異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
午前0時、校長室をノックする音が響いた。
資料にあった宝という宝はそこにあり、前回の冒険で持ち帰った装備を手に取りながら厳選吟味妄想していたプラチナ髪の校長はやってきたゲストにニコリと微笑んだ。
グラスに注がれていくのは儀式やパフォーマンスなのだろうか、短剣の切先から滴っていく魔力で生み出した水はゲストへと提供された。
「ほぉこんな夜分にダンジョンへ志願とは、よかろう。ならば次の彼との冒険はキミに、いやキミたち2人に行ってもらおうかな?」
眼帯をした校長は生徒の個人情報の載っているマル秘の紙ぺらに目を通しながら、同時に宙をさまよっていた赤い学習帳を捕まえて──資料を交互に見て、彼女らに見合う妄想の装備をさっそく探しビルドしていく。
異能魔法の便利な学習帳の白紙のページに条件に見合うop効果のついた装備をソートしリストアップ。
それが鼻歌を口ずさむほどにたのしいのか、プラチナ髪はるんるんと明るくうたって1人つぶやいている。
椅子に座らされたゲストである登別海は水のグラスを手持ち。
机上でかんがえ作業する不黒文校長へと、さっき受け取った言葉に対しておくれてふつうに頷いた。
「そう、わかったわ。ふたり? 光角部長のこと」
「ふっふ候補者の中からパーティー間の人選バランスを毎回考えるのも楽じゃないものでな。私もよく知るキミたち風紀委員…部のっ、2人とピネスくんならばかなりいいバランスが取れそうだと思わないか」
「バランス、そうね。彼と部長で小一時間遊んだかぎりは特に諍いはなくそうかもしれないわ。うん、光角部長には私から話をつけておくわ。それより校長、他の生徒は? ダンジョンってこの人員をスカウトしにきた赤表紙の資料によると油断できない攻撃能力を有するモンスターがうじゃうじゃいるところよ。私はその人数で遊んでも別にいいのだけどルール上なにか少人数じゃないといけないの?」
「あぁさすがの成績ALL4の一歩ひいた素晴らしき着眼点だ。みのがせない痛いところをついてくれるな? ふふ、だが登別その点についてはな。ちょっと長話になるが用意はいいか? いくぞ…」
❶緒方はこのところ何やら念仏を唱えながら苦行のようにおにぎりを握りつづけている。おにぎりの味や食感握り加減塩加減もばらつきが見られすこし迷いを感じるものだ。新作も出ていないいつものアレンジチャレンジ精神はどこへやらだ。
ふふふ…異能冷蔵庫はめちゃベンリ!
❷榎田椎名は現在魔力が減り続ける謎の茸と魔力が増え続ける謎の茸を同時に食してしまいダウン。満ちたり引いたりを繰り返しひどくうなされていて、昨日の夜やっと落ち着いてきたところだ。だがダンジョンに自生するきのこに関しての彼女の研究探究心はその素晴らしき成果をすぐに出したのは記憶に新しいところだろ。少々腹を痛めようとソレをやめさせる訳にもいかないふっふ。
異能きのこはまだまだ謎だらけだな。
❸サンチュは意味もなくグラウンドを走り周回している。光ある元気の塊みたいな生徒だが少し背負い込むタイプでもある、休ませたい。闇のモンスターを祓った光の異能に関しても個人的に気になるところだ。
異能光! 聖なる光属性の僧侶が序盤の仲間にいるとは運がいい!
❹木浪は見せてもらった異能がまだ安定とまではいかない。魔力は自然回復するがあの引き寄せの異能は頭を結構使うようだからな。使いすぎて熱され鼻血でも出されたら心配事だ。クールダウンしながら大事に育てていきたい。
❺サーガの異能は薬草への理解度upというよりは茶道の所作でお茶を点てる部分が能力か? 調合能力、私はそう見ているが…詳しくはわからん検証を進めたい。
「ということで現在100の万全の状態で次の冒険へと貸し出し可能な生徒は────いない。いるとするならば緒方の異能冷蔵庫ぐらいだな? いずれ緒方なしでも単独運用可能か試してみたいとは思うが、それもまた異能を知り異能に慣れてからだろう焦りは禁物だ」
「……そう? 校長先生の熟考思案していることはそこそこ分かったわ。でも肝心のこよ冒険記にも出ずっぱりの浦木くんは? いいの? それこそ貸し出して?」
「ん? それはな、ふっふ、秀才はタコイカの冒険ログを読み込んでご存知かもしれないが彼の異能幸運のパッシブバフがないとな。やはり私も彼に内緒でいろいろと試してみたものだがせっかく冒険にいってもドロップアイテムの品質が著しく落ちるものだからなはっはっは。今やブク高にダンジョンに欠かせない存在なのだよ、いやもはや固定枠か? 唯一の男子生徒にはがんばってもらわないとな! ふっふっふ、あーそうそうそれが彼のためでもある。アレは休ませるほど良いという性格ではない、クリティカル攻撃が出るようにたっぷり褒美して応援して色々してぇ♡やらないとな? ふっふふ」
