※この作品はR-18です。

異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記   作:山下敬雄

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登りゆく階段、渡りゆく廊下、しかし探したが店主から借りたスマホの赤く示されたポイントの反応は探す途中で失せていた。

 

考えられるのはくろまねき商店の店主の〝絶対的金銭感覚〟のレーダーに引っかかったことに気付き、魔力を消したのか、どこかに帰っていなくなった冷やかしなのか、特殊な隠蔽武器や遮断するマントを使ったのか、それとも────

 

先程から見知らぬ誰かの魔力テリトリーに侵入したような重い感覚が彼女にある。自分の魔力がざわざわと乱されてずっと定まらないような……募るイヤさ……。

しばし考え耽り立ち止まっていると……足音と鳴き声。

 

微かに耳に入った背方を振り返る────

 

すると登別海は廊下の暗がりに現れた四角いヤギ、ブク校で飼われているドツジの特徴的な姿と、ドツジをゆっくりと抱えて撫でる者を見た。

 

 

「ヤギの目は四角いって知ってた? こんなに人懐っこいのに悪魔だなんてかわいそうね」

 

 

白いドツジと溶けあう、白き存在。とても澄んだ声で他愛のないことをのたまっている。

女神とも見紛うような美しさ、白髪白肌とその佇まい……醸し出される儚さと危うさに、自分の心臓が何故だかそっちへとひきつけられるような感覚……出会ってはいけないものだと登別は一目ソレを拝んだだけでひどく自覚する。

 

 

「……暗くなると丸くなるわ」

 

 

問われた登別はそうか細く返した。

嘘か本当か……もっともらしい雑学をきいた女はさっそく試す。

ドツジの前に手を添えてふりながら、ゆっくり……いないいないばあっ────

 

 

「へぇー、────ホントだ」

 

 

青い瞳はとても澄んでいてワラう少女のよう、

もうひとつの灰色の四角い瞳はとても似ていて似ていない、パンドラの箱を開けて浸る邪にも慣れて静観するもの。

 

不気味な存在、今目の前で空気をも他者をも支配する圧倒的魔力量を解き放つそれは────大悪魔クリアクレア。

 

 

 

 

▼

▽

 

 

 

 

暗黒巌流島で剣と剣は合わさりもう何合か。

試し合うその度に互いのクセや性格、剣の特徴、纏う魔力の質まで理解は図らずしも深くなっていく。

 

(やはりコイツ。剣を通して俺の中の魔力をいじろうとしている。気持ちが悪いな)

 

鍔迫り合い睨み合うサンフンとピネス、これ以上ただでやるのはおもしろくない、サンフンは他人の魔力に寄生しようとするその奇剣の剣士の腹に強烈な蹴りを浴びせた。

 

完全に鋭い蹴りをまともにもらったピネスは、後ろへと大きく飛ばされた。

 

すかさず高速で魔力を練り上げたサンフンに蹴り放たれたのは【黒 不知火】さらに【橙 不知火】。黒とオレンジの中玉がコントロールされ高速でせまり追撃をする。

 

魔力の質が違う二つの弾を浴びせる。一種ならともかく性質の違うこれを生半可な剣と技で攻略するのは至難、妥協のない悪魔じみた攻撃であった。

 

しかし魔力と実力でピネスに勝るサンフンに知らない誤算があるとすればそれは────

 

波打ち際の水面に燃えゆく漁火から……黒と橙の三日月が真っ直ぐに飛び交う。

 

誤算があるとすれば────この男がなんとなくコツを掴みつつあるということ。朝に比べて昼、夜の浦木幸は高みを味わい知る別人である。

 

相手の魔力・技を利用し得意とする中遠距離技【サクイチゲキ】の鋭い弧を描く二連技へと変換する。

 

カオスに燃える怪火の中からカウンターで放たれた場違いで大雑把な三日月を、サンフンは反射し避けた。

 

だがいくら一瞬の最中に冷静を装おうと一瞬の動揺は隠し切れない一瞬の隙を生み出す、三日月が黒服を通り過ぎた後に────二刀の乱舞がサンフンを襲った。

 

テンションのままに好機に駆け抜けてゆく不意打ち荒削りの12連撃に、13連撃目はこれまでぶつけ合い奇しくも繋がり合った気を、再び強く合わせた剣に爆発させるように、クリティカル陽術【バーンファイア】でしめた。

