異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
⬜︎タコイカ学習帳
《40F》
【おもしろくなりそう】
登別海:この黄金の盾といらない武器、本当にもらっていいのかしら?
ピネス:あぁー盾はだれもいまんとこ使わないし、いんじゃねぇかな? あ、ひょっとしてまたなんかしまうのか? それに
登別海:そうね、盾は単純にこの状態で──ありがとう、収納しておけばつかえそうな気がするわ。他のいらない武器は属性を吸い取って、またまとめておくわ
ピネス:あぁー…属性をまとめる…なんかまたおもしろくなりそうなこと、してる? 登別さん?
登別海:そうね、きっとおもしろくなると思うわ
【くいとめる】
トモル:わわっゆっゆびわです!?
ピネス:あぁー、なんかそれさっき拾ってさ。あ、欲しけりゃどうぞだけど? いるか?
熱の圧縮のGGC黄金指輪
【フィンガーバルカン】
炎+5
風+2
DP獲得量+1
トモル:なっ、なっ、ナッ!? エッチ!!!
ピネス:なっ、なにがぁ…!?
トモル:かるがるしく指輪を渡すなど言語道断ですよっっ! このエッチアイ! くぬぬぬぬぬぬぬ!
ピネス:あぁーっ…いやいやごめんってぇ……ならこれは校長にていしゅ
トモル:ダメですっっ!!!
ピネス:え、なんで?
トモル:とっ、と・に・か・くダメなのです!!! これは貴重品としてわたしが預かり食い止めますっっ
ピネス:おっおぅ…? ほらよ…どうぞ…(くいとめる?)
⬜︎
40Fゴールデンゴーレムコンディショナーを見事に倒したブク高の3人は手分けしてドロップアイテムを回収、持ち帰るものを厳選、そして水筒の冷たいお茶を飲みながらほっと一息。
場の雰囲気はすっかり緊張から緩和へと変わっていった、が。
金魚が泳ぎ回っている。
ぐるぐるぐるぐると大部屋を円を描きながら朱文金は泳ぐことに飽きない。
像の周りを泳ぎつづける白黒赤の元気を捕まえるため、階段の前にはトモルが既にランタンを持ち待ち構えている。
また地下階段を降りられてはかなわないので、いつでもランタンの中へと戻せるように探偵帽をしっかりと被り、出口を塞ぎぬかりはない。
「相変わらず元気だなこいつ」
「そうね。────いや、浦木くん、これ何かをさ」
そのとき──トツゼン、黒い波が吹き荒れる。
黒ずんだ像から放たれたエネルギーの波は大部屋へと、ぶわり、広がり。
凄まじき突風のようなナニかを浴びたピネスが目を開けた時には────
「消えた!?」
「おっおい、登別さん、コズミ…どこに?」
「んだってんだ! なんだ…」
大層な演出が吹き荒れたがピネスの見回した景色はさっきの大部屋と変わりはない。
だがそこにいない、登別海もコズミも……像すらもそこにはなかった。
しかし地はドスリと音を立ておおきく揺れる。
天井から降り立った巨大な石蛙など、ピネスは知りはしない。ウスノロそうな震わせる野太いカエル声など──
「帰るところだったんだがなァ! (カエルだけにっ)」
右の鞘から剣をじわり…滑らせ、
突如訪れた、帰れなくなったカオスな状況に迷いなく翠の刃を光らせた。
▽
▽
ダンジョンから帰るまであとささいな一工程のところで…謎の黒い波を浴び、ブク高パーティーの3人は分断されてしまった。
《40F中部屋》
探偵帽を探せどない。エッチなアイツも、クールな部員も見つからない。
「え、エッチアイ!? 登別さん!?」
「くぬぬっっモンスター!? ゴレ山がこんなに!?」
ただあるのは、そこに歩んできたのは、ゴーレムナイトたちの重い足音だけである。
「ぬぬぬぬぬ! 風紀委員部部長びびったりなんてしませんよっっ朱文金、チカラを貸すです! ダンジョンの風紀の乱れはわたしが正しますっっ!」
ランタンから飛び出した朱文金は応える。
震えなど握りしめればダイジョウブ。勇ましきトモルは意志ある異能にエンチャントされた燃える剣を手に取った。
▽
▽
《40Fモンスターハウス》
(こういうときのために)
焦らずじっくり敵を引きつけて、カードのエネルギーを使いトライアングルをふたつ、重ねて六芒星は描かれた。
月影の刃は風の属性を纏い……
足元水面に刻まれた六芒星のナカで左足を前にし右足をゆっくりと溜めるようにさげる、その投球動作の始動のようなポーズはさらに彼女のチカラを増幅させてゆく。
