※この作品はR-18です。

艶本西遊記   作:ドン・ドナシアン

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 33 石猿の尻尾

「ははは、姫猿様よ。どうでえ。いい格好になったろう──。おい、姿見を持ってこい」

 

 どこから持ち込んだのか、部屋の奥の戸が開き、何人かの手下が、妙に大きなものを抱えて現れた。

 男たちが運び込んできたのは、異様に大きな姿見──鏡だった。縁には黒鉄の飾りが巻かれ、三本脚の先端は鉤爪のように床を捉えている。

 その鏡を、男たちは孫空女の真横──石柱の上に固定されている孫空女の視線の高さに合わせるように立てかけた。

 

 いまの孫空女の姿が否応なく、孫空女の目に入る。

 動けない孫空女の胴体は、石柱の上に据えられていた。

 両腕は肩から切断されており、両脚も太腿の半ばで断たれて、金具で左右からがっちりと挟まれている。固定具には沈み止めの爪が仕込まれており、残った肉の中へ突き刺さるように喰いこんでいた。

 上体を倒すことができないように、天井に伸びた鎖が倒れそうな身体を首輪の後ろに繋がれて宙から吊って支えている。

 四肢を失い、柱のうえに晒された女の胴体──

 それが、鏡に映った“今の自分”だった。

 

 汗に濡れて光る肌。もがけない身体が、ただ柱の上で小さく蠢いている。毛の処理など施されていない陰部はむき出しのまま晒され、腰の付け根からは、愛液がたらたらと垂れ続けていた。

 下腹には、浮き上がった紋様があった。

 花びらのような、何枚もの花弁が重なり合うような、淫らな紋が、肌の下から赤黒く灯っている。まるで身体そのものが、快楽を求めるように刻印されたかのように。

 孫空女は、視線を逸らせなかった。

 見せつけられているのだ。この姿を、自分で直視させられている。

 

 ──腰が動いている……。

 

 意思とは関係なく、柱のうえで腰がぴくついていた。疼き。痒み。皮膚の内側から這いまわるような異物感。どれもが、とめどなく孫空女の身体を突き動かしていた。

 そして、その動きに応じて──鏡の中で揺れているものがあった。

 

 尻尾だ──。

 尻の穴に貫かれたのは、ただの張形ではなかった。

 外側の尻から飛び出る部分に、毛むくじゃらの“猿の尾”があるのだ。それが孫空女の腰の動きに合わせてゆらゆらと揺れている。

 肛門から伸びた尾の形状、毛並み、根元の太さにいたるまで、細かく作り込まれている。息をするたびにわずかに動くその尻尾は、鏡越しには、まさしく、本物の猿の尻にしか見えなかった。

 

「どうだ、姫猿、その尻尾は? 感想はどうでえ」

 

 その声に、背筋が凍りつく。

 眼看喜(がんかんき)だ。孫空女の背後から、ゆっくりと姿見の前に現れる。

 

「……」

 

 なにも答えられない。

 あまりもの屈辱で涙をとめられない。

 

「泣くほど見惚れるのも無理はねえな。その尻尾は、お前の肛門から生えてるだけじゃねえ。連動してんだよ。振れば、張形の根元がけつの中で暴れる仕掛けだ」

 

「連動?」

 

 どういうこと──?

 

「ところで、おい、猿。いまから人間の言葉は禁止だ」

 

 言葉の意味が、すぐには理解できなかった。

 けれど──。

 

「猿語で話せ。いいか、お前はもう人間じゃねえ。石柱にくくりつけられ、尻に尾を生やした牝猿だ。……いや、それ以下の雌玩具だな」

 

 鏡の中に映った己の姿が、黙って「現実」を突きつけてくる。

 腕もない。脚もない。股ぐらを痒みに濡らし、尻に尾を突き立てられて、柱の上で喘いでいる女。

 その女が、孫空女だ。

 それでも、さすがに怒りが胸にこみ上げた。

 

「な……なにが……さる、語だよ……」

 

 かすれた声で唇を震わせる。

 頬がひくつき、奥歯が鳴った。

 みっともない呻き混じりではあったが、それでも、最後の抵抗だった。

 その声を聞いて、眼看喜がふっと鼻を鳴らす。

 

「へえ、まだ吠えんのか、姫猿? じゃあ、そうだな……」

 

 指を鳴らした。

 

「おい、媚薬を塗り足してやれ。こいつの痒いとこをもうちょい可愛がってやりな」

 

 その言葉を聞いた瞬間、孫空女の背筋に電撃のような恐怖が走った。

 媚薬を足される──?

