「あひゃっ、あひいっ、ああっ、あああっ、あああっ」
孫空女は、狂ったように悲鳴をあげていた。
口から漏れるそれは、かつて敵にさえ恐れられた女頭領の声とは思えない、みっともなく高い、裏返った泣き声だった。
その哀れな肉体を這い回るのは、何本もの筆──獣毛の穂先が、粘液と脂汗に濡れた柔肌を撫で、こすり、ほじる。
全身が熱い痒みに焼かれていた。
それは、ただの痒みではない。
卑劣な媚薬の効果で、皮膚という皮膚がすべて性感帯に変じていた。
筆のひと撫でひと撫でが、鋭い疼きを伴って身体を貫いてくる。
耳の裏、乳房の下、腋のくぼみ、切断された太腿の断端に近い皮膚──どこをなぞられても、甘く、鋭く、どうしようもなく、気が狂いそうだった。
それを余すことなくくすぐられる。
「いやぁっ、ひっ、ひいいいっ、うあああ……やめ、やめて、やめ……」
声にならない懇願が、歯の間から漏れた。
だが、その哀願の声を聞いてやる者など、いるはずもない。
孫空女の肉体は、もう女頭領などではなかった。
肩から先の両腕は切断され、太腿の中ほどで両脚を失っていた。肉の断面には、あの御影といかいう法術師による術による止血と腐敗防止が施されているのだろう。その断面い金属盤が嵌め込まれて、石柱の上面に金属盤の部分が嵌め込まれて離れないようにされている。いまは、首輪に天井からの鎖を繋がれて、腕のない胴体を倒せないように固定されてもいる。
まるで、石柱の上の置物のような女体──。それが、かつて「女頭領」と呼ばれた女の成れの果てだった。
「ははは、さっきまで頑張っていた威勢のいい頭領様が、いまやこれだ。ざまあねえな、孫空女」
低く、くぐもった声が笑った。
手にはまだ筆が数本握られている。一本はわざと、孫空女の乳首のまわりをくすぐるように撫で、もう一本は、脇腹を円を描くように動かしている。
「ひあああっ、ああっ、あひっ、も、もう許して……強く……。もっと強くしてよおおっ、ああ、もっと強くしておくれよお──」
孫空女は筆の動きに合わせるようにびくびっくと裸身を震わせる。
「ははは、確かに。眼看喜様……。いえ、新頭領……。こんな情けない頭領は初めてですよ。やっと怖さがなくなってきやした」
「しかも、やめてくれどころか、もっと強くしてくれとはなあ。頭領、情けなくねえんですか?」
眼看喜だけでなく、孫空女の周りで筆を操っている元の手下たちが囃したてる。
情けなさで腹が煮えるが、いまの孫空女にはなにもできない。
「こんなにいやらしい声、どこの淫売だって出せやしねえ。なのにこいつは、元の頭領様だからな。さすがに調教しがいがあるってもんよ」
「ねえ、頭領……いや、孫空女様、もっと情けなく泣いてもらわねえと、いつまでも犯してもらえませんよ」
ほかの男たちも嘲笑する。
「ふざけっ……うあっ、ああっ……ふざけるなぁ……っ」
その言葉に、孫空女はかすかに唇を震わせた。
怒りでも、屈辱でもなく──口惜しさだった。
反撃する腕も、逃げる脚もない。痛みにも抗えない身体で、ただ、羞恥と疼きに震えるしかない。
「どうした、どうした? たかが筆に嬌声を上げて、それでも頭領か?」
眼看喜がわざとらしく声を張って嘲笑した。
「ねえ、眼看喜様、こいつは、もう頭領じゃねえんですから、新しい呼び名をつけましょうや」
後ろで筆を操っている男が下から上に孫空女のお尻の亀裂を動かす。
しかも、一番痒い肛門だけを避けるようにだ。
「ああっ、ひいいっ」
「そうそう。確かに、もう頭領じゃねえよな。いまや“置物”だもんなあ? そのくせ、置物のくせに股ばっかり濡らしやがって。……ははっ、いやらしいもんだよな」
前からの男──。
筆の穂先をわざと乳首を外して掃いている。
孫空女は、歯を喰いしばり、目を閉じた。
でも、目を閉じても、どんなに強く歯を噛んでも痒みは止まらない。
「姫様……。猿姫なんて、どうです? 俺たち共有の性欲処置の石柱の猿姫とか」
「いいねえ、じゃあ、お前は、これから猿姫……。いや、やっぱ、“姫猿”だ、孫空女」