風は今か今かと渦巻き唸り、ミントグリーンの長髪は刹那に吹く荒風に乱れた。
「たぁあああああ!!!」
魔力で伸びた超ロングソードのギミック剣は、ゴブリンを、コボルトを、ゴーレムを、お玉杓子を、全て真横一文字ノ一閃にて──────
「ふぅ……腹から叫ぶのも案外たのしいわ」
⬜︎六芒星結界×超ロングソード×風のエンチャント
【チョキ】×3
チョキ脚のポーズで溜めたチャージ回転斬り
【風+23】のエンチャント
⬜︎
風は止み、風は部屋の細い通りへと吹き抜けてゆく。
イチゲキ一閃でモンスターハウスの中を薙ぎ払った登別海は呼吸と心音のコンディションを整えて開かれた道を急いだ。
▼
▽
のろい石像へと飛びかかるような兜割が炸裂。
炎の剣はその魔力と熱量でゴレ山を燃やしアタマから叩き割った。
ねじれたナイフはグレーの狗顔の側頭へと突き刺さる。跳ね飛んだピンク髪の影、背後からとつじょ狡猾に現れ忍び寄った忍者コボルトをその研がれた爪が部長に達する前に倒した。
サプライズに失敗した狗の忍者は溶け、刺さったナイフは霧状となり…ミントグリーン髪の女子の手元へとかえりゆく。
強制的に部屋道敵配置構造の生まれ変わった40Fをランダムジャンプし、はぐれていた登別海とトモルがたった今敵を殲滅し終えた中部屋で幸運にも早く合流を果たした。
「良かったわ光角部長」
「わわ、登別さんいたです!? 怪我はないですか!」
「それほどないわ、それより」
「わかってますまたどこかに徘徊しているエッチアイを見つけ出すのは風紀委員部の仕事なの!!! こっちです!!!」
朱文金をイニシエランタンへと手早く戻した。
ランタンを持ち駆けるピンク髪の後にミントグリーン髪はつづいて通路に足音を鳴らしていく。迷子の男子生徒を探すために。
▼
▽
白い腹を貫き【バーンファイア】は炸裂、赤く染まってゆくカエルの腹は────
膨らむ口から火を吐き出した。
石蛙は破裂しない、逆に確信し油断した黒髪の小人へとその威力と熱をお返しした。
腹がしぼみ、がま口から噴射する火に、炎に、ブレザー制服の防具ごと飲まれてゆく────
『熱っっついなこの野郎! そういうのおもしろいけどいらねぇよっカエルが贅沢にドラゴンやってんじゃねえええええ!』
翠の刃はその焼かれた炎の陽術のエネルギーを吸い寄せて、バチバチと唸り枝分かれする雷線を宙へと逃がし漏らす。
カウンターにはカウンターを、決定打の炎をブッ刺し、返すサプライズの炎に飲まれ、返す返す炎を刃に飲み込んだ雷剣は天へと昇る。
股を裂く雷轟くイチゲキは、〝ゴーレムオタマフロッグ+++〟を縦に切り裂いた。
宙返りし後ろへと着地。ピネスはアドリブで繰り出した技のいつも以上の威力と斬れ味に驚いたが今目の先にはそれよりも──
「(剣より速く裂けるみたいに?)おい、あんたは一体? ──あ、そだ! 登別さんとコズミっしらな」
黒い鎧のナイトは緋色の剣を拾い上げ、投げつけた。
突然投げつけられたくるくると回転する剣をなんとかキャッチ、ピネスは自分の剣の柄をつかんだ。
「おっ、さんきゅーぅぅう????」
透明から青白い月色に色付いてゆく。
三日月が天からゆっくりと落ちていき、ピタリと……その尖った輝きが律儀に礼をした男の顔へと向けられた。
黒い鎧兜姿の人型は月色の曲刀をピネスへと、切先が揺らぐことなく構えた。
「マッ!? …まじぃ…このかんじ……」
それは明らかに殺気。普段ここ最近彼がダンジョンでモンスターから向けられている殺気とはちがうが────
浦木幸はなんとなく知っている。
自分ではどうにもならない選択と、理不尽なパワーがこの世にはあることを。
ピネスは翠の剣を右鞘に休ませて、返却された緋色の剣を一度構えてみた。
お互いの切先を向け合うこの光景と感覚に、やはりと…確信をした。
黒波により生まれ変わったダンジョン40F。
緋色のショートソードを湿る手汗にあたためる浦木幸と、冷たい蒼月を敵へと向ける黒騎士は────やがて不気味な静寂に刃と刃を交えて危ないご挨拶をした。
不黒ダンジョンに飼い慣らされた二つの刃は赤く爆ぜ、青い三日月を描く。
若き剣士と若き剣士、互いのことなど何も知らないまま…剣と剣はただ命を奪う音を奏で、語り合う。