※この作品はR-18です。

怪人闇鍋シリーズ   作:プニたけっち

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三.交換怪人スワップン

ポゼッシャーが東条麗衣の身体を完全掌握してから約一か月が経過した。

 

表面上は今まで通りだ。

 

「一文字君 ! まだ書類ができないの ? 納期がもうすぐなんだから早くしなさい ! 」

 

「す、すいません ! 東条係長 ! 」

 

仕事上では鬼上司であるが我が家では……

 

 

「麗衣 ! お前よくもさっきは怒鳴ってくれたな ! お前が皆から好かれる上司に変われたのは誰のせいだと思ってるんだ ! 」

 

「申し訳ございません ! ご主人様のおかげです ! 私のような無能者がまだ係長でいられるのは一文字一様のおかげでございますぅ ! 」

 

俺は背後から麗衣のマンコをおもいっきり突く。俺の肉棒は膨張し、麗衣のマンコは興奮して濡れまくり受け入れ態勢を整えていた。

 

「射精だすぞ ! さぁ受け入れろ、お前が馬鹿にしていた男からの精子を全部受け止めやがれ ! 」

 

「はい ! 受け止めます、ですからお慈悲を ! 」

 

俺は麗衣に欲望をぶちまけた。膣の中は俺の為に作られたと言わんばかりに丁度いい締め付け具合だった。

 

「ああ ! 精子が私に……ありがとうございますぅ ! ! 」

 

俺の精子を喜んで受け入れる麗衣……文字通り一滴もこぼさずに受け入れたのだ。

 

 

このように家では従順な女……怪人として生活している。

 

怪人ポゼッシャーこと東条麗衣は既に住んでいたアパートを出て我が一文字家で生活している。

 

ちゃっかり俺も家では麗衣と呼び、籍は入れていないが新婚生活の様相を醸し出している。

 

さらにポゼッシャーは麗衣の身体が気に入らず筋トレを始めている。正確には『本来持つポテンシャルを引き出せていないこの身体が気に入らない』ようだ。

 

その副作用として麗衣のお腹が縦にうっすらと割れている。そしてセックスでも締め付け具合が心地よいのだ。

 

ポゼッシャーはまだ鍛えるつもりのようだが俺がストップをかけた。俺はうっすら割れている健康的な腹が好きなんだ。なにが悲しくてバッキバキに割れた腹を見なきゃならんのだ !

 

ポゼッシャーはしょんぼりして「……わかりました」と答えた。その代わり先ほども互いに滅茶苦茶楽しんだのだが……。

 

 

*

さて、こうなる発端となった福袋だがある日突然中身が膨らんでいた。そういえば怪人一人作ったら中身が拡張するとか書いてあったような……中にはいくつかの道具と紙が入っていた。

 

 

『怪人ポゼッシャーの作成おめでとうございます。奥様の東条麗衣……一文字麗衣様とお楽しみいただいているようでなによりです」

 

俺は絶句した。おい……なんでこんな事を知っている……? 我が家の状況は俺とポゼッシャーしか知らない筈なのに。

 

『たけっちグループ……総帥はなんでもご存じなのです。気になるかもしれませんが我々は決して怪人のオーナーである一文字一様には不利益となる事は致しません。さっそく本題に入りましょう。今回は拡張第一弾として三つの道具をご用意いたしました』

 

俺は何となく『絶対に触れてはならない』そんな話題なのだと感じた。

 

ギュッとポゼッシャーが俺の手を握る。おそらく同じ気持ちなんだろう。

 

しかたない、切り替えるか ! さて、俺の手には三つの道具があった。白いテープと銃に……履歴書か ?

 

『まず一つ目。マジックテープでございます。ただのテープではありません、所有主が望めばあっという間に巻き付く事ができます。相手にも自分にも……好きな用途でお楽しみください。なお、手に厚く巻けばロケットパンチやブーストナックルにもなります……』

 

……いいね ! ロケットパンチ、いいじゃない !

