異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
使えそうな武器アイテムは無限ではない。使えそうなキノコが底をつき、己もまだあまり分からないあやふやな条件付きで引き寄せるだけの異能では良い武器をいくら手元に置いてもさほど上手く扱いきれない。
なおも激しくつづく戦闘状況に、手強い黒骨のモンスターと真っ向勝負になる場面をついに迎えた。
サンチュは右上から左下へといきおいよく剣を振ったが、ひらりと後ろにスウェーしブラックスケルトンはサンチュの単純な剣筋を避けた。
勢いあまったサンチュは致命傷になりかねない大振りの大きな隙を晒してしまう。しかしその危うい刹那、サンチュのカラダはその危機するシチュエーションに反射反応する。
直近の反復してるときにた練習の成果というものは身に少しは染み込んでいるものだ。
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『あぁーサンチュお前俺とおなじ右利き? ならこう斬ってからァ、避けられたらァ、目潰しッ──パッて、こうするのもいんじゃね? ひだりな』
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「わわこのっ目潰しッ!!!」
空振った剣柄に添えていた左手を握りからパッとひらき、下から黒いされこうべをライトアップし照らし出す。隙だらけの姿勢から手のひらを相手方へとしっかりと向け照射する異能の光。
光は黒骨のナイトの返す剣よりも当たり前に速く到達する。到達した眩き光は、悪しき死者を浄化する閃光となる。
悪しき存在であるブラックスケルトンはサンチュの異能に照らされて、闇の内在魔力を枯らし土へと還った。
「アレぇ!? 目潰し…!? ぺしゃん…???」
「ぷぷ、目潰しどころじゃないじゃん(ところで骸骨に目ぇなくない)」
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繰り出した思わぬ光量で悪への特効浄化。
ブラックスケルトンに効くサンチュの異能は重要な技へとうれしくも戦いの最中にパワーアップ昇華したが、その光で悪を一体浄化するのに使う電力魔力量は安くはない。
木浪の魔力量も残り30%を切り心許ない。
木浪はこの先のやりくりを思考するが、思考しようとする頭に響くラッパの音がそもそもうるさい。汗ばむうなじを拭い、依然迫るモンスターの波を見つめながら────
(距離によって使う魔力量がちがう? コントロールも違うし、さっきのチェーンみたいに一回でもじぶんで触れたものならたぶんかなりコントロールしやすいとおもう? じゃー遠くて一回もさわってないものは…集中すれば? いや、それより絶対量、それにタイミングと雑でもパワーといきおい──アイツごと引っ張ったときみたいに)
宙をステップしながらラッパを鳴らす特別な小悪魔がいる。木浪は睨みターゲットする。その下手な音色を奏でつづける金のラッパを息継ぎの瞬間に──釣りあげた。
木浪はここぞに杖を思いっきり振るい、魔力と狙いを込めた異能で強くアイテムを手繰り寄せる。そして不意打ちの超能力に引っ張られ、小悪魔は上機嫌に演奏していたラッパからその握っていた手爪を引き剥がされた。
「いつまでも下手で上達しないんならいらないでしょッこれっ!」
からんころんと地に飛び落ちた金の笛を木浪は、いそぎその手に回収する。
実戦の中のお試し感覚であったが、思ったより異能の扱いが上手くいき、勝気な良いしたり顔で面を上げたその時──
ご機嫌な演奏を奏でていた笛を奪われた紫の小悪魔はその肌をタコのように赤く染める。
走りながら茹で上げられたように赤く染まった怒りの小悪魔が、ちいさな翼をおおきくひろげて宙を一直線に猛進し。
オレンジ髪のムカつく面へと噛み付かんと、我を失い襲いかかった。
敵を呼ぶ魔笛を奪い上手くいったかと思えば、それはモンスターを酷く怒らせてしまうトリガーであった。
そんな生態など知るよしもない…これは少女の策にも予想にもない、さっと悪寒のはしる裏切り。
ご機嫌を挫いた極限の怒りからか、猛スピードで宙を舞いながら、かつ身を一気に成長させ迫る……狂気の赤き悪魔にもう対処する術を考える間も────
うなされ震えるバグが除かれ、おだやかな寝息を立てる男がいた。
そんな呑気な男にながれてくる遠い遠い記憶がある。
眠っているときにはなつかしく見ていて、起きた頃には分からず失せているような、そんな。
夢とちがい現実のまぬけな自分には、ひと雫ほども覚えていない記憶が。
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よく遊びにいっていた部屋がある。
あの子がミニチュアのうさぎの城で遊んでいる。
その子はよくしゃべる子だった気がする。
でもそれがフツウなもんで俺もフツウにその子と自然に話していた。
『ちかる、おひめさまになる!』
『え、なんでぇ?』
『おひめさまになりたいのー!』
『ちかるちゃんがおひめさまぁ? ムリじゃない? アメリカってのにいかないとぉ?』
『いかないっ! おひめさまになるの! ハーすけはおーさま!』
『えぇ…おおさま?』
『おーさま!』
『めんどくさそー。おれ、えらいのやだ』
『ええーーーー!』
『おおさまとかこくみんがめんどくさいし、あっ──そーだつよくなる!』
『え』
『おれがつよくなって、おひめさまを守ってやるよ! こっちのほーがかんたんっ!』
『…うーん? わかったぁいいよ! じゃーハーすけは──』
うさぎのお姫様の前には、うさぎのナイトがいる。
その子はわらっていて
あれ……? これってぇ……変わったのは────
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吹かれたオレンジ髪は後ろから前へつよく靡き、また後ろへと……行ったり来たり忙しく吹いてきた一陣の剣風に泳がされる。
飛んでいた赤い翼が二つに折れて突っ立つ彼女の両側に鮮やかに散った、それは断末魔さえも残さない。
披露された目覚めたてのクリティカルな一太刀。
勇の証であるツギハギのブレザー、雷纏うエメラルドの剣、見慣れたいつもの黒髪に──ゆっくりとふりかえる黒い瞳の輝き。
暗色の迷宮の地に立つ背が、イマ勇ましく輝いている。
みひらいた瑠璃色の瞳の前には目に入るスベテがその瞬間に──遠く夢見たいじょうの夢みたいな現実が、色鮮やかに顕現し、足りていた。
「そーそー下手悪魔の伴奏は──いらねーよなぁッ?っはっは────…… わりぃ…新種の病気ぃ…アクマ風邪でちょっと寝てたわ。……今どんなかんじかぁ…おしえてもらえないだろうか…木浪さんっ?(寝起きなもんで、なぜか腹はちゃぷちゃぷ牧草の味でいっぱいだが)」
「は? 今頃? めっちゃ遅いんだけど、──ハーすけ。ふ」
まだ冴えない寝ボケ頭をかきながら、浦木幸は苦笑いで背のオレンジさんをうかがう。
木浪智火瑠はそんなひどく遅刻したまだ寝ボケている彼に──両手をやれやれとひろげて微笑んだ。
木浪を理不尽に襲った悪魔もどきを遅刻ギリギリに屠った申し訳なさげな表情の男の元へと、散っていた足音がにぎやかに駆け寄ってくる。
幼馴染、後輩、茶人侍、華やかな仲間たちの手厚い頑張りと汗が実を結び、
頼れるナイト、頼れる先輩、頼れる亭主であるブク校唯一の男子生徒、浦木幸はダンジョンにてやっと回復復活を果たした。