異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
『おきろーーーーー!!! 2-D浦木幸せんぱい、ただちにグラウンドに集合ですっ!!! 3分いなーーーい!!!』
時刻は午前6時、そりゃ迷惑。
スピーカーから放送される、誰か知らない女子の大声の頼んでいないモーニングコールに起こされて────
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寝癖頭を跳ねさせて南館3Fからグラウンドに集合。
朝礼台の上に待っていた体操服姿の黒髪女子はそこからかろやかに飛び降りた。
「あっっ先輩ほんとに来ました! うん──2分57秒、合格ですっ!」
手持ちのストップウォッチで3分を計っていた女子はピネスの叩き出した好タイムに頷いた。
「わざわざ計ってたのか、てか近所のおじいちゃんかよさすがに早起きすぎるぞ、あと3時間は──」
「あはは──あっネグセ、」
「あぁ?」
ナチュラルなかんじで近づいた女子は男子の寝癖を撫でながら整地し……出来栄えはよしと頷いたが、ピネスの目の前の女子はやがて笑った。
お直しした寝癖が、ぴょこんとまた元に形状記憶し戻っていたからだ。
「ほらね、寝癖も寝たりねぇーんだよ、ほぁー……俺も?」
「あはははごめんなさぁーい! でもでもっ来たからには付き合ってもらいますよ?」
「あぁ? なにに付き合うの」
「それはもうっ朝早起きといえば……わかるじゃないですかぁ~──ラっジオ体操ーーー!!!」
「だれもきてないの?」
寝起きで反応回路の調子がイマイチなのかピネスは目の前黒髪体操服女子のラっジオ体操のテンションを無視し、きょよきょろと辺りを見回した。
「なんと今日からはじめたからですっ!」
「そりゃ急だな? ラっ…ジオ体操かー、そういや俺の近所の浜でもむかしやってたな。たしかスタン」
「そうっそうそうそうっ!!! このスタンプカード! ────スタンプを21個あつめるとなんとなんとサンチュ特性韓国海苔イチマイっ!」
ででんっと自慢気に、女子は朝礼台に置いていたスタンプカードなるものを取り出した。
そしてその手作り感のあるスタンプカードをピネスの首にメダルのようにかけた。
「は? んだそれ…めちゃくちゃお得ほしいじゃねぇか。バジPやおにぎりにまく…いやおかゆにぱらぱらといっそそのままパリッと…ははは夢がひろが──そういや俺スタンプカードの類って全部あつめた試し、一回もねぇな……そこのスタンプカードのスタンプを支配するおばちゃんがさ融通きかねぇのなんの夏休みに4、5回休んだ分をおまけして押してくれなくてさー結局ただの無駄に早起きした馬鹿に────」
「急に鬱エピですねっ!? じゃじゃー! おまけでわたしっ、今日はふたつおしときますよ先輩♡」
「まじかよお前やさしいな」
「えへへぇそれほどでもぉ」
ディテールをもって語った悲しき過去の効果か、さっそくサンチュ後輩に二つのスタンプをスタンプカードに押して貰ったピネス先輩はテンションを少し上げよろこんだ。
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午前6時15分、予定通りのラジオ体操がはじまる。
朝礼台に元気に飛び乗ったサンチュはさっそくスピーカーに接続したスマホを操作し、ミュージックをかける。
ながれてくるアップテンポなポップなメロディーに────
『だいすきって大声でいってみてーーー♡空が晴れてく 曇りを裂き大きな先へと ナイスデスティニー★コウカイな迷宮days♪つながってゆく あなたとわた──』
「おいっ! どうおどんだ!!!(なんのアニソン)」
「あっわわ間違えましたーー!!!(えっとえっと…おかなしえいこでした!)」
セットリストから組んでもいないのに流れてきた謎の曲をストップ──すぐさま別の曲をあわてるサンチュは頷き流していく。
「だれだよそれ、1ミリも俺の耳に聴いたことねぇな。おぅそうそう踊りたくなるこういう感じの……ってラジオ体操ってこんなんだっけ?(尻も?)」
「こんなんですよっ! さぁやりましょーー!」
尻からはじまるラジオ体操は初めてだ……と思いながらもピネスは見よう見まねでサンチュ後輩の尻の軌跡をふりふりとマネしていく。
午前6時先輩と後輩ふたりだけのラジオ体操、激しくながれるKPOPにのって────踊る。
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時刻は午前10時、カラダが温まってきた絶好のダンジョン日和。
相変わらずの赤紫の異界の天の下、正門前へとあらわれたピネスは赤い渦巻くゲートを見つめる。
そしてふらふらと校舎側から飛んできた赤いちょうちょをその手に捕まえた。
⬜︎タコイカ学習帳
前回の冒険は予定通りに上手くいったがこの先ピネスくんと私、2人だけでは何があるかわからない。
幸いピネスくんキミの異能のおかげでダンジョンにお出かけする際の装備品にはあまり困らなくなった。
そこで不黒ダンジョンに挑む希望者を試しに2名あらたに募ったのでここらでラッキーボーイであるキミを仮のリーダーとし、彼女らを10F辺りまでそうっ…引率してみてくれ。あらたなるおもしろい異能が発現すれば後々それらを組み合わせることにより先のダンジョン攻略が有利になる場面もあることだろう、と私は推測する。
