※この作品はR-18です。

艶本西遊記   作:ドン・ドナシアン

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  5 最後の夜

「くわっ、ああっ、き、気持ちいいよ──。もっとだよ。もっと気持ちよくしておくれ──」

 

 宝玄仙は男ふたりに身体をもみくちゃにされながらよがり狂った。

 身体は淫紋の縛りのために動かない。

 法術も封印状態だ。

 四肢については、左右の手首を足首を手錠で繋げているので、淫紋で拘束されてなくても、一切の抵抗は不可能である。

 自由を奪われているという状況が、被虐体質にされた宝玄仙を途方もなく感じやすくさせていた。

 

 さらに、淫紋による発情と、旅のあいだにずっと焦らし責めのようになっていた玄奘の仕打ちにより、身体は沸騰するほどの淫情が荒れ狂っていた。

 その肉体を本格的な男ふたりがかりの愛撫だ。

 堪らない──。

 すでに宝玄仙は幾度も失神してもおかしくないくらいの激しい快感を繰り返していた。

 

 しかし、絶頂はできない──。

 

 首に嵌められている絶頂を禁止する法術の調教具は、絶頂をしようとするたびに、宝玄仙の快楽を堰き止め、寸止め状態にする。

 そのせいもあり、もはや宝玄仙は正気を保つことさえ難しい程に追い詰められていた。

 

「ほら、接吻だ」

 

 ひとりが宝玄仙の裸身を抱えるようにして身体を起こさせ、何度目かの口づけをしてきた。

 宝玄仙は酔うような心地のまま、その唇に吸いつき、舌を絡め合う。

 

「んああっ、ああっ、き、気持ちいい……。んあっ、んんっ、い、いいよ──。んまっ、んああっ、ああ、む、胸も吸っておくれ。うんと優しくね。い、いや、乱暴でもいい──。とにかく、揉んで──。んんんっ」

 

 そして、口づけと口づけの合間を縫うように、官能の疼きでぼうっとなる顔を揺さぶり、意図的に甘いお強請りの言葉を熱っぽく吐く。

 

「ああ、やっぱり宝玄仙様の淫乱の噂は本当でしたね。いくらでも吸ってあげますよ」

 

 もうひとりの男が宝玄仙の豊かな乳房に手を掛け、乳頭を吸いながら、ゆさゆさと手で乳房を揉んできた。

 さらに、もう一方の手で内腿を刺激してくる。

 

「あああっ、い、いいいっ──。指だよ──。指を使って──。ま、前も──。そ、そして、後ろも──」

 

 一気に感極まった宝玄仙はがくがくと身体を大きく痙攣させながら叫ぶ。

 本当なら、ここでも達しただろう。

 だが、またもや堰き止められのがわかった。

 寸止めの苦しさが襲いかかる。

 

「くああっ、ま、また──。と、とにかく、もっと──。もっとしておくれ──。滅茶苦茶に……」

 

 宝玄仙は引きつったいたぶりを催促する。

 

「こ、こりゃあ、我慢できねえ。とりあえず、一発出すぜ。これだけ、色っぽくて、淫らなふるまいに接しちゃあ、堪らないよ」

 

 ふたりがかりの愛撫をしていたうちのひとりが、興奮したように強引に宝玄仙の身体をうつ伏せにする。

 そして、怒張を宝玄仙の尻たぶに密着させた。

 

「さっきも言ったが、挿入は尻だけだ。その宝玄仙は性戲にかけては百戦錬磨の女だ。外に出そうと思っても、あっという間に搾り取られるぞ、淫具のために絶頂できないようにしているから大丈夫だが、念のためだ。子宮にだけでは精を注ぐな。それで淫紋の呪術による法術封印は解けない」

 

 天幕の床布で獣のようなまぐあいをしている宝玄仙たちを、簡易寝台に胡座をかいて見守っている玄奘だ。

 宝玄仙との約束を破り、ほかの高僧たちをここに引き込んだ張本人だ。

 その玄奘は、さっきから絶対に宝玄仙の膣には精を注ぐなと繰り返す。それさえ守れば、宝玄仙の法術は決して使用可能な状態にならないと信じ込んでいる気配だ。

 

