※この作品はR-18です。

奉仕しないと帰れない部屋に囚われた男の業務記録   作:dolph

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早ければ二日には投稿出来たはず(一日時点で10k)でしたが、年初から寝込んでました
後半失速
いつかリベンジ、予定
本話21k


満ちる虚無 ソリテール▽

 ソリテールはキャミソールの下に何も着けていなかった。

 肩紐を外せばするりと落ちて、慎ましい乳房があらわになる。手のひらを乗せれば膨らみの全てを包めてしまいそう。

 アウラと同じように色白で、先端の色は淡く瑞々しい。

 

 体の全てを指と唇で触れると宣言した。宣言通りに触れようとして、

 

「私の胸は揉むほどないってアウラに言われたわ。あなたは大きい方が嬉しい?」

 

 男はピキリと固まった。

 

 ソリテールとのキスは、花のように甘い匂いと柑橘系を思わせる爽やかな味がした。食後にうがい薬を使ったようだ。アウラが気を利かせたわけがないので、アウラの習慣をソリテールが真似たのだろう。過程がなんであれ良い仕事である。泣かすのは止めようと思ったらこれである。やはり魔族に。いや、アウラに期待してはいけない。

 

「胸の大きさに貴賤はありませんよ。小さくとも愛らしいと思います」

 

 本当は大きい方が好きだ。しかし、小さくても愛せないわけではないし、それはそれで好きなのだが刷り込まれたかつてを思い出して苦いものが口中に込み上げる。その上、ソリテールはたれ目である。ますます色々思い出させる。

 

「綺麗なお体ですよ。これから手でも唇でも触れます。何かお気に掛かる事がありましたら遠慮なく仰ってください」

「……うん。んっ……」

 

 抱き寄せられたソリテールは、男の体にもたれた。両手は自然と男に触れた。言葉を交わしながら口付けも交わし、重ねる毎に舌の動きが滑らかになっていく。キスの最中は目を閉じずに男の目を真っ直ぐ見つめ、唇が離れたら視線を落とした。男の手の行方を追っていた。

 男の左手は小さな背中を支え、右手はなだらかな胸に触れる。触れられるのを、ソリテールはじっと見ていた。

 

(おお……)

 

 口には出さない。相手が魔族だろうと失礼だ。心の中だけで静かに感嘆した。

 小さくても確かな膨らみがあって、指を這わせれば僅かに沈む。この大きさだと揉めないのはその通り。撫でて柔らかさを確かめるのに留める。小さかろうと大きかろうと優しく始めないといけないのは同じである。

 男が驚いたのは柔らかさだ。柔らかいのは柔らかいのだが、張りが強い。

 抱き寄せたときも、細身の体に女の柔らかさを感じたが、思ったよりも張りと弾力があった。見た目は深窓のお嬢様なのに強靭な肉体を誇る魔族だからか。

 乳房に触れても同じだった。柔らかいけれど張りがある。けして固くはない。珍しい感触だった。少し下は皮下に肋の硬さがあるので変化が一層面白い。

 

 面白かろうと基本は忘れない。ソリテールは未開発の処女なのだ。乱暴に始めるのは以ての外だ。

 本来ならマッサージをして血行を良くしてからにしたいところである。湯上がりであるため、ソリテールの体は十分温まっているようだった。

 

「……私の胸を触って楽しいの?」

「もちろん楽しいですよ」

 

 ソリテールの微笑は変わらない。強いて言うなら少しだけ肌が上気して、唇が艶かしく濡れている。

 男は細い腰を抱く腕に力を込めた。ソリテールの背が反った。男が体を前に倒せば、可愛らしい膨らみが口に届く。

 

「んっ」

 

 優しく啄み柔らかさを味わってから、舌を這わせた。白い乳房に唾が塗られ、そこだけ部屋の灯を反射する。

 

「柔らかくて舌触りがとてもなめらかです。ソリテール様も着心地の良い服を着れば肌触りを好ましく思うことがございませんか?」

「……うん。そんな事を感じたこともあったかな」

「それよりも大きな要素は」

 

 もう一度口付ける。舐めたところより少し上。色の薄い乳輪に唇を押し付け、軽く吸った。唇の端が先端に軽く触れた。

 

「ソリテール様の胸を愛撫している事実です。私だけが触れられると思えば、独占欲も優越感も湧いてきます」

「人類は、集団の中で、相対的な有利不利を、って、言ってたものね。私には、わからないな……」

「それだけではありませんよ。一番に来るのはもっと別のものです」

 

 右の乳房にはキスの雨を降らせ、左の乳房へは手を開いて包み込む。指は大きく広げ、小さな突起は親指と人差し指の間に挟まれている。どちらにもまだ触れない。

 

「一番は、なに?」

 

 少しだけ、声が掠れたと思った。

 触れられるだけで熱くなるのに、ずっと触れられ続けている。触れるに留まらず動いている。熱さを肌の中に擦り込んでいるかのようだ。

 胸に触れられキスをされ、どうしたって視線はそちらへ向く。

 隠れていないのでよく見える。上から見るので高さが変わったのがよくわかる。そこはアウラのようになっていた。

 隠れてないのは触れてないから。触れてないのに熱くなって張り詰めている。

 長く生きてきたからそうなったことは何度もあったが、ほぼ全ては温度変化のせいだ。そんな事を一々覚えているわけがないので、例外があったかどうかは定かでない。

 こんな事をされるのは初めてだ。こんな事で乳首が立つのも当然初めて。

 

「先ほどお話したことで、乳首が何のためにあるかお話したのを覚えていらっしゃいますか?」

「覚えてるよ。授乳のため、って言ったよね。でもっ!?」

 

 繁殖しない魔族が授乳をする事はない。そう続けるつもりだった。

 しかし、言い終える前に男が言葉を被せた。被せた直後に実行した。

 

「吸われるためにあるんですよ」

 

 熱が溜まって張り詰めていた。上から見ればツンと立っているのがよくわかった。立っていたし、いつもより明らかに膨らんでいた。色味も濃くなっていた。赤くて、膨らんで、ツヤツヤしていた。

 よく見えたのに、見えなくなった。見ていたのに何をされたかわからない。

 弾けてしまった。だけども痛いようで痛くない。体の内側に向けて爆発した。

 

「ふぅっ!? くっ……、うぅっ……」

 

 完全に意識の制御下から外れ、口をついた声らしき音は何だったのか。

 始めの衝撃が去っても終わらない。皮膚の下を温かいものが蠢いている。奥へ奥へと潜っていくようだ。

 皮下ではなく皮膚の上だと、しばらくの間気づかなかった。

 

「んんっ!」

 

 くぐもった声が漏れた。

 熱くて温かくてくすぐったくて、痛いようなのに痛みは皆無で、全くの未知であり言語化出来ない。

 

 ソリテールが混乱している間も刺激は止まない。

 右の乳首を啄まれ、左の乳首は抓られた。強い刺激は最初だけ。ソリテールが鳴いてからは、先端だけをくすぐるように舐め、擦っている。

 愛らしい乳首は甘やかな刺激に身をよじり、もっととせがむように固くなる。

 期待に応えるべく、吸っている方には歯を立てて、擦る方は抓りながら引っ張った。

 

