異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
▽17-D階層星の視聴覚室▽にて
全面モニターなのかツギハギされたパネルの数々は、月面のような見知らぬ星上の地と黒い宇宙空を描写している。
しかし迷いこんだ異質なステージの飾りよりももっと……クエスチョンマークとビックリマークを交互に浮かべながらその宇宙人とも違う未知の存在と戦わないといけない。
ふと道端、侵入した部屋で出会えば戦闘になる、そんなことはダンジョンでは常識かもしれないが。
ピネスにとって考えの読めない敵や理不尽に振り回されることはこれまでの経験上多いものだが、ポケットに両手を突っ込みながら戦うこれほどまでに考えの読めない珍種の敵と出会ったのははじめてのことである。
「なんだ……こいつ……」
星のサングラスをかけた男は足だけで器用に戦っている。しかしその足技は油断ならない、タガヤや用務員のように自分にはない熟練のものであると受けて目の当たりに経験していく。
ピネスは刃で視界に来たる靴底を受け止めて、下がりながらももう一度態勢をととのえて構えた。
「星は、────いかがかな?」
前かがみにこちらを覗き込むようにそう言いながら、カウボーイがよく履くような黄土色の革製チャップスのポッケに手を突っ込み……ふざけた男は問う。
そう何度もかれこれ問うもので。
もはや構える高校生の剣は無言……その返答をみて、弾丸のように飛び出したのは、靴底に星のマークのえがかれた〝足〟。
銃も弾丸もいらないような速さで迫ったウエスタンブーツの靴底の星マークは────
緋色にフラストレーションを爆発させ、もろとも斬り叩き吹き飛ばした。
その直撃したクリティカルな衝撃に周囲のモニターがところどころ破壊され、灰色の砂嵐の音色が爆発轟音のちのふたりの静寂にながれていく……。
「わりぃけど、星も何もいらねぇからヤル気ねぇならそこどいてくれ」
ピネスはソイツを睨んだ。星のサングラスが斜めにズレた男に対して、なんとなくの勢いに任せて言ってやった。
まるで自分だけこの星にいないようなかるさ、おどけた薄さ、殺気の薄さ。
ピネスがここまでの闘いをとおして感じ取れたことは人とはどこかちがう殺気の淡さと、どこかそれほど肌を刺すような敵対心を感じない水のような奇妙な魔力……それだけだが、このふざけた男を明確に言い表す必要もない。星のミステリーなどにかまけていないで、この先を急ぐことの方がピネスにとって優先すべき大事なことであった。
「ん~~……んっん~~~~? ……ホっ、ホハハハ……そういうわけにも……いーーーかないっ!! ナラバのナラバ、────星をあ~~げようッ!!!」
「……! だからッいらねぇ! っておわっ!??」
星の男はなぜだか若者に冷たく凄まれて上機嫌、突っ込んでいたままの両手では失礼だと判断したのか……突如するりと解放した星屑のポッケからは星だらけ。
不思議な男が両手を広げながら大解放するいらない流星群の手裏剣が、勝手にテンションを高めて実力を認められてしまったピネスのからだをキラキラと破茶滅茶に襲った。
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▽13-E階層熱砂のビオトープ▽にて
ここはダンジョンとは思えない一面の熱砂と遮ることのない風吹く自然で不自然な環境。
部屋の明かりとなりスベテを照らし出す疑似太陽の下、白い砂利つぶを元気に蹴散らしながらジュエルモンスターとシャドウモンスターがぶつかり合う。
主を守るため、主の敵を消すためにモンスターたちは攻撃をしあい消耗し合う。
シャドウゴブリンが剣をみどりの粘液の急所にブッ刺せば、ダメージ限界を迎えたジュエルスライムは一粒の宝石へとことっと落ちて砂の中に埋もれ還り。
遠方から弓を射ようとすれば物珍し気な赤いカラスが空から奇襲してその今にも放とうとした矢を啄んだ、そして賢くもぐさりと咥えた矢をゴブリンアーチャーの頭に刺して──お陀仏、リサイクル可能な影は灰髪の主の元に戻れずに失せてしまった。
