異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
三日月と星を飛び越えて螺旋階段を駆け上がり、しずかな波の音とともにたどり着いたのは────
▼20F……?▼にて
紫色の灯がふたつ、暗闇と水に妖しく映えている。
それ以外の光源はない……とても暗い、だが足元草地のような感触を踏みしめおそるおそる進んだそこに独り、黒い椅子に佇み座る男がいる。
男は手ごろな木を小刀で削りながら木像を彫り出していく、それは暇つぶしなのか、それとも精神統一する為のあそびなのかはわからない。
ただ上に登り続けやっとたどり着いたピネスは確信していたわけではないが、つい今日の朝のグラウンドで見たことのある黒い装いの男サンフンは区切りのいい階層のそこで誰かを待ち構えているように見えた。
ピネスは目があったその暗がりに悠然と木像を彫りおこしつづける男に、左右周囲を見渡しながらまずはたずねた。
「サンチュは?」
「期待外れだな」
「……?」
「邪魔なミーハー妹なんざいるか。ずっと寝ていた方がマシだろう」
「……!」
「乗り込んできた馬鹿どものなかでお前が一番乗りとはな。遠慮なく席につけ」
「何がだ」
「言ったろ全てを奪う────俺の城では強さだけが正義だ。そこにつけ」
気付けば用意された椅子がひとつある。そこに掛けろと促されるも、ピネスっはぼーっとしたまま髪をかいた。
「城…………あぁー……わりぃけど、俺それならたぶんズルしてここにきてっから座れねぇ。だからなんとなく」
「────あんたの事たしかめてやる。朝よわいからさ、今度はあったまってきた全力でな」
「……全力だと? よわっちぃ情けで生かされて、わざわざ俺にもう一回殺されたいか? お前変わってるな」
サンフンは木を削ることをやめた、そしていらなかったのか未完のソレを後ろへと投げ捨てた。
「相当に馬鹿だろ」
「かもな」
静まり、微笑む悪魔と、見つめるボタンのひとつ欠けたままのツギハギブレザーのナイト。
ふたりの呼吸がイヤに重なったとき……水面に何かが投げ入れられた音を聞き────瞬く間に黒と緋色の火花が散った。
ぶつかり合った剣と剣、はじまりの一合の合図に、次々とひとりでに燭台の火が灯り、用意されていた豪華な舞台の全貌が明るく露わになる。
木像はぷかぷかと浮かび、鬼角のついた女神が憎たらしく微笑んでいる。
決する闘いは20F頂上暗黒巌流島で────
「命が惜しくなったか?」
「そんなの惜しいならぁ……たぶんダンジョンなんてこねぇよ!」
「フッ、じゃぁ死ねッ悪魔的にナ!」
緋色と翠のショートソードは臆さない、二刀構えて当たり前を返事する。
鼻でわらい……倍ほど伸びた悪魔の黒い刃は、のこのこと挑んできた冒険者に今、襲い掛かった。
▼
▽
影の軍団は宝石の獣たちの輝きに蹂躙され、失せた。
そして手薄となったプラチナ髪の術師に宝石の獣たちは襲い掛かった。
シャドウモンスター対ジュエルモンスターその雌雄を光鮮やかに決し、モンスターの練度でまさに勝り優勢となったミイラ男のタクトで宝石の数々がプラチナへと群がっていく。
モンスターブリーダーとネクロマンサーどちらの方が優れているのか。
今その答えが絢爛豪華に塗りつぶされようと────
が、それはあくまで影。不黒文の異能と影魔法のみせる姿の一部にすぎない。そして円形校舎ダンジョンに挑むに当たって準備は万全、引っ提げてきた新要素が銀と緑の指輪からかがやき出てきた。
斉射され飛んできた獣たちの放つ宝石の弾丸は急成長したメタルジャガーが壁となり受け止める。
飛び付いてきた一角の蛙はジャカジャカジャングルジャガーが横からかっさらうように噛みつき地へと獲物を押さえつけるように倒した。
「めったるぅぅぅ!??? じゃがーーー!?? へへ、へへ?? へへへ……?」
空へと一発撃ちあがった閉じた傘先端から放たれた魔力弾は、後ろから来ていた赤いカラスを射抜き──赤いルビーをひとつ砂地に落とした。
すりすりと身体をなすり擦り合わせてくる主を守ってみせたメタルなネコ頭をそっと撫でながら、不黒文は笑う。
