奉仕しないと帰れない部屋に囚われた男の業務記録 作:dolph
暑さに負けてます
ベッドルームがあるのをバラライカも知っている。酔い覚ましに使ったことがある。知ってなおクローゼットルームに踏み入った。先にこちらで用がある。
バラライカの定位置はドレッサーの前だ。それ以上奥に入った事はない。今日もドレッサー前の椅子に座った。
「あなたはいつも胸にパックするわね」
「今日も致しますか?」
「まだいいわ」
改良を重ねたメイクは見た目のみならず快適性と耐久性も格段に上がった。一度すれば一か月は持つ。無論、衛生面でも問題ない。前回訪問時に直したので一週間後の今日は手を入れる必要がない。
メイクをする度に行う乳首へのパックも同様である。毎日何度も授乳するなら別だが、新品同様になった乳首が一か月で黒ずむことはない。
しかし、問題とも言えない問題が一つ。隠れている部分なので純粋にバラライカの気分の問題だ。
例えば、スーツは上下で同じ色にする。色を違えてしまうと統一感がなくなる。色の合わせ方によってはお洒落かも知れないが、少なくともフォーマルではない。
下着の上下も同じだ。ブラジャーとショーツをセットで着けるのは女の嗜み以前である。
そのあたり、元軍人であるバラライカは徹底していた。
戦闘において、軍は速やかに集結し火力を集中する必要がある。一兵の遅れが全滅に繋がる事もあるのは、ランチェスターの法則によって科学的に証明されている。
兵士たちに迅速な行動をさせるのが日々の訓練と規律である。指揮官でもあったバラライカにはそこへ素早い状況把握と判断が加わる。
そのような経験を持つバラライカが規律を疎かにするわけがなく、上下が不揃いなのはあり得ないと言って良い。
「今日は胸じゃなくて下にしてちょうだい」
「たまわりました」
異常な効果を発揮する色素吸着薬により、バラライカの乳首は男を知らない乙女色にされてしまった。それはそれで良しとしても、下半身はこれまでの経験に応じた色である。バラライカの気質はどちらかに統一させたい。
乳首を下に合わせるのは難しい。云十年の経験で着いた色が元通りになるには一体どれ程掛かるのか。加えて特殊メイクを直す度にパックされてリセットされる。ならば下を上に合わせるしかない。
「下にお召しのものをお脱ぎになりましたらお声掛け下さい。お手伝いいたしましょうか?」
「……いらないわ」
バラライカは少し迷って断った。色っぽい雰囲気になるのは処置が終わってからでよい。
スカートはタイトだ。立ち上がってからホックを外してずり下し、床に落とす。落ちたスカートはつま先で離れた所へ押しやった。
ストッキングを脱ぐ時は椅子に座る。パンティストッキングなので股下までずらしたら片脚ずつ抜いていく。小さく丸めたストッキングは放り投げてスカートの上へ。そこで男の姿を上目遣いに盗み見する。
女がショーツ一枚の姿になっているのだ。さてどんな反応をしてくれるだろうと思ったが、男は椅子を運んだりドレッサーの引き出しを開けたりと忙しい。こちらの方へは目もくれない。
少々落胆しつつも、最後の一枚を脱いだ。
「脱いだわよ」
「それではこちらへお掛け下さい。足はこの上に置いて下さい」
男が促すのは背もたれを傾けたリクライニングシート。足置きは高さを低くしたスツールが二つ。低くしてもそれなりの高さで、椅子の肘掛け程度に離れている。
そこへ足を乗せた事を想像して、バラライカは流石に赤らんだ。一度深呼吸してから目を閉じて椅子に座る。背もたれに体を預けると天井が見えた。上を向いたまま、両膝を上げてスツールの上に両足を乗せた。
「ヘアは如何しますか?」
「任せるわ」
アンダーヘアの手入れなんてしない。幸いにも伸びすぎることはない体質だ。
「他にご要望がありましたら」
「ないわ。あなたの良い様にしてちょうだい」
「かしこまりました」
バラライカは男が自分の股の前に屈んだのを見て、目を逸らした。あんな美男が真剣な顔でまたぐらを覗き込んでいれば恥ずかしくなっても仕方ない。あちらは服を着たままで、こちらは下半身だけと云うのも良くない。これだったら上も脱いで全裸になった方がマシだった。
