異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
明るい足取りで21階へと進入したピネスと緒方と(冷蔵庫)はさっそく、ピネスや校長も患ったことのあるダンジョンハイニナル現象で勝手に進んでいったきのこの人を見つけるべく、未知のダンジョンマップを見落としがないようにくまなく一緒に捜索していく────────。
「「あっ!」」
「いたなきのこって囲まれてやがる」
2人と1台が赤石の通路から進入した中部屋には、見たことのあるしいたけセットを装備した人がいた。
その方はゴブリンがおめかし武装した新種〝ゴブリンナイト〟の集団に部屋角っこに自生した大事なきのこを背にし、ぜっさんキレイに囲まれている。
それでも大斧を振り回し牽制を繰り返し、メーカー不明の鉄剣や鉄盾やらちょっといい武装をしたゴブリンナイトらを簡単には間合いに近づかせない。
するとたった今入り込んできた見慣れた3つのシルエットと目が合い、己が目にしいたけの切れ目のような光を宿したシスターは斧をブンブンと扇ぎながらのたまう。
「男子さん頭巾さんきのこセラーさんまさにちょーど良かったです、のこのこいいかんじの挟み撃ちのお恵みプランをご提案します♪」
「言われてみればこの状況は敵をひきつけて挟み撃ちといえるな? あぁいいぜ! そこでのこのこいいかんじにがんばってのこってろ!」
「(きのこセラー…)うんっ! わわかった!」
そのお得プランに了承したピネスの背が緋色のショートソードを抜くように、緒方も今日何度目かのその後ろ姿を真似した。
迷わず抜刀したピネスを先頭に冷蔵庫と緒方がつづき展開する。
振り回した当たらない大振りをつづける斧を避ける──その鉄鎧の背を強襲。
ピネスは背中にブッ刺し、レア度違いのショートソードで鎧を威勢よく貫いた。
緋色のショートソードを喰らったゴブリンナイトは絶命し、ピネスは性格が豹変したように一気に圧をかける。
つづき高速でホバーしながら迫った冷蔵庫もその白い長方体を慌てるゴブリンナイトにぶちかまし、緒方も丁寧に剣を振り回して当たらずもモンスターらの追い込みに微力ながら加担し援護する。
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バレバレの挟み撃ちはそれでも迷わないスピードをもってして有効。効果的に成功して敵の隊列を乱し、中部屋にいたゴブリンナイトたちをほぼ手持ちウェポンの物理攻撃でスベテ滅した。
そして21Fの攻略途中で無事……合流を果たした3人と1台はそのままここで小休憩を取ることに全員で納得し決めた。
異能が発現してからは冷蔵庫にしまった、緒方結美のささやかな手荷物であった風呂敷包みのアルミホイルおにぎり。
それを大人しく自動でひらいた冷蔵庫から取り出し、地面に風呂敷ごと広げていく。
そのアルミ三角は見覚えがある。
涎が自然と滴りかけたものをひぃー……と鳴らす変な呼吸で戻し、ピネスは美味そうな銀色を図らずしも無断で手に取らずにはいられず。
「あっ! それじゃなくて浦木くんこっちバジP(それ日替わりきのこだから)」
ピネスのぜっさん手に取っている三角てっぺんの茶色の丸シールをみた緒方は、それは彼に食べてほしいものと違うおにぎりだと即座に気付いた。そして別のちいさな緑丸シールのついたアルミ三角を彼に手渡した。
「ん? あーバジP! いやーイチバン好きなやつだ、えこれ俺が食っていいの?」
「うん、そっそのためだし…たぶん前のと同じ味になってると…ぉもう」
「おぉ…ありがてぇ」
「私はきのこさん尽くしですか、お布施お恵み感謝っ!」
茶色は全てきのこ、主にのこっちシスター向けに学校の調理室で緒方が握り作ったものであった。飽きないようにシスターが緒方に日々融通してくれている色々なきのこをミックスして具にしている。