(ダンジョン、校長、武器、異能、それに
透明なワイングラスをゆるりと傾ける────登別海は渇いていたくちびるを浸かる水に潤した。
「ところで校長、ダンジョンは最大何人制で挑むルールなのかしら? あそびの現存ルールが分からないと追加ルールをしようにもすこしためらうわ?」
「ふっふ登別海、キミはぁ──…上手いこと言うな?」
ダンジョンは未知。そのいたずらなルールを解き明かすには足りず。
不黒高校不黒文率いる若き探索者たちの手探りする未知の異境迷宮の攻略は、まだまだはじまったばかりである。
▼▼▼
▽▽▽
「──ということよ」
「どういうことだ」
⬜︎タコイカ学習帳
今回はな…特別だいかいほうサービスだ、我がブク高の誇る秘密兵器の2人を連れてきたぞ。
登別海:
彼女はとてもクレバーなだけではなくチャーミングだろう?(お目目のあたりとか) 異能スーパーポーカーフェイス! というのは冗談で、顔にはあまり出さないみたいだが、まぁそこはキミのコミュ力とギャグ力しだいだろう? そして能力に関しては心配するなどうやら彼女は私と同じセンスあふれるセンスの持ち主だ、きっとキミのことをサポートし役にたつことだろう。
光角灯:
キミと登別の足りないモノを全てもっているスーパーマンだ。ふたつの月とサンサンな太陽、ということでバランスは取れているか? キミと登別は腹から声の出ない族だからな、ふっふ。月がひとつ増えたところで太陽は動じぬさ、等しく正しく彼女の目はキミたちを照らしてくれることだろう。そう、いつぞや言っていたキミのだいすきな角灯のようにな。
さてさて今回の引率ダンジョンクエストは…装備アイテムも充実しキミも強くなっていることだろう、30F辺りを目指してみてはいかがかな?
ふっふ、ではピネスくぅん♡素敵な仲間とともに異能チカラをあわせおおいに頑張りたまえ~~
《午前10時15分 女神ガイア石像前ひろば》
⬜︎
本校舎から飛んできた赤い蝶々をいつものようにつかみ、読んでいく。
「ぅーーー…うーーー…なるほどな」
ピネスは校長からのありがたいメッセージ内容をささっと把握し、ひとりこくりと渋い顔で頷いた。
「エッチアイまた徘徊してぇ!!!」
「もはや俺は息をしていてもあくびをしていても指摘されそうだ。安心してくれ今度はダンジョンを徘徊するんだからさぁ、取り締まるのはゴブ山とかコボル田とか他にいっぱいいるぞぉ?(腕6本の黒ギャル骸骨とか)」
「くぬぬぬぅなにをわからないことをしたり顔のスケベ顔でぇえ! こうなればっっ異能風紀でエッチアイを正しますっ!」
ばばーーんっと人に向けてしんけんに指を指す。
すこし遅れてやってきた制服の上に武装したピンク髪のその子はひどく元気だ。
『その防具と剣は風紀を違反していないのか?』とピネスはかるく心の中で思ったが、これいじょう他愛のないことはあまり口にはせず。
「あぁーそうかー、異能風紀か…それってぇありえるかもな?」
「異能、たのしみね」
「んーまぁ、それは俺もだな。あぁーそだ、だからアッチで異能が発現しそうな感じがなんとなくしたら教えてくれよな、一応今回もダンジョンの引率リーダーやらせてもらってるからさ?」
「エッチ!!!」
「なんでだよっ!」
「心配せずともエッチなエッチアイはわたしが引率しますっ!」
「まじか、じゃぁたのんだ」
食い下がらずさらりと彼女にそう告げると、ピネスは凝らす目でじぶんの背を睨み追ってくるピンク髪の背後へと隙を見て素速く回った。登別もしれっと合わせてそれにつづき……
光角、浦木、登別、綺麗に一列になったまさに古いRPGのような引率のカタチとなってしまい……。
首をしゅんしゅんと振って振り返ろうとするも、既に探偵帽のピンク髪を目印先頭に今回の冒険にいどむパーティーらしき列は出来上がっており──
「くっくぬぬぅーーーー、ぬぬぅーーー! いきますよっ!!!」
「えっおっまじか? まさかこうして出発するとは」
何故かしたくなったちょっとした学生特有の悪ノリのつもりが……意表をつかれたピネスは右頬を掻きながらも、よく手を振りよく足を上げ引率進行しだしたピンク髪さんのお言葉に甘えてついていくことにした。
「頼りになるわ光角部長」
登別もまた歩きだしたピンクと黒の流れにつづいた。
「トウゼンですっ! 登別さん、エッチアイ! ついてきてくださいっダンジョンの風紀はわたしが隅から隅までぇぇ正しますっ!!!」
また新しい1日がはじまり、また新しい仲間と、ダンジョンがはじまろうとする。
《午前10時21分 不黒高等学校正門前》
思わぬ頼れるリーダーが誕生した。