「ひゃっ!?」

 

 ソリテールの背が反った。男の腕が回されていなければ、ソファーの上にひっくり返っていた。逆を言えば、囚われているので逃げられない。

 緩急ある刺激に、ソリテールは何度も背を反らした。体が勝手に反応している。触れられている部分どころか、全身に熱が回る。顔も熱い。されている乳房はもっと熱い。それなのに、もっと熱いところがあった。

 食欲らしきものが首をもたげる。だからお腹が熱いのだと思った。

 

「はあ……はあ…………。授乳って、こんなに大変なの?」

 

 母乳は出ないのに吸われ続けた。男の唇が離れてようやくソリテールの呼吸は落ち着いた。

 吸われて引っ張られたからか、見たこともないほど乳首が尖っている。伸びてしまったのかと思うくらいに。

 

「乳幼児なら吸うだけでしょう。それよりも、ソリテール様は大変だったのですか?」

「大変だったわ。乳首が弾けたのかと思っちゃったもの」

 

 赤く腫れた乳首は、男の口と手が離れても戻らない。じんじんと熱を持ったままで、やたらと敏感になっている。空気の動きすら感じてしまう。男の手や服がぶつかると痺れが走る。何も感じない麻痺とは真逆。では何なのかと問われたら言葉に出来ない正体不明。

 

「段階を踏んだつもりでしたが、痛みがおありだったでしょうか?」

「それはなかったわ。少しくらい痛くても、この前のに比べたら……。ナイフで刺されても撫でられてるようなものかも?」

 

 魔族は例えが凄惨だ。この男も同類であるため、全く気にならない。

 

「心強いお言葉です。そうはならないよう尽力いたしますよ」

「んっ」

 

 ちゅっと唇を合わせ、乳首を摘んでやった。

 未開発なので心配していたが反応は上々であり、丁寧に進めれば大丈夫と確証を得られた。言質も取れた。

 未通のソリテールにはどうしたって多少の痛みがあるだろう。けども、ナイフで刺されても、とまで言うのなら大丈夫そうである。肉体的には人と変わらなくとも、兎角丈夫なのが魔族という種族である。余計な心配だったのかも知れない。

 

「今は胸だけに触れました。続けて他の部分も」

「そのことだけど……。私からもあなたに触っていい?」

「勿論歓迎します。ですが、爪を立てられたり力を入れ過ぎたりされると困ります。私が怪我をしない程度でお願いしますね」

「わかってる」

 

 少々の怪我ならすぐ治る。少々でなくてもすぐ治る。生きてさえいれば元通り。様々な事態へ対処できるように、ソファーセットにもベッドにも回復薬を始めとした色々を忍ばせている。

 だからといって血まみれは困りもの。噛みつかれるくらいなら可愛いものだが、魔族とベッドを共にするのは初めてだ。初めてだからこそ、慎重にならねばならない

 

「こうした方が触りやすいかな……」

 

 胸を触られるときは、二人ともソファーに座ってソリテールは男に抱き寄せられた。それだとソファーの背もたれに阻まれて片手の自由が封じられる。

 男を寝かせても、やはり背もたれが邪魔になる。

 ベッドに行けば万事解決するが思いつかない。触る事しか頭になかった。

 

 ソリテールは、ソファーに浅く座る男の太ももに跨った。脚を大きく開いたのでキャミソールの裾が少し上がった。真向かいの男からは奥が見えそうで見えない。

 

「触るね」 

 

 喉を鳴らし、赤い舌が唇を一周半する。濡れた下唇を軽く噛み、男の喉へ腕を伸ばした。

 細い指が頸動脈をなぞる。そのまま下がって鎖骨に辿り着き、右へ左へと進めばナイトガウンの前が開かれた。

 戻る時も鎖骨を撫でる。次は暴いた胸板に両手をついた。

 

「硬いね。私の体とは全然違う」

 

 男と女の体が違うのを、知識としても実体験でも知っていた。しかし、生きた体は初めてだ。死んだ体とは違う硬さと柔らかさ。もっと違うのは温かさ。

 細身に見えた体は、脱がすと意外に逞しい。

 手のひらを男の胸板に押し付ける。撫で回して硬さと温かさを確かめれば、腹筋の割れ目に指を這わせる。

 そこから先はナイトガウンが開ききらない。上目遣いで男を見る。男は腰紐を引っ張った。それだけで結びが解け、腰から下も開くようになった。

 

 魔族とは言え美しい少女に脱がされているのに、男は戦々恐々としていた。

 さすがは千年生きた大魔族。さっきの舌なめずりは凄い迫力だった。まさに捕食者の顔である。アウラの魔法で荒事は出来ないはずだが、魔族は行為中の相手を食べるのが当たり前、だとしたら荒事の範疇に入らないかも知れない。

 しかし、耐えた。無知な処女に玉の硬さを確かめられた時に比べたら大したことではない。

 幸いにもソリテールは歯を剥く事なく体を撫でている。愛撫からは遠く、形を確かめるような触り方。少々こそばゆいのも我慢する。

 

「ここが生殖器だね。えっと、おちんちん。おちんちんも触っていい?」

「勿論です。むしろこちらからお願いします。繊細な部分なので特に注意をお願いします」

「うん」

 

 ナイトガウンは上から下まで全て開かれ、男の裸体がソリテールの目の当たりになった。

 股の間についてる肉の棒は、女にはない生殖器。当然、ソリテールは知っている。解剖して調べた事もある。但し、生きてる間に触るのは初めてだ。

 注意されなくとも乱暴にするつもりはない。そっと触れれば柔らかく、胸や腹の硬さと全く違う。左手の指でちょんと摘まんで上向かせ、右手の親指と人差し指で根元を挟んだ。

 男性器が勃起して固くなる事も知っている。しかし、今はとっても柔らかい。本当に硬くなるのか疑わしい。

 硬くする方法があるのか。それとも獣のように発情期に入らないと硬くならないのか。ソリテールが知る限り、人類に発情期はないはず。

 男に聞こうとは思わない。目の前に現物があるのだ。思いつくことを色々試してみるのがこれまでのやり方だった。

 まずとりあえずは、根元を摘まんだ指を先端へと移動させ、

 

「おおっ!?」

「えっ」

 

 指を動かすに連れて熱くなる。柔らかかったのに弾力が現れ、それと同時に膨らんできた。指は自分へ向けて滑らせたのに、先端に来る頃には上向きになった。指で持ち上げているわけではない。それ自身が強い力で反り返った。

 もう一度根元へ戻る。今度は柔らかくない。中から何かを充填されたような張り詰め方。棒風船を膨らませたかのようだ。但し、硬さが全然違う。ところどころに入る筋が、なんだかとても逞しい。

 柔らかかった男性器は、ソリテールの知識以上に力強く勃起した。

 

「こ、こんなに、大きくなるの?」

「……なるんです」

 

 目を丸くするソリテールよりも、男の方が驚いていた。

 

(バカな!? 触られただけで立っただと!?)