 冗談じゃない──。

 

「や……やめ……っ、それは、やめろおお──」

 

 喉が詰まり、言葉が濁った。

 この痒み。股間の奥を焼く、この異様な疼き──ただでさえ限界なのだ。これ以上、塗られたら、自分がどうなるか、想像もつかない。

 しかし、複数の男の手が、媚薬の壺を持って近づいてくる。

 それを見て、孫空女は慌てて叫んだ。

 

「きいっ、きいっ、きいぃいっ……」

 

 反射的に、声が出た。 

 猿だった。

 もはや、喉の奥から逃げ出すように発されたそれは、人間の言葉ではなかった。膝も肘もなく、汗に濡れ、愛液を垂れ流す身体を揺らしながら、孫空女は柱の上で必死に猿の鳴き真似を続ける──。

 

「きいっ……きいぃっ、ききいぃぃっ……」

 

 眼看喜が笑う声がした。

 そして、周囲から、どっと乾いた笑い声が湧いた。

 孫空女は俯いた。頬を伝って流れ落ちるのは、汗か、それとも、涙か。

 

「……きい……きいっ……」

 

 孫空女は、拒絶の哀願の意思を示すために、首を横に振って猿の声で叫んだ。

 だが容赦なく、油剤は肉芽と女陰に塗られていく。

 

「あひいいいい」

 

 柔らかい刺激だが、油剤を塗り足されることで加えられる指の刺激は、一瞬だけ掻痒感が吹き飛ぶような快感だった。孫空女は石柱の上で身体を仰け反らせて悲鳴を噴きこぼす。

 

「猿の声だと言ってんだろうが──。構わねえ。猿の声で啼き続けるまで油剤を塗り足せ。これは重ね塗りすればすほどに痒みが大きくなるんだ。もっと塗ってやれ──」

 

 眼看喜が怒鳴る。

 

「ききいいいっ、ききいいい」

 

 孫空女は慌てて、猿の鳴き真似で叫んだ。

 周囲がどっと笑う。

 やっと指が離れる。

 しかし、それはまたもや地獄の始まりだった。

 さっきまでだって、死ぬような痒みだと思っていたが、塗り足された後の痒みは、これまでの痒みなど優しいものだったのだと思い知るのに十分だった。発狂するほどの掻痒感と疼きが全身を襲う。

 

「ききいいいいっ、ききいいいいっ」

 

 孫空女は涙をぼろぼろと流しながら、汗まみれの身体を揺すりたてて、「猿」の悲鳴をあげた。

 そのときだった。

 ぐい、と誰かが尾を掴んだ。

 そして、尻に突き立てられた“猿の尾”が、ぐりぐりと左右に揺さぶられる。

 

「ひいああっ、ああああっ──あっ、ああっ……」

 

 腹の底が、痺れたように爆ぜた。

 尾の根元と連動した張形の中軸が、肛門の奥で捻じれ、回転する。

 ぎゅう、と内壁をこそげるように擦る刺激──。しかもそれは、ただの揺れではなかった。尾が揺れるたび、孫空女の肛門の奥に埋め込まれた張形が、全身を震わせるような異様な蠢き方を始めたのだ。

 

「うひあああっ、あ、あ、あああああっ──」

 

 口から悲鳴が飛び出した。だが、もう言葉ではない。

 苦悶でも、悦びでもない。どちらでもあるし、どちらでもない。そんな叫びだった。

 

「ははは、どうした姫猿。尾っぽを動かされるだけで、啼いちまうのか」

 

