異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
▼不黒文のSP校長室▼にて
いつものようにいつものえらい人物へと提出された此度の冒険の記録の記されたタコイカ学習帳。
いつもより厚い……ブク高3人分の活躍っぷりは、ぺらぺらとその指先に捲られていく。
「ふむふむ40F、ゴールデンゴーレムコンディショナーの後にあらわれた黒騎士…」
「ところでトモリーはなぜ彼に付き添っている? キミは今日が初ダンジョン探索で独立型の特別な異能の方の負荷もあるだろう自室やどこかで休んでていてかまわんのだぞ?」
椅子にかける校長の目には唯一いつものようではない──ピンク髪の探偵帽が引率リーダーである浦木幸の隣に目を光らせ立っていた。
ダンジョン帰りの報告役として浦木幸だけを呼び出したはずが、そこには風紀委員部の1年部長、トモリーこと光角灯も共に。
「校長!わたしは全然ダイジョーブなのですっっ、エッチアイひとりではまたどこを徘徊ほっつきするかわからないのっ!」
言葉にし答えたとおりピンクの探偵帽はとても喋る姿うるさく元気な様子だ。ダンジョン帰りの疲れを感じさせない。
「え、えっちあい? ピネスくんそのぉ…どういったことだ?」
「あぁー…いや俺にも」
「と・に・か・く風紀委員部部長としてエッチアイに勝手に校舎内のふひつような徘徊はさせませんっ! まだまだほっとけないぬぬぬぬぬ…くぬっ……ひっ、ヒヨコなの!」
「ひっひよこ!? そっそうか……ヒヨコかヒヨコぉーおぉ言い得て妙なるほどしかしだな風紀委員部部長それはちょっとニワトリの過保護というヤツであーそーそー!!! ひよこな彼も同年代の女子が隣にいては緊張して話しづらぁいコケコッコーなこともあるだろう♡このあとこーちょーせんせーはそのエッチなうぶなひよこなピネスくんとすこし♡おはな」
「と・に・か・く! 不黒高校の風紀はわたしが守りますっ! 校長も安心してくださいなのっっ!!!」
さすがに校長にキメた指をさすのは失礼だと思ったのか、代わりにトモリーは右手のひらを突き出して校長へと何かを制するように向けている。
浦木幸を飲み込むあのスペシャルな校長すら飲み込む光角灯の言圧に……。
(校長が呆気にとられること…あるんだな……ひよこ…おれ…なぜ…)
たじたじな校長など滅多に拝めないかもしれない。ぼーっと突っ立つピネスが苦笑いを浮かべていると──
ドアが2回しずかにノックし開かれた。
「失礼するわ。校長、今日の色々あったダンジョンのことを……。そうね、浦木くんと部長は先に休んでて。校長、少し発現した異能のルールについて質問があるのだけど」
開いたドア前のミントグリーンの髪をした長身はかるく2人へとアイコンタクトをし頷いた。
彼は校長の顔をもう一度見た、その中途半端に彼へとのばした右手はなんなのだろう──彼は……やはりこちら生徒側の勢いとテンポのほうが校長のペースよりも優勢な気がした。
いつもならば褒美という名のエロくて理不尽な密室で起こる2人の強制イベントも。今回は登場人物が1、2、3、4人。校長室に現れた女子生徒2人によって彼の逃げようとしても不思議な魔力で逃れられないでいた
ピネスはトモルに手を引き連行され校長室をあとにした。
▼▼
▽▽
「ほぉ、王…そして4人の暗殺者との密談か…」
「やっぱり幻覚幻聴? その矢じりに触れたときにそんなシーンをぼんやり俯瞰することができたのだけど。突然のことだったから内容はさっきの断片的に覚えているかぎりだけど」
登別は嘘偽りなく全てを話した。
〝黒曜石の矢じり〟
黒騎士が去ったあとにあったそのアイテムを提出して、自分が見せられた不思議な現象について不黒文校長の見解を求めた。
校長はじっと見つめた漆黒の矢じりを机上に置いた。ソレには首飾り用の穴が空いている。
不黒文は微糖の缶コーヒーを少し飲み、同じく甘めの缶コーヒーをひとつ持たせて椅子に座らせた生徒へと話し始めた。