『アレっ校長先生は?』
とおそらくキミは今頃私にひとりごち問う事だろう。
ダンジョンを攻略することで溜まるDP(ダンジョンポイント)を用いたぽこぽこ湧いてきた新たな要素を検証中でね、まぁなにぶんキミのただひとりの校長先生はがむしゃらにダンジョンのモンスターと戦うしか能がないわけではないのだよ、女子生徒たちのこともキミのこともダンジョンのことも新要素のことも抜き打ちメンタルチェックお風呂のじかんの管理その他提出された書類点検などなど……
では私は私でキミはキミで表と裏! 思う存分がんばりたまえ~~~
⬜︎
「うーーーうーーーーー……まじかよ、てかかるく遠回しに俺馬鹿みたいにゴブリンと戦うしか能がないとかいわれてるのか? まぁ週刊少年ジャイアントもここじゃ読めないし、たまにあそべるジグソーパズルを組み立てるかダンジョンに出向くぐらいしか毎日これといってやることはないのはたしかだが」
「てかそのダンジョンポイント(DP)ってどこ? 俺のだけ期限切れでポイント失効したり……してない?」
※稼いだダンジョンポイントは不黒文校長先生が一旦スベテあずかり管理している。米や小麦粉塩砂糖油脂類などなどの生活するのに必要なエネルギー活力となる基本食品群と交換するのに使ったり、新要素なるものにもまずは実験的にポイントを分配投入中……。
────である。
それになにやらまとまったDPを消費し近く、新しく学校敷地内にあるモノを建てる計画があるらしく……ゲームを進めてできることや横道が増えていくように不黒文校長先生のニヤけた野望はとどまることを知らない。
そうこう青年がひとり、校長からの伝言にイロイロ独りごちていると────
金の鍋頭が黒い尾を揺らし、ピネスの元に走ってきた。
「おっ…あんたは…だれ?」
「おっえっ!? いやおっ、おっあだっ!?」
「ところでそれ……私服?」
「ちっ、ちがう…。不黒校長先生が私のビルド?がこれだって」
「あぁー……とりあえず、それ外した方がよくね。ビルドかなんかしらねーが絶対前見えないだろうに」
金の鍋を被った頭は視界不良で、性能が良くてもダメだろ? とピネスは冷静に判断し駆けてきた謎の人物にそれを外すよう促した。
たしかによく考えるとおかしい……言われた通りに彼女は頭を何度かぶつけたソレを地にどけ、代わりに手慣れたようにポッケにあった頭巾を黒髪頭に結んだ。
「おっ? あー、おにぎり頭巾の人ぉお!」
「え?? あはい。おにぎり頭巾の…人? (それわたし?)ですけど…?」
金の鍋頭ではそれが誰か分からなかったが、ポニーテールの上に頭巾を巻いた途端ピネスは彼女が誰かをはっきりと思い出した。
1人で納得して少し喜んでいる様子の男子に、おにぎり頭巾の人である緒方結美は苦笑いを浮かべ、なぞのふたりの間を流した。
「ちょいと頭巾さん、男子さん。のこのこ来させてもらいました、今日はスペシャルなきのこ狩りツアーに案内してもらえるとのことで」
2人が、まじまじ、苦笑い……互いの顔を見つめ合っていると、ちょうど緒方結美の背からひょっこり────しいたけセットを装備したシスターが現れた。
背にしょっていたご大層な大斧を女子らしく両手に手に取りもち、きのこ狩りの準備はバッチリである。
「いやっ、全然そんなのくわだててねーよ。まぁ……ダンジョンの隅っこに稀に生えてたりしてたけど? 満足いくツアーができるかどうかは運しだ」
「えっあるんだ!!」
「あるけど? なんだぁ? あんたも好きなの? きのこ(おにぎりの山じゃなくきのこの里派か?)」
「え、ええっと正直きのこはほしいかも…きのう七輪で焼いたのめちゃくちゃ味が濃厚でそのままでも美味しくて(ちょっと…そのおにぎりの山ときのこの里がなんなのかわかんない…)」
「なんだと……アレ、そんな美味なものだったのかよ。そりゃ食ってみてぇな」
「決まりましたね、きのこ狩りツアー」
「あぁじゃ行くか」
「え。きのこ狩りツアーなの?? だんじょっ…」
「あぁ、俺がきのこ狩りツアーにあんたら引率するらしいぞ。校長命令でーー」
「えぇ。各自きのこさんを見つけたら私にほうこく、お願いします♪」
「あぁ、そりゃいいけどできるだけアッチじゃ固まっていこーぜ、校長も言ってるとおもうけどダンジョンには他の集団もいるからでくわしたら気をつけねーとな(ゴブリンらの集団やらコボルトらの集団とか)」
「わかりました、善処しましょー。さぁ、きのこ狩りツアーの引率、男子さん本日はどうぞよろしくお願いします♪」
「わっわたしもよろしくっ! えっと浦木くん(こんな感じでホントにだいじょうぶかなぁ…)」
2-A緒方結美と3-C榎田椎名、2人を引率することになったピネスは親指をかるく立ててこくりと頷く。
緒方結美はそんな男子のサムズアップした親指に拭えきれない一抹の不安を抱きながらも……。
いざガラガラと引き開けられた校門の期待感とドキドキの序章をくぐり────静かな振動音を立てながら渦巻く赤い妖しげなゲートまで向かう。その黙々と進んでゆく唯一の男子のブレザー背を追って緒方も付かず離れず進んでゆく。
実績のついてきた緋色のショートソードと新たな武器を両腰のホルダーにぶらさげて、
大斧をいまかいまかと素振りしながら鼻唄混じりに、
おしゃれな勝負頭巾をぎゅっともういちど締め直して、
渦巻く赤い魔の彼方へと────────不黒高等学校に属する3人の生徒たちはもう一度お互いに頷き合い、きえていった。