異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
ダンジョンの
黒雲に浮かぶ蒼月は沈みゆく────
ぼろぼろに破れた背が上から迫る。光角灯と登別海は2人で引っ張った黄金のマントにソレをうけとめた。
「エッチアイ大丈夫なのですっっ!?」
「浦木くん、大丈夫?」
「痛ててて……あぁー……ぶっつけのなんとかだが」
かけられた心配声。黄金マントにぼふりと浸かったピネスは痛む腰を上げて2人に無事を伝えた。
そしてそれよりも、最後に死力を尽くし放ったこの戦いの行く末を3人は見つめた。
よろよろと起き上がった黒騎士の胸にはそこに雷がはしったように赤く痛々しく、ピネスが放ったその威力のアトが刻み込まれている。
鎧を砕くほどのイチゲキがたしかにそこにある。割れた兜から除いた紅い片眼はピネスをじっと睨み──胸を抑えながら首をぶんぶんと左右に振り回した。
登別海はナイフをゆっくりと後ろ手に取ったが、そのいけない手は風紀委員部部長につかまれて止められてしまい。
なおもずっとピネスを睨んだ黒騎士はいつの間にか現れた地下階段を、ナニか嫌なモノを振り払い逃げるようにそそくさと背を見せ走り下っていった。
3人の重なる緊張の息遣いは、黒い鎧姿が完全に消えてもなお────やがて、やっと穏やかになり。
「何か落とした」
「これは……」
黒騎士の去ったあと、落とし物にきづいた登別海はダンジョンの床に煌めいた黒い一欠片を手に取った。
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旧王城、地下隠し通路鼠通りにある一室。
吊り下げられた魔道具の灯が照らす黒い食卓を囲むのは────
『浮かない顔だな。今日は王がおいでになるというのに』
『どうしたんだよ飯が不味くなるぜ』
『姉さんヘマをしたか』
『きょう──剣士をひとり斬った』
『はぁ? 当たり前だろ??』
『姉さん当たり前、それが任務だよ』
『そいつは深手を負いながらも私より強かった』
『姉さんより強いわけないよ』
『まぁ俺より弱いしなおまえ』
『情報通りにしっかりと寝込みを襲ったがそいつは死ななかった、わたっ』
『おいおい飯の時に死に損ないのこまかいのはやめろよ』
『姉さん腕が落ちたね、肉たべる?』
『いい、私はどうやらそいつに呪われたようだ』
『なに、知り合いの呪術師を呼ぼうか姉さん?』
『その呪い、解決方法しってるぜ』
『ソゲツ、なんだそれは?』
『まずは渡すもん渡せやこいつはお高い情報だぜ』
『よーしへへ、さすが優れた暗殺者だ────要するにタンゲツお前、自分より強いそいつをそれよりちょっと弱いお前が暗殺しちまったその傷の決着が気に食わねーんだろ? 取るにたらない貴族もどきならまだしもそんなお前が落ち込むほど強ぇヤツを寝込みの首をすっぱりやっちまったとなりゃぁ…俺でももったいなくて心の病気になるぜ?』
『嘘だよ姉さん、ソゲツはただの暗殺術半人前の戦闘バカだから任務も失敗のゴリ押しばっかり。あちこちで顔が割れててもう素顔で歩けないんだからね』
『るせぇなケイゲツ、王がそれでいいっつってんだからいいんだよ。顔は割れたんじゃなくて売ってんだよははは! とにかくおまえ下手なんだよ。隠れて首をちょんぎって殺すことしか考えてねぇから、いいかよくきけ真の殺しってのはな』
『はいはーい返り血ゼロ』
『やはり一瞬でクビを…』
『ちげぇ、真の殺しそれはそいつの持ってるポテンシャル実力をスベテ出させた上でこっちの全力でソレを刈り取ォォォォるっっ!!! ハッハーーーーッそうすりゃ後悔も呪いもねぇ、すぐ殺しちゃうなんておまえのその剣、きっとバカだぜ?』
『ほらソゲツはバっっカだぁぁ』
『スベテ出させて刈り取る……どうすればそうできる?』
『ハッハッハ、興味あり気だな? ちょーどいいついて来いタンゲツ! 俺が真の殺しを教えてやる! よーし任務はこいつだ、騎士くずれの山賊を刈り取るぞ!!』
『姉さんほどほどにね、ソゲツのバカがうつっちゃうよ』
『おいっ。もう王が来る、座れソゲツタンゲツ』
『るせぇショゲツ、全盛期の王ならここで萎えさせて止めねぇぞ?』
