさはまさに隠れているべき体の内側を思わせる。
「あひっ!? あっ、なに!? さわらないで!」
広げていた指が離れ、上端を軽く撫でた。
乳首を触られた時に似た刺激が下半身を走り、声が口をつく。突然触られたから驚いた、のだと思いたかった。
「訓練の効果を確かめると言っただろ? アウラは鏡を落とさないように持ってるんだ。何度かイッたら終わりにしよう」
「いく? 行くってどこに? あっ! だからさわるなぁ……! んぅ……! んっ……、んんっ!」
どこを触っているかよく見えるように、男は上端の根元を軽く押さえて露出させる。つるりとした肉の豆を見せてから中指を乗せた。
「クリトリスだな。名前を知らなかったのか? 実地で教えられるのと自分で本を読むのとどっちがいい?」
「そんなのぉっ! あんっ……。こんなこえ……、あっ、あんっ……、やあぁ……。あっ!」
体は熟れていても全く経験がないアウラに、クリトリスを直に撫でるのは刺激が強い。
なので愛液をたっぷり塗り付け、乳首を弄り始めた時のように触れるか触れないかの絶妙な刺激を送り続ける。
包皮が剥けるくらいなのだからとっくに勃起している。軽く押せば艶めかしい弾力を返す。強めにしてもアウラに痛がる様子はなく、声が高くなった。
「なっ、なによこれぇ……。あっあっ……、くぅ~~~~っ! あぁんっ!」
「鏡をちゃんと持て、ちゃんと見ろ」
「見てるわ、よぉ……。なんであんなに……。わたしのあそこが……」
小さな穴は、収縮する頻度が高くなってきた。開いても広さは精々指一本程度。何度も開いては閉じている。二三度閉じると、透明な汁をとろりと零した。汗や小水とは違って粘性が高い。濡らすとはあれの事だとアウラは思った。
男が触れるタイミングやアウラの呼吸が重なって、開いたままになる時もある。鏡に映る穴は奥が暗い。意外と深いらしいと思わせる。見ている内に汁が溜まって奥が見えなくなってしまう。
「アウラはここに穴があるのを知ってただろ? 使い方は知ってるか?」
「しるわけ、っ……! んぅ……、あんっ! ……答えさせたいなら、止めて」
「それは失礼」
男の手が離れても、アウラの割れ目は緩く開いたままになった。
アウラは数度深く呼吸をして、乱れた息を落ち着かせる。熱い息を吐き、鏡を見た。
膣があるのは知っていても、アウラの記憶にある限りこんなに開いたことはない。いつも肉に埋もれて閉じている。それなのに開いて、奥は深そうだ。
「…………何か入れるの?」
「正解。当面はそこまでしない。アウラを整えるのが先だ」
「整えるって……、入れないって言ってるじゃない! ひゃっ……、な、なに……? さっきとちが……。あぁ……」
入れないと言いながら入れてきた。
ショーツの上からしたように指を揃えて近付いたと思ったら、まっすぐに伸ばした中指が割れ目に沈む。下から上に向かって一度撫で、もう一度下に戻る時に指先が膣口に触れ、そのまま入ってきた。
存在を忘れかけていたところに、自分の体の中に、男の指が入っている。入ってきた指は中で曲がった。
乳首やクリトリスと違って、感じ方が広い。体の中に広がっていく。
効果を確かめると言われて触られた時、まるで痺れるようだった。男の指から微細な電撃でも出ているのかと思ったくらいだ。今度は違う。体の中に染み込んでくるようだ。
「あぁっ……、むねも……! あっ、そこぉ……! そこはぁ……! はぁ……、あんっ」
開いた股から、くちくちと小さな水音が鳴りだした。
胸も揉まれている。準備だとか効果だとか言ってた時とは違って荒々しく掴み、揉みしだく。指が乳肉に埋まって思うさま形を変えているが痛みはない。乳房と乳首に溜まった熱を搾られているようだ。熱が搾られても際限なく湧いてくる。
「あんっ! それ……、うぅ……!」
