奉仕しないと帰れない部屋に囚われた男の業務記録 作:dolph
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先のフェルン回は悪しき前例になった気がしなくもないです
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フリーレンはフェルンから怠惰を返上しろと言われるくせして不要な事を考え過ぎである。不要な考えに惑わされないよう体の充実が必要だ。
種の絶滅と云う宿命に抗うために、フリーレンの性成熟を促すのは望ましい。
フェルンの初夜やソリテールの一夜を覗いていた事から、性欲が薄かろうと興味はあると思われる。
そして一番の効果は、孤独を癒す事。
男がひたすらに読まされてきたロマンス小説群や各種文献には、寂しさを埋めるために異性を求める女があった。
こう言った事を迂闊に聞くと死にかねないと叩き込まれたので馴染みの娼婦たちに意見を求めると、多くが「寂しさを埋める手段として肉体を重ねることは大変有効である」と語った。中には男たちに求められたいから娼婦をしている女もいた。
反対に、そう言った女たちの寂しさを埋める職業もある。しかし、ターニャからその才能はないと言われている。尤もフリーレンの公私を支えるわけではないのでそこまでは必要ない。
ちなみに死にかねないのは聞かれた女ではなく、聞く男の方である。実際に瀕死にされたので間違いない。回復魔法がなければ何度死んだかわからなかった。
そのように様々な効果を見込めるのだが、フリーレンは枕をきつく握って体を強張らせていた。何か誤解があるのか、初めての事だろうから知識不足による不安が拭えないのか
リラックスさせて心身をほぐしたいのに、緊張させるようでは本末転倒である。
それなら次の機会に改めて、と言いたいところであるが、それは割とかなり許されない。相手次第では両手両足を引っこ抜かれて体の真ん中に風穴を開けられかねない重罪となる。
フリーレンがそこまでするとは考えにくいが、僅かでも可能性があるなら避けるべき。たとえフリーレンがしなくとも、いつか異界の部屋の利用者ノートに書かれてそれを読んだ誰かが義憤に燃えないとも限らないのだ。
まずは前戯の前戯である。
「失礼いたします」
「わっ!? 何する!?」
うつ伏せになって防御態勢を取るフリーレンを抱き上げた。
枕ガードはあっさり外れ、けどもそれだけはと両手で胸を隠し、隠すまでもなく男の体に覆われた。
男の体に何も着てない裸の胸が触れるのは気になった。裸の背中へは男の手が触れている。
「繰り返し申し上げますが、私がフリーレン様に何かを強いる事はございませんよ。ご不快であったり気に掛かる事がございましたら何でも仰ってください」
「……なんでこんな事するんだよ?」
色々な言葉が過ぎり、茹だった頭を鞭打って絞り出した。なのに男はいつも通りである。
「フリーレン様には有効と思われ、私に可能だからです。ですが、シュタルク君が相手ならここまでしませんよ?」
「バッ……! 当たり前だろ!!」
フリーレンは千年以上生きていても俗世とは距離を置いているからか、心は清いままで腐ってはいなかった。
「当たり前ですか?」
「当たり前だよ。そんな事になったらフェルンがシュタルクにゾルトラークを撃つからね」
「……シュタルク君に助言はしましたが、それ以上は控えます」
「絶対そうしろ」
「承知しました」
シュタルク相手に体を張るつもりがないのは、鍵の所有権がないからである。逆を言えば、所有権があるリーニエが望めば同じ事をしていた。幸いな事に甘味で懐柔されてくれた。誰もが皆、リーニエのようであって欲しいものである。
「シュタルク君にした助言は旅の目的についてです。無目的に彷徨うよりは目的があった方が良いですから」
「……目的ってどんな?」
「香辛料集めですね。どれも貴重と云う訳ではありませんが、一箇所で集まるものではありません。それらを適切な比率で合わせると良いものが出来るのですよ」
「ふーん」
「私が調べた限り、この地に類似の品はあっても私が提案したもの程の質はないようです。香辛料と言っても辛いだけではなく風味付けにも使えます。食欲増進の効果も期待出来るので食が細い方にも喜ばれるかと」