 

『二つ目は復元銃です。破損した物体を五分前の状態に戻せます。たとえ人体でも……』

 

『三つ目は偽造履歴書です。あまり難しい事はできませんが、書いた内容が現実のものになります。例えば気になる女の子の名前、年齢、趣味を変えたりとか……大嫌いと言ってくる女子を自分の妹にしたりとか……』

 

難しい事は出来ないって……これかなり危険なアイテムだろ ! ? 絶対に変な事に使えないぞ……。

 

『ちなみに、マジックテープ以外は一文字一様以外の方も使用できますのでお気を付けください。それではでは、今度は怪人二号を作成したらお会いしましょう……ここだけの話、早めに作った方がいいですよ ? 』

 

 

脅し……じゃないな。多分本心からこう言ってるのだろう。

 

「ご主人様、私はこの総帥という方は存じませんが、怪人を作るのには反対しません」

 

多少気になる所ではあるが、俺は久しぶりに闇鍋を引っ張り出した。

 

 

鍋に張られたお湯……怪人エッセンスを入れて……さて何を入れるか……。我が家の台所には複数の食材がある。全部ポゼッシャーが買ってきたものだ。本当に忠臣だよ。

 

「ご主人様、エッセンスを混ぜておきます」

 

「ああそうして……いや混ぜなくていい。確かお前の時も物を入れたらすぐに……あ」

 

「ご主人様 ! スプーンが消えました ! ? 」

 

スプーンの先端を鍋に入れた途端スプーンが消えた。ポゼッシャーが驚いたとほぼ同時に鍋の湯が激しく泡立つ。

 

「ご、ご主人様 ! 申し訳ございません ! 」

 

「ああ、いいよ気にするな、前もこうだったんだ。もうできると思うから」

 

鍋の湯が消え去り、中から黒いキーホルダー程の影が現れた……また影か ?

 

「……おはようございます。私は『たけっちグループ』製作、怪人NO.2 交換怪人と申します。お見知りおきを」

 

「お、おう。初めまして。俺は一文字一、こっちは怪人一号の憑依怪人ポゼッシャーだ。よろしく ! 」

 

「……ポゼッシャー、名前を付けられたのですか ? 怪人に ? 」

 

うむ、やっぱり名前で呼んだ方が愛着も沸くし。

 

「では、私にも名前をつけていただきたいと思います」

 

まあそう来るよね……でも何にしよう。えーとこいつ交換怪人だって言ってたから……使ったのはスプーン、交換はswapだから……よし。

 

「お前の名はスワップンだ、交換怪人スワップン、どうだ ! 」

 

「スワップン……わかりました。よろしく……」

 

「う……うん、よろしく……」

 

あまり嬉しくなかったのだろうか……ポゼッシャーの時もよくわからなかったけど、本来ネーミングセンス良くないからなぁ……。

 

俺とスワップンのファーストコンタクトはこんな感じだった。

 

翌日、俺は電車に乗って会社へ出勤していた。懐には昨日のマジックテープとスワップンを入れてある。偽造履歴書は持ち歩くのが怖いので福袋の中に戻した。

 

さて、電車に乗る際一番気を付けなければならないのが痴漢と呼ばれる冤罪だ。本気で触る奴は許せんが、中には鬱憤晴らしで痴漢だ、と叫んでくるとんでもない奴がいる。

 

「この人痴漢です ! 」

 

そうそう、こんな風に……え ? 俺 ?

