異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
「なんたらの翼ってナニ? なんとなくいけそうな気がしてヤっちゃったけど、あのぉー…きいてないんだが、俺?」
「【シャイニーの翼】です! 昨日新しく実装されたシャイニーの専用レアカードの新技ですっ!」
「新しく実装……あぁー…俺のドッペルさんの方の技な、それはなんか…なんかだなぁ」
「ドッペルではありませんよ溜息のバトラー、〝シャイニー〟です! ふふっ。というのも遠くから見ると翼のようになって────」
「────そうなのか? あぁー、たしかにぶわーってなったな。翼かぁー、それは結構しゃれてるな? でもなんか…なんかだがなぁ」
「ふふ、ですね!」
ヤンチャゴブリンキングはブク高パーティーの5人の連携、さいごはタガヤとピネス前衛役2人の光属性の同時攻撃により討伐された。
黒タキシードの執事とツギハギブレザーの背が並び、ダンジョンに倒れている土色の巨体が浄化されてゆく光景を眺めながら雑談をしている。
新戦力の執事のタガヤとひよこのエッチアイの前衛コンビが機能躍動。そんな姿を遠くから疑念を灯らせた黒目は覗いている。
顎に手をあて光角灯は彼のことを訝しむ。
「くぬぬぅ? あのふたり、なんか…ひつようよりちかい気がするのです?」
「そう? 考えすぎじゃないかしら、──あ、部長、分かったわ。──やきもち」
「なっ!? やっ!? そんなわけがないのですっ!!!」
「そう? 冗談のつもりだったのだけど?」
「ジョーダンっ!?? のっ登別さんおふざけも大概なのですよ!!! マッタク!ひよこにヤキモチは焼かないのです!!! やくのは風紀と世話だけなのっっ!(──ちがっ!風紀はやかないのでしたっ!)」
「そうね。」
澄ました声と顔で長身の部員は冗談を言う。
ないことを言われた身はたまったものではなく必死に声を張り上げた。
逆立つピンクのアンテナ毛にぴょんと跳ね落ちた、手元の探偵帽を登別海は部長の頭へと返した。
「せんぱーーいっ! さっきのどうでしたかー!」
「あぁー、いんじゃね? シャイニーの翼」
「素晴らしい再現度ですっ!!! シャイニーの翼!」
後ろからすっ飛んで駆けてきた明るい声、後輩のサンチュは先程の異能を用いた2人へと施した光属性エンチャント魔法のデキのほうを尋ねた。
先輩2人からの評価は上々、うれしくてニコニコと笑みを深めた黒髪少女。
「あはは新技ぁー、シャイニーの翼!!! まさにソレでしたねーっ!」
「はいっ!」
「あぁっ! って知ってるのか?」
ピネスは手に絡みつく尻尾柄を剥がし、黒猫の剣を持ち主のサンチュに返しながら疑問に思った。
「もちろんですよっ、バトラーバトラーのシャイニー先輩ですよねっ! ほらっこの光る〝どーなつ〟もタガヤ先輩に昨日誘われたスマホゲームのシャイニー先輩から考えたんですよっ! ねぇタガヤ先輩!」
「ハイっ! シャイニーと同じ光属性の異能持ちとうかがっていたので何か参考になるのではとスマホのバトラーバトラーにサンチュさんを招待した次第です!」
「お、俺のドッペルから……(たしかにあいつ謎の光るどーなつを足につけて戦ってたな…)あのぉーなんだ…俺もちょっとは、あぁー、引率リーダーとしてぇ、ピカる魔力的なのとか剣術的なのとかぁ教えてた記憶がある気がするんだが? ──サンチュ後輩さんはそのスマホに映ってる薄いどーなつ野郎からひらめいたと?」
「え!? いやその…」
「一瞬でひらめいたと?」
男はジト目で後輩に対して問い詰める。
一歩一歩詰め寄ると一歩一歩サンチュはたじろぎ困惑しながらさがった。
サンチュの元気に見せつけたスマホ画面のどーなつ野郎からインスピレーションを得たという、サンチュの新たな技。
一応の先輩で師匠でもあるピネスはソコにつけ入り絶賛珍しく後輩いびりをしている。彼の後輩いびりの成分はサンチュからしか補えないのだ。
「ええ!? あはははぁ…あ、でもホンモノの先輩から教わった目潰しっ! 使ってますよ!」
ぐいと詰め寄って来た男の静かな圧に困ったサンチュは以前の冒険の際にピネスから習った目潰しを披露する。
右手で黒猫の剣をナナメに振り、下手になった左手のひらで異能の光を発し敵の顔面をスムーズな動きで照射する手順の技だ。
正面に立っていたピネスはあわてて目潰しの射線から離れて避けた。自身が教えた小細工であるので知っていたから反応できたが、知らなければ中々有効であるとも同時におもい……。
「あっ!ソレもシャイニーがダウン時や蹴りモーションのアフターによくやりますねっ! ──やはりシャイニーと…? あと…ふふっ面白いのが、挑発モーションで食べようとしたどーなつの穴から照射したりも────」
もはや何を喋ってもシャイニーが出てくる。
自分が編み出した目潰しの小細工ですらシャイニー。饒舌に語るタガヤの声に、頭の中をシャイニーとどーなつで埋め尽くされたピネスは──頭をゆっくりとかきむしるモーションを見せる。
「俺はひょっとしてシャイニーから逃げられない…のか?」
「「ハイ」」
