※この作品はR-18です。

異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記   作:山下敬雄

62 / 117
56

西館校舎裏、本来なら風のよくとおる日陰の辺り。

ひっそりと佇む……椎茸笠の屋根をしたきのこを模したような小屋がある。

 

▽3-C榎田椎名のきのこハウス▽にて

 

意外と広いきのこ小屋の中には、やさしいきのこの香りが漂っている。

きのこ好きにはたまらない、コレクトした生きのこやきのこ関連グッズに囲まれた女子部屋。

そんな女子力ときのこ力の高い部屋で、ダンジョンでも渋く頼れる働きをする武力の高いシスター榎田椎名は、現在絶賛ベッドの上に寝込んでいる。

 

白い冷蔵庫は心配そうに彼女のことを覗き込んでいる。熱のこもった水滴だらけの青いアイス枕をそっと吸い寄せ回収し、新しいアイス枕を吐き出して彼女のおでこへと被せた。

 

冷蔵庫はバタンとその扉をしめた。

しめられた白い冷蔵庫の扉は色々とカラフルに貼り付けられている。

彼女が休んでいる間に発見した新種のきのこの情報や、

手に入れたいい感じに彼女に合いそうな武具のこと、

さらにいろんな色文字で彼女の似顔絵を囲うように書かれた寄せ書きの色紙。

 

 

「うぅ……ママぁ……きれいなきのこぉ…きゅーしゃい…」

 

 

⬜︎寄せ書き

もうきのこさんたちに光を当てません!!! 勝手に水もやりません!!! 早くよくなってくださいしーなせんぱい!!! サンチュ

その帽子どこで売ってんの? ん、どつき茸のシールあげる ちかる

バター茸のおにぎり! 置いときます!(冷蔵庫にも色々入れました好きに食べてください) 緒方結美

しいたけ茶の粉末です。至極美味 サーガ

鶏ちゃん1号2号がきのこ園へ来ないように見張っておきます、ご安心を 紫紫刀

おいしくそだててね。またちちりん焼きさそってね したん

勝手に小屋をたてるのは風紀違反ですよ? くぬぬ? 風紀委員部部長光角灯

雷がちかくに落ちるときのこの発生量が増えるとホームセンターで噂にきいたのだけど、ひとつ原木で試してみてもいいかしら? 登別海

はやく良くなってぇ、あぁー、ダンジョンいこーぜ? 浦木幸

榎田椎名げんきだしいな! キミの校長

らららっらーらーらら元気のこ。元気だして、これバジルきのこソース カズハ

⬜︎

 

 

 

 

 

▼▼▼

▽▽▽

 

 

 

 

 

⬜︎スマートタコイカ学習帳アプリ

ヤンチャゴブリンキング:

土色肌の巨大なゴブリン王。

威厳ある金の王冠を冠しており通常のヤンチャゴブリンよりはるかにデカく、王の威厳からか見た目の筋肉も発達しており引き締まっていてパワーもある。

さらに泥と藁を固めた鎧は鉄より堅牢であり中々簡単に鎧外からダメージを与えることは難しい。

ゴブリンソードの膂力と地属性魔法、重力魔法に注意。手下のヤンチャゴブリンの召喚にも注意。

⬜︎

 

「おそらくキング、王、頭が高い攻撃には浮遊する者を叩き落とす魔法が来るわ。【伯・地極斬(ブラジル)】が潰された理由ね」

 

「なるほど……あっ、では────」

 

「うん────そうね、それで行きましょう。おそらくカウンター魔法、相手の王も条件を満たすために手札にあらかじめ準備しておく必要があると思うわ。つまり剣技、泥の鎧、浮遊物へ対してのカウンター魔法、手下の召喚魔法、いくら王とはいえゼンブのことをいっぺんに己の魔力量ではこなせない。タガヤサンの溜めスピードなら一瞬ぐらいの隙は上手くやればつける可能性はあるわ」

 

「ハイ、承りました! カイさん!」

 

登別海と紫紫刀はお互いしっかりとグータッチした。カイの運良く異能カードを重ねたグー属性の魔力はタガヤへと今、受け渡された。

 

