異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
きのこシスターはびゅんびゅんと豪快丁寧に大斧を振り回してゴブリンナイトの集を寄せ付けないでいるが、その肩を下げ息を乱し見て取れるような疲れをみせる。
「はぁ…ふぅ……女子力っ、これは疲れますっ…」
ニヤニヤと笑うゴブリンナイトの歩兵たちは互いゴブリン鼻を鳴らし頷き一斉に、動きに精彩を欠いてきたきのこシスターの元へと飛びかかった。
弱った獲物へとダンジョンのゴブリンたちは悪知恵を働かせて容赦をしない。
まとめてかかるミドリ鉄の脅威に────
魔力をはらむ風の刃はみだれ飛び、宙に吠えるゴブリンナイト衆を切り裂いた。
それは感覚きのこ力、魔力量を支払い胞子を飛ばすように周囲の空気を風のマナに染め上げ変換。
散布するそれは下地、風の刃の道をつくり、雑なコントロールの荒技を編み出すための。
誘う女子力、荒ぶる武力、センスはのこのこ成長きのこ力。
「のこのこお得なご提案、ありがとうございます、ふふっ!」
細切れのモンスターはどろっと地に溶け失せる。
魔力は使い所が肝心、まとめて葬るとよりお得で爽快。きのこシスターはクールに微笑み、激しい風にふわふわと舞い落ちてきたしいたけベレー帽を掴み被り直した。
歩兵は逞しいきのこシスターにまかせ騎兵には騎兵を。
真っ直ぐとホバー移動する冷蔵庫の上に乗ったピネスと緒方は、
「そっちが猪に乗るなら俺たちは白馬にのるぞ!」
「あぁー、なんてなっ! 緒方さん!」
「うんっ!」
緒方の合図で異能冷蔵庫はその上の大扉をひらき、武器をバラバラと前方へと放出する。
剣や槍や斧や盾や三節棍や、まさかのレアドロップ品の大解放はウリボーたちにごちゃごちゃと突き刺さっていく。
「はっはっは、でりゃぁ!」
飛び込んだピネスが次々とあわてる騎士たちをその翠の短剣を唸らせ討ち取る。
決して無謀ではない計算された2人と1台の策で、ゴブリンナイトライダーたちを効果的に屠っていく。
そしてバチバチと帯電する期待感をその翠の刃に稼ぎ、ピネスは長く息を吐きだした。
「ふぅぃーーー、GBみたいに一体倒せど倒せどかー」
「焦らずじっくり攻めることをご提案します♪」
「そーだなぁ別に焦っちゃいないけど、こっちはこっちでそろそろふざけたアレが寝ぼけてる間にラッキーなご提案、したいぜ?」
「では?」
「あぁ、さいしょのよていどおり3、2、1の12、13、14でっ!」
「ゴブリンには【ゴブリンサンダー】!!!」
ピネスは帯電した剣を明後日の方向へと勢いよく投げ捨てた。
そして遥か天に突き刺さったその剣から雷鳴がとどろく。
待機ストックした充電済みのクリティカルな企みは今解放。
天の翠は青く灯り、青く灯った一点からバチバチと発生した青雷はターゲットする鉄鎧剣の類を目掛け────つながる。
天から降り注ぐ全体魔法【ゴブリンサンダー】は、この部屋に召喚されていたスベテのモンスターを青く轟き滅した。
「ふむふむピネスくん…こう使うんだろ校長っ!! よーっし上手くいくーー」
「のこのここのこのおっちんじゃいました、羨ましいほどのご提案、すっきりです♪」
「せっ攻めどきっ!!!」
「あぁブク校やっちまえ!!!」
召喚にあると見受けられるクールタイムの間に、依然寝ぼけるビッグウリボーミコシへとブク高の3人と1台はここしかないタイミングで一気呵成に攻め立てた。
もう一つのプラン緋色のショートソードをすべり抜き、
ふつうの亀のショートソードを高まる士気に強く握り、
大斧は頭上をぐるりと一回転、勇ましく風ときのこを斬る準備運動を、
冷蔵庫は開いていた扉をしっかりと閉めて今ブク校パーティーは走り出した。
▼
▽
神輿に乗るゴブリンたちがつがえた矢が弓から放たれる。さらに投げ槍、獣の厚い毛皮に突き刺さったレアな剣をゴブリンたちはあれよあれよと投げ捨ててドンチャン騒ぎをつづける。
「矢がとんでくる神輿かよ。ってアレさぁ、俺たちのさっき売った武器じゃね……やっぱりゴブリン気をつけろってかソエジマ」
「そっそうだね…ごめんうらきく」
