異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
氷の溶けぬれた料理頭巾はぎゅっと絞られる。七輪の上のきのこは焼けこげて、ざんねんそうな笑顔をかのじょはうかべた────
最後の最後にドタバタはあったものの、
浦木幸
榎田椎名
緒方結美
異能冷蔵庫
以上の3人と1台は無事、目標の石像を浄化し不黒ダンジョン30Fからの帰還を果たした。
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▽▽▽
【浦木先輩たちおめでとうーーーー!!!】
新たな垂れ幕が、旧垂れ幕の横にぶら下がっている。屋上から元気に身を乗り出し手を振る、2度目の光景がそこにある。
帰ってきて早々の騒々しさにもちょっと慣れたように対応し、ピネスは屋上のサンチュに手を控えめに振りかえした。
垂れ幕に盛大に迎えられてもダンジョンから帰ってきたという実感がまだ完全ではない。
校舎でもない
女神の石像でもない
赤紫の曇天でもない
近づいてくる足音とオーラに、ピネスたちはゆっくりと振り返った。
そこにいて含み笑いを浮かべだしたプラチナ髪のスーツ姿、見慣れた眼帯をしているこの世でただ1人の校長先生。
ピネスがすこしほっと肩の荷を下ろしたのは、やはり生徒たちの通うブク高の名物であり象徴であり校長であるその顔を見たときであった。
「ん、帰ってきたか? 私が思うより遅かったではないかピネスくぅん? 今回はゆっくり隈なくマップを踏破しながらなかよく冒険したといったところかな? フフフよくぞ我が母校にしれっと帰ってきた! 緒方、榎田椎名も、それに冷蔵庫くんもっ! はははは冷蔵庫…?」
「あぁー、そいつ冷蔵庫っす」
「それは見れば分かるがなピネスくん、──ほぉほぉ?」
おどろき訝しんだ冷蔵庫をパカパカ開けたりよしよしと撫で触り始めた校長先生。
校長は必要以上には驚かず、意志をもつように勝手に動いたり回ったり開け閉めしたりするおもしろい冷蔵庫を愛でながら、お得意の推測を垂れ流していく。
「ひょっとして緒方の異能かこれは」
「そうですね、異能冷蔵庫っす。本人と魔力がリンクしてるみたいですよソレ」
「ほぉー、そういうタイプか私の異能にも似た? ふむふむ、野菜室には大量のきのこ、冷凍庫にもきのこ、なるほどなっ狙い通り今夜はきのこ鍋。おっとさっきからピネスくんキミだけはやけに話すな。キミがめずらしく率先して説明してくれるのはうれしいが私は緒方本人にきいたつも……どした??」
「あぁーー……色々ランジャン茸やらビッグウリボーミコシやらありましてぇ。校長先生の話、ちょっと長いみたいで? 俺ぇも、先にダンジョンの疲れを癒したいみたいな?」
「なにぃ? 私のかわいい生徒との待望のふれあいスキンシップタイムがちょっと長いとはそれは聞き捨てならんが…ふぅむ?」
「ふふふ」
かわいい生徒たちのリアクションは三者三様。
ホワイトボブの女の子は静観し笑う。
何故かほんのりうつむき赤面するポニーテールっ娘。
頭をかきながら男子生徒はマイペースに受け答えをする、いつもよりも率先して校長にピネス節で伝える。
考える校長は冷蔵庫の上にその尻を乗せその美脚をゆったりと組みながら、顎をさすっていく。
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▽
榎田椎名は冷蔵庫のきのこをせっせと回収、さっそく手に入れた未識別のきのこのおやきをいつもの七輪で開始。
緒方結美は校長の特別許可を得て本日のお風呂の時間スケジュールを繰り上げてもらった。とぼとぼと…がっくりと…その疲れた雰囲気の背は校舎方へと吸い込まれてゆく。
そして本日もっともお疲れであろう浦木幸は────
▽不黒文のSP校長室▽にて