「……お前が言った事。忘れてないからな?」
「覚えて頂き幸いです」
「そうじゃない」
男の言葉が真摯であればあるほど苛立ちが募った。
とぼけられても頭に来るだろうが、真面目に言われても変わらないようだった。
「お前が私よりフェルンの方が大人だって言った事だよ」
フリーレンが声を荒げるのは、実のところ珍しい。千年を超える齢に相応しく、様々な事を経験して精神は成熟している。
なのにこの男へは時々言葉が強くなった。驚かされたり心の柔らかいところを刺されたり。中でも、フェルンに比べたら子供と言われたのは気に食わなかった。
「確かにフリーレン様よりフェルンの方が大人の女性に見えると申し上げましたが……」
「なっ……なんだよ?」
男に顔を覗かれて、裸で抱き締められていた事を思い出した。シュタルクにこんな事をと想像して、頭から吹き飛んでいた。
静まっていた動悸が激しくなる。密着していた体が離れて、ほんの少しだけ心細く感じる。
男の視線は体に向かわなかった。
「何とも不思議な感覚です。フリーレン様のお体は成熟しきっておりません。ならば可愛らしく感じるところなのでしょうが、とてもお綺麗に見えますよ。フリーレン様が生きた歳月故なのかも知れませんね」
「……伊達に生きてるわけじゃないからね」
単に年寄り呼ばわりするならフェルンだって許さない。しかし、だからこそ綺麗だと言われたら悪い気はしない。
フリーレンと同等に生きているソリテールならそこに「妖艶」との評価が加わるが、男はわざわざ口にしなかった。
「お綺麗なフリーレン様に触れたいと思った者は多かった事でしょう」
「別に……。子供が耳に触りたがったくらいだよ。他の連中からは……頭はよく撫でられたけど」
身長の関係で一般的な成人男性ほどの上背があると、頭に手を置きやすい高さなのだ。年寄り扱いは気に入らないが、子供扱いも面白くはない。
旅の空ではほとんどの人間が初対面だから外見で判断され、子供のように扱われる事は少なくなかった。今更の事で諦めている。
しかし、決して嬉しいわけではない。嬉しいのは店でおまけしてくれる時だけだ。
「まさか。本当でございますか?」
「こんな事で嘘ついたって意味ないだろ?」
「失礼いたしました。仰る通りです」
男が絶対と自負する審美眼でも、フリーレンの容姿は綺麗と言える。フリーレンを好ましく思う者はいたと思ったのだが、一人もいなかったらしい。或いはフリーレンに伝わらなかったか。
どちらであれ、掘り返しても意味がない。フリーレンの認識が全てなのだ。
「んっ……」
その時フリーレンが小さく呻いたのは、男が良からぬ事をしたわけではない。
「窮屈でしょうか? どうぞ脚をこちらに」
「……うん。えっ? 今のどうやった?」
フリーレンはうつ伏せだったところを抱き起こされて抱き締められたので、両脚を崩して流し、体は捻らされていた。バキバキされていなくともこれくらいなら問題ないが、不自然な姿勢である。自然にすべく、両脚を開いて男の体に向き合った。
いわゆる座位の形になる。フリーレンは知らなかったが、脚を開いて抱き合うのはいやらしいと思った。色々な想像が駆け巡ろうとしたところで、男の技に見とれてしまった。
「これでございますか?」
男が下げた手を上げる。外されたシャツのボタンは、男の手に合わせて再び留まった。
男がもう一度手を下げる。もう一度ボタンが外れた。
最後のボタンはゆっくりと。シャツの合わせに中指を潜らせ、人差し指と親指でボタンを傾ける。そのまま中指を軽く引けば、ボタンはボタンホールからするりと外れた。
「……変な特技があるね」
「手先を繊細に動かすのは得手でございますから」
フリーレンが感心している間に男はシャツを脱ぎ捨てた。
男が半裸になった事に、フリーレンはようやっと気が付いた。
「失礼いたします」
「あっ……」
離れた体が密着した。
さっきと決定的に違うのは、素肌が触れ合っている事。フリーレンの小さな乳房が、男の体に触れている。
背中に回る手も違う。抱き締めるだけではなくなって、上へ下へと滑っていった。
上は頭まで来て、優しく撫でられる。頭の天辺ではなく後頭部。何度となく撫でられてきたが、そこを撫でられた事は一度もなかった。下は腰に回って、ぐいと引き寄せられた。大きく開かされた脚の付け根が、男の下腹に押し付けられるようだった。
