異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
ポニーテール娘はばったり出会った彼のフツウの顔を見て逃げ出した。それでも紅潮する顔は走っても冷めず……。
「なっなんか忘れてるかもっ…なんだっけ…ハァハァ……」
「あーもぅーーっ、ダメっ…まっ…まともにっ……話せる気っ…しないかもっ…! ッ……ぁあーー!!」
また自分の知らない記憶知らない失敗を思い出してしまい、赤くなる。
膝に手をつき、廊下にしゃがみ込み、どっと俯く。
緒方結美の受けたメンタルダメージの回復は、未だもう少しかかりそうである。
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茶室は茶会の真っ最中、あらたな客人が現れわびた空間は騒がしくなる。
「こっこのっカロリー泥棒!」
「だからごめんってぇ(カロリー泥棒ってなに)」
「お嬢様のカロリー物資を横から奪うなんてとんでもないですよ!」
「あぁーほんととんでもないと思ってる、すまないあまりにも腹が減ってたんだわそれで俺のだと思い込んでて」
「ハッ腹が減っていたからって他人のモノをとっとるのはっっ」
茶室へと入ってきた黒いタキシードを着た執事姿の客人は必死な様子で推定盗人の男を咎める。
「はゆはゆはむっ」
華奢な腕をしたみずいろ長髪のお嬢様は、ありついた三角米粒のカロリー物資をその可愛らしい小さな口におおきく頬張っていく。
盗人の男は問われた罪をなんとなく認めるものの、世は異界カロリー争奪時代、やはり執事は仕えるお嬢様のためにその怒りの矛先を簡単におさめる訳にもいかず。
「
それを見かねた茶人は至極冷静に、2人の膝下に同じ茶を点て差し出した。
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「すみませんっ。予定のディナー時刻にお食事が届かないので心配になり校内を探し回りあげく取り乱してしまい……お見苦しかったです…」
「いやっまぁそっちが謝ることでもないし、元はと言えば俺がぼーっと勘違いして起こったことだし、そのぉ──ごめんな?」
「いっ、いえっ…!?」
正座し頭をさげる執事にピネスは頭をさげられる理由もないので、ただ面と向かい同じく謝った。
面をあげた黒髪ショートの執事は彼と目が合いなぜか顔をすこし恥ずかしそうに背けた。
「投げ込まれた岩は、いっときの波乱を起こし、しかし一服終わればやがてまた穏やかな波となり…沈みゆく岩は腹底に坐る。──ラーゴム」
茶人は目を閉じ、しみじみと頷く。
(なんかわかんねぇが、茶人すげぇな。深いな、うん)
ピネスも頷く。
執事は『はい…』とあたたかいため息まじりに過去の己を悔い、頷く。
「はむはゆはゆ♪ッ──んんーーー!?」
おにぎりを啄みながら平和に落ち着いたシーンに頷くあおい小鳥のような少女は──異変。
執事は慌て、
ピネスはおどろく、
茶人は慌てず急ぎ茶をお出しした。
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ほっと一息────渋めのお茶で喉をしめらせ落ち着かせていく。
おにぎり5つ、カロリー摂取を半ば終えた艶やかな水色髪の女子生徒は細くて透明感のある声でご挨拶をした。
「よろしく。浦木」
「あぁよろしく、ええっと?」
「あっそうだねわたしの名前、むらさ──びぇっ!!?」
「ぬぉっ、おいっどしたっ!?」
口元についたご飯粒が気になる可愛らしい笑顔がいきなり──向かい合わせていたピネスの正座する太ももへとダイブした。
「いけませんっ! 正座のしすぎでお嬢様のカロリーが! やはり無茶をっ!」
「えぇ!? まじか! 足が痺れたとかじゃなくカロリー? 電池切れ??」
「ラーゴム、正座は自由。好きなようにわびなさい」
まことしやか、正座の維持でカロリーを消費しすぎたというお嬢様。
執事女子は慌てて自分の膝上のまくらへと電池と体力のきれたお嬢様を退避させる。
粗茶を一服し落ち着いたと思えばまたドタバタ。
女子3人男子1人、高校生たちの催す愉快な茶会がつづいている。
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また一つ異界の朝を迎え、時刻10時のいつもの赤空ダンジョン日和。
ピースする黒髪。
腕を組むオレンジ。
一礼する金髪。
いつもの門前に集まった……新しいそれぞれの顔を見回したピネスは、唖然と黙りこくる。
目に入るあらたな情報だけでも彼にとって腹がいっぱいになりそうなものであり。
そしてやがて、ひらひらと校舎から飛んできた赤い蝶々の報せを捕まえた────
⬜︎タコイカ学習帳
このところお疲れのキミにかわり私の方で増えてきた希望者のなかから今回ゆく冒険のメンバーを厳選しておいた。
サンチュは元気、木浪は熱血、サーガは冷静。
我ながら性格的にも能力的にもひじょーにバランスの取れたパーティーに仕上がったと思う。(もちろんキミも含めてな)
異能の方もワクワクっ、かわいい生徒たちの可能性に大いに期待したいな!
ではではピネスくぅん♡今回も前回に引き続き良き引率リーダーとして、頑張りたまえーーーー
そうそう今回の引率目標ダンジョンクエストはキミの成長を見込み20F到達までだ、うっかりまちがうなよっ?
あとブク高の制服はできるだけ清潔に保つように、痛々しいその背の勲章もかっこいいがな? ふっふ
⬜︎
(まじかよ…)
「浦木せんぱーい! やっとご一緒できますねっ! ダンジョンっ!」
近寄ってきたサンチュはダブルピース。これからダンジョンにおもむくのに元気な笑顔のダブルピースを貰ったのはピネスにとって初めてであった。
「平安伝説の茶器を求めて、ダンジョン&ラーゴム、──お点前拝見」
ピネスはもはやわからない。
伝説の茶器の浪漫もダンジョン&ラーゴムのカタカナも。
目を見てしぶく頷く茶人外人にこくりと…なんとなく頷き返した。
「何こっち見てんの、ハぬけ」
手にするナゾの古杖をドンっと地に突き威嚇した。先日廊下ですれ違ったオレンジ髪と青いジト目がそこにいるのは何故なのか。
「あぁー…校長先生……俺のことダンジョンマシーンかなにかと思ってたり、しない?」
「何言ってんの、聞こえないんだけど?」
ピネスはもはやこの偉い人に厳選され課されたという流れに身を任せるよう、ボケっとしていたスイッチを切り替えた。
ジト目にかるく威嚇されても、茶人と後輩に期待されても、ゆく先はダンジョン。
自分の元に集った女子3人の顔をもういちど見比べ、黒い頭髪をなんとなくかいた。