 

 その気にならなければ、アウラの全身を弄ってよがらせても反応しないでいられる。

 今は初夜なのでその気ではいたものの、性の何たるかを全く知らない魔族の処女にちょっと触られただけでガチガチに勃起した。まるで禁欲三日目の夕暮れ時のようだ。無意識で女の尻を撫でてしまうレベルである。

 

(ソリテール様はたれ目だが……。たれ目で、微乳……。くっ!)

 

 来る日も来る日も同じ女だけを抱き続けた日々を思い出す。同じことの繰り返しで飽きられれば良かったのに、反対に刷り込まれた。

 本当は、たれ目も、微乳も、そこまで嫌いではないらしいのだ。嫌いと思っても体は別と云う事か。

 

 男の葛藤を他所に、真実は禁欲が長かっただけである。

 溢れはしなかったしアウラを抱こうとは思わなかったので、意識に上らないだけだった。

 

 しかし、例え真実を知ろうと現実は変わらない。

 苦しさを覚えるほど硬くそそり立っている。膝の上には半裸の美少女。その上初夜だ。一秒でも早く突き立てたい。だが出来ない。

 ソリテールは処女であり、準備を始めたばかりだ。まだまだ段階を踏む必要がある。それらを省いて不快感を与えたら来なくなってしまうかも知れない。そうさせないためにすべき事はわかっていても、途中で耐えられなくなる危惧があった。

 

「苦しそうだね。おちんちんが勃起すると苦しくなるものなの? 性行為は繫殖活動だから快感があるものだと思っていたのだけれど」

「いえ……。仰る通りです。男女ともに快感がある行為です。今の私は、ソリテール様が欲しくて堪らなくなり……」

「私が?」

 

 意外な事を言われて、ソリテールの顔から微笑が消える。男性器が勃起した時より驚きが大きい。

 あなたの全ては私のものと宣言されたが、所詮は言葉だ。何とでも言える。自分たちがそうだからこそ、魔族は言葉を信用しない。しかし体の反応を伴うと、信用に値するのかも知れない。

 

 ソリテールはまたも喉を鳴らした。目の前の男を食べたくなってくる。血肉が落ちてくるのを待ち構えているからお腹が熱い。

 いっぱい食べたばかりだ。凄く美味しかった至福の美味を上書きしたくない。何も食べたくないのに食べたくなる。歯を立てるのは拙いだろうか。唇で啄むだけならきっと大丈夫。何度もされた。きっと強くされたせいだ。乳首はまだ立っている。

 

「ソリテール様の手で握ってください」

「う、うん……」

 

 男はソリテールの視線に気付かない。そんな余裕がない。背もたれに深く体を預け、細い手を取り、股間へ誘導した。

 

「こう、かしら?」

「もう少し強く握ってください」

「……このくらい?」

「はい。そのまま上下に」

 

 このままだとソリテールに襲い掛かってしまいそうだった。それを避けるには、一度出せばよい。

 ソリテールの指に包まれる。親指と、人差し指に中指に薬指。小指だけは少し浮く。湯上りの火照った体は時間が経っても冷めないようで、一層熱くなっている。指先まで温かい。

 

「根元から、一番上まで。もっと、速いペースで」

「うん。……苦しいの? それとも気持ちいいの?」

「気持ち、いいですよ。ソリテール様の指が」

 

 ソリテールの視線は上に下に。

 下を向けば勃起した男性器がある。右手で握って上下に扱く。骨が入っていそうな硬さで、そのくせ肉の弾力がある。そしてとても熱い。自分の体も熱くなってると思うのに、指と手のひらに熱が伝わる。

 上を向けば男の顔。飾っておきたくなる美貌が苦しそうだ。自分が惨く殺すと宣言しても、実行に移そうと剣を向けても、殴ってくる時も、涼しい顔を崩さなかった。それが苦しそうに歪んでいる。

 自分の手指が男の顔を歪ませていると思うと、少し楽しくなってきた。いつも頭の片隅に住まわせている冷静な自分が、自分は高揚していると判定した。

 とても美味しそうで、だから高ぶっている。お腹は熱くなってくばかりだ。

 またも喉を鳴らして唇を舐め回す。口が寂しい。何かが欲しい。

 

「あっ、んっ……。ちゅっ……ちゅる……」

 

 じっと見ていると、男の顔が近付いてきた。

 ソリテールは避けず、自分から前のめりになって顎を上げ、実地で教えられた通りに口を開く。

 唇が隙間なくぴったり合わさって、ぬめる舌が交じりあう。

 味よりも感触。だから接触面積を増やす。体ごと前に出て唇を押し付け、めいっぱい舌を伸ばした。

 自分と違う温度。唾の粘り方。混ぜ合わせて一つになる。

 吸うのも忘れて味わって、唇が離れそうになったら体を前に進めて逃さない。けども、男がソファーにもたれると届かなくなった。

 ソリテールが伸ばした舌からは唾液の糸が長く引いた。

 

「下もお願いします」

「え? あっ、ごめんね」

 

 キスが深くなるとソリテールの手は止まってしまった。

 初めてなのだ。二つの事を同時に出来ない。

 軽く謝って右手の上下運動を再開させる。下を向いて、すぐに気付いた。

 

「あら? 何か出てるけど……、精液とは違うのよね?」

 

 人類の研究をしてると自己紹介するくらいなのだから、射精くらいは知っている。男性器から出る精液が女の子宮に注がれる事で子を授かる。つまりは子種だ。知ってはいても見た事はない。

 偶然にも性行為を目にした機会に最後まで見続けていれば見たかも知れない。けどもその時は、珍しい光景に楽しくなって例外なく途中でお邪魔していた。色々と見聞きして経験を積んだ今ならば最後まで見届けられるかも知れないが、そのような心境になってからは一度も遭遇していなかった。

 

 ソリテールが扱く男性器の先端に、おそらくは精液も出る場所であろう尿道口から、透明な汁が滲んできていた。

 

「違います。男も濡れるものなんですよ。射精の前に出てくることから先走りとも言います。そのまま、続けてください。そろそろ、です」

「……ええ」

 

 ソリテールはアウラと頭の使い方が違う。魔法一辺倒ではないし、論理的に考えることが出来る。

 彼は「男も」と言った。ならば女も濡れるのか。

 性行為は生殖器を繋げるのだから、今握っている男性器を女性器に挿入することになる。

 こんなに大きいものが入るのかと思うが、入るらしい。それでも摩擦などで入りにくいだろう、と思ったところで気が付いた。

 

 右手で男性器を扱き続け、左手の人差し指で滲む汁に触れてみれば、とても良く伸びて粘性が強い。おそらくは潤滑液になる。但し量がとても少なく、勃起した男性器全てを潤すにはとても足りない。

 女が濡らして補うのかも知れない。

 

「んっ……」

 

 右手の仕事は休まない。左手を自分の股に潜り込ませる。

 入る場所はちゃんとわかっている。開いて観察した事もある。ピッタリと閉じた筋に中指を沿わせれば、それだけで違うのがわかった。いつもより温度が高くて柔らかくて、

 

「っ!」

「あっ!」

 

