※この作品はR-18です。

タイトルはまだありません   作:だーばやし

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来るもの拒まず蹴飛ばし立ち去る…メイちゃん心の一句…っておいなんだそれ長いって話が!いつまで喋っとんねん!!

 日が沈み空は雲で覆われた。山奥から次第に雑音が迫り大地を潤した。仰向けのメイの身体は、ずぶ濡れになり落雷の音で目が覚める。雨雲の前には二人の女性がこちらをじっと見ている。顔はビエラに似て瓜二つ、双子だと思われる。

「メイさん、ギルドに戻って討伐報告しましょう」

「私が担ぎますから寝ていても大丈夫ですよ」

「ちょっと!私が担ぐから!」

「いやいや私の出番でしょ!」

ビエラそっくりの二人が急に喧嘩を始めた。メイは身体に力が全く入らず二人を止めたい気持ちはあるが口すら開かないでいた。

「そもそもなんで私が二人もいるのよ!」

「それはこっちの台詞よ!どっちが本物か勝負する?」

「勿論!本物の私が勝つに決まってるけどね!」

「その台詞そのまま返すわ」

「私が先に言ったんですけどー?」

「言葉より行動で示したらどうかしら?偽物さん」

「言われなくても偽物なんかに負けないから!」

「「我が主…究極の思想の先に至らんとする真なる想起において今一度…救済の力を…」」

雨雲や大地を跳ね除け二人の放つ邪悪なオーラで周囲は一瞬で闇に染まった。目の前が真っ暗で何も見えない、今の状態では手に負えないので私は考えるのをやめた…だが二人の形態変化に身体が強制的に反応していた。立っている。私の意思とは別の何かが身体の主導権にいるせいで一歩ずつ二人に近づいていた。

(なんだこれ…夢でも見ているような感覚じゃん!)

二人の拳が交わろうとする間に割って入っていた。両サイドから顔を挟むように殴られる…痛い!

「「メイさん!?」」

「メイ?チガウ…」

(…………っ!?)

完全に誰かに乗っ取られている。その声の主が誰なのかは察するがずっとこのままなのは普通にヤバい!私という存在が完全に否定されることになる。

「もしかして帰ってきたんですか…」

「やっと会えましたね…!」

「ただいま。そして…」

(あ、これは詰んだか?)

「さようなら」

目の前に謎の画面が浮かび上がる。ゲームとかで見るようなUIが目の前に浮かんでいる。地形や道路などの表示からマップだと思われる。別れの挨拶と共にその画面に手を触れピンが刺さった。空間が歪んでいるのがなんとなく伝わり視界がグニャグニャで酔いそうになった。次の瞬間、見慣れた道路に立っていたのだ…あり得ない。

「ゼロゲッサー」

私?の人差し指は一人の男に向けられていた。あの時の彼がそこにはいたのだ。私を急に異世界に追放した張本人『上木悟』だ。

「いやー!もう来ちゃったか早いなーオマエ」

彼は焦っている様子など無かった。まるで全てを知っていたかのように再びあの『手の構え』をしていた。もう一度異世界に飛ばす気だ。しかし今回は状況が悪い、私が私でないからだ。

「んー…まだ足りない…認識すらできないままだ」

「ま、俺が邪魔してるからなんだけどさ」

「この煩悩はズバ抜けて邪魔だ」

「おいおい、本人の身体でそれを言うか?メイちゃんからしたら逆にオマエが邪魔だぜ?」

「邪神に相応しい象徴と私が向かうその先を覆い隠す驚異的な煩悩…なんとかして解放しなければ…うーん」

「今回もあれだろ?俺にはハッキリ言ってどうでもいい領域だが拡散して収束し続けるのが世の理である以上、オマエの目指すその先ってのは名前一つ…いや単語や概念一つ…些細なもの一つで簡単に封じ込めるんだ」

何もできないから聞くしかできないが二人の会話がまるで意味がわからない。私を本気で消そうとしている存在が私という存在そのものに同居しているのは確かなんだろうけどその後がよくわからない。少々哲学を齧った程度じゃ「なんかスゲーことしてる」と感想が凄い漠然としたものしか出てこない。

「理屈よりも想起の認識が先…」

「どうだ?かつて自分であったものに邪魔される気分は?」

「その気分すら邪念の一つ」

「そうかそうか、俺は無限に増える並行世界のオマエそのものを無限に収束しオマエであり続けてもらうまでさ…邪神としてな!」

「今回は特に我が強い…非常に面倒だ…」

「まあ久しぶりの空気を吸えたことだしそろそろ蹴るぞ」

「終わりの果てに向けて蹴ってほしいけどね」

「ずっと始まりなんだよ!」

またあの感覚だ。フワフワと浮いているようなあの時と同じ異世界への追放だ。もはや懐かしいまで感じる巨体の魔王、起床に皆が歓喜する魔界でのリスタートとなった。

「主導権はあるみたい。まさか無限ループってやつか?」

上木悟…いやゼノムの発言からして何かをキッカケに私は私でなくなるので並行世界の私をぶつけるループが起きている。と考えるべきか?頭痛い、だってこんなにデカいとやっぱ刺さるですよねー…角が!

