異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
地に沈んだ巨体はダンジョンに浄化されてゆく。
「はっは、王冠《トサカ》をぶち壊す見事なクリティカルだタガヤくん。──ダンジョンクエスト達成だ」
「はぁ10Fって言ってたのにはりきりすぎじゃない?」
「うむ、みんながんばったからな!」
「みんなのことにしようとしてない?」
「ふっふ、まぁまぁ木浪キミもMVPとはいかずとも縁の下でなかなかがんばったところだキミもこの至上勝利の余韻をしばししみじみっっと!味わいたまえ」
「別にがんばってないけど、てかあのときその黒いので助けてくれたらよかったじゃん」
「ふっふ、それも今回の課外授業の一環、キミたちがあの全体攻撃をどのように対処するかを見たかったのさふっふふ(なぁに多少くらっても死にはしなかっただろう?レア防具だしぃふふふ)」
「はぁ…」
校長は何を言っても笑っている。木浪のちょっと不満げな軽口も不黒文校長というミステリアスで明朗な人物の深みと笑い声にのまれてゆく。
「おーい、」
「あっはい…!」
「最後のすごいな、あぁー、あれってクリティカル?」
ピネスはタキシードの背に駆け寄るやいなや、彼女にいつものゆるい感じでそうきいた。
「クリティカル? いえ…少し無我夢中で…感触もあまりおぼえてなく…そのようなものではないと…なんとか絞り出した
「道場? あぁー、そういや脚ばっかなのってその道場ってので習ったのか?(なんかやってる人の動きだったな、明らか、俺とちがって)」
「はい、といってもそれは私だけで。その方がいいと拳剣流ではコンセプト外として長らく使われていなかった脚技を特別に習わせてもらいました」
「へぇー、それは、すごいな?(ぅーー空手かなんかかな? アレ空手って足使ったっけ? アレはなんだ…そーそーサンチュがなんかやってたとかいうテコンドー? あぁーソレかな? いやでも長らく禁止ってなんだやっぱカラ)」
「いえ、私など師範にはまだまだきっと今も足元にも…それに」
「(相撲…サッカー…??)のわっ!?」
「えっ!? どうなさいました!?」
「なんか急にくつっっ靴紐がっ!?」
急に前へと激しくこけたピネスはみっともない格好で倒れながら後ろを見た。
「ふむ易々と破壊されてしまったか、ならば今度は二重に【ストーンウォール】をいっきに練り上げる必要があるということだなっふっふ木浪」
「1枚でげんかいなんだけど、校長がバケモノなだけじゃない? そんなことどうじにしたら魔力ってのぜったいもたないし」
「ハッハッハ、わたしがバケモノか!? ふむふむあながち──そうだなハッハッハ!!! いやいや木浪、限界値それがわかっているのならばキミもスペシャ──」
木浪が普通に校長と話しあっているだけであった。いくらオレンジ髪の彼女を見つめて疑えど、その横顔はピネスに目が合うこともない程、校長に先ほどの戦闘のアドバイスを熱心にもらって聞き入っている。
「あっアレェ……??」
勝利の余韻に浸る間にも、ダンジョンに還っていく魔物のケイオスエネルギーはその一部を祝福幸運をお裾分けするコスモスエネルギーへと変換される。
カタチを成してゆく金色銀色純白。
激闘を制した…体力魔力とカロリーの消費量に見合う。冒険者たちの期待に応えたように────宝箱武具の数々は絢爛とそのかがやきを放ちあらわれた。
▼
▽
「きのこさんが大量きのこさんの宝庫ユートピア!」
緒方の異能冷蔵庫が満腹になる程の量のきのこは榎田椎名の手により仕舞われた。
みどりのダンジョンは不黒ダンジョンよりも、自然みどりの景色豊か、きのこたちもこの新たなダンジョンの土壌が気に入っているのか…きのこにうるさい榎田椎名も大満足するほどのたくさんの数を採取することに成功していた。
既にどこからか出されたいつもの七輪は用意された。
やはり現地で焼いて食べるきのこは格別。
榎田椎名として譲れないルーティンはノリのいい校長に許可され、七輪の網下の炭が赤熱されその期待感を灯してゆく。
気分るんるん涎じゅるじゅると、再度冷蔵庫にしまったお宝の方を確認する。
開かれてゆく、新種色とりどり香り豊かな白き宝物庫は────
