異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
鬼と化し愛を携え怒りの末……エメラルドの幸運な輝きは失せて元の水色の服へと、魔法がとけていく。
「なぁんで、負けるかねぇ、はは」
大の字になっていたのは用務員で、折れていたのはシンプルに立ち並んでいたステージの柱と【エメラルド:エクスプロージョン】の出力に耐え切れなかった愛武器の刺又──中に入っていたカスタマイズ特注のビー玉が砕けて、窪みへと転がっていく。
そして、眩く熱いエメラルドの閃光を浴び────最後まで立っていたのはスーツを着たナイト。
よろけた様子もなくガードした姿勢を解き、足音がゆっくりと近付いてくる。
見上げる天ときこえる地が意味するのは明らか、この先の運命は相手次第。今持てる全ての完全なるチカラを出し切った池原叉鬼に不思議と悔いはない。全力全霊を叩き込み完膚なきまで敗北を喫する、それはいっそ清々しくも思えた。
やがて耳を打つ足音が止まる。
「これは────不完全な技だ」
完全なるチカラではない不完全な技だと、ナイトは一言つぶやき一瞬にしみじみ思い巡らせていた寝転ぶ彼女を否定した。
「ん? ふかん……ぜん?」
チカラを魔力を出し切り、脱力する大の字の敗者は勝者の言葉を問い直すことしかできない。
ナイトはおもむろに透明な空き瓶をひとつ取り出しながら、語る。
「火の吹く赤い村に駆けつけたとき────アレはバケモノだった。行軍中に気晴らしに仲間たちと立ち寄った街の占い屋で俺は近く多大な悔いを残して必ず死ぬと言われていた、それがこの事だとまさに自覚し俺は剣に己の汗粒の一滴も残らないよう全霊を込めたが…………握りしめた占いの結果はそのバケモノの首を落とし、俺は焼けるような熱さの血の雨をその体に浴びていた」
「俺は不死身になった。きっとあの時占われた死する運命すら己の天武で逆らい切り裂きバケモノの血を全身に浴びたからだ、これは天命に違いないとそれからの俺は赴く至るところで今まで以上の武功を上げ続けた」
「しかし気付けば俺はどうでもいいところに収まった。天命どころではない、とある城のとある一衛兵。戦場で生きて帰ってきては死神と忌避された俺の行きついた先は、金持ち貴族の道楽であつめた珍しい駒の一つ」
「今思えばその時点から俺という生き物は緩やかに死んでいたのかもしれない。あの街の占いの結果の通りに、浴び授かったはずの力に傲り、悲しみ、ただただ立ち止まっていた、そして────」
「俺の誰にも望まれないこの身体は、どうやら運よく死に行きついた今世では俺がまたさらに望んでいたようだ」
「お前はそれで────完全か? ……また改めて問う日があれば、もっと痺れる答えをこの身体に浴びているのかもな」
空き瓶に、飛び散ったメタルツールを構成していた粘液が集っていく。
銀色のしずんだ瓶にコルクの栓をし、おもむろに兜を脱ぎ────。
足音は遠ざかる────その去っていく背、首筋…肩口に、青に光る一筋の傷跡を見せて────────。
「えっ、はは、こりゃ…予想外のおしゃべりイケメン……はいぼくの…放置ぷれい…たはぁーー……」
用務員池原叉鬼はスーツナイトに、波瀾万丈の池原叉鬼史にのこる……完全なる敗北を喫した。
暗がりに溶けゆくその男の背を見つめ、深く長いため息とともに水色の大の字をまた地にえがいて……。
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「俺を試すだって、試しているのはどっちだ? 試されて急かされているのはどっちだ?」
【悪魔的19%:ピースマインウイング】悪魔サンフンの黒い両翼、集合体の片翼から、ピースが分離しピネスへと襲いかかる。
走り回るピネスは向かって来るピースをどうにか避ける。しかし攻撃は正面から飛んでくるピースマインだけではない、まさに立つ地がピースマイン、地雷タイマーが3、2、1と作動しそこに悠長に留まることを許さずピネスを試しつづける。
