「馬鹿なことを言わないでよ──。わたしに隷属術なんて刻んだから、宝玄仙が怒り狂って交渉にもなににもならないわよ──。なに考えているのよ──」
沙那は慌てた。
大法螺を並べて、無理矢理に交渉の土台に載せようとしたのが裏目になった。
まさか、交渉するよりも、沙那を支配した方がいいと白龍が考えるとは思わなかったが、考えれば当たり前だ。とにかく、白龍に翻意をさせようと焦る。
「いや、その宝玄仙との交渉の方策については、隷属したあと訊く。おそらく、色々と知っておるのだろうからな」
白龍が笑う。
そして、一時的に部屋の隅に控えていたふたりの少女隷奴たちに、沙那から服を剥ぐように指示した。服とはいっても、切り刻まれてただの布切れになっているだけのものだが、それが少女たちによって剥がされていく。
「ならば、首環奴隷でなく、紋様奴隷がよいでしょうな。足の裏に紋様を刻みましょうか」
掌から白い光が放たれる。
その瞬間、沙那の全身を得体の知れないなにかが這い回るような不快感が駆け抜けた。
「ひっ……」
思わず肩を震わせる。
だが、その感覚はすぐに消えた。
「もう隷属の刻みが終わったのか?」
白龍が木叉に声を掛けた。
「とんでもない。身体を調べただけです。この沙那が宝玄仙に隷属されているかどうかで、やり方が変わりますのでな」
木叉が笑う。
「どういうことだ?」
「もし宝玄仙の隷属が掛かっておれば、わしの手には負えませぬ。隷属はできませんのでな。かつての宝玄仙は、周りにいた十人の巫女にも隷属を掛けていたと聞きます。この沙那も念のためです」
「そうか? だが、そうであっても、心を折って屈服させればよいのであろう? それで奴隷紋が新たに刻まれるのではないのか」
「それはまだ隷属の掛かっていない者に対してですな。すでに隷属が掛かっておれば、対象となる主人の刻みを変えるという処置になります」
「どうするのだ?」
「方法は二つですな。ひとつは主人が奴隷に主人の変更を告げることです。奴隷商の売買はこれです。もうひとつは術者を上回る力で術を掛けることになります。奴隷を屈服させることは必要ですが、それだけではいかんのです」
「ほう。それでこの沙那はどうだ? 宝玄仙の術が掛かっておるのか?」
「無垢ですな。隷属どころか、法術具の類も身につけておりませぬ。大丈夫です」
木叉が身体の前で腕を組み、白龍へ小さく頭を下げた。
沙那は、その言葉に驚いた。
「なに言っているのよ。わたしの身体は法術具だらけよ。ちゃんと調べて。宝玄仙を上回る隷属術なんて掛けられるわけないわ。無駄なことはやめなさい」
沙那は怒鳴った。
首には、『服従の首環』という名の銀色の首環──。
陰核の音元には『女淫輪』だ。
ほかにも、あの変態巫女のことだから、沙那の知らない仕掛けが身体のどこかにあっても不思議ではない。
少なくとも、「無垢」という言葉だけは、沙那にもっとも相応しくなかった。
いっそ首の首環だって、宝玄仙の法術具だと教えたい。
だが、それは命令で禁じられていた。
「なにを言う。わしの眼は節穴ではない。術も刻まれておらんし、法術具の仕掛けもないと出たわ。ふむ、もしかして、その首にあるのは隷属の振りをする贋具か?」
「贋具? わざわざそんなものを身につけるのか?」
白龍が不思議そうに訊ねる。
「奴隷狩りに遭わぬための知恵ですな。すでに誰かの奴隷であれば、隷属を刻み直すのにも手間が掛かります。だから似たような首環をつけるのです」
「ほう、なるほど。旅人の知恵ということか」
白龍が感心したように頷く。
「わたしはすでに宝玄仙の奴隷よ」
沙那は必死に訴えた。
自ら認めたくはないが、それは事実だ。
認めさせなければ、隷属を刻むための拷問が始まる。
しかし、沙那にはすでに服従の首環による隷属が掛かっている。
宝玄仙を上回る術者など存在しない以上、仮に沙那自身が屈服しても主人の書き換えは成立しない。
つまり、主人を変更できないまま隷属のための拷問だけを受け続けることになる。
「ふん、わしの目は節穴ではないわ」
木叉が肩を揺らした。
「節穴よ──」
沙那は怒鳴った。
「へえ、じゃあ、木叉様。このお姉さんの股間の環は淫具ではないのですか?」
