異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
⬜︎タコイカ学習帳
木な岩なマジカルステッキ★★★★★★
魔力量 中
魔法威力 小
無+3
ロックボール3way
草原の星屑のコボルトベルト★★★★★★★
魔力量半分以下の時魔力消費量 小減
物理威力 小
闇魔法発動時魔力量 中減
光耐性+2
不黒のブレザー★
闇+1
不黒のスカート★
黒夜のいかしたウリボーマント★★★★★★★★
シールド値80%以上の時マナシールド10%
シールド値40%以下の時魔法威力 中減
地+1
闇耐性+7
炙られた地のラムネルーズソックス★★★★★
地魔法を使う度にスピード 小
火耐性+2
シールド値 小
⬜︎
不黒高校の制服を中心に、レアドロップアイテムを追加コーディネート。
背のマントがひらひらり冒険者らしく、両手で杖つき魔法使いらしく、ジトっと瑠璃色の瞳が彼を見つめている。
「あれっこのマント?」
「なに?」
「いやぁー、なんでもない!」
「は?」
⬜︎タコイカ学習帳
サンチュ:
魔の光のブラックキャットショートソード★★★★★★★
物理威力 中
魔力量 中
光+4
闇耐性+1
光-2
ホワイトフロッグパーカー★★★★★★
シールド値 大
光+2
水+2
跳躍+1
不黒のスカート★
ホワイトキャットベルト★★★★★
魔力量自動回復 小
尻尾モード搭載
着地+1
フロッグシューズ★★★★★★★
スピード 中
蹴り+5
跳躍+1
⬜︎
「あははどうですかせんぱーい♡?」
明るいサンチュはお茶目な両手でキャットポーズをしているが、それは半分カエル装備。
「あぁーいんじゃね、強そうじゃん」
「は?」
「あ?」
ピネスがなんとなく放った後輩に対するお褒めの一言に、木浪は鋭く相槌を打つように反応。オレンジ髪の威嚇に対してピネスは間の抜けた表情で、なにごとかと見つめ返す。
「あははせんぱぁい…」
この場合褒めるべきは強さよりその白猫白蛙装備の可愛さ。ピネスは両手をやれやれと広げる幼馴染の仕草が分からず、首を傾げた。
⬜︎タコイカ学習帳
水野サーガ:
火の水の黒小太刀★★★★★★★★★
物理威力 中
魔法威力 小
居合術で属性力2倍
水+3
火+2
知の雨除けのドラヤキ笠★★★★★
水耐性+5
魔法耐性 小
察知+2
海の黄金の道中合羽★★★★★★★★
シールド硬度 小
シールド硬度 小
火耐性+4
水+4
DP入手量+2
天狗下駄★★★★★★
物理威力 小
風+3
蹴り+2
浮遊+1
⬜︎
「てかまじ強そうな雰囲気だな!(外人にダンジョンに刀と和装?は反則か?)」
「至極当然っ、ふふ」
「茶道も武道もわびとさび、ラーゴム」
金髪頭に古風な笠を被る、青と金ストライプ模様の合羽を翻し、スウェーデン人は鼻高々自慢げに何度も目を閉じうなずく。
茶人だった者は武人侍へとクラスチェンジ。そのエキゾチックな顔立ちと和風な装いのギャップと魅力に、見てとったピネスも感心している。
「なんでこっち見てんの、いちいち」
顔をいちいちチラチラと見られるのは、人によってはうっとうしいのかもしれない。
相変わらずピネスには棘のあるオレンジさんの心中は読めず、一時あきらめた。
「いやっべつにぃ、そだそだ装備確認も済んだことだしダンジョン、──いこーぜ」
ピネスは気持ちを切り替えダンジョンへと向かう号令を3人へとすんなりとかける。
「わーい、いよいよですねーいきましょーーっ!!」
サンチュは黒猫の剣を左腰から抜き出し、意気揚々元気にかかげる。
「ラーゴム、準備上々」
笠の顎紐をくいっとお直しし、よほどその格好が気に入っているのだろうか、味わう笑みを浮かべながら異国の侍はもういつでも準備上々。
閉ざされた正門を手動で開いていく。
はじまりの音とも言える厳かな門の音を聞きながら────
「おいっ? いこーぜ?」
「……」
何故かオレンジ髪は門をくぐらずひとり校舎敷地内で突っ立ったまま、青い瞳をジトらせ見つめている。