 

*

駅のホームで俺は抵抗していた。痴漢に間違われた場合絶対に駅の詰め所に行ってはならない。警察に連れていかれたらまず冤罪を証明できない。だからと言って弁護士のあてはない。駅員が来る、ここが勝負だ。

 

「あんたあたしの尻触ったろ ? 知ってんだからな ! 」

 

「俺は触っていない ! 無実だ ! 」

 

「えーと、とりあえず詰め所まで来てもらえますか ? 」

 

断る ! だから早々に奥の手を切り出す。

 

「そんなに自信があるなら今ここで答えてくれよ。あんた『どっちの手』で触られたんだ ? 」

 

「……右手だよ。あんた右手であたしの手で触ったんだ ! 」

 

「へえ……確認するが、間違いなく右手だったんだな ? 左手でなくて ? 」

 

「しつこいなおっさん ! 右手だよ ! 」

 

駅員を見ると、面倒ごとをさっさと終わらせたいという表情だな。つまりここで一発逆転を望めるというわけだ。見てろよ……『巻きつけ』

 

「わかった……駅員さん、あんたこんな手で人の尻を触れますか ? 」

 

俺は『右手』を駅員に見せる。駅員もギョッとした。俺の右手は『包帯でグルグル巻きになっていた』

 

「どうです ? これでも俺がやったと ? 」

 

「あー、えーと、ちなみにこれは怪我かなにかで……」

 

「駅員さん、そんな事はどうでもいいんですよ。大事なのは『こんな手で触れるか』ということなんです。どっちですか ? ついでに他のお客さんにも聞いてみましょうか ? 触れますか ! こんな手で ! ? 」

 

野次馬連中も巻き込んでやる。見てるだけの連中め、お前らも答えてみろよ !

 

「俺は無理だと思うな ! 」

 

どこからか声が聞こえる……いや、俺のポケットだ。スワップンが声を張り上げてくれたんだ。ナイスアシストだ !

 

そうしているうちに、俺も俺も、と賛同する声が出てくる。最初の一歩があればみんな動き出す。見たか、これが日本人だ !

 

「い、いや、違う。左手だ ! 本当は左手……」

 

「あれだけ確認したじゃないか ! 右手なのかと。なのに君は間違いなく右手と答えた。だが実際はこうだ。君の主張が正しいか大いに疑問の余地がある……本当は触られていないんじゃないか ? 」

 

ここぞとばかりに追い詰める。止まったら負けだ !

 

「ふざけんなよ ! 本当に触られたんだよ ! あんたに ! 」

 

このガキ……大人しく冤罪を認めれば許してやったものを……。

 

「まあまあ、お二人とも。ここは落ち着いて、ここは後日改めてという事で……とりあえず連絡先を知りたいのでここにサインをお願いできますか…… ? 」

 

「お断りします。では失礼」

 

すぐに俺はその場から逃げ出した。あの書類、なにか妙な事が書いてあった。確かサインしたら警察が動く物もあった筈……テレビで見てうろ覚えだが、俺はこの直感を信じた。すぐに物陰に隠れやり過ごす。

 

 

何とか巻いたが……あの駅員、今舌打ちしなかったか ?

 

*

その夜……。

 

バンッとテーブルを叩く音が我が家に響き渡る。買ったばかりのテーブルはポゼッシャーの怪力によく耐えたと思う。

 

「痴漢の冤罪……ですって ? スワップン、その女の居場所を教えなさい。今から探し出して八つ裂きにしてやります」

 

ポゼッシャーの表情には鬼が宿っている。待て待て、お前が本気になったら必要以上の犠牲者が出るような気がする。

 

「……すまないポゼッシャー、私は女の姿は記憶しているが女の居場所はわからない。こんな広い町で女一人探すのは現実的ではない……悔しいが」

 

「だが、その手の女は逆恨みで何をしてくるかわからない。先に仕掛けて始末するべきだ ! 」

 

ポゼッシャーもスワップンも本気で心配してくれる……とても嬉しいぜ、だけど……。

 

「二人とも、気持ちはありがたいけど始末はやりすぎだ。そんな事をしてしまったら警察に捕まってしまうよ」

 

「……ではご主人様、私とスワップンがボディガードになりましょう。あの女が仕掛けてきたらすかさず穏便に説得こうげきを仕掛けます」

 

「……なんか不穏な言葉が見えた気がするけど懸念ももっともか……よしわかった、頼むぞ二人とも」

 

