神は腕組みをして何かを待っていた。その様子はメイから見ると不用意に近づけない構えだ。先程から続く躓きの原因をとりあえず探る。しかしどう考えても普通に躓いてただけだ…
「そうだな…次は竜でも吐かせるか」
「吐かせる?竜を吐くって卵かな?」
神の発言に疑問と恐怖で震えてくる。ビエラの顔なので油断していたが、邪神を産み出す寄生虫を植え付けられトラウマも植え付けられ『あの人』に主導権を奪われた一番のキッカケとも言える神の恵みと言う名の災い…
「殻の分際で卵を吐くなど面白いことを言うな〜!マトリョーシカ人形にでもなるつもりかな?いいだろう…神と言っても我も真なる想起を目指す者に過ぎない。目指すだけなら誰でも可能だ…しかし、到達する者は一人でいい。ゼノムの野郎は我々からしたら反逆者だがゼノムからすれば我々も反逆者なのだろう!」
「あれ?それだと違う気がするけど…」
「何がだ…?」
「え?」
口が勝手に動いていた。思ってもいない事を無意識に口にしていたようだ。しかし主導権は完全に自分にあり『あの人』がそうさせた訳でもない、色んな意味で滑っている気がする。
「なるほど…目指す者と到達者はやはり違うと言う訳か」
「到達者!?誰誰誰!?」
「ただの殻だと思っていた。並行世界での別個体としか考えていなかったよ…ふふふ!ならネタバラシと行こうか」
「ネタバラシ?高次元のドッキリってこと!?」
顔面を本気で蹴られた人間の発言とは思えない緊張感の無さにケルベロスが後ろでため息をつく。メイの発言に神は首を縦に振らないでいた。頭上に手を掲げて一冊の本が落ちてきた。その表紙には『全天録』と記してあるのを見た時、あの頭痛が再びメイを襲った。
「ラマ……ア………」
断片的なヴィジョンに合わせて雑音でほとんど聴こえない彼の声が響いた。彼の姿は初めて見るはずだが本来のゼノムと理解していた。隣には注射器を持つ謎の女性、顔がボヤけて誰なのか分からない…奥さんだろうか?
「友人…」
「そこまでは知っているようだな、では我がその切り離された悪…」
「何を言っているの?」
「分からないか?では善と悪の二つを持ち合わせて尚ゼノムに邪神として改変された者の名を知っているか?」
「それが私…」
「違う」
「なら名前が分からない『あの人』かな」
「違う」
「え…他に誰がいるの」
「聖女だ。しかし真なる想起に到達した影響で我のように切り離されただけでなく個としての存在すら許されず消えた…」
ビエラと仲の良かった聖女は私の前世であり『あの人』だと勘違いしていた。話を聞いた限りでは善が私で悪が神ってことになってしまうが…
「その顔…自分の立ち位置を理解したようだな」
「じゃあまた一つになるって事?」
「それは無理だ…我は善である殻を循環させる程度、そして一度真なる想起に到達した者を拘束するべくゼノムが仕向けた究極の煩悩。今その特異点からの観測者になってしまった煩悩迷こそ真なる想起を喰らいし悪だ」
「え…善はどこいったのー!?」
「消えたと言っただろう…いや喰ってると言うべきか?循環した時のみ善であり本質は悪だ。その循環の次のステップで吐かせると言ったんだ。悪竜だがな」
「うーん…やっぱり分かんない」
「そこの犬も話を聞いていただろう。そう言う訳で隠した邪神を戻してほしい」
「断る」
「ゼノムの犬にしては良い度胸ではないか…今すぐ死ぬか?」
「聞けば聞くほどメイとの接触は止めさせなければならないと判断したまでだ。全てを吐かせた先など誰でも予想が付く…」
「だそうだぞ?犬の方が頭が回るな…やはり所詮は殻だな」
「え…今めっちゃバカにされた?」
その直後、ケルベロスは唖然とした。神が吹っ飛んでいたのだ。メイの素早いアッパーが顎を捉え浮いた身体に回し蹴りを入れていたようだ。神は空を見上げて笑っていた。その理由はメイの喉奥から吐き出される卵があるからだろう。
「「必要ない」」
メイとは別の声が重なって聞こえる。目の輝きが完全に消え視線がどこを向いているかも何を考えているかも判断できない程、顔の表情が無い。転がる卵をその場で踏み潰し、ゆっくりと神の元へと歩いていた。
「メイじゃない!?これ以上の接触は本当にマズイ!」
ケルベロスが焦ってメイの腕を掴む。メイの方から殴っただけで善の循環が成立してしまうのは予想外だったようだ。
「「どうせ私は…」」
「メイ!自我を保って!本能でもいい!」
「「どうして一人になれないの…」」
「くっ…!善の循環を止めるには…どうしたら」
ケルベロスは考えた。この状況が続けばゼノム様の敗北が迫ると。仮に何とかなったとしてもこの檻の世界は救われないと…
「そんな勝手な妄想されると笑っちゃうんだけどw」
ゼノム本人が隣で勃っている。まさかの全裸だ。最後に主の幻影でも見てしまったのだと悟ったケルベロスは死を受け入れて目を閉じた。