両手で鏡を持っているが、鏡像は見ていない。男の手が動いているのがぼんやりとわかる程度だ。
そして両手が塞がっているから声を抑えられない。と、言い訳をする。
鏡を持っていなければ、別のものを掴んでいたに違いない。つま先は何度もきゅっと折り曲げた。
時々、入っているものが太くなる。指一本くらいなら入りそうな穴だったのに、指一本できつくなる。鏡の角度を変えてみても指は増えてない。
自分が締め付けるから圧迫感を覚えるのだと、アウラはまだ気付かない。
「あっあっ、だめっ……、もう……! ほんとにぃ……!」
アウラの高い声が掠れ、懇願の響きを伴った。
魔族のアウラが男の劣情を煽るために「ダメ」と云うわけがない。アウラがダメと言うなら本当にダメなのだ。
行為には無知でも、アウラには予感があった。このままだと自分の知らないどこかへ連れ去られる。奥深くから押し寄せる波が、何度もそちらへ引き摺ろうとしている。ここまでは何とか耐えたが、次は無理だと確信した。
「だめ……ほんとに、……あっ、やっ……だめ、だめ! あっ……、あっ……、~~~~~~~っっ!」
指が増えたり動きが激しくなったりはしない。アウラの様子を見ながらほとんど同じ動きを丁寧に続けていただけ。それが少しずつアウラを高め、閾値を越えた。
アウラは声にならない声で鳴き、つま先をきゅっと折り曲げ鏡を落とす。荒い呼吸をしているかのように腹部が膨らんでは窪み、腰を小刻みに震わせた。中に入っている指をきゅうっと締め付け、緩んだ時は奥から溢れる汁で汚す。
全身の力が抜け、くたっと男の胸に体を預けた。
何をされてどうなったのかは未だによくわかっていないが、充実感があった。何に充実して何に満足したかわからないが、それを齎したのが後ろから抱き着く男なのはわかっている。
荒い息が落ち着くにつれ、口が寂しくなってきた。さっきまでは息も絶え絶えでそんな余裕がなかった。その前に、指をしゃぶらされていたのが印象に残っている。
「なんだ?」
アウラは立ち上がり振り向いて、男を見下ろした。
しゃぶっていた指が目に入るが、右手も左手も濡れている。自分のよくわからない汁だ。そんなものを舐めとる趣味はない。
「どうしたんだ? 痛くはなかったと思うが?」
無言のまま男の上に座る。但し、今度は向き合って。
魔族は生殖活動を行わないのでその手の知識が少ない。しかし、アウラは男は女の体に欲情することを知っていたように、子供と同じ程度の知識はある。
特に目配りしなくとも、唇を使った初歩の初歩くらいは聞こえてくる。
「あむっ、ちゅっ……ちゅうぅ……れろ……。んぅっ……、れろり……」
両手で男の顔を固定して、唇を合わせた。
舌で味わう感触を楽しむため、舌を差し入れ強く吸う。
稚拙なキスを、絶頂の余韻が消えるまでたっぷり貪った。
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あんな事をしたから自分の男、と思う情は魔族にない。
たっぷり唾液を交換して離れる時は長い糸を引いたが、離れる時の顔は実に嫌そうだった。
「それ貸して」
男が指先を拭っていたハンカチを引っ手繰り、自分の股を拭う。尻の割れ目に沿って流れたので、ハンカチを畳んで裏返してから往復させる。
出してしまった胸を仕舞いながら男に尋ねた。
「あなたってここに来てる女たちにも同じことをしてるのね?」
「全員ではないけどね」
「やっぱり。それじゃ――」
「誰であるかは言えない。アウラも聞かないように」
「……わかったわ」
利用者たちはそれとなく察しているが、暗黙の了解というやつだ。ほのめかしはしても、そのままは書かない。書いてしまったらただの痴女だ。
「今日の訓練はこれで終わりなのね?」