「ちょーどモンスター使い同士の戦いを経験しておきたかったのでな。それに今年の運動会で執り行う予定のモンスターレースの予行演習もいいが、今頃はなれた生徒たちがスペシャルな校長のかわいい陰口をたたいているかもしれん」
「モンスターの育成、合成は手探り、すぐ終わるともったいないと思ったが、遊びはここまでだ」
黒い眼帯を解放し灰色の瞳が妖しく灯り魔力が火柱のように迸り跳ね上がる。
「異能解放」
不死身の影のゴブリンは元通りに復活し、更に影のキューブ、影の岩マジロ、影のドクターコウモリは続々と現れた。
そして黒傘の華をぱっと咲かせてさす。
これはこけおどしではない。
【禁じられし書、血で燃え染めて、眠れし悪魔をも懐柔する】
【盗り分かち合うは悪魔の片眼、誘われるは死神の青】
【我が慧眼に映るは真理成熟の色のみ、対なす追憶の空よ忘却の哀願に染まれ】
それはこけおどしではない。
モンスターを使役するほどに主の魔力が高まっている、無尽蔵にも思える程の内在魔力その上限値がゾクゾクと終わりなく膨らみつづけている。
「まっりょっくううううううとめろーーーー!!! プラチナをかめーーー!!!」
ミイラ男は訳の分からない念仏を聞きながらも理解した。自分のコレクションを全開放しないともはやいけないことに。
全員で突撃、全員で斉射。包帯のナカに隠されたジュエルモンスターたちを宝石の檻から呼び起こし、疑似太陽を覆い曇りゆく空、そして影の軍団をその輝きで消し去らんとけしかけた。
再び衝突し合うモンスターたち。
膨らみ続けるいつ破裂するか分からないとてもイヤな予感のプラチナ髪の術師の企みを止めるため、守るために。
影の岩マジロは転がり……合わさり、巨大な黒岩が興奮気味に相撲を取ろうとしたフンコロガシオパールを砕いた。
影のキューブに逆さ吊りになったドクターコウモリは怪音波を発し、空から抜こうとするストロベリークォーツバメの編隊の飛行感覚を奪いふらふらと墜ちた。
もはやジュエルモンスターに任せてだけではない、包帯のリネンを乱舞させながら怒涛の勢いで冷たくなってきた砂地を蹴散らし影を蹴散らし向かうミイラ男のモンスターがいる。
そして傘を悠長にさしたまま佇む危険な術師へと────────カラダがぷかぷかと浮いている。
宙に、浮いている。
「【キャプチャーぁあぁりねっ!?】 あぁっ……???」
ダイヤモンドの子亀がのっそりと包帯ベッドの隙間から首を出した。そして主と同じようにクビを傾げる。
蠢きながら広がっていたのはさした傘の落とす黒影。
その桁外れの魔力を含有するエリアに迂闊に侵入しようものなら、異能【浮遊】の影響でまぬけに浮かばされても不思議ではない。
あそびはたきおとすように、猫パンチ。
宙にただよい浮いた玩具をネコ科のモンスター2体がその素早いジャブを浴びせ、プラチナ髪の主から遠ざける。
異能
【波動】
【浮遊】
【カリスマ】
【書記】
そして【ネクロマンシー】と灰色の悪魔の眼。
全てを合わせて、彼女にとって一番強く一番呪われし灰色の過去を今一度呼び起こし、膨大な魔力とともに唱えればどうなるのか。
【曇天よりきたれ灰色の青春、麗麗と降り注げ幻想の雨】
答えは太陽を消し熱砂を冷やし、灰色に曇りゆく天、傘を浮かばせ両手をひろげワラい口ずさむその妖艶な唇にあり。
「フッフ────【クラウディシャドウレイン】……」
美しき悪魔の微笑みに避けられない雨は降り注ぐ。
アメンボサファイアのさすエメラルドのハスの葉の傘でしのぐも、穴が開き黒く枯れ果ててしまう。
カラフル虹色の宝石が地に煌めき、激しく打ちつける雨粒の波紋が重なり地に染みることなく広がっていく。
にわかに降り頻るその爽やかな雨音に、振り返ることはない。
されど打たれて今日も先へと歩む。
必然の刹那的な勝利に酔いしれることはない。
成長をするのは青春のアオにおぼれる生徒たちだけではない。
プラチナ髪をなびかせ、灰色の瞳に眼帯をし、常にカリスマをはなちトップに君臨し彼彼女らを導いていく。
スペシャルな校長不黒文その秘められし底知れない魔力とチカラは、今もなお果てのない成長をつづけている。