『────そうだな。行って来い』
『お前イチバン馬鹿だろ…。まいや、騎士くずれをぶっ殺しにいこーぜタンゲツ!』
『あぁ、わかったソゲツ。騎士くずれ山賊の寝ぐらはどこだ? 火はつけるか? 地図をかせ』
『馬鹿か、それじゃ一緒だろぅが。ひさびさ兄妹で楽しもうぜ! ノープランだ〝ジェットブラックアローズ〟いくぞぉぉ!!!』
武王の直属秘密暗殺部隊ジェットブラックアローズのソゲツとタンゲツは席を立ち意気揚々と山賊狩りへと出向いた。
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「登別さん、しゃがんだままどうしたですか?」
しゃがんだ姿勢のまま長らくぼーっとしていたミントグリーン髪の部員に近づいたトモルはうしろから声をかけた。
「いえ、なんでもないわ部長。ただ、珍しいこれが落ちていたみたい」
「わっなんですこれ? くろい化石? なにかのしっぽですか?」
「たぶん黒曜石の…矢じり……ね?」
手のひらにのせて見せた小物を、登別海はそれを訝しむ部長に説明した。
「ぬぬぬぅ? こくよーのやじり?」
「うん黒の宝石みたいなもの。それより──」
▼
▽
『気に食わんな童』
『ワシの雷を勝手につかってあの程度の剣士風情ごときをひとおもいに倒せぬとは情けない』
ピネスの顔の目のまえでバチバチと放電しながらガンつけ凄むおさかながいる。
『炎神が認めたのがこんな弱々しい娘だとは、ふんっ。どれ…いっそ食ってやろうか!!!』
パクパクと金魚の口を開いて圧のある低音で言葉を発している。雷魚はピンクの頭を急に勢いよくかすめて泳ぎ、探偵帽を嘲笑うように吹き飛ばしていった。
「なっ!? わっ!? 朱文金が急にしゃべって!?」
『陰陽師か、ふんっ、きさまは取るにたらない』
「あら、陰陽師、お札? 言われてみればそうね、気付かなかったわ」
登別海が宙に浮かべるカードの異能がその喋る雷魚の目には忌々しいお札に見えたようだ。
『どれもこれも妖力のひくそうな、匂わんなぁー。その点童、きさまはまだまだ青い、青くさいな。まぁいい先程の黒い剣士とのたたかいは久々に小指ほど楽しめたぞ。またそちらの供物をワシにたんとささげワシの名を喚べば遊んでやろう矮小なる人間どもめ、くっくっく────』
ひとり語り続けた雷魚はぐるぐると3人の周りを速く泳ぎ続けた末、天へと勢いよく飛び上がり体内のエネルギーの全てを激しく放電し、一瞬に弾けて消えた。
一同は唖然と青雷がさいごに激しい赤い雷光を発し消えるまでを、眺めた。
「なっなんだったんだ…」
「きっと八雷神の
「ぅーーーーーーー……なるほど、って俺が? いやそりゃ登別さんに前にきいた切り裂く感じのちょーどいい気合いは入れたが……まさかパクって神様ご本人が登場なんてな……。あと神様ってこわいんだな」
「まぁ黄泉にいる雷の神様だから、こわいとおもうわ。でも餌付けはきくみたいね」
「神様に餌付けって…だいたんだな」
「あの世、黄泉にすむ存在はこっちのモノがさぞ美味しいと感じると聞くわ。供えるのはそういうことね」
「といってもここはあの世、そのヨミってのとはんぶん似たもんじゃねぇのか…?」
「ただのダンジョンですよエッチアイ! 心の乱れは風紀の乱れなの!」
「ただのダンジョン…はは、それもそうだな、おっと!? お前変な神様じゃない? 今?」
ランタンから炎の金魚は飛び出した、3人の周りを元気に泳いでいる。
八雷神のひとつ、析雷神。
まさかの金魚へと憑依し現れた神様との邂逅。ピネスの放った【サクイカヅチのイチゲキ】へとその雷神は焚べられた供物をエネルギーとし呼び名に応えて力添えしたのだという。
そんなダンジョンの中で次々と起こった激しくもミステリアスなイベントも、気付けば地下階段とともに現れていた石像を浄化するだけであった。
もうここに用はない。最後に地下階段の方をちらりと見たトモルは朱文金をランタンの中へと戻し急いだ。
無事目的地へと集ったブク高の3人は浄化した像の前へと立ち、まばゆき光とともに不黒ダンジョン40Fからのやっとの帰還を果たしたのであった────────。