異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
慌ただしい足音は通路を駆け抜けた。
ぶち当たったそれは行き止まりに思われたが、イニシエランタンの灯はきらめく上向き矢印のマークを暖色の魔光に照らしだし発見した。
それはダンジョンの冒険者たちを閉じ込める一方通行ルールのマジナイが既に作動している証。中に誰かがいる可能性が高い。
矢印の描かれた硬い石壁へと臆せず────ピンク髪、ミントグリーン髪はつづき走り抜けた。
2人が部屋へと進入するやいなや高い金属音が剣と剣が合わさった一合、響き渡る。
遠いツギハギブレザーの背が近づいてくる。
近づいて、
近づいて、
やがて2人の目の前で普通の白いスニーカーは白煙を上げながら踏ん張り止まった。
焼けこげた2足の引き摺った跡が残るほど踏ん張りを効かせて、ちらした黒髪から舞った汗の玉が後ろにはじけて煌めいた。
きょ~~ん……捻じ曲がったような音が鳴る。
剣と剣が離れてもまだつづく奇妙なうねりの音を震わせる緋色の刃を、八の字に泳がせて地に払った。
そして2人の気配に気づいた彼はチラリと背後を見て、また正面の青い三日月の揺らぎをしっかりと見据えた。
浦木幸はもう振り返らない。黒騎士の一挙一動を逃さないように見据えたまま────
「ちょっとアレだ、これは…なんとなく、どうにもなんねぇ。はぁはぁ…手ぇ──貸してくれ」
しかし浦木幸はやってきた2人のことをすぐさま頼った。
GGCのときとはちがう。その彼の背姿と呼吸する様から見てわかる緊迫感。それ程までに異様なオーラをかもしだす黒騎士は脅威であり。
引率リーダーである彼に素直に頼られる、どれほど認められているかを……40Fここまで冒険を共にしてきた女子2人はもちろん────
「エッチアイ、これ以上あまり怪我してはダメなのですよ! 風紀委員部部長の光角灯! 校則違反のいかつい兜鎧の不良生徒はわたしにまかせるです!!!」
「私と光角部長がなんとかするわ、浦木くん。だからもうすこし、なんとかがんばって」
光角灯の黒目はメラメラと灯り、頷く。
左へと一歩二歩──
彼女が勇ましくその剣を鞘から抜いたと同時に、ランタンから休ませていた朱文金は元気に飛び跳ね示現する。
登別海の藤色の瞳はいつものクールな雰囲気より、あてられた周りの熱気によどんでいる。
だが心はひとり冷静に、
右へと一歩二歩──
ねじれたナイフを手にし、宙に浮かべたカードを次々とドローして重ねて準備していく。
「はぁはぁ…あぁっ、──たのんだ!」
2人がなんとかする、まかせる。
だから、自分はなんとかがんばるしかない。
ピネスはわずかに横顔の歯を見せて、冷たい三日月を侍らせる黒騎士の元へと走り出した。
緋と翠の光を力強くはしらせながら──────
そしてはじまったブク高3人+1匹vs黒騎士。
ゴングなどない、ただ剣と剣を強く合わせて浦木幸、黒騎士の再びのご挨拶は大部屋に響いた。
▼▼▼
▽▽▽
部長が前方にむけたランタンから放たれる魔力を圧縮した炎のバルカンは、黒騎士の泳がせた三日月の華麗な動きに不思議とスベテ弾かれていなされた。
そのわずかな隙に噛みついたピネス、三日月と合わさった翠の剣は鍔迫り合いを無視してバチバチと青く唸り届くが……その程度の不完全な雷撃は黒騎士の鎧兜を焦がすことも出来ず。
そして小技も無意味になり、黒騎士の剛力にやがてピネスの身体は弾き飛ばされた。
しかしピネスはこそこそと狙っていた、1番誰のものでもない時間のできる弾かれ際。手ぐせ悪く突き刺さった緋色の剣は黒騎士の地面足元でチカっと光り魔力を上げ爆ぜた。
赤き爆発の渦中から一足早くバックステップで煙を切って抜けてゆく、そんな黒騎士の反応の速さとポジショニングは、藤色瞳の虎視眈々と狙う3秒先の未来にほぼ重なった。
黒い背に向けて一直線に伸びた殺気は弾かれる──ロングソードは三日月の奇妙な剣術に絡め取られ空を舞い、黒騎士はそのまま後方へと慌てて退がろうとした登別海を切り裂いた。
しかし登別海の本当の狙いは通用しないロングソードの単純な刺突などではない。
その瞬間、青白いビームマントと黒いスカートは一気に華開いたように満開になり。
華奢な長身からおおきく迫る危機に威嚇するように膨らんだ布地のシルエットは剣に裂かれて────
はためく青と黒のカーテンの内側から手品のように現れた六つのパイナツプルは切り裂かれ、地に落ち──爆ぜた。
⬜︎登別海
登別海考案【パー】
❹パー属性のモノからパイナツプルを出現させることができる。パイナップルを模ったパイナツプルは衝撃を加えると爆発する性質を持つ、黄色い爆発と果汁を浴びたモノはパー属性が任意で付与される。
⬜︎
剣術に長けた黒騎士に対してトリッキーな行動を一瞬のうちに重ねて意表をつく。
派手な黄色いパー属性の爆発とともに、突っ込んできた赤と緑の刃は踊る。
それは二刀流。
決して奇をてらった馬鹿ではない、だが若気の至り、その勢いは若く荒々しくただ速い。
疾風迅雷、気迫と光るセンスと勢いに渦巻く金属音弾む13合の剣線は最後に緋色に爆発ししめられた。
「わわっ登別さん! 大丈夫なのです!?」
「ふぅ、ふぅ…………大丈夫──マントとスカートで的を隠してかんがえたとおりに致命傷は避けたわ。でもそれより浦木くんは完璧にやってくれたけど──アレは、もっと幸運の手札を手繰り寄せる必要があるみたい」
「ぬぬぅ……エッチアイと互角!?」
光角灯が心配して駆け寄った登別海はシールド値は減らされたが無事。元より正面から劣る剣で深くやり合う気はなかったので、想定の範囲内の軽傷で済んだ。
それよりも先程の激しい剣音が静まり──2人は彼と漆黒のシルエットを見つめる。
「んなろぅが…! なんとなくの付け焼き刃じゃ本物のナイト様には効かねえってか…」
怒涛のいきおいをもって切り刻んだのは浦木幸。
全てを受け止め吹き飛んだ黒騎士はステージ地に足を粘り持ち堪え健在。
青白い三日月はそれ以上欠けることなく、妖しく光り。
紺と赤のネクタイは、はらり……白い襟から垂れ下がって繋がっていた中途を斬られ地へと落ちていく。
血がジワリと白シャツにななめに滲んでゆく……ピネスは斬られた薄皮の痛みすら、シールド値に守られて感じ取れない。
だが、一瞬の最中に魅せられたそのなめらかな曲刀のうごき、冷たさは感じ取れる。
獲物の命を刈り取る美しいカタチをしていることを──
ブク高3人の連携をもってしても、今までの敵よりも明らかに練度の高い動きと剣をみせる黒騎士にはとどかない。
ダンジョン40Fなおも底知れない魔力とチカラを持つ黒騎士と対峙し、そこに逃げ場はない、そこに出口はない、どこへ帰れもしない。
不気味なダンジョンが気まぐれか用意したこの黒き試練を打ち倒さないことには────。