異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
▽トレーニングルームⅢ▽にて
白い箱のなか大の字に見上げる────
淡い青の髪と自分のお下がりのみどりの作業着は、ダンジョンからやって来た転校生の姿、つられた歴戦の香りにおひとつ勝負を頼んでみたものの。
向けられていた剣の切先は遠のき、床に汗を流す池原叉鬼はデジャヴするように敗北の歴史をひとつ思い返した。
「直近の対戦でえらく負け込んじゃってねー。しかも成長に期待されて後はザクっと刈り取るだけのお命を見逃されちゃったー。死神騎士様の背が歩いて消えるとこまでをながめてたなんて、あたしゃ今幽霊かもよー」
「……見逃された? 勝ったというのに珍しいことをする相手だな」
「そーそー、そーなのよ。なんかもう話はダメージだらけの大の字で全然おぼえてないんだけど、ソイツなんかバケモノを倒したかなんかで不死身らしくてねー。でもねー、兜をパカっととったら首傷の…渋い男なの。こう────ねっ」
池原はじぶんの首筋から肩口まで撫でて、その男にそのような傷があった事を示した。
転校生は聞かされた情報で考えてみるが────浮かばない。
剣と技と魔法と、彼女が覚えているのは身に染みたそんな闘いの知識ばかり。
まっさらなアタマの中には、そのような人間に思い当たる節はない。
「首傷の男……。まったく知らないな。だが、ソコをつけば勝てるんじゃないか。不死身という要素と同時にわざわざ弱点と思われる傷を晒すのはそこに意識を向けさせる駆け引きの可能性もあるが。──見下ろすこれと同じく大の字の相手ならば関係はないな。次からはその傷を狙え。確証はないがおそらくソイツは不死身ではない、刃がひとたび通れば案外脆いものだろう」
「あははは、いやーーーそうだねー」
「死んでいないのならいつでも首を取るチャンスはあるぞ。一番簡単なのは、行動パターンを溶け込みながら監視し寝込みを襲いその傷を一突きにすればいい」
「あははははは、それは物騒! その妙案、残念だけどあたしゃ戦闘のプロで殺しは素人、よっ!!」
「ジョーダンだ」
「ええ、冗談言うの!? ニゴゥ?よよよー!?」
「ここの王に先日習ったことだが? 違ったのか? 使い方が、ジョーダンというやつは?」
「はは、いやー、そりゃ…いいねー! いやー、ははは、はは。本当に冗談?」
「あぁ。殺るのはモンスターだけと聞いている」
「ははは、そりゃあたしもだ」
深い眠りから覚め、ブク校の生徒となった彼女の名はニゴゥ。
戦闘のプロ2号だから仮初の名はニゴゥ。
いきおいよく立ち上がった元祖戦闘のプロである池原は銀の刺股を手に取り、ニゴゥに投げられた頭の帽子を受け取った。
トレーニングルームⅢにぶつかり響く音と共に、汗粒は弾けた。
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▽▽
明日になると彼女にまつわるもののほとんどがリセットをされる、そんな呪いがある。
以前より魔力の高まった灰色の眼を通しても未だ……彼女に纏わりつくその呪い検知することはできなかった。
「すまないな。まだキミの呪いの方は私には解けないようだ。うーーむ、昨日のわたしより自信はあったのだが、完全スペシャルな校長にはまだ遠いか?」
「ううん。解けなくても、忘れる量よりたのしみの方が多いから。でも、この赤空が終わってほしくないと望むのはいけないかな」
「なるほど青空より赤空か。ふふふ、それは結構。へんな悪魔に魅入られない範囲でな。このところ多いらしい?」
屋上から高々と赤空を見上げた。
座っていたソファーから腰を上げる、いつものようにここで生徒の淹れるハーブティーを半分いただいた校長は立ち上がる。
今一度彼女の表情を確認し、その瞳のカメラに記憶し──頷いた。
「──校長。いつも思い出していてくれてありがとう」
「フフ、キミもな」
そんな生徒の言葉に振り返り返事をし屋上の風になびいたプラチナ髪は去っていく。
眼帯をするのも忘れるほど満足気な表情で、扉を閉じた先に────
「アレっ校長。ここで何やってんすか」
「うるさい」