女子2人は彼の顔に振り向き、即答した。
もはやスマホゲームバトラーバトラーに染まっている女子2人には手をつけられない。
「ハイってなぁ……。あ、それよりその光るどーなつ、一回もっかいだしてくれサンチュ後輩? ────────おっけ、んじゃ────こうやって投げて、魔力でぐいっと握って起爆させたら、あぁー、うん。なんかバフじゃなくても強そうじゃね?」
先輩が後輩にもういちど異能を使うようおねだりして、ひとつ練り上げられた焼きたてほやほやの光るどーなつは────片手で誰もいないみどり遠方へと回転をつけ投げられた。
投げた手をぐっと握り拳にすることにより魔力をコントロールしどーなつは狙ったタイミングで爆光を発した。
ピネスは本人のセンスで思いついた技のひとつを披露。先輩の後輩へささぐ愛のこもった丁寧なチュートリアルに、後輩のサンチュは飛び跳ね拍手をするほどに喜んでいる。
「あーーっさすがホンモノの先輩!!! そうですね! わたしも一回さっそくやってみます!!!(難しそうなんでアドバイスくださいっ!!!)」
「あっ! それは【シャイニーフープ】というCタイプ操作のシャイニーの飛び道具技ですね! ──やはりあなたは…?」
「ってやってんのかよ!! ってやはりもどうも…あぁー…どーなつ野郎めぇ……あとホンモノの先輩っての地味にやめてくれ…(俺もドッペル呼びはやめよう)」
やはりシャイニーからは逃れられない。
ピネスの即興の創意工夫も既にシャイニーの繰り出す技の一部である。がらにもなく少しだけあったお遊びの対抗意識は自然とあがる口角とともに失せてしまい、男は笑うしかなかった。
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▽▽▽
最新…最深の戦果をあげ、無事愛しのブク高の敷地へと帰還した一行は────
本日のMVP。
金色の王冠を被ったサンチュは東門をくぐり、やがて正門前の広場へとヤンチャにわらいながら皆とともに凱旋する。
本日の冒険譚を記録した赤いタコイカ学習帳はピネスの元から飛び立ち、本校舎5階の窓に佇んでいた……それでも遠目に存在感のある眼帯さんは、その黒目をウインクした。
引率リーダーであるピネスはさっそく、そのスペシャルな魔力と眼力の持ち主の元へとこれから向かわなければならない。
しかし急がず、焦らず、ゆっくりと。
その高みに輝くプラチナ髪の背を見つめながら、美人のウインクを受け立ち止まった彼の足はまた歩き出した。
「────ん?」
「今度はシャイニーラリアットも! ──どうかしましたか?」
「いや、今なんかきこえなかったか? 笛みたいな? からだに響く…感じの?」
テンションのちょっぴりおかしい気のするタガヤの語りを共に歩きながら聞いていると、突然──
ピネスはまた急に立ち止まり、先行していた女子集団の3人は分からないことを言う彼に振り返った。
「なんでしょうか…? 耳を澄ましても……わかりませんが…」
「私は何も聞こえなかったわ浦木くん、笛? へんね?」
「なにもきこえないですよせんぱーい? あっ!疲れてるんじゃないですかっ! ダンジョン帰りでっ!」
「そうか? ぅーー……──そうだなっ」
彼女らの反応を受けてもう一度考えて溜めて……ピネスは結局サンチュの言うように納得し、己の肌に疑念を抱いたそのことを忘れたように前へと歩き始めた。
「もぅーなんですかせんぱいそれあはは!」
「あひょっとしたら犬笛かも、人には聞こえない高周波の音で犬を呼ぶ笛」
「あぁーさすがのぼりべ、ってちがうだろソレ。ちがう…よな?」
「たしかシャイニーも耳が…?──」
「嘘だろ…(きょうなんどめのシャイニー)」
「あはははは! そうだっ! せんぱいって犬派猫派どっちですか!?」
「いきなりなんだそれ? あぁー、どうしようかな……ノーコメントで(これ以上シャイニーがどっちにでるかわからないからな。あぁーどっちかというと…俺はご近所さんとのご当地猫図鑑的にぃ、猫ということになるか? ……んー、シャイニーは猫っぽいよなぁ…? ぅーー、あ、いっそ逆に犬にするか?)」
「えぇーー!? なんでですかっ!?(つまらなかった!?)」
「くぬぬぅ…」
探偵帽を外し、ピンと逆立つピンクのアンテナを摘んで風にしならせた。
手持つ此度の冒険の役目を終えたイニシエランタンの灯は、眠ったように凪いでいる。
首をかしげた風紀委員部部長は前を見据えてみえた──女子たちに囲まれたツギハギブレザーの彼の背へと、いそぎ駆けた。
犬笛のミステリーなど忘れ、わちゃわちゃと久々の今朝ぶりのブク高へと凱旋進行。
楽勝とは言えない激戦のダンジョン帰りは女子たちと男子ひとりの笑い声が絶えず、
明るい声につられコッコッコッと鳴き近づいてきたのは猫でも犬でもなく餌をねだるコカトリス。
愛くるしい家畜にリュックに持ち帰った識別不明の草やどんぐりをやり。
そのままテンション高めのノリで、進んでゆく。
絶えない雑談話に、いつの間にかスニーカーとローファーが踏み入れた本校舎の玄関で、後輩がもう一度深呼吸しおどけてみたりする。
────校長室へと、全員で向かった。