 

ピネスは相も変わらずいつもの如く戦っている。

 

巨体から振り下ろされる斬れ味の悪い〝天誅〟下の者を叩きのめすような剣を掻い潜り。

露出したモンスターの殺気をかわす本能とセンスを発揮しながら、二種のショートソードを隙あらば喰らわせ舞っている。

 

しかしその泥と藁草を固めた鎧の硬さはひび割れても王の魔力でまた編まれて健在。

みどりと土のステージから素材をいただき安価で修復しやすいのも魅力のアーマー魔法であった。

メインでお相手をしている前衛の前衛役のピネスが鎧外からの小クリティカルや自分だけの魔力で繰り出した緋色と翠の技は、それほどヤンチャゴブリンキングの身には響かず。

 

「剣と剣、あぁー、鳥の嘴よりはやりやすいが、どうもパチっとヤレそうな感じがしない…ナッ…!」

 

先読みする殺気を先読む──。

どうにも当たる振り下ろされた攻撃は、緋色に魔力爆発させ弾いた。

 

ぶつかる巨刃とショートソード、互いの魔力と魔力は混ざり合いさっきよりもデカい【バーンファイア】はクリティカルで発動した。

 

緋色の爆発は小人の膂力を補うが、巨体から受けたパワーある太刀はしっかりと受け取ってしまう。だが、キングの振り下ろされた剣と腕は上へと弾かれ、同時にピネスは後方へとおおきく弾き飛ばされた。

 

そのツギハギブレザーのがんばる背を見届けていれば、待っていれば、勝手に訪れる機がある。

 

しっかりと足を地に止めて溜めた、女執事は踏み出し仕掛けた。

 

同じジンガの構え同じ地から魔力を練り上げる流れがある。爆発する緋色の景色に見えずとも泥草の鎧を制御する王はソイツが何をしでかすかを悟っていた。

ゴブリンアイの注意は空へ、冠した金色の王冠は浮遊物を撃ち落とす不可視の魔力を前方へと放出散布した。

 

ナニかが落ちた──手応えはある。頭(ず)に乗り高く舞った無礼者が、地を這いつくばりまた土下座している感触が心地よい振動が確かにあった。

 

王はニヤリと嗤う。

 

頭をつかい頭のモノを使った王に隙はない。しかし王は気付かない闘いとはセオリー通りに固めて進めソレが思惑通りにハマったとて必ず勝てるとも終わるとも限らない。人間3人あつまれば何をしでかすかは分からない…そのヤンチャなイチゲキを──

 

 

「【キャニオン】!!!」

 

緋色の爆炎の残り香を割いて姿勢低く現れ、巨体の足元手前で両手をついた。

逆さにぐーっと…束ねそろえたグーを意味する両脚は、バネのように跳ね。

レイピアのように鋭く泥鎧を蹴破り、王の無防備な臍を突き刺した。

 

上から来ると思われたのはブラフ。

──ではなく、本当にそれは飛んでいた。

ダメージを受け情けなく派手に土下座までしていたのは別の駒、登別海であった。

 

登別が大袈裟に飛んだタイミングより半歩遅れて間に合わせたのは紫紫刀、グー属性をたんまり重ねてエンチャントされた地技、本命の【キャニオン】を王の懐へと、綺麗に揃えたグーのカタチの足裏で威力増し増しで叩き込んだ。

 

実体、実のあるフェイントであっさり潜り込んだタガヤはドレスシューズの足裏から巨体を真上へと力強く打ち上げた。

 

そして立ち直った影がひとつ飛び立つ。

ピネスは戦況と意図を理解し、迷わず王へと追撃を仕掛けた。

 

臍を丸出し、泥草の鎧が大破損。強烈なグー足をその身に受けたヤンチャゴブリンキングは打ち上げられてもなお──

キングは丁度よく使用可能になった【ヤンチャゴブリン召喚】を実行、上へと運ばれながらも茶色のヤンチャな手下をばら撒き、なおも噛み付かんとする不届な追手の視界を占有するデコイにしようとした。