「乳首へのパックよりも段階を踏みます」
「全部任せるわ。こんな格好をして、私が何も感じないとは思わないでしょうね?」
「……失礼いたしました。早速開始いたします」
バラライカは天井を見上げながら目を閉じた。する事をするなら見たり触れたりは当然だが、それとは別種の気恥ずかしさがある。それに耐えて男がする事をしっかり確認しているべきだったと思うのは数分後である。
外気が触れる股間を柔らかなタオルで拭われ、何かを塗り付けられてまたも拭われ、痛いような痛くないような違和感は何なのかと考える内にまたも何かしらを塗り付けられて違和感が消失し、麻酔を掛けられて縫われている時に似ていると答えを出した時にはもう一度入念に拭われて処置が終わった事を告げられた。
「ご確認ください」
床に跪いた男はバラライカの股間の前に鏡を立てる。
鏡像が目に入ったバラライカは、かあっと顔が熱くなった。羞恥と怒りである。反射的に手が出た。
「いてっ!」
ガツンと男の頭に拳骨を落とした。
痛みに強い男であるが、驚かせる要領で痛い目に合えば割と痛いのだ。
「誰が脱毛しろと言った!!」
バラライカは下半身丸出しで、両足をスツールの上に乗せた大股開きのまま、男に叩きつけた。
あろうことか、股間をつるつるにされてしまったのだ。
色は綺麗になっている。年齢相応に黒ずんでいた大陰唇は綺麗に脱色されて瑞々しさを取り戻した。色艶は生まれたばかりの赤子のようだ。尻の割れ目の方にも塗られていると思ったら、肛門の色まで抜かれてピンクになっている。
ここまで色が抜けるとは思わなかった。とは言え、自分から言い出した事でもある。これは飲み込むとしても、脱毛までは受け入れがたい。
バラライカの股間は短い陰毛が淫裂を囲っていた。それがない。全くない。毛根すらない。つるつるである。尻の方にも多少あったのはもちろんない。恥丘にそれなりに生えていたのも処理され、残った毛は指二本で隠せてしまう。
剃り跡はない。剥がしたにしては痛みがなかった。目を凝らしても、生えていた痕跡を見つけられない。
それもそのはず。男が用いた脱毛剤は、毛根を溶かし毛穴を塞いでしまう劇薬である。使用したが最後、二度と毛は戻ってこない。
男が最初に塗り付けたのがこの脱毛剤だったのだ。
「お任せいただいたので品よく仕上げたつもりでございます。何かご不満がおありでしょうか?」
「おおありだ!」
品が良すぎるのが問題だ。バラライカは化粧をしても、ここまで手を入れる趣味はない。
その上、脱毛だけに留まらなかった。
「グハッ!?」
スツールから足を上げ、男の肩を蹴り付ける。蹴られた男は床で背中を強かに打った。
「ぐえッ!」
椅子から降りたバラライカは男の胸を踏みつけた。男が苦しそうな声を上げても全く気が晴れない。
「ラヴィアまで切る奴がいるか!!」
怒りと羞恥がたっぷり込められた叫びである。真っ赤に染まった顔からは、一向に熱が引かなかった。
ラヴィアとは陰唇を指す。バラライカが言うのは内側の薄い肉ひだ。小陰唇である。
膣口を囲む小陰唇は、他の部位同様に外部からの刺激や年齢によって色素が沈着する。それに加えて伸びてくる。そこそこの経験があってそれなりの年齢になれば、伸びた肉ひだが大陰唇の外にはみ出るのは普通である。バラライカも普通の形状をしていた。それが内側に収まる程度になっていた。外側を閉じれば完全に隠れてしまう。
バラライカが感じた奇妙な違和感は、ラヴィアを切除した時のものだった。
傷病は赤い回復薬で何でも治るとしても、回復薬がなければどうにもならない。万が一に備えて男は医療知識を学んでいた。機材さえあればバイパス手術でさえやってのけるだろう。それに比べたらラヴィアの切除は簡単なものである。
