異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
⬜︎タコイカ学習帳
降って降ってのらりくらり────
ダンジョン地下20Fまでの踏破を目指すブク高の一行は、順調。コボルトやゴブリンをその剣その刀その杖で滅しながら進んでいく。
ハぬけ:おー、ヤルじゃねぇかナイスゴブリン
ちかる:は?
ハぬけ:あ? あぁーじゃなくてナイス木浪! ナイスゴブリン退治!
ちかる:なにがナイスなの?
ハぬけ:え? だから…倒せたじゃん? あだー記念…すべき?
ちかる:はぁ、あんたが全部倒せばいいじゃん、ハぬけ。何が記念なの
ハぬけ:俺が? いやいやいやいや…さすがに俺、あぁー、体育3だし? ははは
ちかる:そっ、じゃわたしが全部倒す
ハぬけ:ははは──え? いやいやなんでだよ?
ちかる:倒さないんでしょ?
ハぬけ:いや倒すよ倒す! 倒すは倒すっ倒すがゼンブはーぁ…数が極端すぎやしませんか…? ソレ? 木浪さんっ、なぁ?
ちかる:は? 必死すぎ、冗談──しらないの?
ハぬけ:冗談かよっ、ジョーダンって…そのソレ…できれば最初に言ってくれたり? その手法…心臓に、わるくね?
ちかる:最初にいったら冗談にならないじゃん、馬鹿なの?
ハぬけ:なんつぅ…正論を…
サンチュ:浦木先輩って妹いたりしますか?
浦木先輩:いもうと? いないけど
サンチュ:弟!
浦木先輩:いないが、一人っ子
サンチュ:ほふぅーーん、そうなんですね!
浦木先輩:そうだが、サンチュおまえは? ぎゃくに兄弟いるの?
サンチュ:えっ!、。? ──あははぁ…いた……かなぁ
浦木先輩:いたってなんだそれ?
サンチュ:いえいえっ! あっ!! なんか先輩似てるなって! そのっ話す雰囲気が!
浦木先輩:俺がぁー……似てる? ふんいき?
サンチュ:むかし飼っていた亀吉に!
浦木先輩:かっ…かめ? きち? 亀って話すの?
サンチュ:そうなんですよ、呼ぶと尻尾ぶんぶんってかわいいんです♡!
浦木先輩:亀って…尻尾ふんの?
サンチュ:はい? 犬だからそりゃ振りますよ、亀吉?
浦木先輩:犬かよっ! かめきちっ! めちゃくちゃまぎらわしいな
亭主:ところでその、前に茶室で言っていた、はめんがんし…? ってなに
サーガ:波綿岩死…甲賀流忍びの秘術にて心得
亭主:こっ、こうかりゅう?
サーガ:滋賀甲賀流忍びツアー、甲賀市おシノビーランドで会得、至極忍耐…の日進月歩
亭主:うー…つまりニンジャ?
サーガ:至極忍者っ、心の水庭を作り出す秘術。行雲流水の心と至極酷似、至極相違
亭主:うー…あぁーなるほどな、ラーゴムちょーどいい勉強になったわ
サーガ:これぐらい至極当然っ、ラーゴム
かくして辿り着いた《不黒ダンジョン18F探索13分の小部屋》
此度の冒険の引率リーダーとしての役目の終わりもだんだんと見えてきたころ、ピネスは20Fに潜んでいるであろう階層ボス戦へ向けての英気を養うしばしの休憩を提案した。
⬜︎
ランチタイムはおにぎりと粗茶で。
モンスターを滅した連なる通路がひとつの小部屋安全地帯で、腹もちのいいカロリーをいただいて補給していく。
ダンジョン特権として豪華なおにぎりの品々を奮発していただけるのは、──嬉しい。
此度は茶人まで付き添い良いお茶碗で粗茶までいただける、至極の贅沢にほっと浸りながら。
そんなダンジョンにて豪勢な腹ごしらえを終えた4人は、──それぞれ自由タイム。
ダンジョンにて発現した年頃の学生のノリ。引率リーダーもメンバー女子たちもこのときは頷き賛成していた。
ピネスはちょうどなんとなく読もうと思っていたタコイカ学習帳を奪われた。
道中入手したアイテムなどのことを、ノートを横からかっぱらったオレンジさんに淡々と質問責めにあう。
茶人にして侍はドロップアイテムの茶器を惚れ惚れと手に取りガラをながめ夢中。ダンジョンでそのような骨董品の品々が落ちるとはピネスも思わず。異能幸運がもたらした奇跡なのか…現在検証中である。
サンチュは壁に向かい異能の練習をしている。
⬛︎
『あぁー、なんだろな、こうして隠して…こうやってぇ! ゴブリンの目潰しとかにつかえそうじゃね?(なんか言ってて俺もほしいな、そのおてて)』
『は? 下から当てて──写真映えとか(カシャ)』
『おい──なんで今俺を撮った?』
『読書の際に、至極便利』
⬛︎
などなどの……先輩方にもありがたいアドバイスをたまわり、後輩は異能を右手のひらに光らせる。