「なっ、なんだ突然なんで杖ついた地蔵に…おーい? もういくぞー? きこえてっか?」
「あっせんぱいっ! ひょっとして……ごにょごにょ────だと思いますっ!」
何かに気づいたサンチュは背伸びし、ピネスの右耳にきっとそうではないかと耳打ちする。
「なっなるほど……あぁー、いこーぜぇ木浪っ」
「……」
「なぁサンチュさん…これ、ちがわない…?」
「あははぁ……だとおもったんですけどあははぁ…」
「おいっ、置いてくぞぉー木浪! まじのまじで俺はこれから校長命令でなんとなくダンジョンに向かうがっ!」
「はぁうっさ…きこえてるから、ハぬけ」
「ばっちし聞こえてたのかよっ! はは…」
何はともあれやっと動き出したオレンジの幼馴染、開いた門を過ぎ、先行していたピネスたちの元へと歩き出した。
「前途多難、私は水野サーガ。私のことはサーガと呼びなさい亭主」
「おっけーサーガ? だな、サーガ(ていしゅ?)」
幼馴染と幼馴染、謎の小競り合いのあと。
金髪侍は彼の背にご丁寧に名乗り上げ、ダンジョン引率リーダーであるピネスを亭主、自分をサーガと呼ぶように言った。
「私はいつも通りー、サンチュでっ! せんぱいっ!」
「あぁーわかったいつも通りのサンチュな。──えっとじゃー、ちかる?」
「は?」
「これは一種のぉジョーダンってやつをぉ、木浪さんはっは…」
「はぁ? つまんないんだけど、ハぬけ」
「そのっはぬけってどして? ……せんぱい?」
「亭主、至極決定」
三者三様とはこのこと。
呼び名の多い男はいつものように黒髪頭をかきながら、それほど気にせずまとめ上げた。
「はははご自由に…──よし、なら行くか」
「だからさっさと行って」
「いざ平安伝説の茶器、お点前拝見」
「やっとですねっ! いこーーーっ」
装備も呼び名も確認し合いぬかりはない。
いざダンジョンへ、これ以上の問答足踏みはいらず。
一歩一歩ツギハギブレザーの背を追い、進みゆく────
赤く渦巻くゲートへと、不黒高校の生徒たち4人は吸い込まれていった。
▼▼▼
▽▽▽
⬜︎タコイカ学習帳
ちかる:は?
ハぬけ:?
ちかる:なんでさっきから普通にぶっ殺してんの
ハぬけ:なんでって? ダンジョン? …だから?
ちかる:躊躇とかないの?
ハぬけ:躊躇って言われてもなぁ、向かってくるから倒す、向かってくる前に倒す、ぶっ殺す、──ってなかんじで?
ちかる:は? なにそれ無理っ、五歩以内に近寄んないで、ゼッタイ
ハぬけ:なんでだよっ!(なんでごほ?)
サンチュ:はぁはぁ…せんぱーい、ゴブリンはじめて倒せましたー!
浦木先輩:あぁー、おぉー、やるじゃねぇか。
サンチュ:えへへへ
浦木先輩:
浦木先輩:
サンチュ:
浦木先輩:
ちかる:は?
ハぬけ:なぜ、俺をそうも威圧するんだ…?
サンチュ:あははぁ…
サーガ:亭主、どのようにかようにズバっと敵をお斬りに?
亭主:んー? あぁーなんつぅーんだろ。なんとなく…と言いたいところだがー
亭主:──ごほんっ! あぁー…とにかくそうだな、あいつらに近寄ったときは……ここでこうガッとして上手く倒したいとか、おっこいつなら俺の剣でもこのまま勢いで勝てるぜッとかこの場面…なにがなんでも倒してぇとか、そんな事しか考えてねぇー…な? あと校長にクリティカル出せって命令されたときに備えてこの辺でクリティカル出してぇ、おっでたでたラッキー!!とか、なっ!
サーガ:し、至極…………混乱
亭主:まっ、まぁなんだ? なんとなく…そうだっ! 強くなりたいって思って斬ってるのかもしれないな?
サーガ:強く…なりたい? お斬りになりながら?
亭主:なんとなくな、なんとなく強くなりたい、うん。そうだあぁーわかったこれ──なんとなく力を高める! これだっ
サーガ:
サーガ:
亭主:
サーガ:なんとなく力つまり……行雲流水────なるほど…至極、至極感嘆! 亭主、お見それ!
亭主:おっおぅ、そうそれッ! 幸運龍水! な、簡単だろ? はは
サーガ:感嘆感嘆ッ!