「試した感想をひとつ教えてやろうか、やはりお前ひとりに大したチカラはありはしない。未だにその剣から俺の魔力に寄生しようと考えているんだろうが、この異界【ダークピースフィールド】の中じゃお前の練り上げる技は数ピース未満、今こうしているのが衣を剥がされた丸裸の実力だ。だが安心しろ俺は強いお前は俺より弱い、ただそれだけの至極単純な悪魔的世界がこれからは待っていることを!」
ピースは直撃する前に爆発させることでその奇剣に利用させない徹底ぶり。
地のピースマインはタイマールールを付与することにより、トリッキーで発動簡易な時限式かつ他の魔力に干渉されない高硬度を維持する。
さらにこのサンフンの異界ダークピースフィールド内ではピネスの内在魔力量は常にサンフンの圧倒的クオリティの魔力フィールドにジャミングされつづけ下がり、相手の魔力を利用したピネスの本領を発揮することが難しい。
そして空と地のピースの爆撃を避け続けるピネスにも限界がくる。
気付けば周りは数値1だらけの時限式地雷原、飛び交う翼のピースを避けている間に足元の注意はおくれ、ついに追い詰められた。
連鎖爆発する黒い爆炎の中に────────一瞬燃え盛る、緋色の炎。
己の魔力を随分と込めた生の【バーンファイア】の自爆行為でなんとかダメージの減衰を図った。
しかし必死のアンサーのそれも、もらった黒いピースを全て払いのけるには至らない。
焦がされ肩で深く息をする冒険者を見て、悪魔はまたにやりと笑う。
「どうだこれがお前が再確認したがっていた俺とお前の差だ。必死に全力を出しても今の甘い人間のやり方じゃ変わらねぇ、ましてや青臭いお遊戯会の延長で何ができる何を成すなんもねェだろ? お前らのやっていることは表面で生きて何も本質を育んじゃいねぇ、今まで何を習った? 弱っちく生かされて何も知らないまま利用されてそのくせ常にくだらねぇ制限だけが病原菌のように付き纏うだろ? ハハハ────全てが片付くまでおとなしく席につけ。くだらねぇ遊びも役に立たないフザケた半分女の学校ももうおしまいだ。必要なのは弱ェ奴等の手助けじゃねェ世の中には斬るべきもっと腐った根っこがある、せっかく手に入れた異能チカラだ、自由につかってシンプルにクズを間引いて──いかねェとな?」
小さなピースで組み立てたのは、ひとつの黒い椅子、ひとつの席。
悪魔は見るからに消耗し疲れたピネスに聞こえるようにささやく、お前はただそこに座ればいいのだと。
今目の前にあるのは黒い席、そして熱帯び痛む体で考えるピネスの脳裏に浮かぶのは────
「席ならはぁはぁ…2-Dの窓際のうしろ。今は南館3階の物置部屋。これでも結構……毎日朝から付きまとってみんなにかまってもらえて、あぁー…はは──たのしいんだぜ?」
導き出した答えは────黒い席を迷わず下からぶった斬った。
「はははははそれが最後の返答か? そんなにまだ試してほしいか? ナラ──死ね!!!」
悪魔が両翼を羽ばたかせようとしたその時、
振り上げたままの右の剣、左は黒いヤツを真っ直ぐに指差し笑っている。
不思議な風を浴びた…悪魔は散らばり返された小さな黒いピースの表、裏、ひらひらと舞う姿に目撃する────
半分染まり、やがて回転する表裏が染まる、────白いピースの粉雪が目の前を舞い、追い越した。
「【クリティカルラッキーフィールド】────────」
「ってことでひとつ土壇場で分かったらははは、なんかなんとなく次のピースも想像…いや創造ついちまった?? あぁーはははは、──俺も混ぜろよ! ジグソーパズル! こっから先は俺の陣地、ははは!!」
「ナっ!?? ナニィーーッ!!?」
ひとつのピースの地に突き刺した翠の剣から、電撃のマジックが繋ぎ目を高速で伝達伝播し、次々と大きな黒いジクソーパズルの全貌を解き明かすように噛み合わさり理解する。
白く強引に染まりゆくその不完全なエリアの名は【クリティカルラッキーフィールド】。
土壇場で倣い生み出した繋ぎ目だらけの新技が、あきらめない冒険者に悪魔に対抗する超幸運な異能チカラを授けた。
突然ですが、第1部最終話まで残り2話+特大1♡話をよてい。
どうかブク校の生徒校長たちの闘いの行く末に最後までお付き合いください。