確実に相手の嫌がることをしている。

しかし、嫌がらせは土壇場の直前ではなく事前にもされていた。

登別のアシスト。王が手下を召喚しようとしたとき、じわじわ効いた最初の戦闘時召喚時に既に掲げていた【イエローカード】の効果で召喚は途中で不発、想定の数をわらわらと呼び寄せることができず。

 

2、3まばらに散り、王へ刃を向ける不届者へと向かった茶色の手下は──

意気込みはよしされど、それ以上に黒髪はニヤリ余裕だ。

ショートソードを落ちてきた宙にて突き刺しては緋色に爆発し、雑魚のヤンチャゴブリンはさらに彼が真上へと向かう推進剤代わりにされた。

 

視界良し、障害物はなし、道はもう真っ直ぐ真上でしかない。弱点と思われるキラリと光る頭へとピネスは一気に加速して仕掛けた。

 

「これでラーゴムなんだろおおお!!!」

 

いらなくなったロケットブースターを途中パージするよう緋色の愛剣は迷わず捨てられ、身軽になったピネスは次のアクションへ──右の翠を剣鞘ホルダーから素速く抜き出した。

差し迫る青い期待感迸るあぶない刃に──

焦る王はニヤリ豹変、突如硬い王冠を右手に取りメリケンサックで殴りつけるようガードした。

 

「そっちかよッッヤンチャキングっ!!!」

 

読みが外れたのはお互い様、王冠を外し少し肥えた王はそれでもその膂力は健在──王のクビを決してタダでは譲らない。

 

やけに硬い王冠の右ストレートと、青雷のマジックを金属音と共に奏でる翠のショートソードは鍔迫り合う。

異能と異能、能力と能力、チカラとチカラ。

結局チカラ勝負になる局面は闘いのどこかに必ずある。

 

バチバチとお互いに激しくやり合った臆さない攻と攻は────

 

遅れて彼の尻についてきた朱文金が青い王冠の輪をくぐった。

燃え盛るお魚は輪くぐりの一芸を披露しクラスチェンジ。巨大化した青い朱文金は言を発しながら──雷を吐いた。

 

『貴様が餓鬼共の王だと? くっくっく──ナケ!!!』

 

雷属性の激しいブレスは青から赤赤と染まる。

巨大ゴブリンの全身へと伝った神の児戯にも等しい赤雷はターゲットを痺れさせあっという間に撃ち落とした。

 

 

「浦木せんぱいッ、いきますよーっえいっ!」

 

 

鍔迫り合いの最中に降臨した喋るお魚さんに呆気に取られていたピネスは、下からよく耳に届いた元気な大声に気付いた。

気付いたときにはくるくると結構な勢いで回転し投げられていた剣を、なんとかその手におさめてキャッチ。

 

ピネスは疲れた翠のゴブリンソードにかわり黒猫の剣を装備した。

もふっとした猫尻尾の柄をぐっと握り、光る天使の輪のようなモノが剣鍔から離れて付与されているが気にせず止まらず……。

黒い刃で一足先に痺れ落ちたターゲットへと向かい、部屋の天井を強く蹴り上げた。

 

同じくエンチャントされた光属性の天使の輪を右足へとひとつ…スリムなお足にハメたタガヤは、既に準備完了。ぶくぶくと肥えて落ちてきた目標に合わせて今、飛び跳ねた。

 

どすり……土色の巨体が地を打つ瞬間──舞い下りる光の刃、舞い下りる光の靴。

 

「っし!っいけぇ!!!」「【シャイニーの翼ァ】!!!」

 

同時炸裂。

剥き出しのだらしないヤンチャ腹へと突き刺さった黒い剣と靴。

エンチャントされた光の輪は高速回転しながらやがてその魔法威力を起動起爆する。

 

それはまさに神々しく降臨する光の翼

 

魔力爆発する虹色の両翼は激しくフラッシュしながら……。

みどりのダンジョン50階階層ボス──冠を失したヤンチャゴブリンキングを鮮やかに穿った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。