 瞬時に注意が右手に戻った。

 男が小さく呻いたと同時に、ソリテールの右手は圧を感じて、先端からどぴゅどぴゅと噴き出てきた。

 勢いは強く、ソリテールの顔まで届いた。

 頬に熱いものがべったりと付着し、呆然と見守る間も溢れ出ている。最初の勢いはなく、白濁した粘液はすぐに重力に引かれてソリテールの指を汚した。

 

「しばらく、ゆっくりと続けてください」

「……うん」

 

 絞るようだと思った。

 ゆるゆると吐き出されて、それが全てソリテールの手指にまとわりつく。

 熱い。匂いが濃い。とろみがある。粘度が高い。大半が白い。透明な部分も幾らか。粘液が寄り集まった粘塊もある。

 頬に付いたものがゆっくりと流れるのを感じる。舌を伸ばしても届かないところ。

 

「これが……精液……」

 

 熱かったのが、外気に触れて急速に温度を失っていく。

 右手を顔の前に運び、手のひらを見て、手の甲を見る。握ったところに上から流れて来たので、指の背にたっぷりとまとわりついている。

 鼻を近付ければ生々しい匂い。出て来たばかりの命の素。躊躇いなく口を付けた。

 じゅるると粘塊を吸い取って、指を舐める。

 

「嫌いじゃないかも……」

 

 口に入れたものはきちんと飲み込む。

 それで胃を刺激されたのか、空腹が強くなった。お腹が熱い。もっと欲しい。

 頬を流れる粘塊も指で掬って口に運んだ。

 ちらと下を見れば、立ったままの男性器が自ら吐き出した粘液で濡れている。

 食べたいと思った。美味しそうと感じた。

 

 人間の男を食べた事は何度もある。けどもそこは遠慮していた。男の生殖器は排泄器でもあり、衛生的でないからだ。

 体を開いて食べる時だって、横隔膜より下に手を付けるのは極僅か。

 それが今、とても食べたくなっている。

 男性器を食べたいのか、精液を舐めたいのか、どちらなのかわからない。

 これまでの経験で培った媚びる目で男を見上げ、「舐めていい?」と問いかけた。

 

「歯は立てないでください。極力当てないように」

「うん……」

 

 半裸の美しい少女が、精液を舐めながら頬を緩めている。

 倒錯的で、官能的だ。

 挙句、舐めたいと来た。

 拒否する男ではないし、出来る立場でもない。

 ソリテールが床に座って股に顔を近付けるのを、男は疑念と共に見守った。

 アウラに初めて会った時は、サキュバスではなかろうかと思ったのだ。以降の付き合いでそれはないと確信したが、ソリテールを見ると揺らぎそうになる。

 人の血肉を食すと言うから体液も好みなのだろうか。あるいは好奇心が先走っているだけか。

 

「あむっ……。れろぉ……。んっ……、んっ……」

 

 一度出しても男は全く萎えない。

 変わらぬ硬さをソリテールは口に含み、唇で剛直を挟んだ。舐めとるより効率的に回収出来ると判断した。

 小さなお口をめいっぱい開いて何とか咥えられても、太さがあれば長さもある。根元までは届かない。代わりに右手で握った。さっき教えられた通りに上下に振る。粘つく汁のおかげで滑りがいい。

 

 男はソファーに座ったままでソリテールは床に降りた。加えて座る深さやソリテールの低い背も影響した。偶然にも、位置関係がとても良かった。

 逸物を濡らす精液を全部舐めとっても、ソリテールの口は離れない。尿道口から自分の唾ではない味が滲み出るのを感じた。もっと舐めようと思って、亀頭だけを口に含む。反り返る逸物だから、意識せずとも竿と亀頭の合わせ目に舌がぶつかった。裏筋は敏感で、気持ちの良い部分である。

 舐めとろうと舌を動かし、右手は覚えた動きを繰り返す。

 左手は男の太ももに乗せていた。中指に少々付着したぬめりはソリテールも男も気付かない内に消えてしまった。

 

 処女が初めてするフェラチオなのに、男はまたも込み上げてくる。

 自身の世界では最低でも日に五度は出し、多ければその倍。場合によっては更に五割増し。それ以上となると気力が持っても精力が持たない。何らかの形で回復する必要がある。

 多い時は日に十五を、何日も何日も出さずにいられた。耐えようとは全く思わない。

 出ると宣言したのがソリテールに聞こえたのかどうか。可憐な唇に亀頭を包まれ、少女の口の中に吐き出した。

 

「んむぅっ!? んっ……んっ…………、じゅるる……」

 

 ソリテールの頬が僅かに膨らみ、喉が鳴る音と共に窪んでいく。

 窪んだ頬が元通りになっても口は離れず吸っている。右手もゆるゆると上下する。

 顔を上げたソリテールの微笑みは、始める前と少し違った。

 

「おまんこより、先にお口を使われちゃった」

「とても良かったですよ。フェラチオをご存知だったのですか?」

「ふぇらちお? それなぁに?」

「口や舌で性器を愛撫する事をオーラルセックスと呼びます。女性が男性にする時がフェラチオですね」

「それなら男の人が女の人にする時は? おまんこを舐める、のよね?」

「クンニリングスと呼びます。こちらをお使いください」

「ありがとう。使わせてもらうね」

 

 濡れタオルとグラスを差し出した。

 ソリテールは顔を埋めてから手指を拭う。グラスは飲むものだろうと思って口に含めば、酸味があってちょっぴりビター。美味しいと思ったけれど、後味が綺麗になくなったのは少し残念に思った。

 半分減らしたグラスは男へ返し、タオルも返そうと思ったが、広げて男の股にあてがった。軽く握って上下に動かす。硬さが全然変わってない。

 タオルも返して腕を下ろせば、引っかかっていたキャミソールがするりと落ちた。

 男もナイトガウンから腕を抜く。

 

「二度もして頂きましたから、今度は私が致しましょう」

「……胸をしてもらったわ」

「こちらですよ」

「んっ……」

 

 男の指先が、ソリテールのへそから下を軽く撫でた。

 ソリテールはたっぷりとお腹に収めたはずなのに、全く治まらない。お腹は熱いままで、熱いものが下ってくる。

 

「ご案内します」

「あっ」

 

 男は長身でソリテールは小柄である。二人が並ぶと、ソリテールの頭は男の肩に届かない。ソリテールがめいっぱい背伸びをしてもキスは出来そうになかった。

 代わりに、抱き締められると小さな体がすっぽりと包まれる。

 大きさ相応に軽いので、ことも無く抱き上げられた。

 

 連れられたベッドは、広くて狭かった。

 

 ベッドとしてはとても広い。小柄なソリテールなら手足を広げても十人以上が同時に横たわれる。ソリテールが知る人類の住居の一室くらいの広さが優にある。

 なのに狭く感じるのは閉じられているから。

 四方はドレープカーテンで厚く閉ざされ外の様子がまるで分らない。世界から切り離された異界の部屋で、更にこの場所だけ切り取られたかのように錯覚する。ベッドの上は、小さく切り取られた二人だけの世界になった。

 どの道、広さも狭さもすぐに気にならなくなった。

 