「────……ん?」
ニコニコした糸目を……思わず開眼した榎田椎名は、我にかえったような真顔で冷蔵庫の冷気をあびている。
そこには食いかけのきのこ。
と、──白いもふもふ。
レアなきのこの面影を白い嘴で啄みながら、〝ちっちっちっ〟と陽気にさえずっている。
目をこすってみる。
榎田椎名は新種のきのこの香りをいっぺんにかぎナニか一時的な幻覚症状にかかったのだと思い、目元をゆっくりお手手で往復しこする。
「────……んんん?」
しかし、こすれどこすれど……ついばんでいたきのこが失せただけであった。
白いもふもふのモヤはそこに消えない。
冷蔵庫からもれでる冷気が顔にあたり、彼女をよからぬ現実のレールへと引き戻してゆく。
「のこっ!??? きっ、きの、きのこ!?」
「どした、え、なんだこいつ?」
「なにこの白いもふもふ、はーぬけの弟?」
「俺の弟が冷蔵庫にいるかっ」
「これは…え?」
「緒方さんなんかしってるかんじか?」
「いや…わたし…草陰におちていたすこしおおきめの卵を卵入れのそこにコツンと置いて…それももう一度見た時には消えていてまぼろしかとおもって……たぶん…」
「へぇーじゃーそれじゃんむっすー」
「え、でも、こんなことって…反射的にみんなにだまって回収しちゃって…卵がかえるそんなことって?」
「あんじゃね? ダンジョンだし」
「あるよね。ダンジョンだし」
「おーーハッハッハ、これはこれはダンジョンだしな? あるだろーーーーーー!!! ハッハッハふっふーーーー!!!(モンスター育成要素かぁ!!!)」
「あるの…かな…(卵焼き…いや、たまごかけ…ごはん!)」
「こっこれは…カロっっっ(ちきん!!)」
次々と顔を出し、冷気をあびながら冷蔵庫の中にいる白いもふもふの鳥類を覗き見るブク高パーティーたち。
そんな中ひとり力なく押し出され。
その密集する輪から外れて両手をつき倒れている茶色のシスター服がいる。
お気に入りのしいたけ帽が無造作にみどりの地に落ちたまま……なんともいえない哀愁を放っている。
新たな食材の未来と可能性を妄想し、喜んでしまっていた緒方は榎田椎名の異変に気付き慌ててフォローにはいった。
「ダッ、大丈夫こっちもつめたから! きのこ──をっ!?」
ちっちっちっ、ぴよぴよ……。
野菜室を開けたらそこにはもう一体、冗談にも思える白いもふもふのデジャブ。
だがめげずに緒方が冷凍庫を開けるとよくひえたチェーン、ソード、盾……すっかり腹一杯の武器庫と化していた。
「ふむ、ドロップモンスターが2体か。これは夢が広がるな!!! いやいやほぉー、ぴーちくぱーちくよく食べてかわいらしいモノだなふっふ、まるでピネスくんのようだ」
「あのぉー、俺の認識とぶんるい、どうなってんのか」
「ほんとだ、こっちもはーぬけっぽい」
「もう、お好きにしてくれ」
ブク高メンツがまた戯れだした間にも、飛び蹴りをくらったかのように輪の外へと盛大にダメージをもらい倒れるきのこのシスター。
まだ冷蔵庫にむらがり戯れているイカれた連中と、心やさしき見かねた連中はわかれ、必死にコレクトして最後の楽しみにしていたきのこを失ってしまった彼女を励まそうとした。
「元気出して、一曲」
ハープは微笑む金髪ショートの冒険者に奏でられる。
流れてくるのは元気の出る楽しげなメロディーだ。誰もがしっている明るい歌、しかしのどかで明るいみどりのメロディーから想起するとどこかチャらけているようにも聴こえる。
「あぁー、ひよこというより」
「アヒルじゃん」
「鶏だと思います!(カロリー!)」
「うん……!」
「あ、なんかよくみたら尻尾くっついてるけど」
「馬か?」
「馬鹿なの?」
「鶏!」
「うん!」
「いんや、【コカトリス】!!! ふっふぅー!!!」
ダンジョン30F激闘の果てのご褒美、なによりも皆のテンションのあがったお宝は白いもふもふのいきもの。
ハープの奏でる明るいみどりのメロディーとともに笑い声は絶えない。
一方、3度地に伏したきのこさんの救済(採取)にいそしんでいた榎田椎名の此度の冒険のさいごは──【コカトリス】がすこし苦手になった。
コカトリス余談(終)
次回はカロリーをもちかえり学校から