「えぇ…」
「冗談だ、フッフ。キミはなんでここに」
「あぁーー。なんか。からだが……どうしても上に誘われて?」
校長が階段でばったりと出会った彼にはまだ校内クエストを課していない。
(完全なる忘却を凌駕するのはあやふやに記憶する習慣……かもしれない。ここに2人実例がいればな? フフ)
「ピネスくん……なんだそれはーーー!!」
「えっなにが…うおっ!?」
何故階段でヘッドロックをかけられたのか生徒は理解はできない。
階段でそんな締め技をかけるのは、すんごく危ない。
「幸運なキミならまたもやってくれるかもな、ふふふ。さて──スペシャルな校長は今日も今日とて忙しい~~」
階段の上り下りすれ違い、手をクールにかるく振りながら振り返らずにプラチナ髪が消えていく。
首をもみながらそんなスペシャルさんの姿を見届けた男子生徒は、残り数歩の階段に足をかけた。
ドアノブに手をかけたらもう聴こえてくる──きき憶えのあるハープの音が。
扉をひらき、ハーブ園の緑を抜けていったらソファーに優雅に腰掛けて待っていた。
金色に輝くショートヘアー、ブク校の制服を着て、飴色の眼差しがいつもより早く誘われた彼を見つけてやわらかく微笑んだ。
「ふふ、待ってた」
すごく綺麗な人に、待たれていた。
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▽▽▽
▽午前9時45分 不黒高等学校正門前広場 女神石像ガイア前▽にて
必勝を祈願して天秤の女神様へと祈りをささげる。
そしてそろそろと校長は振り返り、先に招集していた3人の顔を見た。
「さてさてピネスくぅん、今回の冒険のパーティーメンバーは……フッフ大人の色香に惑わされないようにな? なぁーんて♡」
厳かに祈る姿が一変、いつものおどけた調子の校長にそう言われ……左右を確認するピネスの両脇には、──おそろい色違いの作業着を着た2人の女性がいる。
表情の淡い…落ち着いた水面に映る月のように美しい女性と、
彼の肩に手を置き太陽のような笑みで歯を見せ、自分の帽子を無意味に指で回しあそばせて──また被った茶髪の女性。
「あぁ。私は構わない。リーダーなら戦力として存分に使え、ピネス」
「結局戦闘のプロのあたしがいないとまだまだだねぇーにゃははは」
「あぁーどもどもよろしく…。って今回ふたり? 校長は?」
「フッフ何を言うかねピネスくん。──校長だぞ? 王だぞ?」
「あぁ、余程のことがない限り王がみずから動く必要は感じないが。何故そんなことを聞くピネス? 王の魔力量の高さと魔術師としての実力は私の目にも確かだ」
「ええっといやあのその、はは? ノリで? え、王??」
「フッフ、なぁに
女神石像前の緑の丘に冒険者、ブク高の生徒たちは次々と彼の見渡すまわりに現れ集う。
「さぁ、レベル上げもそろそろにようやく挑むは不黒ダンジョン(赤)のつづき。武器はもったか? 防具に抜かりはないか? おにぎりは持ったか? 魔力はマンタンかぁ? そーかそーか……ではではァ赤いゲートを目指して、いざ出発!!! したまえーーーー!!! わたしのスペシャルでさいきょーなブク高パーティーぃぃフッフッフはっはっはーーー」
元気な校長先生の大声の号令で、パーティーは赤いゲートを目指していざ進みだす。
校舎から顔を出す、帰りを待つ生徒たちの歓声に手を振り。
これからも選ばれた彼、彼女たちは待ち受ける不気味なダンジョンへと冒険の期待感を高め合い、その緊張とその覚悟をともに────挑むのだろう。
これにて最終話。
第一部完結です。
異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記を、
長らく応援ブックマークご愛読ありがとうございました。
第二部 王の帰還編(仮)の予定は未定です。
またどこかで物語のつづきを書ければお見せしたいことがまだまだ彼、彼女らの迷宮冒険の中にはあります。
しかし、円形校舎でのピネスとサンフンの決闘で物語を一旦しめるのも、区切りが良いと作者の勝手ながら思い至ったしだいです。
繰り返しになりますが、長らく応援ブックマークご愛読ありがとうございました。