「ってあぶねっ──お前が突進すんのかよ!!!」
空気をも大きく揺らす間一髪──
足を溜め動き出した猪の要塞は急にその太い四足で地をうならせ走り出した。
ピネスはその重戦車に轢かれる前に隣の緒方を俵担ぎにし連れ去り、突風おこす突進のレールから免れた。
「猪突猛進、怒らせてしまいましたか?」
「あぁまた突っ込んでくるなありゃ、おっと? あーわりぃ緒方さん、じゃーぁ…お前にまかせる! うんっ!」
「!? …あっありがと浦木くん……」
何やら近づき、野菜室の中段でピネスのお尻を小突いてきたジェントルな冷蔵庫に、担いでいた緒方のことを任せる。
繰り返される巨大神輿獣の突進、怒りそれまで多用していた召喚のコマンドを忘れたのか。しかし単純であるがものすごく危険で厄介。
操者のゴブリンたちすら振り落とすほどの荒い危険運転に、
「岸和田みたい…」
「なにきしわだ?」
「だんじりですねっ♪」
「なるほどなっ!(あとで校長にきいてみよ)」
冷蔵庫は緒方をその頭に乗せ避け、ピネスとシスターも床に強く落ちたゴブリンにトドメをくれてやりながら冷静に避けていく。
「てかさぁ…なんかだんだん速くなってね、体感(だんじりだけに)」
「なってるとおもう……わたしも…!」
「早めにどうにかするプランを……ふふ、ご提案?」
「だよなぁ……こういうとき校長なら『スピードバフがどうたらとかクリティカルとか理由つけてぇ俺をっ』────3、2、1の覚悟で」
「結局最後はこいつでやるしかないのかよ」
「あらっ?? ナラッ」
「えっ浦木くん!??」
突然の行動に、緒方は大口をあけ驚き、驚いたシスターは迷わず大斧を投げつけた。
血迷ったか、悪化しそうな状況に急かされたからか、黒いブレザー背が目指したのは猪突猛進で向かい来る……鼻息荒い巨大猪鼻。
真っ直ぐ対真っ直ぐ、巨大神輿獣に真っ向勝負を挑む小さなその背は迷っているようには見えない。
そしてありったけの風の魔力を込めて……身を乗り出し弓矢を地へとつがえる神輿のゴブリンアーチャーを投擲命中。きのこシスターはなんとなくの無茶をするピネスに合わせてささやかな援護プランをお届けした。
「神輿は下から担ぐものおおおおなんとかなれええええ」
その駆ける背は一瞬でもっとちいさくなり、
鋭利に敵を威嚇する巨大な2本の牙の間を抜ける、
鼻水散らす猪鼻をくぐり抜ける、
昂るテンションにピネスの纏う装備品々のopはしらず自然に振り分けられ、改変ブレンドされた。
【スライディングスピード120%】
【クリティカル破壊力125%】
【スライディング時に限り0.5秒間クリティカル破壊力321%】
未知のシチュエーションに引き出すのはひとりの人間の本領、本領以上のダンジョンのルールに則った悪魔も女神もあざむくダンジョン俺ルール。
駆ける背、擦れる背、賭けた背。
茶色毛の股下を滑り込む最高の魔力、最高の陽気は今────
────滑り抜けた
鼻から入り、ピンと天を示す獣の尾をくぐり出て、一瞬にて冒険者は立ち上がる。そして熱帯びひりつくそのボロい背は確信する。
腹下のアトラクションのど真ん中、その愛らしいデベソをひと突きにした緋色のショートソードは、極限赤熱する。
炸裂、クリティカル陽術【バーンファイア】
緋色の太陽光は膨らみ亀裂はしる厚い毛皮の切れ目から漏れ出て部屋中に赤く射し込む。
やがてスベテの期待感は爆ぜ、緋色に燃えゆくクリティカルな光景がそこに広がった。
「すっすごっ…!! すごぉぉ……ゲームみたい…」
「さすが男子さん、のこのここのこのぉー、ふふふっ!」
「はぁはぁっ────アレっ?? もう一往復ぐらいは覚悟してた・ん・だけど? もしかしてぇスライディングした方が威力はね上がったり……すんの?」
この日ピネスが放った過去最大威力のバーンファイアは、巨敵ビッグウリボーミコシその巨体を跡形もなく爆ぜさせるほどの破壊力。
振り返ったボロく擦れ焼けた背は、握る柄もその手にもうなく、緊迫した戦闘の熱が冷めてゆく賢者モード。
またひとつボスをその幸運な剣で討った冒険者は、ご機嫌よく手を振るシスターといそぎ駆け寄るポニーテールの女の子をぼーっと見つめた。