 ベッドに下ろされても、ソリテールは男の首筋に回した腕をほどかない。赤と青の目を真っ直ぐ見つめ続ける。

 見てるだけなのに飽きない。何が楽しいのかわからないのに楽しい。楽しいなら、そこには原因と機序がある。しかし探ろうとは思わない。冷静な自分も、そんな事は後回しにすることを同意した。

 

「あっ♡」

 

 見るのを我慢して触れ合うのはもっと良い。

 裸で抱き合うのだから、素肌同士が接している。固くて温かくて、小さな体は完全に包み込まれた。

 色々なところを触られて、色々なところが触れてくる。ソリテールが口で愛撫した男性器も太ももや下腹に、握ることも、もう一度口に含むこともあった。

 確かに触れて、触れている実感が確実にあるのに、本当に触れているか定かでない。というのも、体が溶けてしまったと感じるからだ。どろどろに溶けてしまって、肉体の内側をかき混ぜられているかのよう。まさかと思って自分の体を二度確かめ、三度目からはそのようなものだと受け入れた。

 

「んぅっ……」

 

 既知の自分が剥ぎ取られ、自分すら知らない内側を暴かれることに不安も恐怖もない。知らないものを教えてもらえる歓びと、それが素晴らしいものであると確信にも似た期待と、肉の悦びがあった。

 股に貼り付くのと反対の手を取って、ソリテールは甘く指を噛んだ。

 男の指だ。自分と比べたら硬くて筋張った無骨な手。なのに絹布で撫でるような柔らかさと滑らかさを生み出している。力の加減が弱いわけではないのに、どうしてこうなるのかソリテールには全くわからなかった。

 しかし、口から出たのは違う言葉だ。後になって、この質問は素晴らしく賢明であったと自賛した。

 

「セックスのとき、女が叫んでるのを見たわ。あれはどうして叫んでたの?」

「起源は諸説あるようです。機能としては、男の興奮を煽る効果がありますね。セックスは相手あってのもの。無反応では寂しいものですから」

「それなら私もいっぱい叫んだほうがいい?」

「何事も適度というものがありますよ。ソリテール様の感じる通りに。私からは、そうですね。私からも察することは出来ますが、ソリテール様の準備がどの程度進んだかを教えてくださると助かります」

「わかったわ。……あなたが触ってくれるところがとても温かくて。お腹が熱くなってるの」

 

 いつから股に貼り付いているのかわからない。始めは手でなかった気がするし、ずっと触られていたのかも知れない。

 触れているだけだったのが軽く圧すようになって、円を描き、呼応して何かが呼ばれている。

 

「入れる部分ですから丁寧にほぐすのですよ」

「あなたのおちんちん、すっごく大きいわ。あんなに大きいのが本当に私のおまんこに入っちゃうの?」

「入りますよ」

 

 無垢な筋に過ぎないソリテールの秘部は、十分に温まって奥の媚肉が緩んできている。入り口は閉じていても、男が軽く中指で押せば割れ目に沈んだ。中は熱く潤って、奥から滲む愛液が行き渡っている。

 

「濡れているのがわかりますか? ソリテール様が受け入れるために愛液を分泌しているんです。愛液の量が足りなければローションなどで補うことも出来ます。ソリテール様の濡れ方なら必要ないでしょう」

「……うん、わかるよ。奥からぬるりって降りてきてるの。こんなになるのね……」

「濡れる量は十分ですが、固さはまだ取りきれません。ソリテール様がご興味をお持ちでしたことをいたしましょう」

「あっ?」

 

 全身で覆いかぶさって、心地よい重みを与えていた男の体が、ソリテールの上から下がっていった。

 唇を啄まれ、顎にキスされ、鎖骨を舌が這い、尖ったままの乳首を軽く噛まれる。お腹に頬ずりをされるのは少しこそばゆく、へそを舐められるのはくすぐったくて腰が跳ねた。

 今のはされたくなかったと苦言を呈そうとしたところで、自分が取らされている格好に気が付いた。

 

「こ、この格好は、少し……」

「お嫌でしたか? ソリテール様なら恥ずかしく感じることはないと思ったのですが」

「恥ずかしくは、ないけれど。……人間の女は恥ずかしいの?」

「普段は隠す部分を晒すわけですから、そう感じることが多いようですね」

「それは、大丈夫。大丈夫だから、続けて」

 

 ベッドの上に来てからはずっと絡み合っていた。それが離れるのは少し寂しい。それ以上に無防備であることを実感する。

 裸身だ。身にまとうものは何もなく、時折長い髪が流れて肌を隠す程度。それとてすぐに梳かれて流される。

 ベッドに横たわっているのですぐに動けない。その上で、股を開かされた。

 両膝を折り曲げて、足の裏をベッドについて、尻の下に枕を差し込まれて腰を少し浮かされて。股の間を男に見せつけている。

 

「手はこちらに。そう、軽く開いてください」

「どうなってるの? 自分でもじっくり見たことないの」

「とてもお綺麗ですよ」

 

 両手を所在なげに投げ出す事は許されず、自分の股へ導かれた。指先を筋の両脇に乗せられる。言われるがままに左右へ引いた。

 

「恥ずかしくはないけど、でも……」

「お気にかかる事があれば何なりと」

「……うん。平気。おまんこを舐めるんだよね?」

「舐める以外にもいたしますよ」

「えっ」

 

 M字に股を開き、自分の指でくぱあと割れ目を広げる。

 羞恥心が息をしてない魔族なので、卑猥なポーズを恥ずかしく思うことはない。しかし、とても無防備で何をされても抵抗できない。今更自分が害されると思わなくとも、これまでの経験が無防備でいることを良しとしない。

 体が熱いのはここまでの延長なのか、それとも警戒が緊張に上り詰めているのか。意識しなくとも変なところに力が入る。努めて体の力を抜き、深く息を吐いた。同時に入ってきた。

 

「えっ?」

 

 違和感は全くない。息を吐けば吸うのと同じ自然さで入ってきた。

 まさかと思って締めてみる。何かが触れている。異物感がある。感じたことのないところ。

 

「ひゃっ!?」

 

 今度こそ本当に力が入った。つま先がきゅっと折れ曲がり、下腹が凹んで入ってるものを強く感じる。

 体が溶けたようだとか、内側を触られてるようだとか思ったのは、始まってもいなかった。溶けたどころではなく別のものに作り変えられて、本当に自分の内側を弄られている。

 全くの未知が焦燥を駆り立て、慌てて自分の股ぐらを覗きこめば、男の顔が近づくところだった。

 

「まっ……」

 

 静止の声は、声にならなかった。

 

 

 

 男からはとても良い眺めだった。

 興奮に肌を上気させたソリテールが、股を開いて指で広げている。無垢な割れ目に淫靡な肉色が隠されているのは、何度見ても興奮を煽ってくる。

 ソリテールの外見年齢はターニャより若干上の少女に見えるし、胸の発育度合いもそれに倣う。なのに脱がせると妙に女らしい。ゆったりとしたワンピースドレスを着ていたので余計にそう感じるのかも知れない。

 腰つきが豊か、ということはけしてないのだが、腰は括れているし、肉付きは薄いながらも尻は丸くて柔らかい。少々揉んでも骨の硬さに届かない。柔らかさ以上に張りのある肉がいい仕事をしている。

