異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
浮遊する4つの小玉から雲雀笛の鳴らす遠隔合図でカロリービームは発射され、〝投石ぴよこ〟を四方八方から成敗。
ハープから奏でるネムリの歌、バラード調のメロディーですやすやと……羽帽子の女におそいかかろうとした〝ぴよこナイト〟はやすらかに眠り。
燃えるお魚、朱文金が遊ぶようにぐるぐると追い回して〝生ぴよこ〟の尻を焼いた。
ブク校校舎の防衛にあたっていた光角灯、紫紫檀、モミジ、ちひろちゃんの4人は盗みをはたらいたぴよこたちを一ヵ所に仕分けするように────ついに追い詰めた。
トレーニングルームには既に鳥目を×印にして、ぽんっとふしぎにも煙に消えたぴよこがいる。
そしてそんなひよこに似た召喚獣ぴよこたちを指揮していた悪の大元は、杖をもった黄色いトンガリ帽子をかぶった1人のいかにも女魔術師らしき者であった。
「泥棒のはじまりは泥棒です!!! ブク校の風紀を乱すのは何人たりとも何匹のひよこたりとも許しません!!!」
「せやせやぁー!!! よぉ言った、よぉやったで!!!」
トモルの威勢のいいブレない信念のお言葉にちひろちゃんは同調した。
「つぴーーー! なんなのよこいつら! もぬけの殻って話が違うじゃない!」
「覚悟するんや! これでお縄やで! 料金分きっちりサービスしばいたる!」
盗人に容赦はいらない、取り巻きのぴよこたちを片付けて勢いに乗るちひろちゃんは電磁ハリセンを片手に店主じきじきに成敗しにいった。
「きぴぃーーー覚悟するのはーーーアンタたちよ!!」
高く飛び上がって舞い降りた、ちひろちゃんの必殺ジャンピング電磁ハリセンに、────フルスイング。
「んきゃーーー!!! ナッ、なんやいきなし凶暴なったで!?」
トドメのツッコミをさしにいったはずのちひろちゃんが強烈な木の杖のスイングに、返り討ちで吹き飛ばされた。
悪の親玉が観念せずにめげずに暴れ出した。ともすればこれは戦争である。
シタンは激レア装備の右腰にぶらさげていた巾着袋を開けた。そして巾着袋内で魔力を再チャージされたうずらの卵ぐらいの大きさの白い小玉を放出。
浮かべ配置していた4つの白玉からカロリービームは時間差照射された。
「当たるかぁ!!! んなろぴーーーーぴぴっぴーーーー!!!」
「えぇーー!? あたらないのーー!?」
ぴーぴーと鳴きながら、ピーピーと照射されたカロリービームの真っ直ぐ複雑に合わさった4つの軌跡を黄色いトンガリ女が避けていく。
魔術師とは思えない反射神経と運動神経でかいくぐり、己を取り囲む白玉を置き去りにする程のスピードで敵パーティーへと女魔術師は仕掛けた。
「止まるのです!!!」
「犬じゃないのよッぴよこが止まるかァーーー!!!」
ランタンから放たれた炎のバルカンの威嚇射撃も、窮地に立たされ戦闘のボルテージを上げたぴよこ魔導士を止められない。
「たぁーーーー!!! おっとっとったっほっやっはっぴっ!?ぴぴぴぃーーーー!??」
ハープから奏でられ床に魔力録音され仕込まれていたツチの歌が起動演奏。
女魔術師の駆けるオレンジブーツが踏むたびに、地がうれしく弾む。
突っ込んできた敵魔術師に前のめりの危険なぴよこダンスを躍らせ────ドレミファソラシぴぃーでずっこけた。
そんな痛々しく派手に前にずっこけたお姉さん顔の上。
とんがった黄色いコーンの周りを、ぐるぐる回りながらやがて顔の前へといないいないばぁっ! っと燃える赤い魚が元気に現れた。
朱文金がアソビにきたのだ。
なにやら目の前に留まり口をパクパクしている動作に……ぴよこ魔導士の顔面が青ざめていく。
吐かれた炎を、避ける避ける避ける避けなければ燃える。そんな必死の一心でゴロゴロと床を倒れたまま転がりながら────────なんとか危ない冗談ではない火芸から逃げおおせた。
「ハァハァ、捕まるかーーっ、魔道歴30…じゃなかった数年!!!こっ、こんなヤバイやつらに捕まってなるものかーーー!!! ハァハァ………ハん? ────!? あちちちちちちぴぃーーーーーーーちっちっちぴーーーーー!????」
見上げるとお気に入りのトンガリ魔術帽子に赤く煙るボヤ騒ぎが……。
慌てたぴよこステップで反復横跳びしながら頭上の熱に悶えた魔術師。
やがてふぅーふぅー息を大げさに吹きかけ、しまいに地に捨てたトンガリをトンガリが無くなるほどに踏みつけ──やっと火が消え、一安心。
「ボケもリアクション芸も凶暴な女や気をつけぇ! それと肉まんや嬢ちゃん食べぇ!」
「うん、ありがと。なんかたのしくて小腹すいてたあははは──はむっ…」
「フフ、さわがしい牧場だね。じゃもう一曲」
「こらっ朱文金! 盗人でもあんまり燃やしちゃダメなのです!!」
真っ白いトレーニングルームで閉じ込めて、逃げたくて、白熱する。
防衛側の生徒たち4人と、歯ぎしりしながら杖を構える盗人ぴよこ魔導士との風紀を正し盗品を取り戻すためのたたかいは始まった。
▼
▽
ポケットに詰まっている星は無限か、剣で砕けど砕けど星上舞台の宇宙の黒を駆ける流星群は止まらない。