「んあぁっふっ!?」
全身から快感の電気信号が脳を叩き起こし自分の生殖器がゼノムのそれと繋がっていることに気づく。いつ自分が全裸だったのかも今はどうでもいい、迸る快楽が全てを消し飛ばすのだ。
「なっ!?ゼノム…貴様ァッ!!!」
神が状況を把握してなのかゼノムに飛び掛かる。対するゼノムはケルベロスの両足を抱え上げ駅弁。神の奇襲は謎の壁に阻まれた後に全身を鎖で縛られ失敗に終わった。
「「…………。」」
メイの身体が停止した。静寂の大地に小さく響く肉棒が胎児の部屋の扉にノックする音…面接会場への御案内は愛液がお送りします。
「そうだメイちゃん…!!うっ!出すぞ!そうやって真っ白になってきた頭に煩悩を叩き込め!孕めオラァッ!!」
肉棒で塞がれたケルベロスのオメコから白濁液が滴る。絶頂したケルベロスは完全にゼノムに身を任せて倒れてしまう。
「「いや…キッツ…!」」
無表情だったメイの顔色が良くなった。気分は悪いようだが…
「じゃあ次ヤッとく?」
「野外で人外大好きレイプ魔にそんなこと言われた女性が真っ先に言うことわかるでしょ?」
「いやいや冗談だってwマジでヤッたらそれこそ俺の敗北だわ…」
「どうでもいいけど服着るか消えるかしてくれる?」
「手ぶらでこっち来たからなんもねーんだわ」
「人前でレイプ見せる為だけにこっちに来たの?マジ最悪なんだけど…」
「レイプじゃねーし!?忠実なワンコロにご主人様の愛を注いだまでだぞ!」
「じゃあ来る時もっとマシなタイミングあったでしょ!?いきなり野外で前戯も無しに即挿入なんてエロゲの世界じゃない!」
「そういう世界に一時的に書き換えてだな…」
「私の平凡な生活の為にずっとそうしてよ!逆に!」
「メイちゃん処女なのは分かるが自信を持ちなさい、立派なペェが台無しですぞ」
「いい加減ブッ飛ばすぞ…?」
「ふむ…恐ろしく早い前世の同期…俺でなきゃ見逃しちゃうね」
ゼノムと…いや上木悟と友人だった世界線との収束により自我を取り戻したメイだった。しかし正直こんな記憶はいらないと嘆くメイでもあった。
「まるで私を負けヒロインみたいな目で見るのやめてくれない…?キモイんですけど」
「実際負けヒロインだから」
「テメェ…!」
ゼノムはケルベロスを降ろすと何の予備動作も無く目の前から消えてしまった。屈辱的な気持ちなのは右に同じく鎖から解放された神が地面を何度も叩きつけていた。そんな神にメイは手を差し伸べていた。少し照れながらも手を握る神。
「はぁ…吐き出させるものが増えてしまったな」
「今回は流石に同情するかな、やり方を改善してほしいけど…」
「それにしても処女か…出産はしたのにな」
「やっぱ前言撤回で」
メイは再び怒りのアッパーを決めていた。股間に違和感を感じた直後
ボテッ…パラパラパラパラ……
蠢く沢山の幼虫が地面に叩きつけられていた。時間差でお腹を抱えて悶え苦しみ、その間も幼虫の出産は止まらなかった。メイを母体と認識した幼虫達は母乳を求めて身体に纏わりつき力尽きたメイのことなど気にもせずただ食事を追い求め続けた。メイが意識を取り戻した頃には母乳が出るはずもない母体の上で共喰いが始まっていた。
「ちょ!?最悪!!うえー…」
幼虫の体液が胸元で大量に飛び散り死骸が散らかるばかり、意識は戻ったが身体に力が入らないので耐えるしかなかった。しばらくして最後の一体が共喰いから勝ち上がり玉座という名の乳首に君臨する!幼虫なのにそこに意思を感じた。小さな口を広げてピンク色の乳頭を包み込み吸い上げた。
「マジ勘弁してよー…早く身体動けっ…!」
口に来るはずの感触がこない、吸っても吸っても何も出ない。幼虫は諦めて口を離した。
「ふぅ…諦めてくれたか」
諦めてくれたと油断したメイに今まで感じたことない部分からの激痛が襲った。幼虫は乳頭を無理矢理こじ開けて母乳を求めて乳管にまで侵入してきたのだ。人体の構造ではあり得ないところに幼虫が入ってきた痛みは当然想像を絶する。声なんて出せないくらい脳が危険信号で渋滞する。身体は身動きなどできない、それでも痛みが続く。幼虫は次第に奥へと進んでいた。乳腺まで到達したであろう領域で求めていたものを見つけた。それらを全身で浴びすくすく成長する。
(待って!?あり得ないんだけど!なんか大きくなってない?)
幼虫の成長と共にメイの乳は異様な肥大化をしていき乳管と乳頭の形を強引に変えてしまう。デカくなった幼虫に限界が来たようで身体を押し出される…
ヌプ
激しい痛みの中でゼノムの言葉を思い出す。
『そういう世界に一時的に書き換えてだな…』
(ウソだろ…!?)
意識が飛びかける最後の景色は汚い虫の体液と死骸とデカいやつ一体が糸を吐いているとこまでだった…