そんな黒と鮮やかな宝石が入り乱れる混戦の最中、密命をうけたシャドウゴブリン出席番号❹は敵の主である白ミイラの背後にぬるり……影に身を忍ばせて。
今、激レア刀を高速抜刀し静かな居合斬撃を放った。
鋭いアサシンのはなった一閃は十分チェックメイトに足ると思われたがしかし、のっそりと……懐の包帯の隙間から愛らしく首をだし現れた子亀は、ミイラ男の腹に飛んだ魔法の斬撃をそのダイヤモンドの甲羅の盾でタイミングよく防いだ。
「よちよちかちこい珍しいモンスターだな、えへ、えへへ。【キャプチャーぁぁぁリネンんん】!!!」
影にとけ潜伏して逃げようとしたがかなわず、出席番号❹はいきなり放射線状に伸びて集束した包帯の軌道にグルグル巻きにされて、捕らえられた。
しかしこれは異能と装備を合わせた末に生まれたスペシャルなモンスター、残念ながら敵の主のモンスターを捕らえることはできない。
魔力を帯びた包帯に絞めつけられた影はそのゴブリンの造形を保てずに、やがて失せた。
「影はつきまとえどつかまえられない、フッフ、わたしの生徒でもある困るものだ」
「へへっへへっならオマエをキャプチャーぁぁリネン!!! へへへ、オマエの毛並みも色もなかなかレアだぁーーー嗅がせろーーー吸わせろーーーなでさせろーーーー明日の朝には首輪をつけて散歩するぞーーーーへへ、へ……」
「フッフ……」
腹にしがみついた子亀をよちよちと撫でる……。
どうぶつ愛あふれるミイラ男とでくわした生徒たちを愛する校長不黒文のモンスターバトルは、そのベクトルを極めた狂気と妖しげな笑みを浮かべながら────。
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▽
円形校舎の各階層で予定にないトラブルと闘いが勃発するなか────
その円形校舎の中で今もなお手探り懸命に動いているであろうブク校スペシャルパーティーを信じて送り出した者たちも、何もせずにじっとしてはいない。
命運を決するミエナイたたかいはもう既に始まっているといえる。帰るべきホームである校長先生不在の不黒高等学校の校舎の防衛は、風紀委員部の部員である登別海の考えた割り当てによって人員整備され警備体制がこれまでより引き締め強化された。
貴重な上級生戦力である3-C榎田椎名もまた、大事な大事なきのこ園を荒らされないために斧を手持ち七輪で焼いたきのこを頬張りながら周囲のパトロールを強化していた。
そしてそのパトロールの成果もあってか、既にブク校の生徒とはおもわれない不審者らしき人物を発見。
そしてこれに接敵し、既に険悪なるムードを引き起こし……戦闘の真っ最中であった。
「おい立ちやがれクソ挑発シスター。まだ一発しかくれてねぇ」
石のように硬い拳のストレートは咄嗟に盾にするよう構えた斧の刃ごとを打ち抜いた。
オシャレで着てきたオーバーサイズのトレーナーの袖を捲り上げた、怒りの形相のボクサーは寝てないで立つようにくいくいと指をうごかし挑発返しのジェスチャーした。
吹き飛ばされたマイハウス、校舎裏のきのこハウスの壁にもたれながら、椎茸色のシスター服は起き上がり、乱れた自慢のヘアーをゆっくりとととのえた。
「……ふふふ、────元気なげんきなきのこなかまのお相手は武力をもってお焼きします!」
「だから…きのこじゃねぇ! オシャレだ!!! イカれきのこぶち殺す!!!」
裏のフェンスと茂みを乗り越えてやってきた不審者に先にこんにちはと挑発したのは白きのこの榎田椎名、それに対してこんばんはと硬すぎる石拳の武器で殴りつけたのはブラウンきのこ。
ゆるふわなホワイトマッシュボブとクールなブラウン刈り上げマッシュ。
なんの因縁か巡り合った似たようでちがったきのこヘアーをめぐって。
校舎裏でのタイマン模様はひっそりと雲行き怪しくながれ。
対峙しかまえる……握る柄と握る拳が汗で少しじめり始めた。