「目潰し、バエ、読書!」
ダンスレッスンで大鏡に向かいするよう、チカラを込めかざした手光がダンジョンの石壁を明るく照らしだし────
「こうしてぇ目潰しッ目潰し────めつぶ…? んん? おやおや? なにこれぇ? ぴとっ──」
光照らされた石壁になにやら円環状の模様が刻まれていたことにサンチュは気付いた。気になったモノにとりあえずその場のノリで手のひらで触れてみる。
──だが、何も起こらず。
こてっとかわいく首を傾げたサンチュ後輩は遠くで憩う先輩に報告をすることにした。
「せんぱぁーーーい! なんかカベにもよ」
「よけろっ!!」
「ぅへ?」
それは振り返る背を襲う凶刃。
突如サンチュの背後に現れた黒骸骨の剣士は、骨腕をきしませ掲げたその剣を振り下ろした。
しかし間一髪、元気に振り返る後輩に迫る危機殺気にいち早く気付いたピネスは横から後輩のカラダを掻っ攫い、天から一直線に振り下ろされた剣を避けることに辛くも成功。
間一髪のやむを得ぬタックルで地に勢いよくコケた2人。不意におとずれた緊張感の最中、ピネスはすぐさまその身を起き上がらせていく。
「っぶねぇ…んなっ!?」
起き上がり腰のホルダーから剣を取ろうとしたのと同時に、不意に視界に入ったのは、至近距離で舌を〝べあーっ〟。
紫の長舌をおどけて出した小悪魔が2匹、何かを同時に放った。
魔力を帯びた濁ったマジック光線を浮遊する小悪魔からピネスは受けてしまった。何か不吉な魔力ビームを2匹から同時に浴びた刹那の連続の混乱の最中に──走る骨音を鳴らす。
ブラックスケルトンが小悪魔の不意打ちに連動し仕掛けた。
「痛痛痛ってぇ……ェこの野郎!!!」
勢いよく刺突された左の脇腹を気合いで締めてカタカタと震える骨腕ごと離さず……。逆に右の剣鞘から右の逆手でシームレスに己の剣を抜き出し──勢いのまま敵の骨身ごと天へと切り上げた。
カウンターの剣で緋色に染まる切り傷を負った黒骨を、表情顰めるピネスはそのまま畳んだ右足で蹴り飛ばす。
やがてクリティカル陽術【バーンファイア】は時間差で起爆し、顎の外れたされこうべだけがカタカタと鳴らし、地に落ちのたうち回っている。
「んなろうが……シールド値が肩代わりするにしても…いてぇ」
「浦木先輩っ!?? だっ大丈夫ですか!?」
「あぁ、たぶん装備がいいから死んでは…いねぇが──よっと! はぁはぁ……ちょっと気抜いてたわりぃ」
また飛んできた不吉な魔力ビームを翠の刃は受けとめる。そしてそのまま刀身に含んだ敵の魔力をささやかな雷撃と変えお返し。クイック発動された青雷は2匹の小悪魔を荒く狙撃し、滅。
さきほど無防備なところをまんまとやられた意趣返し。無防備返しのマジックで最後は間抜け面を見せた小悪魔を瞬く間に討ち取った。
石壁の円環模様はいつの間にか濃く赤黒く染まりきっている。
それは魔の光に照らされないと見えない悪意のトリガー、トラップだったのか。ブク校パーティーの生徒たちはそんな事を気にする余裕もなく。
続々と召喚──湧き出てくる軋む骨の戦士たち、嗤う小悪魔たちに。
「だろうと思った──気まぐれなおかずだっ、あげるぜ!」
ピネスは脇腹に刺さった剣をぶん投げ、遠くで霞み現れる最中の小悪魔のふざけた舌にブッ刺した。
冷や汗がながれる……18Fでこれまで見たことのない未知のモンスターの出現に。
4人にビリビリと緊張の空気が走る──。設けていた休憩の時間ゆるやかな雰囲気などはとっくに打ち切られている。
不吉な魔の風を浴びたような悪寒がピネスのカラダを蝕んでいくのを、戦闘モードに移行するピネスは目の前の剥き出しの殺気の集いばかりに集中しわからない。
そのカラダがいつもとは違う警告と熱を出せど、そのときばかりは気付かなかった。
たとえ手痛いダメージをもらおうとダンジョンで襲いくるモンスターにはそのシールド値のかぎり剣を構えなければいけない。
たとえ道中誰が仕組んだアンラッキーなトラップに見舞われようとも、ルールに則りチカラの限りヤらなければいけない。
ブク校の誇るラッキーボーイに突然舞い込んできたのはアンラッキーなシチュエーション。
ツギハギブレザーの背を心配そうに見つめるのは、初ダンジョンを共にするビギナーな仲間の女子たち。
このときこの厄介なシチュエーションばかりは、その汗ばむ柄を握りしめる気持ちはただの気の抜けたなんとなくではなく……。
引率リーダーとして、男として────浦木幸はたまった汗粒を置き去りに走り出した。