眼看喜が大笑いした。
そして、また、筆責めが再開される。
筆が、耳の中を、首筋を、肘のない腕の付け根を撫でるたびに、皮膚の奥から痺れが立ちのぼってきた。
やめろ──。
叫びたいのに、声にならない。
……なぜ、こんな目に。
そんな問いさえ、もう自分の中で、過去のことのように感じられた。
「ああ、もう許しておくれえ──。眼看喜、もうくすぐるのはやめさせてくれえ──」
孫空女は汗で滑光る裸身を捩りたてて叫んだ。
すると、眼看喜が手をすっとあげた。
全身を這い回っていた筆が一斉に引きあがる。
「まだ、わかってねえようだな、頭領……。いや、姫猿。お前はもう頭領じゃねえんだ。頭領は俺だ。そして、ここに集まっているのは、お前が奉仕することになる五行山の幹部様たちだ。立場をわきまえろ──。言葉にはすべて“お願いします”とつけろ。どこをいじって欲しいか。口にしろ」
「くっ、くそう……、そ、そんなこと……」
言えるはずがない……。
眼看喜だけでなく、全員にそんな言葉を使うなんて……。
孫空女は、憎悪とともに眼看喜を睨みつけた。
そうやって、必至に痒みと疼きっを耐え抜こう──。
でも、意地を張れたのは、数瞬だけだった。
全身を苛む痒みと、刺激への渇望感が孫空女の理性と自尊心を砕け散らせる。
淫紋と媚薬にただれる肉体は、もう理性でも、感情でもどうにもならなかった。
「うう……。が、眼看喜様……皆様……。どうか……あたしの……身体を……乳首を……それと……お、おまんこを……犯して……。こ、このとおりです……」
ついに孫空女は、声を震わせて口辱の言葉を口にしてしまった。
どっと周りの男たちが笑う。
孫空女は、肩を揺すって、ついにぼろぼろと涙をこぼしてしまった。
「ははは、ついに泣きやがったか。じゃあ、まずは乳首の痒みを癒やしてやる。だが、ただの乳首じゃ駄目だな。姫猿の乳首と言いな。ほら、言い直せ、姫猿」
「くっ、ま、まだなぶり足りないのかい……」
孫空女は口惜しさで歯ぎしりした。
「そうだよ。足りねえなあ」
眼看喜と手下たちが大笑いする。
そして、眼看喜が手にしていた筆で乳首のわずかに下辺りを焦らすようにくすぐる。
「ひあああっ、あああああっ、く、くそうう……。ち、ちくしょう……。が、眼看喜……さま……。ひ、ひめ……ざるの……乳首を……刺激して……ください」
しかし、一度、すでに屈服してしまったら、もう我慢は続かなかった。
「ははは、じゃあ、望みをかなえてやるぜ、姫猿」
すると眼看喜が孫空女の乳房を根元から絞り出すように、ぎゅうぎゅうと揉んだ。
「ひあああっ、あああっ、ふわあああっ」
孫空女は、痛いほどに痒みで疼いていた乳首を潰されるように揉まれ、その痛みが生んだ快感があまりにも強くて、胴体だけの身体を大きくのけ反らせた。
首輪を吊っている鎖が伸びて、その反動で身体が今度は前に倒れる。
それくらいの甘美感だった。
眼看喜はさらにぎゅうぎゅうと揉む。
それだけで、意識さえ飛びそうになる。
「ひあああっ」
孫空女は声を耐えることができなかった。
これまでの性経験では味わったことのないような快感だった。
揉まれているのは、乳房であり乳首なのだが、掻痒感で狂いそうな女芯までは灼けただれ、収縮し、まとまった樹液を噴き散らせる。
「じゃあ、まずは、二人出な。順番に姫猿様の乳首を吸ってやれ」
眼看喜が乳房から手を離して、身体を避ける。
すぐさまふたりの男が前に出てきて、孫空女の乳首を左右から吸いついてきた。
「ひあああっ、ひいっ」
孫空女は悶え狂った。
ずっと、耳掻きや筆で焦らし抜かれたのだ。
そこに与えられる容赦のない乳首への責めには、もう抗うことなどできない。
ふたりの男に乳首を舐めあげられ、吸われ、尖りきった乳首を転がされ、さらに乳房を揉まれる。
孫空女は汗みどろの裸身をがくがくと揺すりたて、首を左右に振って啼き悶えた。
「ひあああっ、ひいっ、ひいっ、ああ、あああ……こ、こんなの……こんなの──」