 眼看喜が笑いながら、さらに手を動かす。

 尻尾が引かれ、押され、斜めに、時に跳ねるように煽られた。

 それと連動するように、尻の奥に埋まった張形が、ぐるぐると回転する。先端の突起が肛門の奥壁を乱暴に擦りあげ、腹の底から神経を逆撫でするような刺激が噴き上がってくる。

 

「きひいっ、きいいいいいっ……きいっ、きいいっ……!」

 

 孫空女は悲鳴を上げながら、腕のない身体を捩じらせる。

 腰が、止まらなかった。いや、止めることができなかった。

 止めたら──この痒みがもっと酷くなる。逃げ場のない疼きが、意識を焼き切る。ならば、動くしかない。揺らすしかない。自ら腰を振り、尾を揺らし、肛門の内側に快感を発生させなければ、生きていられない。

 それは、生存のための動きだった。

 

「ひ、ひいっ……あ、ああああっ……」

 

 孫空女の身体が、石柱の上で自発的に震えた。

 膝もない脚の断端がぷるぷると痙攣し、汗と涙に濡れた身体が、鏡の中でみっともなく蠢いていた。

 それでも、腰だけは動いている。前へ、後ろへ。左右に小刻みに揺れながら、尾を自らの意志で振っている。

 

「よおし、よしよし。踊れ、姫猿。腰で語れ」

 

「きいっ……きいっ……っ、ひっ、ひいぃっ……」

 

 呼吸が続かない。

 でも、腰を止められない。

 止めれば──この痒みの海に沈んでしまう。

 

 そして、いま──。

 孫空女は理解してしまった。

 

 この“尾”は、もはや異物ではない。尻の奥で蠢きながら、肛門の中枢と、快感の核を直結してしまったそれは──自分の一部と化していた。

 認めたくはなかった。だが、事実だった。

 猿の尾が、動くたびに啼かされる。尻が疼くたびに腰を振る。そして振れば振るほど──

 快感が、絶望的な熱を伴って爆ぜるのだ。

 

「ひいっ……ききっ……きいぃっ……」

 

 もう、どこまでが苦しみで、どこからが悦びなのか、わからなかった。

 

「ひいっ……ききいっ……っ、ききいぃ……っ」

 

 孫空女は、汗と涙と愛液まみれの身体を小刻みに震わせながら、柱の上で腰を振り続けていた。張形と連動した尻の“尾”が、前後左右にぶるぶると揺れるたび、肛門の奥で炸裂する疼きが孫空女の理性を削り取っていく。

 

「見ろよ、あれ。完全に猿だぜ」

 

「きいい……って啼きながら腰振ってやがる。姫猿って名乗らせたのは正解だったな」

 

「猿のようにせんずりがやめられないんだろうな。尻尾をあんなに一生懸命に振ってやがらあ」

 

 手下たちの笑い声が取り囲む。

 孫空女は、もはや否定する気力すら残っていなかった。

 啼く。揺らす。疼きが来る。また揺らす──。

 その繰り返しだけが、痒みと狂気を耐えるための“動作”として身体に染みついていた。

 

「そろそろいいだろう、全員で、犯してやるか」

 

 眼看喜の声。

 孫空女の心臓が跳ねた。

 やっと、この苦悶から解放されるかもしれない──。

 思考によぎったのは、それだけだった。

 眼看喜が、片手を上げたのが見えた。

 

「外してやれ」

 

 眼看喜の指示で数名の男たちが孫空女に集まる。

 まずは、首の裏でかちりと音がした。

 首のうしろを支えていた吊り鎖が外されたのだとわかった。

 同時に、腰を固定していた金具──太腿の断面をがっちり挟み込んでいた器具も、左右から開放された。

 

「そらっ」

 

 脚を固定していた力が抜けて支えがなくなった。

 次の瞬間──軽く背中を押された。

 

「うわあっ」

 

 孫空女の身体は、石柱の上から真下へと落ちていった。

 空中に浮く。全身が不意に宙を泳いだ。

 もがけない。手も脚もない。抵抗できるものがどこにもない。

 このまま、頭から床に叩きつけられる──その瞬間の予感が、冷たい針のように背中を這った。

 