「「お任せくださいご主人様(ボス)」」

 

スワップンは俺をボスと呼ぶのか。これはこれでいいかも、なんだか偉くなった気分だ。

 

念のため俺は福袋から復元銃を取り出しポゼッシャーに貸しておく。念のためだ……もしも、万が一ポゼッシャーがやりすぎた時用として……。

 

*

 

あのオヤジムカツク……。

 

あたしは電車の中でガードのゆるいオヤジを痴漢って言ってストレスを発散していた。大抵のオヤジは逃げるか何もできないか抵抗するか、そのどれかだ。そこを……。

 

「五月ちゃん、あの男かい ? あいつには昨日逃げられたからね、俺もあいつはちょっと痛い目に遭わせたいねぇ」

 

駅員のオッサンが間に入って相手を追い込む……それがいつもの作戦。オッサンもストレス発散としてあたしに協力してくれている。きっかけは忘れたけど"痴漢の冤罪でストレス発散"という共通の目的で動いている。

 

「まさかあのタイミングで逃げるとはね、俺も反応が遅れたけど今度は大丈夫。裏路地に引きずり込んで痛めつけてやるよ」

 

このオッサンよく駅員になれたと思う。頭はいいかもしれないけど間違いなく悪人だよこいつ。

 

 

あのオヤジを街中で見つけれたのは偶然だった。都合よく一人だ、あのオヤジが右手に包帯を一瞬で巻いたタネはまだわかっていない。だけどそんなのどうでもいい、あたしに恥かかせた落とし前を付けさせてやる。

 

オヤジが路地に差し掛かる……駅員のオッサンがオヤジを裏路地に引きずり込む……よりも前にあたしとオッサンは逆に裏路地へ引きずり込まれた !

 

 

「な、なんだお前は ! ? 」

 

すごい馬鹿力であたしたちを引っ張ったのはスーツ姿のOLだった。

 

「こいつだポゼッシャー。あの女と……駅員だ。こいつらどうやらグルのようだな」

 

「ほう……駅員は私が。女はスワップン、お前がやれ」

 

なにこのオバサン、独り言なんか言って。頭おかしいんじゃないの ?

 

「あー、あなた一体どういうつもりで私達をこんな所へ ? 場合によっては出るところへフゲっ ! ? 」

 

駅員のオッサンがオバサンに顔面を殴り飛ばされる……な、なんなのこのオバサン ! ?

 

「て、てめえなにしやがグゲッ、や、やめグガッ ! ? 」

 

オバサンがオッサンの胸倉を掴んで顔面を執拗に殴る。や、やばいよこのオバサン、頭いかれてる……。

 

「さ、五月 ! 何とかしてくれ……ギャアアッ ! ?

 

オバサンがオッサンの足をありえない方へねじ曲がる。に、逃げなきゃ……。

 

「おっと、お前は逃がさん」

 

だ、誰……足元 ? なんか変な影がいる。

 

「私は交換怪人スワップン。昨日はボスをよくも冤罪にかけようとしてくれたな。お前にはその罪を償ってもらう」

 

はぁ ? 冗談じゃないわ。こんな影なんて踏みつぶしてやる。あのオバサンから逃げれば後は撮影してネットに拡散して……。

 

「踏みつぶす気だな ? そうさせん……貴様の身体をいただく ! ぬんッ ! 」

 

突然影は光りだすとガニ股になり両腕を広げる。そして影からヒトガタの光線があたしに命中して身体が発光し始めた ! ?

 

な、なにこれ……身体が動かない。そしてあたしは何故かとてつもない" 窮屈さ"を感じた。

 

「さあ、私に続け女 ! 」

 

あたしの身体は勝手に"楽な姿勢"を取る……ガニ股になり両腕を広げる……嘘でしょ ! ? なんであたしがこんなダサいポーズを……。

 

「私の能力を使う為にも女、お前にも私と同じ……美しきポーズと掛け声を出してもらうぞ ! 」

 

じ、冗談じゃないわよ ! ?