 

さしこまれる黒剣ごとをついに弾き返す、たしかな手応えがピネスの握る二刀に重く痺れて余韻となる。

一矢報いるともちがう……何もできなかったさせてもらえなかった朝のグラウンドとは違い、砂地に溺れ這いつくばりながらも招かれた円形校舎ダンジョンの頂上この暗黒の島地で、ヤツを狙いのクリティカルで吹き飛ばした。

 

 

「なに勝手に攻めを終わらせてる。今のでまさか息切れか?」

 

 

しかし相手は褒めやしない。緋色の景色が明けて、白煙立ち昇る砕けた魔剣を手にしながら、追撃をして来ないお相手の手ぬるいやり方に皮肉を言う。そして離れて間合いをたもち見つめ合う戦いの最中の緊張、静寂に……黒尽くめのサンフンの魔力がどんどんと高まり広がり、不気味な風が唸り吹いては草地が黒く染まってゆく。

 

 

「────────【ダークピースフィールド】」

 

 

男の立つ黒い地それが一体なんの意味を持ち、なぜ今にも止まらず広がっていくのかがピネスには分からない。

ただ草地が島が足元がみるみると黒いだけのジグソーパズルに呑まれてゆく。

 

「お前はこれを理解できるか? 気持ち悪りぃだろ?」

 

ただ返そうとした余計な言葉を飲んで、冷静に組まれてゆくピースを見つめるも────そんな暇はない。刃の復活した魔剣がまたピネスに瞬く間に噛みついてきた。

 

「半分どころじゃねぇ! お前という存在お前を構築する概念ピースすべて悪魔的に全部殺してやる!」

 

自在に伸びる黒剣に、ノリにのって読めない足癖。

反撃を試みるも魔力おぼつかず、勝手が変わったのか上手くいかないピネスはスイッチが切り替わったようなサンフンの猛攻を受けるので精一杯であった。

 

そしてさらに敵は勢いを増す。

 

飛んでくる【黒 不知火】【橙 不知火】見たことのある危険な技を避け、斬る。

上がる戦闘スピードと何故だかおぼつかない自身の魔力にピネスはそれでもなんとか緋色の技を爆ぜ合わせて相殺まで持ち込む。

 

「褒めてやろうか? ハッ──羽をばたつかせて足元がお留守だぜ?」

 

この男が他者を褒めるのは、己が圧倒的に勝っているから。

そこから来る悪戯な余裕でしかない。

 

前しか敵しか視えていなかったピネスは自分の今立つ、足元のピースをのぞいた。

 

隣接する全てのおおきな黒ピースにはグレーに灯る、数字があり。それが刻刻と驚き瞬きしない間にも減っていく。

 

3、2、1────────

 

カウントダウンは仕掛け通りに爆発する。黒炎が必死にもがきまんまと誘われた浦木幸を連鎖爆発し呑み込んだ。

 

 

「立つ地を知らずアタマ空っぽの才能だけで勝とうとする馬鹿め」

 

黒炎が黒煙になり、迂闊にもシールド値を削られよろよろ立ち上がったピネスは、それでもまだ死んではいない。

 

「馬鹿にしてっけど……ハァハァ……まだ、ヤレてねぇけど……」

 

「まだ、欲しいか? ハッハッハ、ならヤルよ────その舌先まで染め尽くすまでな」

 

黒い地と天は解かれてゆく、そして浮かび上がる幾多のピースボム。

必死な熱が過ぎ──気付けば島全てを黒く覆われていた……ピネスはこの黒いジグソーパズルで接がれ形成された、この四角い箱こそがサンフンの技なのだと、口ごたえをした今になって漸く理解をした。

 

「あぁー…………んなの、ありかよ……!」

 

「相当に、馬鹿だろ。焦がされて勝機でもみえたか? ハッハッハ」

 

技の規模、技を成す魔力の規模、そして囲まれただけで胸焼けするほどの脅威。

全てが想像以上の規格外、真の強者が真の強者としての実力を出せばそこに敵う術はない。

ピネスはそれでも剣を構えた、反抗的な冒険者に悪魔サンフンはニヤリと笑う。

 

向けられた黒い切っ先でタクトを振るう、ピースを接がれ出来上がった悪魔の両翼がはばたき、ちっぽけな剣を構えた冒険者を襲った────────。

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