「ぷふぅー。──いや、あながちそうでもないぞ登別海。ダンジョンは王の墓だという古典的な設定のゲームや創作話も多い。モンスターバケモノの他にもそのような存在を仄めかすモノがあってもなんら不思議ではないぞ、むしろそっちが王道といえる(王だけに)」
「…ダンジョン、dungeon牢や地下牢って意味、それにdanger、危険、ラテン語のdominium、支配や権力たしかそこからも来てる? つまり?」
「最初に言った王の墓、王の権力の象徴のことだなフッフ。まぁそんな難しい言葉の連想ゲームの遠回りをしなくても今の人々の知るところである概念ダンジョンとは……モンスターが出てきて宝があるナカはひどく入り組んだ外敵を飽きさせない迷宮構造であり愉快な冒険者たちの挑む剣と魔法の未知のセカイ。──そういうものだ、かたくならず気楽に考えたまえ。ふふふふ、キミもピネスくんみたいにテレビゲームの方の成績はあまりか?(彼はどうやらスーパミ辺りで情報が止まっているからな、お母さんにゲームは1日5分のペースで守護られていたのだろう)」
「テレビゲーム、そうね。…うん、私もその遊びはあまり。でもひかる画面ごしではなく実際にこうしてじぶんがプレイヤーになってみると面白いものだったわ。校長や浦木くんの言っていた願い願われ…異能の方もたのしくなってきたところよ」
登別海は手に持っていた缶コーヒーをハンカチで覆い、校長室にひとつある年季の入った机の上へと──異能を用いて瞬間移動させた。
校長は黒い矢じりの近くに置かれた赤い缶コーヒーをうれしそうに手に取る。
(まさか出発前に聞かせてもらった登別の挙げていた異能候補のひとつか。ふむ、あのカードが異能のタネとして。ハンカチをバフして、ほぉ)
「ほぉ。まっさらのすっぴんさんから成長著しいものだ。やはり成績ALL4といったところか、探究心のつきない絶妙な着眼点だ。結果的にあのときキミに頼んでまかせて正解だったなフッフ。──あ、そうだちなみに登別海、キミはもしぃ……学校の帰り道、気のあいそうな悪魔にカフェに誘われたらどう断る?」
「悪魔……? …といえば契約や生贄をもちかけてくる邪な存在よね。もしどうしても断れないようなら契約に穴をつく追加ルールをもうけてやり過ごす術を考えるわ。例えば目を閉じている間はカラダを操られないルールだとか、こうして欺くように中身だけなんとか美味しくいただくとか? こんなところだけどそれがどうしたの校長? そんな質問、いきなりだったから」
登別海が校長室から拝借した大きめの透明コップは、今、コーヒー色で荒れている。校長は机上にあった未開封のやけに軽い赤い空き缶を手に取り、かるくそれをデコピンしかるい音に笑った。
「いや、ただユーモラスなキミと明るいトモリー、風紀委員部のコンビを見ているとどこかぜんぜんちがうが不思議と思い出してしまったのだよ。────青春の憧れと面影を」
「お互い不思議な青春のようね? ところで校長はどう断ったのかしら? そのさっきの悪魔の誘い?」
「フッフ、登別海キミはぁ…──上手いこと言うな? うむ、アレはたしかぁ──そうそう10年〝ほど〟前のきゃぴきゃぴふぅーちゃんMAXJKモテヤバ無双時代(髪も今とちがい茶髪だったな)、私が行きつけのパミリーマートでいつものように日曜の午後、楽しみにしていた週刊ジャイアントの立ち読みをキメていたところを横────」
悪魔と不黒文の出会い、それはまた語る別のお話。
午後6時47分、手に入れたキーアイテム黒曜石の矢じりから推測する……冒険した現在40Fまでのダンジョンの考察。
ユーモラスに披露する異能マジック。
何故かついつい語りだしてしまった校長の遠いおもいでばなし。
────色々語らい乾いたノドによく冷えた缶コーヒーの甘味がすり抜けていく。
1-B登別海とブク高の校長のたのしげな密談はつづく。