 

「「ス」」

 

あたしの口と手が勝手に動く。影と同じ動きをしてしまう、あたしの左手が自分の頭の上に置かれる……。

 

「「ワ」」

 

影と同時にあたしの声が出る……右手が頭の上に……い、いやあ……こんなダサいポーズ取りたくない !

 

「「パー ! ! 」」

 

再び影からヒトガタの光が放たれあたしに命中する。あたしと影の身体は光で繋がれ不気味な感覚に包まれた。

 

影があたしにぶつかったと思ったら今度はあたしが影に近づいていく……そんな感覚があった。

 

 

光が収まるとあたしの視点は一変した。周りの建物は巨大になり、路地の出口を見ていた筈のあたしはオバサンにぶちのめされているオッサンを見ていた。

 

そして……なぜかあたしの目の前に"巨大化したあたしが"ダサいポーズを取りながら固まっていた……。

 

「おい五月 ! マジふざけんなよ ! 遊んでる暇あったら助け呼んで来い ! こ、このババァマジでおかしい、殺されちまう ! 」

 

オッサンの顔は青あざだらけで早く助けないといけない……。

 

「……ふん、ほい、とお ! うーん、ダメだぁ、この女の身体ダメダメすぎるよぉ……身体固いし弱いしザコザコだし、こんな身体でボス喜んでくれるかなぁ……ねぇどう思うポゼッシャー ? 」

 

あたしが……目の前のあたしが片足立ちや足を上げたりして甘えた口調でオバサンに話しかける……どうなってんの…… ?

 

「五月ぃ ! いい加減にしろぉ ! 早く助けろ ! ? お、おい、何すんだ、やめろ ! ? 」

 

あたしがオッサンに近づいてオバサンが持ってた銃を構えた ! ? ちょっと、何すんのよ ! やめて ! ?

 

どれだけ走ってもあたしに追いつけない。まるであたしが小さくなったみたい……。

 

「……ばぁーん」

 

銃でオッサンが撃たれるとケガがたちまち治っていく……なにあれ ! マジ欲しいんだけど。

 

「どこも痛くない、足も治ってる。やりぃ ! でかした五月……ガッ ! ? 」

 

あたしがオッサンの股間に金的蹴りをかました……痛いみたいなんだよね、あれ。

 

「ぷっ……オッサン……バッカじゃねーの ? なんで『このガキ』が復元銃の使い方知ってると思ったのさ」

 

股間を抑えてうずくまるオッサンがあたしの言葉を聞いている……ていうかホントなんであたしがそこにいんのよ ! ?

 

「この復元銃で治したの可哀そうだからだとでも思った ? ざーんねん、正解は……ポゼッシャーにもう一回ボコボコにしてもらうためだよーん ! 」

 

オッサンがマジでビビッてる……本気じゃないよね…… ?

 

「ポゼッシャー、ボスが何のために復元銃渡したと思ってんのさ。こいつを殺さない程度に痛めつけて口を封じる為でしょ。これ五分過ぎたら効き目無くなるんだから、しっかりやらないとボス、プンプンだゾ☆」

 

やめろよ……やめろよ ! あたしの姿でそんな寒い事すんなよ !

 

「あ……すまん、気を付けよう……」

 

「気を付けなよ~ポゼッシャー、んじゃ、あとよろしくぅ……さーて、生徒手帳は、ふむふむ海道五月かいどうさつきちゃんていうんだね。あたし怪人スワップン、改め海道五月、年齢は0歳 ! よろ~、ビシィッ ! 」

 

あたしに指さしてふざけた自己紹介をする"あたし"……しかも口で効果音まで入れやがって !