 咄嗟に首を振った。

 反射だった。

 獣のような、生き残るための本能が首の位置をかろうじて捻じ曲げ、床に叩きつけられる角度を逸らした。

 

 ごつん、と鈍い音が響いた。

 肩を打った。切断された太腿の断端が、床にぶつかって跳ねた。

 

「ひぎっ……」

 

 呻きが漏れると同時に──刺激が爆発した。

 尻だ──。

 張形の根元。あの“尾”の根本が、床に強く叩きつけられて、その衝撃が──肛門の奥で内臓を貫くような痺れを引き起こしたのだ。

 

「あ、ああ、あああああ──」

 

 口が勝手に開いた。声が裏返った。

 突き上げるような刺激。痒みも、疼きも、怒りも、屈辱も、なにもかもを飲み込んで、頭の芯に白い奔流が突き抜けた。

 孫空女は、絶頂した。

 意思など、なかった。

 床に転がされた瞬間、何者かに叩き潰されたような快感の奔流に呑み込まれ、全身が痙攣する。

 

「……っひ……ひ、ひぃ……」

 

 床の上。うつ伏せになったまま、孫空女の汗まみれの身体が、ぶるぶると絶頂の余韻で震えていた。

 手も脚もない。動かせるものは、腰と首と、口だけだった。

 その腰の奥には、まだ、猿の尾が突き刺さっていた。

 そして、床に落ちた拍子に乱れたそれが、汗に濡れた尻の割れ目の間で、ぴくぴくと震えている。

 

 動いていないのに、まだ揺れていた。

 考えがまとまらない。

 痒みと快感がまだ引かず、背筋からじわじわと疼きが這い上がってきていた。

 

 そのとき──。

 

「よお、姫猿。いまのは大目に見てやる。だが、次に猿語以外を口にしたら、そのまま放置だ」

 

 声がした。

 見上げた先に、眼看喜がいた。

 

 胡座をかいて座った彼の股間。その中心に、肉棒がぶらさがっている。怒張しているわけではない。淡々と濡れた指で先端を撫でていた。

 そして、なにかを──瓶のようなものを逆さにした。

 とろりと粘ついた透明の液体が、眼看喜の男根にかけられる。

 液は、鈍く光りながら、男の竿をゆっくりと伝っていった。

 

「これは、中和剤だ」

 

 眼看喜が言った。

 孫空女は一瞬呆然としたまま、液剤をかけられた眼看喜の男根を凝視する。

 

「……さっきお前に塗ったあの媚薬を少しだけ和らげる。膣の中に塗ってやれば……まあ、ほんのちょっとだけ、楽になれるだろうよ」

 

 孫空女の喉がきゅっと詰まった。

 

「欲しいか?」

 

 ゆっくりと問われる。

 「欲しい」と口にしそうになり、その代わりに「きいっ」と喉を鳴らして、必死に首を上下に振る。

 

「なら、自分で来い」

 

 涼しげな顔だった。冷酷でも、憐れみでもない。ただの観察者のような、平板な笑み。

 

 床の上。うつ伏せ。

 手も脚もない。

 動かせるのは、腰と首と、……腹筋だけ。

 

 行かないと……。

 そう思った。

 いや、身体が、すでに動いていた。

 

 痒みがまた這い上がってきていた。

 膣の奥。粘膜の裏。息をするたび、腰の奥が焼けるように疼く。

 

 孫空女は、芋虫のように──這い始めた。

 腕のない肩を使い、膝のない腿を床に擦りつけ、肉体を前へ、前へと引きずる。

 息が荒い。汗が滴る。

 

「きい……きいっ……」

 

 知らず、口から猿の声が漏れていた。

 

「きい……きいぃ……」

 

 孫空女は這っていた。

 もはや、羞恥の声も出なかった。

 

 汗と涙に濡れた顔を床に擦りつけながら、歯を食いしばる。

肩から動かすしかない胴体は、まるでぬめった蛇のように、床に張りつきながら前進するしかなかった。

 