「これは? なんかあかいな?」
赤いシールの貼られたそのアルミ三角を剥いていくと赤く色づく米粒さんかくがそこにあった。バジPを一気に食べ終えたピネスが手をつけた2個目のおにぎり、これは何かと正座を組みすわる緒方に質問する。
「あっそれは……ぼっぼうけんで……エビ抜きエビチリのトマチリ…」
「おぉはむっ────────あこれイチバン、エリマキトカゲのエリチリ? 全おにぎりで」
「ええ!? ばっばじぃバジPは…?? いっイチバンそっそれ…エリマキトカゲじゃなくて…(エリチリってなに…)」
緒方が彼のはなったご感想に驚き顔を長々と浮かべる間にも──
全おにぎりのイチバンは更新されてしまう、あっさりと。
ピネスのかじりついた赤い三角はおかゆばかりの閉鎖生活では珍しい…また刺激的で濃厚な変わったお味。バジPを超え赤い新星の創作意欲作おにぎりがイチバンに躍り出てしまった。
⬜︎タコイカ学習帳
エビ抜きエビチリのトマチリ(仮):
材料
ガイアの恵み
ケチャップ
もうだいぶすっぱいキムチの汁(サンチュ)
ドライミニトマト(屋上)
13Pチーズ(茶室)
味の素(SP校長室)
オイスターソースきのこ&バジル(刻むエビのかわり)
※珍しい材料はブク高の生徒たちがそれぞれのテリトリーに大事に隠し持っているものを善意や裏の取引や約束で融通してもらっている。
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ダンジョンの中部屋で昼食をとり腹を満たしたブク高の一行は、再度この不黒ダンジョンの仕様を綿密に確認し合う。
ピネスの語りに耳を傾けたシスターは、何度か頷き今それを理解した。
「────そうだったのですか、ルールがわからずのこのこわたしめが階段をくだってしまいご迷惑をおかけしました。お赦しを」
シスターはしいたけベレー帽が落ちるほどにお二人に頭を下げた。
「いやまぁ電車で一駅乗り過ごしたみたいなもん? だから、次の30階で無事石像前にいてくれりゃそれでいいみたいだぜ? あぁーー、過ぎたもんはもうなんとなく進むしかない」
その男は親指をゆっくりと立たせる。気の利いたことはあまり計算できずなんとなくでしか言えないが、気に病むことでもないとシスターの面を上げるよう促す。
「なんとまぁそーですね♪」
面をバッと素速く上げたシスターはころっと表情を和らげた。
『もう少しだけしおらしくなっていてもいいのでは? きのこだけに』心でそんなことを少しだけ思ったがピネスは立てた親指を垂直にキープし、怒る権限も怒るつもりも微塵もないものなので同じく表情を和らげる。
「とにかく30階の石像をみんなで目指せばだいじょーぶ。だっだよね浦木くん?」
緒方は再度この場の引率リーダーに確認する。
「あぁ。やることはたぶん変わんねー。それに昼飯もバジPもエリチリ(公式公認)もおかげさまでぞんぶん食えたしなっ、ダンジョン特権ダンジョン特権」
「エリチリ(エビチリもどきだからまぁなんかいいかなって)ふふっ、だっダンジョン特権ふふふっ」
立てていた暇な親指を握りかえ、右のピースサインにし見せつけた。
緒方はピネスの半笑いのピースサインを笑い、やんわりと似たピースサインを握りつくった。
向き合う2人に対して余ったきのこシスターは落ちていたしいたけベレー帽をひとり被り直した。
1Fより20F、20Fより21F。学校よりダンジョン。
おにぎりをやんわり握るように良くなってきたパーティーのムード。今形作る自分も含めたいい距離感のトライアングルの位置関係に────さいど自然と3-C榎田椎名は微笑む。
そろそろと手に取った大斧の石突は地を打ち鳴らし、準備万端の明るい合図をした。