 太ももも細いながらに弾力がある。触って楽しいし、頬ずりをしてもやはり楽しい。

 感度も上々であるようだ。

 アウラはじっくり開発してきた。しかし、ソリテールは何もかも初めてなはず。懸念が全くないとは言わなかったが、余計な心配であったようだ。しかしそうすると、必要もないのにアウラの開発を入念に行ってきたことになる。今のアウラがどうなっているのかちょっとだけ懸念が過ぎったが、今ここにはいないので忘れることにした。それよりもソリテールである。

 

 上からほぐしてきた甲斐あって、指一本は難なく飲み込んだ。入り口は処女膜で狭められていても、奥は広がって余裕がある。指への吸い付き方も悪くない。

 指を入れる際に膣内に溜まった愛液が押し流され、とろりと垂れてきたのはいやらしい。

 

 広げているので、内側が上から下までよく見える。

 下の穴は指を差し込み、中の様子を探りつつゆっくりと出し入れする。上の小さな肉芽は完全に皮を被っていた。

 股の間からソリテールを見上げれば、微笑を消した真剣な顔と目が合った。目は潤んで頬を赤く染め、小さなお口は薄く開いて時折下唇を噛んで唾を飲む。表情を繕うのを忘れるほどに期待しているらしい。是非にも答えねばならなかった。

 

「あっ……、あぁっ!? あっ、あっ、いやぁ……何これぇ……! はうっ!? んっんっ、ああっ!」

 

 始めるための準備は終わっている。

 吸い付き吸い出し、包皮を舌で剥いたら優しくつつく。小さなクリトリスはすぐに膨らんできた。つるつるの舌触りは楽しく、しかし舌先で激しくするのはまだ先である。

 強く吸いながらも刺激は甘く、膣内に潜らせた指も忘れない。

 

 五分としない内にソリテールの手が離れた。両手を男の頭に乗せるのは、自分の股に顔を押し付けてるようにも見えた。

 太ももは閉じようとして男の顔を挟む。

 つま先は何度も折れ曲がってベッドから離れ、小さな足が宙を掻いた。

 

「あっ? あっ? ひゃうぅぅ、そこぉ……! うにゅうっっ! ……くぅ……!」

 

 知らないもの、知ってるものを区別する余裕がない。

 彼を興奮させるために演技をすると宣言したが、どこまで演技でどこから本気なのかわからない。いや、本気と演技の区別はなく、何を口走ってるのかもわからない。

 体を焦がす食欲らしきものが、頭の芯まで熱している。飢えながら満ちていく矛盾が理解できない。

 いつの間にか、自分で自分の脚を押さえているのに気付かなかった。ベッドに横たわって、大きく股を開いていたはず。それが足も腰もベッドから浮いている。

 股を広げたまま自分で自分の太ももを抱えて、股間を上に突き出している。

 くちくちじゅるじゅると股の上から粘着質な水音が鳴り、無毛の下腹を温かくて緩い汁が流れていく。

 

「あぁ……、そこ、あたたかくてぇ……。…………えっ? そこ、おしり? そんな、ところもぉ……。んぅっ」

「尻の穴も犯すと言ったでしょう?」

「いった、けどぉ……。はあ……はあ……」

 

 尻の穴も舐められ、膣へされたように指を突き立てられている。されてしばらくは気付かなかった。

 

「ちゅっ……んっんん、ちゅうぅ……。れろれろ……、ちゅっ♡」

 

 ソリテールからも舐めた。自分から舐めることを申し出たのか、してくれと言われたのかはわからない。

 脚を伸ばす男の股に、ソリテールは顔を埋めた。ソファーの時とは体勢が違うので、角が邪魔にならないように横から。今度は咥える代わりに唇で竿を啄みながら舌を使う。

 二度出した上に処女の口淫だ。射精を促す激しさはなく、熱を溜める甘い愛撫。

 男はソリテールの長い髪を手櫛で梳く。ソリテールも口の邪魔にならないようかき上げる。

 

 ソリテールは口を離しても手は離さない。知らないなりに本能が導くのか、萎えないようずっと扱いている。

 男に手を取られてベッドに寝かされたとき、ソリテールはいよいよだと思った。

 

 全裸で横たわって股を開く。舐められたときと同じ。

 違うのは体の熱さと下腹の疼き。

 お腹が熱かったのは、ソリテールが思っていたところより少し下。使わないのに魔族も備えている器官。

 そこから熱が下りて上って、男性器が通る道を潤している。

 

「んっ」

 

 男が脚を脚の間に入ってくる。

 腰を捕まれ、少し引き寄せられた。

 太くて熱い男性器が触れてきた。

 先端が柔らかな内側を撫でている。

 ソリテールがじっくり舐めたから先端には透明な汁がにちゃにちゃと滲んでいて、ソリテールもたっぷり舐められ弄られたからとろとろした汁が外にまで溢れている。

 

「入れますよ」

「うん、来て。んっ」

 

 肉に埋もれて閉じた穴だったが、散々嬲られ暴かれた。どこに穴が空いているのか、ソリテールも今となっては把握している。そこへぐいと圧が掛けられた。

 体の真ん中を押されている。そこが入り口で、中に入ろうとしている。

 

(これは……!)

 

 しかし、そこで止まった。

 ソリテールは気付かないようだが、男にはよくわかった。穴があって、十分ほぐしてこれなら大丈夫と判断したのだが、入っていかない。壁が聳えているようだった。

 

「どうしたの? まだ?」

「ソリテール様は処女ですから、慎重に進めているのですよ」

「痛くても平気よ? 早くして欲しいな」

「……たまわりました」

 

 魔族の体はこんなところまで強靭なのか、ソリテールの処女膜は丈夫だった。

 膣口を薄い肉ひだが狭めているのは確認した。指を使う際は破かないよう気を遣った。迂闊に触れたら破けそうな儚さだったのだ。なのに破けず挿入を果たせない。

 ここまで丈夫だと、事の前に切開する必要が出てくる。

 しかし、この期に及んでそんな事をしてしまえば雰囲気が台無しである。魔族のソリテールが雰囲気を重視するかどうかは定かでないが、しないで済むならしないで済ませたい。

 大体、処女の処女膜が破れませんでした、では情けないにもほどがある。

 幸いなことに、ソリテールは少々の痛みを甘受してくれる。

 男はソリテールに密着させていた体を起こし、細く括れた腰を掴んだ。

 位置はそのまま、軽く腰を引いて圧を弱め、指で確かめたソリテールの内側の向きと角度を合わせ、叩きつけるように腰を押し込んだ。

 

「――――――っ!!」

 

 強靭ではあったが薄く儚い処女膜を破り、勢いを減じることなく未通の処女地を抉り切り開いて、男の逸物は根本までソリテールに包まれた。

 処女なので狭く固い。隙間なくみっちりと食いついてくる。中は温かく潤み、魔族だろうと女であると訴えている。

 そして、深い。

 華奢で小柄なソリテールなのに、根本まで挿入しても奥の壁に届かない。

 

「――っ!」

 

 股間と股間がぶつかり、太ももを抱えて押し込みようやく先端が触れる深さ。

 