「そうなる。時間はいつもより少し長いくらいだったな」
「それじゃここには用はないわね? 私が調べものするからあなたは向こうに行ってて」
「俺だって調べたいことが。それに訓練の感想も」
「邪魔だって言ってるのよ」
男は両手を上げた。
仕方なしにターニャの世界の新聞の縮刷版を数冊取り出し、凍える応接間に退避する。
男を追い出したアウラは、脱がされたショーツを穿こうとして、顔を顰めた。秘部に触れるクロッチの部分に染みがある。濡れた物を穿くのは不快だ。放っておけば綺麗になるはずなのに場所が悪いのか何なのか知らないが、このまま穿きたくない。とりあえず脱いだままでいる事にした。
「それじゃあ……」
アウラは書斎の使い方を知っている。割と早いうちに覚えさせられた。
目当ての本に振られる図書番号がわかれば良いが、わからない時は目録に欲しい情報や分野を書き込む。そうすると目録の内容が自動で書き代わり、書斎が所蔵する本も変わる。
本の大きさによりけりだが、一度に五千以上は出てくるようだ。
幸いなことにどんな言語も読むことが出来る。
目当ての分野を現出させた壁一面の本棚を一冊一冊見て回り始めた。
男は幾つか勘違いしていた。
まず、アウラが海夢に語った「誰かを好きにならない」のは本当だ。
魔族の生態は他者を必要としない。海夢が思うような感情を異性に抱くわけがない。自分に寄り添って共にいて欲しい、と言われてもアウラには何のことだか理解できない。
しかし、「好き」の意味を知っているように、好きにならないわけでもない。但し、それは物への愛着だとかお気に入りに近い。アウラ自身は魔法使いなので使わないが、愛用の剣や杖を持つ魔族は普通にいる。自分にとって有用で、好ましい効果があるなら、それが人間であっても気に入ることはある。魔族は最終的に殺害に辿り着いてしまうのが常だが。
そしてとても執念深い。執念深いが過剰なら特定の物事への根気が強いと云うべきか。
ほぼ全ての魔族は自分の固有魔法を強く誇りに思い、生涯それだけを研鑽する。アウラが勇者ヒンメルの存命時はけして活動しなかったように、一度決めた事はやり通す。
そこには意地も努力もなく、魔族の生理として極々当たり前の事だ。
アウラの執着に一つ加わった。
男が一番勘違いしていた事は訓練の必要性である。
魔族には性欲がないため、もしもアウラとそうなった時に淡白だとつまらないと思い、訓練を施してきた。が、本来なら全く必要なかった。
性欲がない事と、性的快感を得ない事は等しくない。精神は人間と違っても、肉体は人間とほぼ同じなのだから、快感を得る機能は始めから持っている。使う機会も発想もなかっただけで。
そのあたり、人間で言えば食に似ていた。
飲食物には、肉体の維持に必要ないものが多々ある。嗜好品や、精神に影響を与える薬物などがそれだ。
それらは肉体の維持にも健康にも全く必要がないし、場合によっては悪影響もある。しかし、試せば良いものだと知ってしまう事もある。
アウラは知ってしまった。
アウラは自分の敗北を認めていない。
魔法が使えない現状で、利用者たちからヒントを得て、今の訓練で方向が定まった。
思えば、自分はそれに近いところを口にしていた。それを意識して、あの男に叩きつけるだけである。
アウラが本棚から取り出した一冊は、ピンクや赤が目に痛い。どこの誰とも知らないとんがり帽を被った女が笑顔でウィンクしている。ハートが散りばめられているのは何の暗喩か。
どれもこれも理解できないが、理解する必要はない。技術さえあればいい。技術を学び、再現して、有効に使うだけだ。
本のタイトルは『恋の魔法少女♡ 彼をメロメロにする100の秘技』とあった。
恥ずかしながらこんな時期に風邪引きました
今もまだだいぶだめ
次回フェルン、になるはず
自信はない