 

「君は、『元』海道五月だね。ダメだよぉ~もっと身体鍛えないと、これじゃボスの役に立てないじゃない。おまけに……ふんぬッ、身体も固いし、I字バランスもできない……弱々のザコザコボディだし、仕方ないよね。中身が腐ってる救いようのない大馬鹿だもん。このスワップン様が使ってようやくマシになるくらいだし」

 

てめえいい加減にしろよ ! 人の姿で……おい何持ち上げんだよ ! 下ろせよおい !

 

「そこにガラスがあるね……じゃじゃーん、これが今の君。どう ? 黒い出来立てほやほやのツルツルボディ、いいでしょ ? あたしはこんな出来の悪い身体になっちゃって……五月悲しい……」

 

な、なんだよ……こんな、昔のゲームに出ていそうな影みたいなのがあたし…… ? 嘘よ……嘘よ ! ?

 

「現実だよ、受け止めなきゃ。さーて、このままだとひっじょーにメンドい事になるから……ポゼッシャー、あたし家に帰ってボスを迎える準備しとくから……そのオッサンの相手頼むよ」

 

あたしの偽物はあたしをポケットにねじ込み裏路地を離れようとする。

 

「五月 ! どこ行くつもり……ヒィッ来るな、来るなァァッッ ! ? 」

 

オッサンの叫び声が裏路地に響き渡り、オッサンの殴られる音が聞こえる……でもあたしはそれどころじゃなかった。こんな身体にされて……。

 

「言っとくけどぉ、誰かに助けを呼ぼうとしたらぁ……握りつぶすからなクソガキ」

 

自分の口から出たとは思えないようなドスの効いた声にあたしは黙ってる他無かった……。

 

*

「ただいま~、ってボス仕事中だもんね。先走っちゃって……五月ちゃん反省、テヘっ☆」

 

道中こいつに言われた……裏路地であたしはこいつに身体を入れ替えられた……あたしの身体はスワップンとかいう奴に使われ、あたしは小さな影として捕まっている。

 

でも、あたしの異変はだれかが気が付く筈だ……頼む、誰か気が付いてくれ !

 

「海道五月、14歳だけど他人に迷惑かける事しかできないおバカさん……学校はこの場所、家庭環境は……頭の斜めに指を置いてグールグル……母親は男に貢いで娘に暴力を振るう、夫は逃げた。中々な環境だね。ボスとは全然違う。それでストレス発散として数々の男の人生を台無しにしたと……うん、クソだね君」

 

うるさい ! あんたにあたしの気持ちなんか !

 

「だから心置きなく生まれ変われる……この『偽造履歴書』によって ! この汚い部分を変えて、ボスの家に住めるように ! 」

 

ぎ、偽造履歴書 ! ?

 

「さ、早く書いちゃおっと。えーと、あたしの性格は……品行方正な大和撫子だから変える必要なし」

 

こいつ、どこまで自信過剰なんだよ……。

 

「 変に変えたら後が困るから……『海道五月は両親からの愛を受けられず暴力を受け身の危険を感じ家出をした。住む当てが無い所を一文字一様に拾われる。身体を売ったり悪ふざけでかけようとした冤罪によってお金を得て生活しようと考えるが一文字一様に叱られ、そのまま真っ当な道を歩む。そしてこの処女は一文字一様に捧げると誓い操を守るのでした』……よし、パーフェクト ! 」

 

あんた ! 何書いて……あれ ? あたしの身体が薄くなってない ! ?

 

「あったりまえよ、履歴変えたんだから……まあいいじゃん ! お前一人消えた所で誰も悲しまないから。それに『海道五月』はここにいるんだし。なーんにも問題なし」

 

ざけんなよ……なんでこんな事すんだよ……あたしがあんたに何したんだよ……。

 

「……何したか ? 『私のボス』を嵌めようとしたよな ? 痴漢の冤罪で『私のボス』を嵌めようとしたよな ? ただの一怪人にすぎない私にスワップンという名前を授けてくださった『私のボス』を嵌めようとしたよな ! ? 」

 

演技じゃないこいつの感情が言葉とともに突き刺さる。殺気……あのオバサンと同じくらいの……あたしの身体がさらに薄くなる ! ? お願いします助けてください ! もう冤罪なんてかけませんから !