 目の前には、眼看喜が胡座をかいて座っている。

 その股間。鈍く濡れた肉の塊が、軽く勃ち上がっていた。先端からは、中和剤の残りがとろりと滴っている。

 

 その液体が、膣の中に入れば……。

 痒みが、少しだけ和らぐ。

 その言葉が、孫空女の頭の中で何度も何度も反響していた。

 

 這って……行かないと……。

 膣が燃えていた。痒みに焼かれて、粘膜の奥がただれていた。

 痛みと痒みが、皮膚ではなく、内側から湧き起こってくる。

 

 行かなければ──。

 

 這わなければ──。

 

 もはや、誇りも、意地もなかった。

 

 ──いや、あったのかもしれない。

 

 それが、すべて、焼け焦げてしまったのだ。

 

「……きい、ききい……っ……」

 

 孫空女の額が男の股間の目前に届いた。

 鼻先に、汗と液体と肉の匂いが混じった熱気がまとわりつく。

 眼看喜は、まったく動かない。

 

「よし、くれてやる。自分で咥えて、まずは飲め。飲んでも多少は癒える」

 

 その声が、氷のようだった。

 孫空女の喉が鳴った。

 動かせるのは、首だけだった。

 首を、ゆっくりと傾けた。口を開いた。

 

 そして──

 猿のように、唇を突き出して、男の陰茎に触れた。

 

「き……っ」

 

 痒みに焼けた身体が、ぷるりと震える。

 男の肉棒、孫空女の唇を割って侵入してきた。

 唇。歯茎。舌の裏──それらを濡らしながら、男の性器が、ぬるぬると口内をなぞる。

 

 粘ついた中和剤の感触が、舌の裏に広がった。

 それを、吸った。自ら、すすった。

 眼看喜は無言だった。微動だにせず、ただ孫空女が自ら男根を咥える姿を、無言で見下ろしていた。

 

「ちゅっ……ちゅ、く……ぅ……」

 

 孫空女は、無様に啜っていた。尻にはまだ尻尾が突き刺さり、愛液と汗にまみれた身体が床にべたりと這っていた。

 それでも、自ら咥え続けていた。

 

 ようやく──。

 

 眼看喜が指を動かした。肉の根元を掴み、ゆるく引き抜く。

 そして、男の指が孫空女の顎を持ち上げた。

 

「いい子だ。猿のくせに、なかなか素直じゃねえか」

 

 孫空女は応えなかった。熱い痒みに混じった快感が舌に残っていた。

 眼看喜の指が孫空女の股間へと伸びる。

 指先に中和剤を塗り──。

 ぐぷ、と膣口にねじこむ。

 

「きひいっ」

 

 孫空女の身体が、びくんと跳ねた。

 柔らかな粘膜に触れたその冷たさに、一瞬、痒みが遠ざかった。

 それだけで、身体が歓喜のように震える。

 それが、どれほど自分が追い詰められていたかの証だった。

 指が、膣奥を塗るように、ゆっくりと動く。

 

「楽になるだろ?」

 

 その問いかけに──。孫空女は、唇をかすかに開いた。

 

「……き……きいいいいっ……」

 

 もう、言葉はなかった。

 ただ、喉の奥から漏れたのは、みじめで、小さな、猿の鳴き声だった。

 眼看喜の指が膣内から引き抜かれた瞬間、孫空女の身体は、震えを帯びて軽く仰け反った。

 

 次に来たのは、男の腕。

 肩の下と腰を抱きすくめられ、そのまま力任せに持ち上げられる。手も足もない身体はなすがまま、抵抗する術もなかった。あえなく眼看喜の膝上に横たえられ、仰向けになった形のまま、その腰が、男の股間の熱へと向けられる。

 

 触れた。

 灼けるような熱が、剥き出しの膣口をなぞった。

 

「きいっ……き、きいいいっ──」

 