やはり校長先生のテリトリーに…先ずは呼び出されることになった2-D浦木幸。
いつものように黒ストッキングの脚をなんども組みかえし、深い味わい机の上で今回の冒険を確認されていく。
提出したタコイカ学習帳はぶつぶつ声と頷きと笑みに開かれていき、彼ら彼女ら生徒たちの物語を追体験するかのように校長はのめり込む。
そんなプラチナ髪の様をぼーっと眺めてとくに口をはさまず待つ。いつものように威厳と歴史ある部屋のど真ん中に立たされたピネス。
「10Fまで引率ご苦労」
一言、まずは労いの言葉からはじまった。
校長は一旦提出された学習帳を読むのをやめてピネスの顔をちらりと見てそう言った。まるで本物の校長先生のような老練な大人のもつ余裕気な雰囲気で。
「あっす」
待っていた生徒も、一言。
校長のお言葉をもらいかるく会釈した。
じつに厳かな滑り出しで執り行われていく、校長と生徒のダンジョン攻略報告の儀式。
「ピネスくんキミならばこの程度のダンジョンクエスト楽々とこなしてくれると思っていたのだよキミのただひとりのこーちょーせんせいは」
「あざっす」
「どうしたやけに受け答え口数が単純になっているが」
「ダンジョン帰りはこんなもんですっ! けど」
「ほぉ、それはすまない今日は随分と──お疲れだろう? ピネスくん?」
学習帳をわざとらしくめくり戻しながら、校長はニヤリと微量、口角を上げる。
「っすねぇー」
右のほっぺを痒くもないのにかきながらピネスは、伸ばし棒を加えマイペースのスタンスを崩さずこたえる。
「ふっふ、まぁ何はともあれ、無事に帰ってきてくれてご苦労。つまらない詮索などはやめよう、追ってこれは精査するとしてぇ」
おもむろに席を立った校長はパラパラとめくった赤い表紙のそれを机に丁寧に置き、
コツコツとヒールの音を立てて彼の方へと近寄ってくる。
ピネスはその定められたポイントに縛りつけられたように微動だにせず、校長の足取りを目で追っていくが。
やがてクビの可動域よりも過ぎ去っていき……また足音が近づいて聴こえてくる。
『──ご褒美を忘れていたな♡』
両肩に置いた手腕はぐぐっと縮んでいき、豊満な面積がピネスの背に押し当たる。
耳元でえっちに囁くソレは…………
また同じようなピネスの知っているシチュエーション、その最中。
「んえ??」
くすぐったい右耳にチラリと見ようとしようとも見えず、不思議な魔力で振り返れず、しかし後ろには寄りかかり囁くそのえっちな女体の持ち主がいることはたしか。
ピネスは校長のバックアタックにぴくりと反応し、中ぐらいの驚き声を正面を見据えたまま上げる。
「今回は何が望みだ、キミのなぁんでも♡をこたえてみたまえー♡」
「んやぁ……?? 今回はちょっとそのぉ」
「んん♡? キミのただひとりのこーちょーせんせーだ、ぜんしょするぞ? ぜんしょぜんしょ♡」
「そのぉー」
「んーんー♡?」
「──パスで」
「そうかそうかキミはパスが♡────は?」
校長先生と男子生徒。
秘密の個室で背越しにくりひろげられていく甘い猫撫で声のやり取りは、
〝パス〟
あまえながらその豊満で寄りかかりいつものように若い雄生徒を誘惑する…背の美人校長先生へと告げられた。
ニヤニヤとしていた校長は変貌する真顔でフリーズ。
反面ピネスはやけに冷静。
そのふたつの巨大なおっぱいの暴力をその背に浴びようとも、なんともこの時ばかりは冷静でいられた。
過酷なダンジョンの冒険から帰ってきた現状ただひとりの生きている男子生徒は、校長先生の見ない間にたとえどんなに大きなおっぱいにも流されない慌てない負けないメンタルを維持する。
極上の誘惑を背に今回はパスを選べるほどの成長を遂げて……いた。
ただただ男子生徒に年甲斐もなく寄りかかり密着する……酔いしれていた秘密の甘さも不思議と醒める……。
トツゼン予想外の置いてけぼりをくらったかのような空気がふたりだけの校長室にただよっていく。