「自我を保つことが大事だ…きっと前みたいに!」

大観衆の前で巨体の魔王は人間サイズへと縮み驚かないやつがいるはずもなく…

「魔王様!?いったいそのお身体は…」

「説明は後、勇者が来てるんでしょ?」

「もしやそのお姿で迎え討つのですか!?」

「私さ神になったから、邪神って言うのかな?まあ大丈夫だから」

戻っている。前に来た時と全く同じ状態の世界に戻っている。このまま勇者の自爆を許せば魔界は終わり再び門を抜けるしか先が無くなってしまう。私が今できる抵抗は自分であり続けることに限るが何度も失敗して無限ループし続けてしまえばメンタルが終わる…精神崩壊、自我の崩壊は『あの人』をこの身体に引っ張ってしまう危険性がある。よくわからないけどそれはヒジョーに!ヤバい気がする。ゼノムも大概ヤバいがそんなヤツがこんなふざけたループものに封じ込めようと考えちゃうくらい『あの人』が目指す先とやらがヤバいのだろう…行かせてはならない気がするのだ。かつて私だった『あの人』をゼノムの思惑通りなのはムカつくが行かせちゃダメだ。

「なんで魔王スタートなのか知らないけどゼノムが邪神とハッキリそう言ったから私である理由の根源…その形でしかない」

とは言ったがこれまでの不自然な現象の数々が気になってしまった。『あの人』は常に私であり続けることを否定する為に何らかの罠を仕掛けていたのかもしれない。主導権を奪われていたキッカケはビエラから始まったが明らかに途中から性格が豹変していた。聖女とは思えない戦い方や神への変異に…

「思い出したら冷や汗が…!」

TRPGとかで言うSAN値みたいなのをゴリゴリに削って知らぬ間に私は私でなくなった。邪教やオルトロス繋がり、元を辿ればゼノム関連を疑い過ぎて初見じゃ見抜けなかったようだ。今だと理解できる。『あの人』が仕向けた罠にビエラと掛かったのだろう…

 

「魔王…じゃない!?まさか邪神とでも言うのか…」

「あ、勇者」

情報整理をしていたら勇者はもう目の前にいた。神の前では勇者でも厳しいのだろう戦意喪失してしまった。敵意が無ければ戦いたくない派の私は先を急いだ。勇者が今後この世界に及ぼす影響なんて今の私にはどうでもいい、私は私であり続けるだけなのだから…

前回のような右も左もわからない私ではない、門への方角に真っ直ぐ突き進む。巨大な門をこじ開けケルベロスとの再会だ…ここが一つの分岐点だろう。私はここで謎の衝動に駆られてケルベロスを伐ち尋常じゃないヴィジョンの情報量に屈して倒れたのだ…

「また会ったな…道化師よ」

「また?もしやそちらも初見じゃない?」

「当然だろう…我が主は誰だと思っておる」

「まあそれは置いといて、私はここが分岐点だと思うけど…どう?」

「あの拳は効いたぞ、我の全てを放ち流し込む興味深い技だったな…分岐点とはその技だろう?」

「えー…あれってそんなことしてたんだ…こわっ」

「故にケルベロスであって私はケルベロスでなくなったのだ。どう責任を取ってくれるんだ?なあ?」

「まさか私ってこと?」

「そうだ…意識が戻るとケルベロスになっていた。人格がケルベロスと混ざりつつあるがそれでも煩悩迷の人格が私にあるのだ。ゼノム様のおっしゃる『アイツ』とは違うと聞いて安心しているがその『アイツ』とやらは道化師の方に居るんだろ?」

「正確には糸みたいなので繋がってて、色々あって引っ張るかもしれない状況…私が自我を保っている間は糸は切れない、でも…」

「それが切れた時ゼノム様の敗北が決まるかもしれんな」

「切れてもまた蜘蛛の巣みたいに作ってそうだけどね〜」

「蜘蛛の巣なんぞ小さ過ぎるぞ表現として!だが…そんな些細なモノで封じ込めるほど容易いというのが現状だ。そこまで気にする必要もないと思うが…」

メイとケルベロスは全く同じ気持ちと言いたげな顔で見つめ合った。『あの人』が持つ能力が全くわからない、名前すら存在しないのだ。対するゼノムはよくわかるほど『全てを持っている』と言うべきか、該当するものを片っ端から挙げれば挙げる程にその強さが浮き彫りになる存在と言っても過言ではないだろう。そんなゼノムの天敵が『あの人』なのだろう…『全てを持っていない』と言葉で表すとそうなんだけどそうじゃない気がするそんな存在だ。これ程一行で矛盾するのもゼノムの些細な言葉による抑制の賜物だろう、これが矛盾せずにいたら今頃…

「確かビエラとかいう聖女がいたな?」

「それがどうしたの?」

「どうやら…アイツの罠の影響が中々取れない!って姉が言っていたぞ、気をつけるんだな」

「二人のままってこと!?」

「そうだ…ゼノム様が封じ込める為に作り上げたこの世界に簡単に干渉してループするはずの一人の女の種族が変わったままなんだ」

「種族か…オルトロスの娘だし獣人から悪魔ってとこ?」

「違う…種族の枠から遠く離れたナニカだ。そっちじゃ気絶して知らないかもだがビエラはアイツに大きく近づいてしまった厄災そのものだ」

「ごめん…話について行けない」

「そうだな…ビエラが二人いるが二人揃って我を貫いているのが不幸中の幸いなんだ。意味わかるか?」

「もしかして私と同じ道を辿り始めたってことでいい?」

「フッ…まあ道として出ちゃったら進んじゃうよな〜?きっと空なんて興味もなく前しか見ないはずさ」

「その背中が『あの人』ってのが問題か…」

「流石人格が元は同じなだけあって理解が速いな」

「そのビエラ二人を最後に私は身体の主導権を奪われて…そして」

「あの二人に近づくとホントにヤバいだろうな、特にあの詠唱が始まると二人の我が薄れていくのを観測したそうだ」

「どこ情報なのそれ」

「ゼノム様の側近にかつて身体を共に成り上がったという妻がいてな、不自然な世界線の変動を確認したからこちらを観ていたそうだ」

「あーうん…」

人格が混ざっても根は全然ゼノム様万歳な忠実な眷族ケルベロスであった。

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