「わ、わかってます……。じゃあ、いくぜ……。お、おおおっ、き、気持ちいい──。これが尻穴か──。まるで、まんこだ。尻まんこだ──。ほおおおっ」

 

 一気に宝玄仙の尻穴に怒張を貫かせた男がすぐに歓喜の悲鳴をあげる。

 だが、宝玄仙も狂乱した。

 尻穴は、闘勝仙の気狂いにより、繰り返し快楽の呪術を埋め込まれてしまった宝玄仙の最大の性感帯だ。

 そこをまともに貫かれては、さすがに宝玄仙も正気は保っていられない。

 

「お、おおおっ、おあああっ」

 

 宝玄仙は痴呆のように声を放った。

 全身を突っ張らせる。

 しかし、またもや寸止めだ。

 あまりの仕打ちに涕泣してしまう。

 

「ああ、ひどいい──。ひどいじゃないかい──。せ、せめて、一度だけ──。一度だけでいいから、この首輪を外して、達しさせておくれよ、玄奘──」

 

 宝玄仙は叫んだ。

 一方で、どくどくと尻の奥に男の精が注がれるのがわかる。

 

「ああ、交替だ──。次は俺だ──」

 

 ひとりが尻穴を犯すあいだ、胸を揉み、全身を舐めまくっていたもうひとりが、精を放ち終わった男を突き飛ばすように、宝玄仙の背後から抱きつく。

 さっきの男の怒張を抜いた瞬間、その男は尻穴を犯してきた。

 

「はぐううっ、げ、玄奘──。ご、後生だよ。一度だ──。一度でいいから──。このままじゃ狂ってしまう」

 

 宝玄仙は尻を犯されながら、玄奘に狂乱の哀願をする。

 

「ははは、いくらでも狂ってくれ。これが最後の夜だ」

 

 その物言いを宝玄仙は訝しんだ。

 またもや、最後だと口にした……。

 

「さ、さっきから、どういうことだい──? おわっ、だ、だめえっ、ま、また、いくううっ──。いや、いけない──。ああ、こんなのないよ──。あああっ」

 

 玄奘に問いただそうとしたが、尻奥を怒張によってずんと拡げられ、凄まじい快感を襲いかかって、もうなにも考えられなくなる。

 だが、またしても首輪の淫具が宝玄仙を寸止めする。

 宝玄仙は狂いそうになる。

 そして、二人目が精を放った。

 怒張が抜かれ、ふたりがやっと宝玄仙から離れる。

 

「もういいだろう。ここでのことは他言するな。行け。これは特別だ。この後、手伝ってもらうこともあるが、そのときにまた呼ぶ。それまで外で待て」

 

 玄奘がふたりの高僧たちに声をかけた。

 ふたりが慌てたように法衣を整えて、争うように天幕を出ていく。

 そのあいだ、宝玄仙は犯された格好のまま放置されている。

 そして、再び、玄奘とふたりきりになった。

 

「くっ、お、終わりかい……。お、お前のことだから、ふたりどころか、全員にわたしを犯させるのかと思ったよ。それとも、五十人の人足たちにも……」

 

 宝玄仙は髙尻のまま、肩で息をしながら玄奘に首だけを向ける。

 

「それもいいけどな。そんなことをすれば、夜が明けてしまう。朝までに全部を終わらせないとならないしな。だから、あの二人だけにした。あいつらは、手伝ってもらうことがある。因果を含めている」

 

「夜になにがあるんだい。朝までだろうと、明日までだろうと問題ないいじゃないかい。まさか、この糞ったれの西方行脚の道中が遅れるとでも? 本当に西域まで、ついてくるつもりじゃないだろうねえ?」

 

「まさか。これが最後の夜だよ。こうやって、人かなり里から離れた場所に来た。これこそが旅の目的地だ。そもそも、もう俺も旅に飽いた。帝都に返りたい。魔域になど、向かうわけがないだろう」

 

 玄奘が笑う。

 やっぱりか……。

 

 予想はついていたが、明確に口にされると、宝玄仙はぞっとしてしまった。

 玄奘がなにをしようとしているのかを悟ったのだ。

 だが、それでも宝玄仙には、どうしても確かめなければならないことがある。慌てて口を開く。

 余分なふたりを連れてきたときには焦ったが、すぐに追い返してくれてよかった。確かめたいことを問いただすことができる。

 あのふたりに、玄奘が宝玄仙の淫紋のことをどれだけ喋ったか不明だが、あのふたりの前で訊ねるのは憚られた。

 