帽被りの薄ピンクの長髪を揺らしポケットに潜ませた無限の手裏剣を放つ。まるでその動きは星属性の忍者か、その割には西部劇のような恰好にふざけたパーティーグッズのような星型サングラスをかけている。
しかしそんな男のおどけた恰好やルーツなどはどうでもよく、この奇妙な星を飽きることなくもらいつづけるピネスは戦闘に集中していた。
今までのカポエイラにも似ていない足技オンリーがこの男のハンデだったのか遊びだったのかは知らない。とにかく向かってくる星はいらないので砕くそれだけに集中し積もる星屑のチリに……ピネスの魔力は不思議と馴染みかつ昂っていた。
しかし集中すると視野が狭くなることもあることで、男が重いものを両手ではたきおとすジェスチャーを披露し、突如天から少年へと降り注いだ特大の星は────
真上に堂々と掲げるは緋色のショートソード。特大星がクッキーのように砕けた爆ぜる景色から、斜め下をゆっくりと弧を描く翠の切っ先。
大星を上に【バーンファイア】で打ち砕いて、相手の大技すらも利用して、そして一気に持て余していた翠剣を上に振り抜き黄色い三日月を放った。
星男はあわてて星のマシンガンを魔法のポッケから一点集中高速連射するも、ひび割れた三日月の勢いはそれでも止まらない。
ナラバのナラバと特大の星を3つ進路に浮かべて盾を成す。
これで勝負と言わんばかりに星にこだわり、────星は三日月に裂かれて砕けた。
3重の星の、最後の砦の星盾まで、半分に崩れて落ちていく。
三日月の切れ味がたどり着いたのは、星のサングラスのフレーム。
星男の視界が真っ二つのツートンカラーになり、役に立たなくなったサングラスは深い微笑みとともに投げ捨てられ……ご尊顔が露わになる。
しかし男のスタンスはサングラスひとつでは変わらない。だが口調だけは少しクールでまともな雰囲気になっま。
「もっともっと……君に彼女の星をあげよう!」
「くれてもいいけど、俺は壊すぞ! あぁー……このあともきっと上のほうに予定があるからサァ!」
飽きずに付き合ってくれた目の先の少年に敬意を表してか、男は緋色と翠色の特大の星のマジックを左右に並べた。
そしてピネスもいつまでも遊んでいるわけにはいかない。この星男を越え次の螺旋階段を突き進まなければならない。しかし一筋縄ではいかないジレンマがあるのも事実。やはり通せん坊する目の前の頑なな星を砕いて、知らない惑星の故郷へと満足しお帰りになってもらうしかない。
「予定通りにはいかない、予定にない出会いは幸か不幸かどのホシかァ? この星のバランスはじっくりみきっ」
両サイドで魔力をうずうずと煌めかせ待機していた緋色と翠の輝ける特大星は散り散りに────砕けた。
ふたつの三日月がたしかに、剣を構えていた少年を越えて、警戒の意識の彼方背方から煌めき星男の両サイドに鋭利な爪痕を描いた。
破壊されて舞うスターダストの煌めきと、驚く少年の目の前に現れたのは淡い青髪の……パジャマ姿。
切っ先から水滴がぽつぽつと静寂に音を鳴らし滴る……装備したふつうの亀のショートソードを払い、彼に振り向いた。
「な……んだ?」
「いけっ」
「え?」
戸惑うピネスにその端正な女性の横顔は、おにぎり柄の緑布で縛った自分の淡青髪をしずかに揺らした。
「パン屋の娘に手伝えと依頼された」
髪飾りをさりげなくみせて、味方であるとアピールしている。
ピネスはたしかにそんな柄のものを普段の緒方がよくしているのを知っていた。
パン屋の娘ではなくおにぎり屋の娘だが、目に入った剣も緒方がずっと使っているやつである。しかしそれよりも先程飛んできた倣ったことのあるような三日月や、佇まい……。
「いけ。私にはないがお前には大事な任務があるのだろう」
見つめてくる知らない淡い瞳にうつるはっきりとした考えなどピネスには分からない、だが彼女から溢れ出る魔力は────きっとヤル気だ。
そんな目に見えるヤル気の濃ゆくなる炎が、出会ったばかりの彼に不思議と強制力を生み出すように────
「なんかわかんねぇけど……いってくる!」
彼は迷いながらも強い炎にあてられ信じ決心し、駆けだした。呆然と立つ星男の横を一瞥し合い通り過ぎて────パネルモニター上の宇宙を駆けながら、次の星のドアをひらいて失せた。
星男はゆっくりとサブのサングラスをかけながら、前かがみのおどけた仕草で似たように出会ったばかりの彼女に問う。
「んっんー? 別の運命がワタシの邪魔をするかぁ? ……ナラバのナッラバァァー、────星はいかがかな?」
「────水面にうつる月の方がよく似合う」
この砂嵐に覆われつつある壊れかけの偽星にも水はある、水浸しから浮き上がった小さな三日月が、おどけた星男を包囲する。
男はかけたばかりの色眼鏡をゆっくりと外しながら……。浮かぶ冷たい殺気をおびた水属性の三日月に、試されているのはワタシの方であったと……彼の真面目顔から垂らした一筋の汗が水面にぽつり……滴り落ちた。
星と三日月と少年、絡まり合う偶然の運命は少年が星の元を去り、すげ替えられた。
ここは何が起こり何と出会いバトルが勃発するのか分からないダンジョン。
異なる世界の戦士たちが異なる思想と美学をもちより……ただ湧き上がり滴る……闘争の熱と魔力を今、ぶつけ合った────────。