エッチな事だとは思わなかった。
背負われたり担がれたりは何度もあった。しかし、最後に正面から抱き締められたのがいつだったか、もう覚えていない。確実にと言えるのは故郷があった頃。千年以上も昔のこと。
長きを生きたエルフとして、力ある魔法使いとして、いつだって自分が守る立場だった。戦闘時の前衛後衛の事ではない。それを言ったら、魔王を倒す旅では仲間たちをとても頼りにしていた。
それらとは全く違う。言葉にし難い安心感がある。このまま眠れば良い夢が見れそうで、けども動悸が蘇って眠れそうにない。
「何度も申し上げているように、フリーレン様は楽に為さってください。まずはそこからでございますから」
「……うん」
頭のすぐ上から声が降ってくる。
後頭部から男の手が離れても、フリーレンは男の胸に顔を埋めたまま。
触れ合う素肌が温かく、心地よい。温かいのは自分の体も。男に触れるところから新しい血が生まれている。触れられているところは熱くなった。
外は冬なのだ。肌が触れ合っていれば温かい。そう自分に言い聞かせ、フリーレンからも男の背に腕を回す。それに合わせて、男もフリーレンの体を抱き締めた。
「あっ?」
「いけませんか?」
「………………別に」
フリーレンは華奢で、男の腕は長い。男の手はフリーレンの背中を回ってなお余り、指先がフリーレンのつるりとした脇の下から覗いた。更に進んで体の前に届く。
男の指は、フリーレンの柔らかな乳房に触れていた。触れるだけでおかしな動きはしていない。強く抱き締めているだけである。
そう思ったから、フリーレンは男を責める事なく上げた顔を逸らした。
なのに男は逸らさせない。
抱き締める腕が緩み、右手をフリーレンの頬に添えて上向かせた。
「なっ、なんだよ?」
「何でも仰ってくださいと申し上げましたよ?」
「だ、だから、別に、いいよ……」
「私の手がフリーレン様の胸に触れても構わないと?」
「はっきり言うな!」
「失礼いたしました」
それを言うのが恥ずかしくて言葉を濁したのだ。
「ではそう仰っていただけるなら」
「あっ……」
頬を撫でていた手が首筋へ下りていく。形の良い鎖骨へ辿り着けば、すぐそこだった。
「あっ!?」
右手が触れる前に、フリーレンの背が弓なりに反った。腰に戻った左手から強く抱かれている。
フリーレンが反っただけ男の体が前のめりになって、顔と顔が近付いた。
男は依然変わらず柔らかな微笑を浮かべ、フリーレンは鼻と鼻がぶつかりそうな距離で初めての顔を見せた。驚きと恥ずかしさで目を大きく見開いて顔は真っ赤に上気させ、それより赤い唇は小さく丸く開かれる。
心臓に近いところだから、新しく生まれた血はすぐさま体中を駆け巡った。熱かったのは触られたところだけだったのに、全身が火照ってくる。
フリーレンは生まれて初めて、裸の乳房を異性の手で触れられた。
▽
小振りな乳房だ。膨らみは男の手のひらで完全に隠れてしまう。
しかし、大きかろうと小さかろうと、愛し方の基本は変わらない。指を開いて乳房の輪郭をなぞるように優しくさする。
「んぅ……」
「痛みはございますか?」
「ない、けど……」
確かに触っているけれど、肌を掠めるような優しい触り方。痛いわけがない。
代わりに男の体温が届く。新しく生まれる血と男の熱が合わさって炙られている。
「少しずつ強めていきます。出来る限りの加減をいたしますが、痛みがありましたら仰ってください」
「わかっ……た」
言い止して、顔が近い事を自覚した。
気恥ずかしさに横を向き、頬に柔らかなものが触れた。前を向こうにも触れたものが離れない。
「肌を擦り合わせるのは良いものでしょう?」
「ひあっ!? くすぐったいだろ!? しゃべるなっ!」
頬に触れたのは男の頬。喋る時は耳元に唇を寄せられた。耳朶を温かい吐息が舐め、言葉が耳孔から頭の中に注がれる。
くすぐったいどころか全身がぞくりと震えた。
「そう仰られても困ります。私が思うように動いてはフリーレン様を驚かせてしまいますから」
「そう、だけどっ……。んっ……。そこでしゃべるなぁ……」
「かしこまりました」
「あっ……」
耳朶から忍び寄る何かが遠ざかったと思えたのはほんの一瞬。