 反射だった。喉の奥から飛び出したのは、もはや意識された鳴き声ではなかった。

 次の瞬間、腰の奥で爆ぜた熱──。

 股間に突き刺さったものの衝撃が、焼けただれたような灼熱とともに身体中を貫いた。これまでの痒みを溶かして飲み込むような快感が、孫空女の全身を包み込んだ。

 

「き、きひぃぃいっ──」

 

 視界が、白かった。

 天井も、男の顔も、何も見えなかった。ただ焼けるような光が、意識の中心を塗り潰していく。

 

「たったのひと突きで極めやがったぜ、この姫猿──」

 

 眼看喜の乾いた声が遠くで響いた。

 孫空女は答えられなかった。答えるどころではなかった。腰が勝手に震えていた。

力など入らない。けれど、張り裂けるような疼きと快楽が交互に噴き出し、その度に身体が揺れる。

 

「きひっ、きいいいっ、きひいいいっ」

 

 全身が上下に揺らされていた。

 意識の底ではそれがわかっていた。誰かの腕に支えられ、腰が引き寄せられ、また押し戻されるたびに──孫空女はまた絶頂に達していた。

 

「き……い……っ、ひ、ひぃいっ……」

 

 啼くことしかできなかった。

 そして。

 再び突き立てられた衝撃が、膣奥を灼いていった。

 

 脳が焼ける。

 意識が剥がれ落ちる。

 自分が誰だったのか、もうわからなかった。

 ただ、目の奥で白い稲妻が走り、涙も汗も愛液も、すべてが下肢を伝って床に流れ落ちていた。

 

 律動が続く。

 孫空女は何度も何度も、絶頂を繰り返した。

 とにかく、気持ちよくて、孫空女は懸命に膣を締めつける

 

「おっ、おおっ、こりゃ、いいや」

 

 眼看喜が馬鹿みたいな声をだして、ぶるぶると腰を揺すった。

 孫空女の股間の中で精が弾けた。

 嘆息した眼看喜が律動をやめた。

 股間の熱が引いていく。身体の奥に、別の熱が注ぎ込まれた感触を残して……。

 

「なかなかの締めつけだったぜ、姫猿」

 

 孫空女は、放り出された。

 石の床に、ぺたりと音を立てて倒れる。

 

 終わった──と、思った。

 ところが……。

 

「……っ、あ、ああ……」

 

 腰が、また、痒み始めていた。

 灼けたような快感に覆われていたはずの膣の奥が、またじりじりと焼かれるような疼きに変わっていた。

 冷めていく興奮。退いていく絶頂の波──。

 そこに現れたのは、忘れていたはずのあの痒み──中和剤のはずが、まるで効果などなかったかのように、再び襲いかかってくる。

 

「きい……きいっ、きいぃ……っ」

 

 孫空女は、床の上で這いずった。

 脚もない。手もない。ただ、腰をずらすように床を捩り、呻き声を漏らしてのたうちまわるしかなかった。

 

「もう痒いのか? 哀れだな、姫猿」

 

 誰かの声が降ってきた。

 次の男が胡座をかいている。

 股間に瓶を傾け、とろりとした透明の液体を自身の陰部に垂らしていた。

 

「じゃあ、次は俺だ。頭領……いや、姫猿。こっちきな」

 

 その言葉に──孫空女は首を横に振った。だが、腰が動いた。疼きが、また内側から呼びかけていた。

 いま、この疼きを緩められるのは──あれしかない。

 孫空女の身体はまた、床をずるずると這いはじめていた。

 手足のない肉の塊のような身体が、ひくひくと震えながら、腰を揺すって前へ前へと進む。

 

「きい……きいぃ……」

 

 動くと腰が揺れ、尻尾が動くことで刺激が孫空女の肛門で快感を伝える。

 達しそうになるが、お尻に刺激が加わっても股間の痒みが消えることはない。

 

「きいいっ、きいいっ」

 

 口が勝手に鳴っていた。

 哀願でも、拒絶でもない。

 ただ疼きに突き動かされるまま、猿のように鳴きながら──

 

 孫空女は、男の性器に向かって懸命に這い続けていた。

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