沙那から服をすっかりと剥ぎ終えた少女隷奴のひとりが訊ねた。
「ここを動かすと簡単に達するのですよ。てっきり法術の刻まれた淫具なのかと思っていました」
もうひとりの少女奴隷も言う。
「違うな。法術具ではない。ただ、この沙那が淫乱なだけだろう」
木叉が笑う。
「淫具よ──。この節穴術師──」
沙那は怒りのまま叫んだ。
だが、どうして木叉に感知できないのかもわかってしまった。
宝玄仙と木叉では格が違うのだ。
服従の首環も、女淫輪も、宝玄仙が自ら作った法術具である。
おそらく宝玄仙は、他者には自身の術が感知できないよう処置しているのだろう。
「木叉、
すると白龍が言った。
「なるほど……。手っ取り早く、女を屈するのはよいかもしれませんな。見たところ、鞭や棒が堪えるようにも思えませんし、痛みには死ぬまで我慢するかもしれませんのう。気も強そうですな」
木叉が頷きながら片手を床に向けた。
白い紋様が床に浮きあがり、そこに大きな壺が出現した。壺の中には、たっぷりと粘性のものがはいっている。
嫌な予感しかしない……。
「じゃあ、お前たち、それを沙那の身体に塗ってやれ」
白龍が少女奴隷たちに命じる。
「ええっと……何倍くらいに油に溶かしますか?」
少女のひとりが白龍を見る。
もうひとりは、壺から柄杓ですくって、木桶に移している。
「原液で構わん。木叉の言う通りだ。気が強そうだしな」
すると、白龍がにやりと笑う。
「えっ、原液のままですか?」
少女奴隷は驚いている。
いまの会話から思うに、おそらく、普通は数倍に希釈して使う媚薬なのだろう。それを沙那には薄めることなく使用するようだ。
「だが、原液を使ったとしても、その沙那を堕とすのは大変かもしれんぞ。お前たちにできるか?」
白龍が微笑んだ。
「まあ、お館様とはいえ、酷いです」
「そうです。さっき見たではありませんか。このお姉さんはあっという間に十回も達しましたのよ」
少女奴隷は不満そうに、ふたり揃って頬を膨らませている。
「ならば、堕としてみよ。なにをしても構わん.必要だと思ったものは、木叉に言え。なんでも運ばせよう」
「よーし、頑張ろう」
「この女を堕とせなければ、あたしたち性奴隷の名折れだわ」
白龍の揶揄うような物言いに、少女たちが向き合って声を掛け合う。
沙那はそれに接しながら、ただ歯噛みした。
こうなったら、開き直るしかない。どうしても屈服できないと悟れば、また、霊術契約に頭を切り替える可能性もある。それまで耐えるしかないか……。
「じゃあ、始めるわね、お姉さん」
「覚悟はいい?」
少女たちがくすくすと笑い合いながら、まずは桶の中の琥珀色の油剤を手に取って、沙那の乳房に塗り始める。
「うう……」
塗られた直後は冷たいと思った。しかし、あっという間に塗られた場所がかっと熱くなっていく。それだけで、とんでもない媚薬なのだとわかる。
「じっとしてね。いまはまだ薬を塗っているだけだから。それだけで悶えたりないでね」
「ふふ、でもお姉さんには無理かな。難しかったら、遠慮なく反応していいよ、お姉さん」
少女ふたりの指使いは巧みだった。
言葉とは裏腹に、沙那に感じさせようとする淫靡な手付きで油剤を足していく。乳房を捏ね回し、乳首には何度も何度もしつこく塗り込んできた。
「くっ、うくっ」
沙那は必死に、歯を喰いしばる。
「可愛い…….我慢しているの?」
「大丈夫よ。いまは、手加減してあげるわね、お姉さん。さもないと、また、あっという間に連続絶頂しちゃうものね」
少女たちが今度は片足立ちさせられている内腿の付け根に、油剤を擦り込んできた。
「ひああっ、ああっ」
反応なんてするものかと思っているのに、どうしても指を敏感な場所に動かされると、激しく身体を悶えさせてしまう。
少女たちがそれを嘲笑う。
そんなことをしながら、陰核から肉襞の内側と外側、そして隙間──。さらに、お尻の穴に至るまで指を挿入して油剤を塗り込まれてしまった。
「じゃあ、こんなところかしら」
「もうちょっとしたら、お姉さんのいやらしき踊りが始まるわね」
少女ふたりが手を離す。
沙那はそれだけで、ぐったりとなってしまった。