「あ…………ああ…………」

 

 シーツを掻いていた手が男を捕まえ、強く抱き締めた。

 

「痛みや苦しさはありますか?」

 

 ソリテールはふるふると首を横に振る。

 本当に苦痛はない。魔族はこんな事で嘘を吐かない。

 ただ、言葉にし難い。

 奥まで入られて広げられ、中で自己主張している。体の内側から広がって炙られて、異物感があるのに異物とは思えない。

 欠けていると知りもしなかった部分が満ちている。

 ひび割れた心と体が潤っていく。

 

「ねえ……」

 

 ソリテールは、自分がどんな顔をしているか自覚がない。

 

「いっぱい、動いて? もっとあなたを感じさせて。私のおまんこ……好きに使って?」

 

 仰せの通りに。

 男はそう応えようと思ったのだが、仮にも夫婦である。夫が妻に仕えるのは自然でもそればかりでいる必要はない。

 どのみちする事は同じなのだ。

 

「そのつもりですよ」

「あ♡ あっ……はあんっ♡」

 

 男はソリテールがわかる速度で腰を引き、来た道を戻っていく。一度広げられた道は男を遮ることなく、奥まで迎え入れた。

 使い方を覚えさせられた媚肉が逸物に絡みつく。入り口から奥までの壁を漏れなく精査され、女を呼び起こされては使われる。

 脚に腰に力が入るのは、ソリテールの意識と完全に独立していた。勝手に締まって勝手に緩み、繰り返す度に強く感じるようになっていく。

 深まっていくし強くなっていくし、力が抜けるようなのにつま先まで力が滾ってくる。

 ずっと擦られ続ける膣に痛みはない。動きはとても滑らかだ。

 とろつく愛液が溢れている。膣内で男性器に何度も何度もかき混ぜられ、白く泡立ってきた。ソリテールがしゃぶった亀頭で掻き出され、結合部は白い粘液のような泡のようなもので汚れている。

 

「あっ、あっ、あうぅ……。んっんっんむぅ……。じゅるる……。これ……私のおまんこの味なの? はむぅっ……♡」

 

 股の事なのにソリテールにわかったのは咥えさせられたからだ。

 精液ではない白い汁を舐めとらされ、太い剛直を口に突き立てられた。

 フェラチオの時は舐めるだけだったのが、今度は深く咥えさせられて、先端が喉奥を突いて少し苦しくなった。

 その間も指で中をかき混ぜられ、肉芽を内と外から責められる。

 

 痺れるようだった。

 乳首の時も弾けるように感じたのが、こちらはずっと強い。延長にあるようでいて、何段階も飛ばしてるように感じられる。

 

「今度は後ろなの? あんっ♡ あっ♡ あっ♡ あ゛っ!? あっ、ひぃんっ♡」

 

 小柄なソリテールを包み込み、正面から抱くのは悪くない。

 しかし、後ろからも捨てがたかった。ソリテールの髪は長く美しい。白い背中を舞う髪を見てみたくなるのは道理である。

 

 後ろからでも注挿に問題はない。

 腰を打ち付ければ下腹が小尻にぶつかって小気味よい音を立てる。

 深い膣は満遍なく包んでくれる。

 奥まで入れて軽く揺すると、肉ひだが蠢いてくるようだ。

 

「あひぃっ……あっ、ああぁっ♡ ……はうんっ♡ あっ、ああんっ♡ そこ、すきぃいぃぃっ♡」

 

 奥から子宮を揺すり、下腹を優しく撫でまわし、尖って顔を出したクリトリスを執拗に嬲り続ける。

 肉ひだが入り口から奥へと蠕動するように蠢いて、子宮口が亀頭に吸い付いてくる。全体がキュウと締まっては緩み、着色が無い肛門の皺が少し伸びた。

 腰を引けば掻き出された愛液が細い太ももを伝っていく。

 

「ひぃんっ! はぁっ、はぁあっ……あっ、いっ……!」

 

 引いた時の倍の速度で戻れば、ソリテールの顎が上がった。甘い叫びに喘鳴が混じり、ベッドに突いた両手は皺になるほどシーツを握り締めている。

 全身が汗ばんで、舞っていた髪が背中に張り付くようになってきた。

 

「あっ、あなたも、出そうなの?」

 

 男が動きを止めたので、ソリテールはそろそろと思ったらしい。実際は、次は髪を結ってやろうと考えただけだった。

 二度出したので、男には余裕があった。が、応えようと思えば応えられる。

 

「そろそろソリテール様の中に」

「いっぱい出して? お口の次は、おまんこで。あっ?」

 

 後背位だった。

 一旦抜いて正面から。今度はソリテールの体を抱き起こす。

 

「様々な体位があるものですよ。ソリテール様とは全てを試しますから、お楽しみに」

「……うん。あなたの顔を見ながらしたい。おまんこでおちんちんを感じられて、あなたも抱きしめられて……。この体位、好き、かな」

 

 男の股の上にソリテールが座っている。

 挿入はきちんと果たして、長い逸物は全てソリテールの中に埋まっている。

 ソリテールは男の顔を見上げながらすがりつく。

 男の手が小さな尻を掴んで少し浮かせ、ゆっくり下げた。三度目にソリテールからも尻を浮かせて、弓なりに反る背中を男に支えられ、往復する毎に男を締め付けた。

 

「お口で飲んだ精液、とっても熱かったわ。あれを私のおまんこに出すのね。私のお腹がいっぱいになっちゃいそう。おちんちんが気持ち良くておまんこが溶けちゃいそうなのに、精液を出されちゃったらどこまで入ってくるのかな?」

 

 恍惚と語るソリテールは、挑発してるようでも独白してるようでもあった。

 例え独白であろうとも、無視をしてはいけないのだ。

 

「全てを犯すと言ったでしょう? あなたの全ては私のものです」

「う……」

 

 口から出るべき言葉が詰まって、熱が溜まっていく。

 セックスで体を交えて、そもそも魔族である己が恥ずかしいと感じるはずがない。

 ならば、もどかしくも狂おしい熱は何なのか。

 分からない事がわかって、自分は自分ではない何かに支配されてる。

 

「う……あ……。ふあっ……、あ……あ……、でて、る……♡」

 

 中で震えているのを感じた。

 口で受けた時のように、熱い精液が体の奥でどぴゅどぴゅと放たれている。

 

「はぁ…………、あぁ……♡ あぅ……、わたしの、だんなさま……♡ んんっ♡」

 

 体が折れるほど強く抱き締められた。

 

 その瞬間、全てを知ったように感じた。

 教えてくれなかった一番の事。

 自分でない自分がいる事。

 自分の体を彼に支配された事。

 自分が知らない自分を教えられた事。

 人間と、魔族の事。

 

 全部がわかったような気がして、次の瞬間には忘れてしまった。

 確かなものは腕の中に。

 抱きしめられて、初めてのセックスは、やはりよくわからない。

 

 最高なのか普通なのか、比較対象がなければ評価しようがない。

 だけれども、もっとしたいと思ったのは確かだった。

 

 

 

 

 

 