「ちょ、ちょっと待ちな──。そもそも、お前、どうやって闘勝仙の小僧が秘密にしていたはずの、わたしの淫紋を支配する符牒を知ってんだい? あいつは死んだときに、それを秘密のまま死んだはずなんだ」

 

 宝玄仙は身体を固めたまま、肩で息をしながら言った。

 この旅が始まって以来、それが最大の疑念だった。

 同じ質問を、これまでずっとかたちを変えて繰り返していたが、ずっと、のらりくらりとかわされてしまっている。

 しかし、いまなら喋るかもしれない。

 

「闘勝仙様を小僧と呼んだか? 口に気を付けることだな……。まあいいが、それは別に大したことじゃない。闘勝仙様が狂死をされたときに、日記を遺されてたんだ。それにお前の調教記録が克明に記されていたのさ。空間封印されてたが、闘勝仙様の死とともに、外に出てきたものだ。それを拾ったのさ」

 

 玄奘が笑った。

 闘勝仙がそんなものを記録して遺していたとは知らなかった。だが、空間封印というなら、見つけられなかったのは当然かもしれない。

 空間封印とは、法術により、異相空間に物を収容する技だ。

 高位法術であり、そこにあるものは術者でなければ取り出すことはできない。闘勝仙が死んだことにより、完全に法術が消え去ったとき、位相から飛び出してきただろうか。

 だが、それにより、宝玄仙は合点がいったことがある。

 

「もしかして、お前は闘勝仙が死んだときに、捜査にあたった衛師かい?」

 

「近衛隊の隊長のひとりだ。こんな法衣なんてまとっているが、本職は近衛だ。お前と旅をしてきたのは、皇弟殿下のご命令だ。だが、もう終わる。」

 

 玄奘が机から水瓶を取った。

 それを懐から出した細い革紐に掛けていく。もともと濡れていたものだが、さらに水を含ませているようだ。

 なにをする気だ?

 宝玄仙は訝しんだ。

 

 まあ、それはともかく、玄奘のことだ。

 やっぱり、皇弟がつけた刺客だったか。

 闘勝仙に隷属させられているあいだ、あの男はさまざまな人間に、宝玄仙を嗜虐させた。その筆頭が皇弟だった。

 あの肥満男は、西方行脚を受け入れて、事実上の帝都追放を受け入れさせるだけでは満足しなかったのだろう。

 だから、手を回して、この玄奘を旅に同行させたのだと知った。

 

「淫紋を支配する符牒の言葉を知っているのは、お前だけか──? 皇弟は知っているのかい──?」

 

「さあな」

 

 玄奘が革紐を宝玄仙の首に巻き、力強く締めつけてからしっかりと結び止めをする。

 

「あぐっ」

 

 一気に息が止まる。

 苦しい……。

 宝玄仙はもがこうとしたが、まだ淫紋の符牒による拘束が効いている。枷がなくても、宝玄仙はほとんどこの状態から動くことができない。

 一方で、玄奘がこの部屋にある小さな暖房具を作動させた。

 一気に、天幕の中が温かくなる。

 

「濡れた革紐は乾けば、どんどんと縮んでいく。明日の朝までには、完全にお前の息を止めてくれるだろうさ」

 

「あ、あがっ」

 

 宝玄仙は応じようとするが、喉に喰い込む紐がそれを許さない。

 なにも喋れない……。

 

「明日の朝に、お前が死んでいるのを確認したら、宝玄仙様は突然死したと、随行の者たちには説明しておくよ。発見するのは、さっきのふたりだ。それで俺の任務は終わりだ」

 

 玄奘が短い鉄杭のようなものをどこからか取り出した。

 宝玄仙の横に屈みこみ、地面と枷を固定しようとする気配だ。

 こうやって、宝玄仙を死なせて、世間には旅の途中で倒れて死んだとのでも知らしめるのだろう。

 念のこもったものだと呆れた。

 

 革紐に締められた喉が苦しい……。

 宝玄仙は、息を求めて必死に口を開いた。

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