男の唇は耳から離れた代わりに、フリーレンの頬に触れた。
ちゅっと啄む音が小さく聞こえ、手が下がった時のように唇も下がっていき、フリーレンの首筋に吸い付いた。
強くは吸わずにすぐ離れ、細い肩へ下りていく。右手と同じならどこへ辿り着いてしまうのか。
フリーレンの体は倒れて男の唇が追いかける。フリーレンはきゅっと目を瞑った。
「…………なんで?」
倒れそうだった体は戻されて、男の顔が近くにあった。
「そんなお顔をされては。フリーレン様に何かを強いる事はございませんと申しましたよ?」
「う……。うん……」
されると覚悟したのだから、絶対にイヤとは言い切れない。
安堵したのか残念に思ったのか、フリーレン自身にもわからない。但し、動悸は激しいままで治まらない。ドキドキしてるのを知られたら恥ずかしい。と思ったのは束の間。とっくに知られているのに気が付いた。
男は「少しずつ出来る限りの加減をする」と言っていた。始めが掠めるような触り方だったから、深まっていくのに全く気付かなかった。
「ですが、こちらはお嫌ではなかったようで幸いです」
「あっ!?」
男の右手は、フリーレンの乳房に貼り付いたままでいた。
柔らかな膨らみへ指が僅かに沈み、親指と他の指の隙間を狭めながら緩やかに揉んで、撫でている。指は薄く色付いた乳輪を掠めても、中心には触れないでいる。小さな乳輪は淡いピンク。中心は鮮やかに赤かった。赤くさせられていた。
フリーレンは自覚するなり、張り詰めているのに気が付いた。むずむずと疼いて内側がこそばゆくて、何かが出てしまいそうになる。
「フリーレン様の乳首が立っていますね。不快な感覚はございますか?」
「ない、けど……。でも……」
異性に乳房を触られるのが初めてなら、乳房を揉まれて乳首を立たせるのだって初めてだ。
昨夜覗いてしまったフェルンがこうなっていた事から自分もなるのだろうかと思ったら、本当になっている。
自分もフェルンのようにケダモノになってしまうのか。そうと思えば怖くもある。しかし、不快ではないのも確かな事。どうすればいいかわからない。
「それは幸いでした」
フリーレンの葛藤を知らない男にとっては、不快ではない事が何よりも重要である。フリーレンの性欲を呼び起こすために、性的な快感を味わってもらうのだから。
男は小さな乳房を包む指から人差し指だけを立て、折り曲げた。
「ぁんっ……」
指先が尖った突起を軽く掻く。突起そのものは揺るがさなくても、弾けそうな内側を包む薄皮には触れていた。
鼻と鼻がぶつかりそうな距離で、フリーレンは小さく鳴いた。小さな刺激相応に小さな声。けれども今までとは決定的に違う甘い声。
フリーレンは乳首を擦られる快感で、小さく喘いだ。
「っ!」
甘い快感を舐めた美貌は艶やかに緩んでいる。
それを見られて聞かれて、男の笑みが深まるのを見ていられなかった。
咄嗟に顔を背けた。耳元で囁かれた。
「フリーレン様にも味わう事が出来たご様子。おかしい事ではありませんよ」
「ひぅっ……。あんっ…………、こらぁ……!」
「まだくすぐったいですか?」
「そうじゃ、なくてぇ……。んぅ……」
指は小さな乳首を数度掻いてから離れ、今度は親指と中指でキュッと摘まんだ。柔らかかった突起が備えた弾力をコリコリと味わって、フリーレンに味わわせる。
唇はエルフの尖った耳に寄せて問題はどこにもないと報告する。
左手は細い腰を掻き抱いて、手指はフリーレンの太ももに乗せていた。こちらでも指は蠢き、白い下着の縁をなぞっている。
いずれはこちらもと思うが、フリーレン次第である。何度も告げたように強いるつもりは全くない。笑みを深めたのだってフリーレンを辱める意図があるわけがなく、順調に進んでいるのが嬉しいからだ。
しかし、独りよがりの独善はいけない。フリーレンの訴えには真摯に耳を傾ける必要がある。
「そうでないならば、何でしょうか? 何でも仰ってください」
乳首から指は離さないけども、愛らしい弾力を味わうだけで転がしたりはしない。
一方、聞かれたフリーレンは瞳を揺らした。
急に摘ままれて驚いたから言ってしまっただけで、嫌だったわけではない。しかし、続けろと言えるわけがない。他の事を、とはもっと言えない。フェルンの初夜をソリテールの解説付きで覗いていたから全く知らないでもないのだが、どれが何に繋がっているのかは本当に知らないのだ。