 生死が空しい魔族が空虚でないのは、魔法が煌々と輝いているからだ。灯台の如く魔族の生涯を明るく導く。全ての魔族は固有の魔法を生涯に渡って研鑽し続ける。その灯が消えると、とても苦しい。

 ソリテールは、魔法が得意過ぎた。自身の固有魔法よりも、練った魔力を飛ばした方が強力だった。生きる意味の半分が空しく溶け消えた。だから熱心に人類を研究し、人類を殺し続ける。自分の似姿を殺す事で、自分が生きている事を実感する。

 同族を手に掛けたこともあったが、魔族は死ぬと魔力の塵に還ってしまう。石ころを蹴飛ばした方がまだしも楽しかった。

 

「あなたを殺せなくて良かったわ」

「私も殺されなくて幸いでした」

「…………」

「何か?」

「……何かを伝えたいのだけれど、言葉にならないの。もう少し待ってくれるかな?」

「幾らでもお待ちしておりますよ」

 

 体を交えて彼を感じた。

 感じるのは自分があるからだ。

 逆説的に強く自分の存在を感じられる。

 強く感じれば感じる程、生きている実感があった。

 それを何と呼ぶのか、ソリテールにはわからない。

 

「でも、セックスは凄く良かった。今は少し、疲れちゃったけど。もっとしたいな」

「光栄です。ですが、あれだけで満足されては困ります」

「そうなの?」

「ソリテール様は処女でした。何事も初めては拙いものです。当然、感じ方も。繰り返すごとに上達していくものですよ。魔法を使うのも、体を使うのも同じですね」

「魔法のような深みがセックスにもあるの?」

「当然ございます。勿論、セックスについて以外にもソリテール様にお伝えしたいことが山のようにございますよ」

「……楽しみにしてるね♡」

 

 男の頬に唇を落とした。

 微笑を作らなくとも、頬が勝手に緩んでいた。

 

 

 

 

 

 

 翌日、応接間に入ったアウラは、またかと思った。

 

「アウラ、おはよう。随分ゆっくり寝てたのね」

「………………ええ」

「おはよう」

「……」

 

 男からの挨拶は聞き流す。アウラの視線は、ソリテールに注がれていた。

 

 ソリテールは、男にくっついていた。

 隣り合って座って、ではない。男の上に座っている。

 男は机の上に幾冊もの本を広げてソリテールに指し示しているが、ソリテールは本よりも男の顔をじっと見ている。

 確かに整った顔だが、あんなにじっと見つめるほどいいものだろうか。

 それにくっつき過ぎだ。あれでは動きづらいだけではないだろうか。

 ふと、思い出す事があった。

 

「何でそんなにくっついてるわけ? そいつが好きなの?」

「好き?」

 

 ソリテールは微笑を浮かべたまま小首を傾げる。

 とぼけた様子はなく、アウラの言葉の意味を測りかねていた。

 

「好きってなぁに? 私は私の旦那様を感じていたいだけ。感じたい気持ちが好きって言うの?」

「それは知らないわよ」

 

 海夢が、好きはくっつきたくなる、と言っていたのだ。

 ソリテールに自覚がない以上、アウラにわかるわけがなかった。

 

「別にいいけど」

 

 ソリテールは同族である。つまり他の利用者たちと同じ赤の他人である。アウラの興味は続かなかった。

 仮にアウラがターニャのように常識的な思考を持っていたら、色々思う事があっただろう。方や惨く殺すと宣言して実行に移し、片や見事に返り討ちして死すらなまぬるい苦痛を叩き込んだ。それが何故か夫婦である。

 とても不思議な事態であるが、アウラは考えもしなかった。

 

 二人は放置して、自分はさっさと食事をとって日課の魔法の研鑽に移ろうとしたところで、別の事を思い出した。

 

「初夜って言ってたわね。それってソリテールともせっ」

「お前は黙ってろ」

「………………」

 

 肝心なところで口を縫い留められた。

 今のは言葉だけではない。強制力が乗っていた。口を開いても言葉が出ない。喋ろうにも喋れない。

 

(こいつ死ねばいいのにこいつ死ねばいいのにこいつ死ねばいいのにこいつ死ねばいいのに!)

 

 アウラの呪詛は通じない。

 魔法の研鑽は欠かさなくとも、魔力を用いずに呪いを掛ける方法は学んでこなかったのだ。

 

 アウラが睨みつけても二人は二人の世界に行ったまま。

 機嫌が奈落の底を這っていたが、アウラに出来る事は何もない。

 無言でパントリーへ移動し、食事は自室に持ち込んだ。自室に戻る時にもう一度応接間を通ったわけだが、二人から声を掛けられることはなかった。

 

 

 

 それから次の食事のために応接間へ入った時、ソリテールの姿はもうなかった。

 男が一人でソファーに身を投げている。

 アウラの姿を認めると、顔を上げた。

 

「自分の事じゃないからターニャ様の言葉を忘れてたな?」

「何よ」

 

 この男は、折角自分が声を掛けたやったのに有無を言わさず黙らせたのだ。アウラの機嫌はまだ地を這っている。

 

「独占欲が爆発して、と仰っていただろ? いらっしゃる方々の前で、他の方を思わせることを言ってくれるな」

「私には関係ないでしょ」

「俺にはあるんだ。アウラだってラム様やレム様の前で下手な事は言えないだろ?」

「……仕方ないわね」

 

 アウラもラムとレムに睨まれるのは嫌らしい。

 

「でもいない今ならいいでしょ? ソリテールは初夜って言ってたわ。あんたはソリテールにもセックスをしてやったわけ?」

 

 切っ掛けはバラライカである。

 バラライカは「セックスをしてやってる女が多いようだ」と言っていた。

 初めて聞いた時は意味がわからなかった。積極的に調べようとは思わなかったが、時間が幾らでもある。書斎に入った時にふと思い立ち、辞書を引いてみた。

 かくして男女の間で為される秘め事を、アウラはようやっと知ったのである。

 

「そーいうことは話さないと言っただろ? それとも……」

「何?」

 

 思い付いたから口にしただけであって、アウラの興味は続かなかった。

 代わりに男が思い付いたことがあった。

 

 アウラにはずっと訓練を施してきた。

 いつか来るかも知れない時のために互いに楽しむための感度開発である。

 訓練の成果と、昨夜のソリテールを見て、もしかして訓練は不要だったのではと思わなくもなかった。

 膜こそまだついてるものの、アウラの体は既に仕上がっている。いよいよ実際に使ってみても良いのではないだろうか。

 

 しかし自身の世界にいる時のように、三日もすればどうにもならなくなってしまったらどうすれば良いのか。

 まさかアウラに土下座してお願いするのか。

 そんな事をしてしまえば、アウラが際限なく調子に乗るのは目に見えている。

 ならば、そこに至る前ならば良いのではないだろうか。

 

「アウラ、ちょっと俺のちんこを舐めてくれないか?」

「………………死ね」

 

 あえなく振られてしまった。




ソリテールのイメージはオーギュスト・コットの春
死んだら塵になるのはアイデンティティのクライシス
魔族ならダイジョブ理論は乱暴なのでこのように解釈(考察ではなく解釈)
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