切れ味鋭い刃物でさっと切り取り、バラライカが痛みを感じる前に切断面を縫合する。縫合に用いた糸は視認不可能なレベルで細く、一瞬だけ切断面を閉じるだけでよい。その瞬間に赤い回復薬を塗って術式完了である。細く脆い糸は濡れただけで溶け消えた。
赤い回復薬は肉体の欠損すら癒してしまうが、切った爪が生える事はない。それと同じできちんと切断面を閉じて使用すればよい。尤も、限度はあるだろう。今回は後天的に伸びる部分だったので短く詰めることが出来るのだ。
「こんな……こんな……!!」
バラライカは、言葉に出来なかった。
股間は剥きたてのゆで卵のようにつるつるだ。それだけなら無垢な乙女に見えるが、股を開けば割れ目も開いて内側を覗かせる。経験がなければこうはならない。それなのに、白くてピンクでつるつるで小陰唇も伸びてない矛盾。
どのような人種がこうなっているのか、バラライカは知っている。
仕事の一環でポルノグラフィの確認作業をした事があった。女優達の半数以上がこのような処置をしていた。つまりはポルノスターだ。自分もそうされてしまった。
「限度を知れ、このバカモノが!」
「うっ!」
再三言われてきた言葉である。良かれと思ってやったのだが、やりすぎであったらしい。まことに忖度とは難しいものである。
男が次に活きない反省をしていると、頭のすぐ隣でダンと床が鳴った。バラライカが足を踏み下ろした音だ。もう一度音が鳴る。男が見上げる先には、バラライカの股があった。
股の割れ目は筋状だ。それが開いていく。白い肌に色濃い肉色が覗き、女の形が見て取れる。開くと同時に近付いても来た。
「こんなにされても使えるか確かめるわ」
バラライカは男の顔を跨いだ姿勢で膝を折った。
そのつもりでいたけれど、ベッドでムードたっぷりという空気ではなくなってしまった。
これは罰だ。仕出かした事に相応しい報いを与えなければならない。
「舐めなさい」
男が答える前に口を塞ぐ。塞ぐのはバラライカの股間である。
柔らかくぬめるものが触れるのを感じて、バラライカは男が舌を伸ばしたのだと知った。
あの顔に舐めさせると想像しただけで背徳的な快感が背筋を走る。現実となれば想像以上だ。自分の股で隠してしまっても、男の美貌は目に焼き付いている。
「そうよ。たっぷり舐めなさい」
淫裂の内側を男の舌が這っている。その事実だけで、バラライカは下腹が疼くのを感じた。随分とご無沙汰だった女は忘れてないようだ。濡れてくるのを感じれば、ブラジャーの下で乳首がむくりと起き上がってくるのもわかる。上に着ているものを脱ぎ捨てると、ピンクにされた乳首は充血している。
冷水シャワーを浴びた時を除けば、乳首を立てるのも久し振りだ。下を舐めさせているのと同じように、男に吸わせたくなってくる。
股間からはみ出る銀髪を掴み、腰を前後に揺する。尻の穴からクリトリスまで舐めさせ、良い位置で動きを止めた。
「んっ……。そう、そこ、よ。もっと舐めて、もっと吸って」
アナルを舐めさせるのも悪くはなかった。息が出来ないらしい男が苦しそうなのはどうでも良い。それよりも前の方。クリトリスに舌が触れると痺れるようだ。
クローゼットルームなのでドレッサーの鏡以外に姿見が幾つもある。そこには、全裸の己が男の顔に座っているのが映っている。顔は歪に嗤っていた。
満たされる支配欲と優越感と、久しぶりの快感に興奮が高まっていく。
舐めさせるだけでは物足りない。もっと色々な事をして、させたくなる。そのためにはやはりベッド、と思ったところで背が反った。
「あっ!?」
力が抜けて倒れてしまいそうになる。咄嗟に手を突く。尻は男の胸板に落ちた。
何をされたのか、何があったのかわからない。数瞬前の記憶を辿ると胸に暖かいものが過る。それが何であるか、探る余裕はなかった。
「ここがお好みのようですね」
股の下から声が聞こえる。
「ま、まちなさっ!?」
静止の声は届かず、男が舌を伸ばす。
バラライカは鳴き出した。
続けて書きたかったが気力と体力が持ちませんでした
あらゆる創作物は余剰から生まれるのだと実感
個人で人類史を辿る事になろうとは
次話は来月かも知れません