言葉に詰まるフリーレンを見て、男はふっと表情を和らげた。
「私が一つ一つ提案しても良いのですが、フリーレン様が一々ご判断するのも面倒かと思われますね」
「それは……まぁ……」
「ですから」
「あっ…………」
言葉にしなくてもフリーレンには伝わった。
座位の姿勢で向き合って、それでも身長差があるのでフリーレンが真っすぐ前を見ると男の口が見える。そこでフリーレンの体が倒れ気味になって男が前のめりになると、目線が合った。
最初に抱き締められたように、腰に回った左手にはぐいと引き寄せられ、右手は後頭部に添えられた。
男が少しだけ頭を傾けて、顔が近付いてくる。
赤い目と青い目に自分の顔が映っている。見入ってしまったのは男の目か自分の顔か。
色が違う目に自分の目が映り、神秘的な虹彩に魅入られて、触れたと思ったら遠ざかった。
「もう一度」
「……えっ?」
何かが起こったけれど何だったかわからない。
それを丁寧に教えるように、もう一度ゆっくり近付いてきた。
唇同士が重なって、さっきより強く押し付けられ、僅かに形を変える。
「今度は続けて」
「んっ……」
重なった唇はすぐに離れるけども、一呼吸置いたらもう一度重なってくる。
重なる度に深くなっていく。閉じていた唇が小さく開いてくる。舌を伸ばしたわけでもないのに、唇が薄っすらと湿ってきた。
男の手が後頭部から離れても、フリーレンは顔を背けない。唇が重なってる時は新緑の目を閉じる。顔が離れるのを感じると薄目を開き、所在なさそうに目を泳がせた。それも近付いてくるのがわかると目を閉じて顎を上げ、小さな口を小さく開いた。
最初は不意打ちだった、と云うのは言い訳だ。
呆然と見入ってしまったけれど、顔が近付いて来ればどうなるかわかっていた。羽毛が舞い降りるようにゆっくりと近付いてきたのだから。
「フリーレン様が倒れてしまわないように掴まって頂けますか?」
「ん……。こう?」
男の首にぶら下がるように、フリーレンは男の首に腕を回した。
一方的にされるのと違って、男を捕まえたようで嬉しくなる。煮るのも焼くのも自分次第。キスをするのも自分から。
「よっと」
但し、身長差が激しい二人である。フリーレンからするには男の顔を引き寄せる必要があって面倒だ。一々そんな事をしていられない。ならば高さを合わせるまでである。
男の太ももに座っていたフリーレンは、伸ばした脚をたたんで膝立ちとなった。こうすれば目線の高さがほとんど同じ。
「ん……」
両手が空いた男は、フリーレンの右の乳房へ手を伸ばしていた。左の乳房へしたように、始めは掠めるような触り方。それが徐々に深くなって、やがては内側で甘美が弾ける。
そうと知ってるフリーレンは、反射的に胸を張った。けれども男の手指は深まらず、近付いた分だけ退いてしまう。
「あ……」
顔を近付けて触れ合う寸前、目を開いて下を見た。男の顔が見えるだけ。それ以上は何も言えずに触れ合った。
思わず声を上げてしまったのだから口が開いている。男の口も開いていた。フリーレンからした最初のキスは、これまでのどのキスよりも湿っていた。
キスを終えてもフリーレンが何も言わないのだから、男の手は止まらない。男の右手は、膝立ちになったフリーレンを支えるように小さな尻へ伸びていた。
「胸ほど繊細な部分ではありませんが、痛むようなら何なりと」
「う……、うん……」
尻肉をさわさわと撫で回し、太ももまで下がる時もある。しっかりと掴むようでも痛みはなく、さっきまでされていたマッサージと同じくらい。
同じことを同じ所へされているだけなのに、何がそんなに違うのか。それ以外が色々違い過ぎている。
「さっきと同じように口を開いて、私と同じように為さってください」
「……キス?」
「ええ。驚かれるかも知れませんが、すぐに離れないように」
「…………うん。……ちゅっ……」
フリーレンが男を捕まえているのだから、キスをするのはフリーレンから。
目を閉じたかったが狙いが外れないように薄目を開けて、口は「あ」の形にして、絶対に外さない距離まで来たら目を閉じる。
唇同士が重なって、口を開いているものだから唇の内側を濡らす唾液が僅かに届き、そこをぬめる肉が埋めてきた。