全身に散り拡がるのは、狂うような愉悦だ。
恥辱や羞恥などになにもない。
そして、しばらくすると快楽の頂点がやってくる。
乳首だけで──と思うが、もう歯止めは効かなかった。
「ひあああっ」
孫空女はがくがくと胴体だけの身体を痙攣させて、絶頂を極めかける。
「交代だ」
だが、眼看喜は執拗だった。
とことん、孫空女を焦らし抜くつもりなのだろう。
孫空女が絶頂しそうになると、男たちに交代を指示した。
そして、また次の男たちに乳首を吸われる。
さがりかけた快感が駆けあがり、孫空女はまたもや全身を痙攣させる。
だが、また寸前で刺激が中断され、交代──。
孫空女は泣き狂った。
しばらく、これを繰り返される。
でも、気持ちがいい──。
しかし、この愉悦も長くは続かない。
媚薬がさらなる地獄に孫空女を陥れていく。
乳首に連動するように、股間はじゅじゅじゅくと収縮を繰り返して愛液を噴きこぼさせていたが、そこにさらに強い痒みと疼きが貫きだしたのである。
直接の刺激がなく、放置されているがゆえに、肉芽も女陰も痛いほどに掻痒感が襲いかかってきた。
「あああ、痒いいい──。し、下も刺激して──。痒いいいい──」
孫空女は乳首を吸われながら、叫ばずにはいられなかった。
まるで快楽の蟻地獄に嵌まったかのようだ。
乳首の刺激で快楽を得られた分、女の快感の核心である股間の掻痒感は凄まじい──。
「痒いだと、姫猿? だったら、なんと頼むんだ? もう忘れたか?」
孫空女のこの反応を待っていたのか、横で男たちの責めを指図している眼看喜が声を掛けた。
それだけでなく、責めていた男たちを孫空女から離す。
再び、刺激がなくなる。
発狂するような痒みが襲う。一度得られた刺激を消失されるのは、なにもされずに焦らされたときの比ではないほどの苦しさだった。
「……ああ……こ、こんなの……こんなに……ないよおお──」
孫空女は声を震えわせて顔を振り乱す。
乳首への責めが消え、渇望感は増幅しつづける。
なにもされない責めによる這い回るような掻痒感は、孫空女を否応なく責めたてる。
「あああ、痒いい──。が、眼看喜さま──、なんとかしておくれよおお──」
孫空女は腰を揺すり立てて身悶える。
「なんとかしてだと? なんて、お強請りするのか、とっくに教えただろう?」
眼看喜がせせら笑う。
すでに屈服の言葉を口にしている。
一度や、二度も同じだ。
孫空女は、もう耐えることはできなかった。
「……ああ、ひ、姫猿の……お、おまんこを……なぶって……、なぶってください──」
「ははは、じゃあ、なぶってやろう。しかし、その前に、もっと石猿に……姫猿に相応しい姿にしてやってからだ……。おい、それを出せ」
孫空女の背後には、運ばれてきた台があり、そこに孫空女を責める淫具が置いてある気配なのだが、孫空女の身体は固定されているので見ることはできない。
そこから眼看喜に、なにかが手渡された。
「な、なんだよ、それ──?」
孫空女は、眼看喜が手にしたものを見て、思わず声をあげた。
眼看喜が孫空女の視界に入るように持ってきたのは、本物の男根を凌ぐ太さと長さをもった張形だった。しかも、胴体にびっしりといぼが植えられた強烈でおぞましい見た目だ。それに付随しているのがぴょんと丸みを帯びてして跳ねあがった「しっぽ」だった。
張形部分の醜悪さに比べて、反対側の尻尾部分の部分は、まさに猿を思わせる「しっぽ」になっている。
「へへへ、姫猿様よ。これを挿入してやるぜ。これも、
眼看喜が最初に塗った油剤を張形部分に塗り、ずぶずぶと刺激剤入りの孫空女の尻穴に張形を打ち込んでいく。
こんなこのが小さな尻穴に入るものかと思ったが、案外にあっさりと孫空女の尻穴は、その張形を全部受け入れてしまったようだ。
「ひいいいっ」
孫空女は悲鳴をあげた。
「ははは、こりゃあいいぜ。まるで本物の猿だ。姫猿のできあがりだ」
眼看喜の言葉に周りの男たちも手を叩いて大笑いした。