ちかる:(強くなりたい…)
かくして到達した《不黒ダンジョン12F》
モンスターを倒し経験を積み、パーティー4人は唯一の男手でありダンジョン指南役であるピネスを先頭に石の通路をすすんでいく。
⬜︎
「どう、異能?」
ピネスは引率リーダーとして定期的にそう問う。
なにか異能発現の兆候が出ているか、率いる3人女子に道すがら問うている。例のオレンジに『壊れたラジオみたい』と、すこし睨まれても。
「行雲流水、至極発現、飲みなさい」
サーガは茶室から持参した茶碗に点てた茶をピネスにすすめ飲ませる。
「ん?さんきゅー、──おっ? なんか?」
「滋養強壮、薬草茶。行雲流水の心で煎じ点てた薬草茶」
「なんかわからねぇが…つまり薬草への理解度UPってところか?(既に何度か飲まされたが)」
「至極理解、道端の薬草をラーゴム、ダンジョン&ラーゴム、ふんふんふふっ」
飲み干したピネスは茶碗を丁重にサーガへとお返しする。一歩引いたところから見るとそれは人体実験のようにもみえるがピネスは気にせず、自分の体の変化を感じ取りながらタコイカ学習帳の数値を眺めてみたりする。
「せんぱーいみてみてー異能〝なんかちょっと手のひらが光るー!〟」
「シールド値が回復?え──おぉ、まじだ光ってんな!?」
茶の渋み味わいを口内に感じながら学習帳と睨めっこしていると、後ろから駆けて寄ってきた。
ピネスは元気に待つサンチュの光る手のひらに手のひらを重ねてみる。
手と手を離した時、自分の手のひらは光らずサンチュの手のひらは光ったまま。
校長なら自分にしたように色々調べるだろうと……引率リーダーらしくなんとなく彼女らの異能の効果を探っていく。
ピネスは一旦その光っぱなしのもったいない異能をオフるようにサンチュに伝えた。サンチュは右手にチカラを込めながら……それでもダメで光る手を振り回し、なんとか発動していた異能をOFFにした。
ここまで2人の異能の試用は順調。ピネスは学習帳に異能の試用状況を便利な自動記述でメモらせながら────
目を余ったオレンジお一人にスライドし合わせ、今までの自然な流れに乗って話しかけた。
「で、」
「は? ないけど」
「ないか?」
「ない」
「すでに発現して」
「ない。そもそもないんじゃないそんなの」
「いやいや俺も俺の異能が幸運だって気づ」
「あんたが幸運? ハぬけなのに?」
「あぁハぬけだけど幸運、校長いわくレアドロップアイテムが出やすくなるらしいぞ。あとおまけにクリテぃ」
「なにそれ、つまんな、もっと派手なのないの?」
「っおいそう言われてもなぁ…たしかに幸運なんて御守り程度に聞こえる地味だけどな。まぁなんかお前も変なこと起きたり気付いたら教えろよ? 俺も俺の目で見てわかったこと教えるからさ、木浪の異能」
「ふぅーん、ハぬけが余計なお世話じゃん」
「これは世話というかクエストというか…ってかやっぱりお前さっきなんか超能力っぽいの発現して」
「ない」
「よなぁ」
木浪の異能は発現していない。
本人がそう申告しているからピネスはそう納得するしかない。
2人のやり取りを、後ろで並び眺めていたサンチュとサーガ。サンチュは聞き入った刺々しい会話劇に苦笑いを浮かべ、となりにつぶやいた。
「あははぁ…浦木先輩と木浪先輩って……仲、悪いのかなぁ?」
「至極…難解。亭主は彼女を遠い遠い記憶の中の幼馴染と言っていたよう」
「えぇー先輩と先輩が幼馴染!? うそぉいつーー!? わたしそんなの聞かされてないーー!!」
「茶道を用いれば亭主側近これぐらいの情報入手、至極当然ッ」
「ええーー!? いつのまに茶道すごぉお!? ってわたしもきいて良かったのかなそれ??」
「至極…当然ッ」
トツゼン──青い瞳がうしろの女子2人に振り返った。そのただならぬジト目に睨まれたサンチュはびくりと心臓を跳ねさせ、異国の茶人侍は笠をくいと…ななめに深く被る。
また一通りの確認や雑談も終わり、特に危なげないダンジョンの通路石道を一行は進んでゆく。
だが不測、先導していた者は小石に躓くようなアクシデントにかるく見舞われ────
「──痛てっ、」
「は? 何いきなりこけてんのダッサ」
「えぇ……いやなんか引っ張られ? ──あっ」
「なにが」
「おい、やっぱりソレ異能じゃ」
「ハ? なにがどういう異能? なんであんたが勝手にダサくこけんの?」
「だからそのーなんかその一種のよくある物体をなんか…いいかんじにラーゴムするハンドパワーみたい……うーー……なっなんでもねぇわすれてください木浪さん!」
「ぷっ、さっさと前歩いて余計なお世話さん」
「おっおぅ? わかった」
躓きこけたピネスをオレンジ髪は一瞬笑う。
彼女がじぶんに笑ったのは何年ぶりだろう……その記憶にはすぐには思い出せない。ピネスは思い出せないが特段その彼女のみせる笑みがおかしいとも思わない。
不自然にほどけた靴紐を結んで、汚れたダサい普通スニーカーは前へと踏み出した。
ダンジョン12Fまだまだ道は半ば。ツギハギ縫われた彼の勇ましいブレザー背はまたしっかりと同校女子生徒たちを率いて、暗がりに染まる未知の道へと足音を刻み進んでゆく。