異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
鎌首をもたげた蛇はターゲットを狙いすました。
コカトリスは蛇との共有感覚で、狙いに狂いなく魔力を込めた己の羽を発射した。
大翼をひろげ一度にすべてを射る──全体攻撃。
風をするどく切るあぶない音がみどり草地のダンジョンを一斉に支配する。
ダンジョンみどりの壁にかくれ自生するきのこに夢中であったシスターは、きのこを詰め込む作業を一時中断──。
そして、年季の入ったお気に入りのしいたけベレー帽を頭から脱ぎソレに魔力を込めた。
いそぎ詰め込まれたが戸からはみ出すきのこアイテムを中へと飲み込んだ白い冷蔵庫は、緒方の盾になろうと急ぐも距離が少し遠く……。
コカトリスの乱射する白い羽があちこちに突き刺さってゆく、そんなものものしい光景よりも判断は早く──。
木浪は発動した引き寄せの異能で、とまどい迷う緒方を無理矢理自分の元へと引き寄せた。
浮いていた頭巾かぶりの駒が防御を固めていたオレンジの駒の元へとすごいチカラで吸い寄せられた。
さらに木浪はすでに地属性のレア杖で石壁を作り上げていた。ソレを頼れる盾とすることで白羽の矢の雨を賢く一緒にやりすごしていく。
「あっ、ありがと…!!?」
「どういたまー。って…」
礼を言うみどり頭巾の娘の背からひょっこり、収納役兼壁役の異能冷蔵庫はジト目で静止する木浪に15度ほど傾きおじぎした。羽飾りをつけた冷蔵庫まで引き寄せたつもりはなかった木浪は若干の苦笑いを浮かべた。
「はっ」
「えっ?」
お辞儀するコミカル紳士な冷蔵庫のことを気にしていると突然──
ぴしり……イヤな音とともにひび割れていく目の前の石色の壁に──
『はっ』『えっ?』とオレンジ髪のギャル、みどり頭巾のポニーテールが、それぞれ間の抜けた声のリアクションをしたときには既にもう、崩壊していく。
地属性魔法の杖で作った木浪の石壁の盾は、激しい白矢に穿たれつづけ、矢数の暴風暴力にやがて亀裂が広がり砕けた。
予期せぬ非常事態。
壁が壊れてはもはや次の魔法も間に合わない…木浪は咄嗟にその身を構えて防御しようとこころみる。ダンジョンではシールド値と良い防具があれば、攻撃を受けてもなんとか助かっているかもしれない。
しかし、目の前に殺到到達せんとしていた白羽はもう一度ソライロの音が流れ、白い流れは不思議と二又に分かれていった。
木浪の前方に握り構えた木の杖は不思議に振動している、それは差し迫る緊張からの己の震えではなく。
物体と空気を伝う音だった。
一度ハープと指先から音が流れ、もう一度繰り返すように木浪の杖からその演奏が振動し流れた。
まるで木浪の杖自体をそのまま魔法のスピーカーに変えてしまったかのように……。
そしてなおも流れているその誰もが知っているようなソライロの音をきかす演奏は、不思議にもコカトリスの矢羽の流れを2人と冷蔵庫を避けるように穏やかなものに変えてしまったのであった。
「あっあせったー!? マジやば…ありがとありがと! んーと、なんだっけ?」
「たしかつーつー…ツバサさん…! だと?」
「あーそーそーツバサだむっすー、ソレ。ばっさーナイスありがー! なんかそのハープの音で助けてくれたっ? そういうことだよね?」
「わたしもきこえたしそうだと…おもうっ! ──……むっすー?? え、それ、わた」
「ふふふ。そうだね、礼は──いるかも」
離れてハープを奏でている羽帽子のツバサは、木浪とむっすー(緒方結美)に少しミステリアスにほほえんだ。
シャドーゴブリン出席番号❷❺❻❼はスクラムを組み不黒文校長の前でくろい肉壁となり、白く彩られ役目を果たし倒れた。
「ん──?私のふーちゃんスペシャル改に別の魔力の色が満ちた? ──はっはなるほど……矢を避ける風属性のシールドっ…いや、矢を曲げる一曲! そういう使い方もできるようになったかァ、期待以上に愉快ロマンスなものだダンジョンの音楽家は」
異能の可能性はひろがる。
生徒の成長は己が栄養。
不黒文校長はにんまりと微笑い、銀の刺股に満ちストックされたツバサの魔力と音符をしめしめと確かめた。
「さすがにそれは、よっと!」
ピネスは切先を銃口に見立てて雷撃のマジックを前方へと放った。垂れ流すように拡散するコントロールの荒い青雷であるが、飛んできた羽矢を焼き落とすには正確なコントロールよりも瞬時の対応と荒くとも面で一気に敵の白い景色を塗り替えるように制するパワーが必要であった。
無事羽矢は焼け落ち迎撃に成功。
ちょうどツギハギブレザーの背にいた執事の
「あっありがとうございます…!」
「あぁー、どもっ、はは」
彼は振り返り、彼女に微笑った。
(やっ、やはりこの顔が……っ)
(戦闘中ならばダイジョーブかとおもっ…くっ…)
冷静平静。
執事としていかなるときも正しく正す。お嬢様がいなくてもタガヤは紫家の執事としてみっともない振る舞いは見せられない。
ただし……その黒髪黒目のどこか飄々とした男子生徒と見つめ合うのはすこし目をそむけてしまいたくなるほどの……彼女にとっては不意打ちにも等しく。
何故か少しおかしい女執事の様子に、ピネスはわからず口を真一文字に閉じながらかるく疑問の吐息をした。
「ん?」
「ナッなんでもにゃいですっ! ンンッ、──どう攻めましょうか?」
「あぁーー、そうだな。ん? ──さっきと同じでよさそうじゃね」
「同じとは?」
「前でわちゃわちゃ! ってこと!」
「──…はいっ! 承りましたっ!」
サインを出しているのは野球の監督ではない、ニヤリと生徒に指立てる校長だ。
ピネスの頭と学校の成績では複雑なのは混乱してしまうと思いはからい。ダンジョンでの戦闘における単純なサインは取り決められた。
サインは2つ──
①人差し指を立てたら前でわちゃわちゃ!
②人差し指と中指を同時に立てたら前でぜんりょく!
このふたつであった。
「それは…何かめいかくな違いがあることなのでしょうか?」
「あぁー、なんだろなぁ? とにかく前でなんとなくヤルしかないっ…んだろうなァァ!」
生徒にとって上司でトップにあたる校長にだされた指示は絶対。
ただひとりの校長先生のだす指示は、なんとなく道をゆく彼にとってあやふやだが絶対的な意味合いを持たせる。
ある意味この世でなによりも強烈な魔法である。
眼帯プラチナ髪のスペシャルさんのだしたサインをちらりと確認したピネスは、翠を腰の剣ホルダーに休ませて、緋色の剣を手に取った。
冷静さを取り戻した物分かりのいい執事のタガヤと共に、翼を広げ姿おおきく威嚇する巨大怪鳥コカトリスに向かい勇ましく駆け出していった。
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