 

「口だけの謝罪など必要ない。お前はここで消えろ、ボスはこの私が……スワップンが……海道五月が支えよう……バイバーイ偽物さん、君があたしにかけた『無実の罪』痴漢の冤罪はあたしが解消したからね」

 

お願い……命だけは……。

 

「そうだ ! ボス疲れて帰ってくるだろうから、お料理を作ってあげよう。確かポゼッシャーはこれをこうして……」

 

いや……無視……すん……な。

 

 

一文字家の居間から黒い影がうっすらと消えた……スワップンは一度も振り返らなかった。本物が消える事なんてどうでもよかったのだから……。

 

*

 

「ファイト、ファイト、は・じ・め ! 負けるな負けるなは・じ・め ! 」

 

「うるさい ! 仕事に集中できないだろ ! 」

 

仕事から帰ってきた俺を待っていたのは居間でタンクトップとハーフパンツを着用、そして靴下を脱いでくつろいでいた昨日のギャルだった。

 

『ボスお帰り ! 一文字家のアイドル、スワップン改め海道五月です ! イエーイ ! 』

 

肌は焼いているのか褐色肌、髪は染めて金髪、背は高すぎず低すぎず、爪は染めていて黄色……うーん俺の好みとは離れている……ではない。こいつスワップンかよ ! ?

 

『ず、随分雰囲気変わったな。さっきまでとは全然違うね……いろんな意味で』

 

『そうでっす ! あたし身体を入れ替えてイメチェンしまして、ほら、ポゼッシャーはクールビューティーって感じだからあたしは癒しキャラでいこうと思います」

 

途中でいなくなってから何かあったんだな。会社でポゼッシャーが『全て終わりました』ってにこやかに言ってきたからな。まあいいや、こっちは人生滅茶苦茶にされかかる所だったしな。

 

『そうそう、この身体は慰謝料という事で』

 

そんでもって俺は自宅に持って帰ってきた仕事を終わらせようと思っていたが……。

 

『だったらあたしが応援しちゃいます。JCからの生応援ですよ ! フレー。フレー、は・じ・め ! 」

 

 

それが今も続いているのだ

 

「ご主人様戻りました……スワップン ! なんですかこの騒ぎは ! ? 外まで聞こえていましたよ ! 」

 

「あ、ポゼッシャーお帰り~、ボスの応援だよ~」

 

「ほう……スワップン、台所が散らかっているようですが ? 」

 

ギクッ、とスワップンが動きを止める。

 

「まさか……その応援の理由は台所のこの惨状をごまかす為か ? ん ? スワップン ? どうした……急に黙ってしまったな……答えなさい……スワップン ! 」

 

「ご、ごめんなさーい ! ボス、ヘルプミー ! 」

 

「待ちなさいスワップン ! 」

 

ポゼッシャーとスワップンの追いかけっこはしばらく続き、俺の仕事は一向に終わらないのだった。

 

 

後日、俺が電車に乗ろうとすると駅員がブルブル震えながら俺を見ていた。

 

あの駅員が海道五月とグルだったのは聞いていたがポゼッシャー……お前どこまでやったんだよ……。

 

 

 

怪人錬成鍋

 

No.2 交換怪人スワップン 肉体名:海道五月

 

最初は小型の影をした怪人。対象に全身から発する光線を浴びせて動きを封じ、同じ動きを強制させながら『ス』『ワ』『パー』の掛け声を互いに発して再度光線を浴びせ肉体を交換させる。

欠点は、第三者の妨害が入る、どちらかが声を出せないと交換できない等制限が多い。

ちなみにポーズは決まっておらずスワップンの好みで決まる。

特殊能力は肉体交換の他に近距離の物体の位置を交換するというものがある。

ポゼッシャーに比べて戦闘力は低いが特殊能力は全て使用できる為、より潜入任務向けの性能となっている。

 

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