「んっ!? ……んぅ……、ふぅ……。ぁんっ……」
舌が口の中に入ってきた。
たっぷりの唾液に濡れた舌が口の中に侵入して、届くところ全部を舐めてくる。当然、フリーレンの舌も。
小さな舌が動かないとわかると違うところを舐めだして、またすぐに戻ってくる。舌の裏側に舌先が入ってくるのは、フリーレンの舌を急かしているかのよう。
「んっ、んっ……、れろ……。ちゅる…………」
縮こまっていても吸われてはどうにもならない。自分から動かしたのか、それとも吸い出されたのかはわからなくても、フリーレンの舌は男に応えた。
ぬらぬらと舐め合いながら、同じようにと言われたのを思い出す。
舌を舐めて軽く吸って、塞いだ唇の中で互いの唾を混ぜ合っている。耳を澄ませばくちくちと小さな泡が弾ける音。
男の喉が鳴るのを聞いて、フリーレンも同じように唾を飲んだ。
「んんっ……、あむっ……、ちゅぅ……、ふぅっ……。あんっ……」
口の中には舌があるのだからキスの間に動かせて当たり前だけれどもフリーレンの知識にはなかったこと。フェルンの初夜を覗いていようと、合わさった唇の中で何が起こっていたか見えるわけがない。長いキスだとは思っていた。こんな事をしていたから長かったのだ。
フリーレンはキスだけに集中していても、経験過多の男は手を休ませない。
左と同じように右の乳房でも愛らしい乳首を充血させ、軽く掻いてから摘まんでやった。フリーレンの甘えた吐息が漏れた。
「はぁ…………。キスって……初めてだった」
唇が離れると、唾液の糸が長く伸びた。
フリーレンは男の首から腕を離さず、口付けていたところを真っ直ぐ見詰めた。視線を少し上げれば男の目。男に答える時間を与えず顔を近付けた。
両手両足の指でも数え切れないキスをして、それでも飽きずに続けてしまう。
主導権を握っているのが楽しいのと、キスの次にあるものが少しだけ不安なのと、キスそのものが気持ち良いから。
キスは内側を繋げる行為。意識に上る前に、フリーレンは悟っていた。
こうなる前は色々と思ったはずだった。
ワンピースを脱がされても、結婚してないのだからちょとエッチなだけのマッサージで終わると思っていた。
抱き締められたらソリテールの匂いがして、さっきまで色々していたのだと気付いてしまった。
フェルンと、あとついでにソリテールとも結婚しているのだから、他の女が近付いてはいけない男であるはず。
今は全部頭から抜け落ちた。必要なくなった。ここには二人きりで、他の誰もいないのだから。
それに、これがエッチな事のわけがない。触れ合いたいと思う気持ちが、どうしていやらしくていけない事になってしまうのか。
心が温かいどこかを揺蕩っているようで、体は熱く溶けてきて、目の前には何度もキスをした男が夢でも幻でもなく存在して自分の手が触れている。
手指に伝わる感触が、都合のいい夢ではないと教えてくれる。そこでようやく気が付いた。
知らない間に色々されて、少しずつ進んでしまっている。今度もそうだった。
「あっ!? そこ、は……」
「前の前の口付けからでしたよ? 不快感はおありですか?」
「…………ない」
それもまた何度も聞かれた事。聞かれる度に同じことを答えた。
男の手付きは優しくて、されているのに気付かなかったくらいだ。痛いわけがなかった。気持ち悪いとも、嫌だとも思えない。強いて一つ上げるなら、貼り付いているのが少しだけ気持ち悪い。
フリーレンが穿いている白い下着は、いつの間にか湿って股間にピッタリと貼り付いていた。
男の右手はフリーレンの尻を撫で続け、乳房から離れた左手も合流した。
尻肉を掴んで太ももを揉み、そのまま上まで滑っていく。
フリーレンは男の脚を跨いで膝立ちになっているものだから、太ももと太ももの間に隙間があった。男の手は尻肉を包みながら、長い指は尻の割れ目を伝って奥まで届く。
内側へ潜ったり繊細な部分に触れたりはしない。あくまでも優しく丁寧に。
男の指先は下着の上から、フリーレンの陰唇を揉みほぐしていた。
「フリーレン様におかしなところはございませんよ。濡れてくるのは自然な反応です。私の指で感じていただいたのですから嬉しく思いますよ」
「…………こうなるのが普通?」
「はい」
