突然目の前に大金が現れ自分の物になったらどうするだろうか ?
この俺、一文字一(いちもんじはじめ)の場合は結構パーッと使ったと思う。
俺は普通の一般会社に勤めていて、上司からの理不尽な要求にも耐える毎日だった。
今のご時世、仕事を辞めても新しい就職先を見つけるのも容易ではない……
そんな時、気まぐれで買った宝くじが当たった。しかも買ったくじが全部当選し、金額は十億 !
今までの節約生活や仕事上でのストレスもあり、まず一軒家を買った。次に車、ボロボロだった家具や服を買い替えた。嗜好品も買ったがあくまでそこそこである。そもそも俺は酒やたばこは飲めないし吸えない。
使ったつもりなのだが、それでもかなり残っていた。だから俺は時々行くデパートの中でおかしな物を買ってしまった……
デパートの地下で売られていた一際目立つ袋……金ぴかに光る"スーパー福袋"と書かれた袋。
当然ながら売れ残っていた。理由は大体二つ、一つは怪しすぎる。もう一つは高すぎる。
お値段はなんと一億円 !
これを売りに出した奴は馬鹿じゃないのかと思う。何故こんな一般のデパートにこんな高い品物が置いてあるのか ?
こんな怪しい物、普通は買わない。買うわけがない。
だが今の俺には金があった……結果として、我が家にはピカピカ光り輝く袋がデデン ! と鎮座していた。
「……なんでこんなの買っちゃったかなあ……」
思えば一人暮らしを始めてから人と会話をしたことが大幅に減った。
仕事では話をするがプライベートでは話しをする相手がいない。彼女もいないし付き合った事もない。
彼女いない歴三十六年……せめて話し相手でも欲しいなぁ……と思いながら買った福袋を開けた。
中には……鍋と一枚の紙が入っていた……
「一億がこれか……やっぱりぼったくりだったか……」
そりゃそうだ。明らかに罠みたいな物だったもんな。せめてこれですきやきでも食べるか。
紙は鍋の説明書かな ? そう思い説明書を読んだ。
『今回は"たけっちグループ"のイチオシ商品、スーパー福袋をお買い上げいただいてベリベリサンキュー ! 私は本商品の開発者である鏡子、略してミラーウーマンと申します』
なんじゃこりゃ ? てか、ミラーウーマンて略す前より長くなってるじゃん。
『さて、本商品は"怪人錬成鍋"またの名を"闇鍋"と言います」
パチモンくさいな。
『使い方はとても簡単 ! 袋の中に怪人エッセンスが入っています。鍋に水を入れてお湯を沸かし、お湯に怪人エッセンスとなにか適当な物品を入れます。これは食料品の必要はありません。入れたら三分待ちます。すると怪人の出来上がり。どんな怪人が出てくるかは入れた物品次第です」
今流行っている、溶かしたらおもちゃが出てくる、みたいな物か ?
『また、鍋を一度でも使用したら袋の中身が拡張し、おまけ商品が使用できます。それでは、よき首領ライフをお過ごしください。 ミラーウーマン』
拡張 ? まあいいや、今日は休みで暇だし使ってみるか。
お湯を沸かして……エッセンスを入れて、あとは何を入れようかな ? なんでもいいとは書いてあったが、いざとなると何を入れれば……あっ ! ?
ボチャンと音がした。ポケットから紺色のハンカチが落ちてしまった ! ? あれお気に入りなのに……
鍋の火を消そうとするとありえない程の泡が立ち、とても火を消すどころではなくなってしまった。
「おいおい、どうすればいいんだよ ! 」
爆発して買ったばかりの家が火事になる……そんな最悪の展開が頭によぎる……だがそれは約一分程で、段々と泡が小さくなっていく。
するといつの間にかお湯が無くなっていて、中から人型の影が現れた…… ! ?
「な、なんだよこいつは…… ! ? 」
あの鍋、まさか本物なのか……じゃあ、こいつも本物の怪人 ! ? そんなの特撮の中だけにしてくれよ……
『私は憑依怪人……よろしくお願いします……ご主人様』
俺にとっての初めての怪人、そいつは見た目に反して礼儀正しい奴だった……