「………………うん」
自分の体が自分の知らない状態になっている。驚き戸惑い不安に駆られそうだった所を全肯定された。
胸が詰まって、言葉に出来たのは小さく頷く事だけだった。
「このままだとご不快でしょうから」
「あ……」
フリーレンは、キスが始まってから男の首筋をずっと掴んでいた。それを離した。両手で口を押さえるため。
押さえなければ何かを言ってしまったかも知れないし、言えなかったかも知れない。
見ていられないのに大きく目を見開いて、男の手が行く先を見詰めている。
キスの間は落ち着いていたのに、心臓が再び暴れ始めた。体中が火照っているのを実感する。
「失礼いたします」
そう言って、男は下着の両サイドに指を掛けた。
生地が傷まないようゆっくりと下ろされて、白い下腹が露わになる。更に下りてもフリーレンの下腹はつるりとしている。髪色と同色だから見えづらいのではなく、全くの無毛でいる。
小さな尻が暴かれても、脚の付け根は最後まで残った。白い薄布がフリーレンの股に貼り付いているから。
ゆっくりゆっくり下されて限界を迎えたのか、僅かな粘りを感じさせながらはらりと剥がれた。
薄布とフリーレンとの間を、短い糸が繋いでいた。
「このままではこれ以上下ろせません。よろしいでしょうか?」
「…………うん」
十回は呼吸出来るだけの間を置いて、フリーレンはベッドに尻を下ろした。
開いていた脚を閉じる。薄布が太ももを抜けて膝まで下ろされ、そこから先はするりと抜かれた。
男はフリーレンのパンツを畳み、床の上へ放り投げる。先に脱ぎ捨てたシャツの上に落ちた。
己のコントロールに内心で満足し、フリーレンへ目を向ける。
一糸まとわぬ美しいエルフの少女が、白い肌を官能に上気させていた。
ここまでも色々味わってもらったが、まだまだ先がある。行きつくところまでは行かないつもりでも、もう少し味わえるところがある。
これまでと同じくフリーレンに断ってから続けようとして、待ったが掛かった。
「ずるいだろ!?」
「はい?」
羞恥を滲ませながら愛欲に緩んでいたフリーレンの顔が、突然険しくなった。
険しくなった理由がわからなければ、何が狡いのかもわからない。
「何が狡いのでしょうか?」
わかりませんとわかりやすく首を傾げて尋ねれば、フリーレンは至極真っ当な現状を突き付けた。
「私は裸なのに、お前は何で脱いでないんだよ」
「……仰る通りです」
最後までするつもりはなかったのでスラックスは穿いたままでいたのがお気に召さなかったようである。
フリーレンがそうと望むなら否はない。ベルトを外しスラックスのジッパーを下げ、勿体ぶることなく一息に下ろした。
「む…………」
希望通りに脱いだはずだが、フリーレンの顔は険しいままだった。
フリーレンに性的な経験は皆無でも、男の体がどのようなものであるかは知識として持っていた。
服が透けて見える魔法を入手した際は効果を確かめるため、身近な人物へ試用している。フェルンと違って口にはしなかったが、フェルンとシュタルクの裸体を確認していた。
昨夜はフェルンの初夜を覗いていたのだから、男の裸もしっかり見ている。距離があったので細かい部分はわからなかったが、今とははっきりと形が違った。
自分のことながらよくわからないが、屈辱だった。ここまで丁寧に繊細に扱われて来たと思っていたが、どういうわけか自分が軽んじられていると感じてしまった。
幸いなことに、ソリテールの解説は詳細だった。
『おちんちんを握る時は強くしても大丈夫なの。本当にとっても硬いのよ?』『おちんちんの敏感なところはフェルンが舐めている反対側ね』『おちんちんを舐めるのは当り前よ? 旦那様の体に汚いところなんてないわ』『旦那様もフェルンのおまんこを舐めてるでしょう? 舐めてもらうのも普通のことよ』『おちんちんが大きくなるのは旦那様が欲しいと思ってくれるから。とっても素敵でとっても幸せになれるの』『フェルンのおまんこが濡れてるのが見える? あれは旦那様のおちんちんを入れて欲しくて濡れてくるの』
色々な言葉が脳裏を過り、たった一つに集約された。
この男は、まだ大きくしてない。
「フリーレン様?」
フリーレンは答えない。
むっと眉間に皺を刻んで男へにじり寄り、自分にはない男の器官へ手を伸ばした。