異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
『営業許可もろてんのは地下やで』階段を最後まで下り、揺れる2つのおさげを見ながら、やがて秘密の黒扉は開かれ目的のくろまねき商店へと────
見える景色はクラスルーム、授業を受けるよう机の上には商品がひとつずつ置かれていた。
黒板には〝新装くろまねき商店DPオープン記念〟とカラフルチョークでお店のポップがわりにかかれている。
教壇の位置にはかわりに黒い招き猫がひとつ置かれており、ちんまい店主の説明では商品を黒猫のお腹からせり出した台座におき、例の指輪で招く手をタッチするだけで決済できるというハイテクなものであった。
「ブク高の地下にこんな店あったんだな」
見たことあるお菓子の商品をべたべたと手に取りながら、ピネスは今までくろまねき商店の存在を知らなかったことをのほほんと吐いた。
そんな呑気な男に店主のちひろはかるい溜息で答えた。
「じぶんなんもしらんのやな…? まぁそれもウチらが独自にやってたせいもあるわな。こっちも今までやってきたやり方があるからあの会長のやり方に折れるわけにはいかんかってん。まぁ今までもその鞘とか裏から請け負って協力はしてたんやけどな。でもさすがにもう根負けや、薄々気付いてたわウチの大好きな現金は通貨としての役割果たさん時代は夢のポイントDPや、会長の提案飲んだんや。これ以上商機のがすのは商い人としてできんっちゅぅこっちゃ」
「──怪鳥?(コカトリスのことかな?)」
「あほっ、ニワトリ、怪鳥やないッ会長言うんはプラチナ髪のトップさんのことや。(イントネーションちゃうわ)」
「おっおぅ?(────同じじゃね?)」
関西弁との小気味良い雑談もほどほどに、
店主と話している内に既に散っていった女子たちにおくれて、さっそくピネスは教室内を徘徊しだした。
ドアからドアへ、廊下を渡り次の部屋へとたどり着く。そしてピネスは直感で気付いた、この道程が何かにすごく似ていることに。
「って…これなんでぜんぶダンジョンみたいに?」
「あーそれなぁ、せっかくやから拡張工事と模様替えしてみたんや。あんたらもこっちの方が慣れてるやろ? 面白いおもてな、おもろいおもたことは色々試すんが商売の基本や」
確かに店内がダンジョンのような構造になっているのは面白く、ダンジョンに通い詰めるピネスにとって奇抜というよりはスムーズに受け入れられるものであった。
部屋から部屋へ、またも机に置かれたアイテムをじっくりピネスが物色していると。
ついてきた店主ちひろはピネスの頭頂からつま先までを、じっと眺めだした。
「じぶんそのスニーカーはいいんか?」
「すにーかぁー? あぁー、いんじゃね?」
いきなり靴の話になるとは思わず、普通のグレースニーカーを履いているピネスは両の靴先をトントンと床にリズム立てて、特に問題はないとアピールした。
「よくないやろ! だっさい!」
「え? ださい!?」
「こっちきぃ!」
ピネスは自分の足元ファッションを即辛口に評したちひろに強く手を引かれ、ドアを開きまた別の部屋へと誘われ向かっていった。
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『足元ださいと全部ださいってことわざ知らんのかじぶん? ウチはさいきんその道のプロのviewtuberとコラボ監修したり靴も力入れてておしゃれで強くていいのんあんでぇー』
そう言われて誘われた空間はこれまでのベーシックな教室のイメージと打って変わって靴屋の雰囲気。
そしてピネスの背丈より高い靴棚の迷路でばったりと────タキシード服に身を包む紫紫刀に偶然出くわした。
「あっ」
「おっ、タガヤさんここにいたのか?」
「えぇ靴屋の匂いが好きで、ついつい長居を」
「あぁー、たしかにな靴屋っていわれてみれば独特だよな」
靴屋のニオイ、革やゴムや接着剤のニオイがこの部屋にはほどよく充満している。
鼻をくすぐり、購買意欲もくすぐる靴好きには不可欠な要素も当然完備。くろまねき商店のお客様目線での外せない戦略のひとつであった。
「ん、その靴は?」
「あ、これブーツタイプで変わっていて。くるぶし辺りの突起が何を想定して作られたのか興味深く…」
「あぁー、なんだろな。とりあえず押してみたらいんじゃね?」
「そうですね。──では」
タガヤが少し不自然な突起を指で押してみると。──ブーツのつま先から銀色が飛んでいった。
いきなり飛び出た銀色はピネスの顔横を掠めて、靴棚に刺さった。
びーんとしなりながら振動音を鳴らしている銀色を、汗を一筋たらしピネスは振り返り見る。もう一度ブーツを抱え持つタガヤと顔を見合わせてお互い唖然とするしかなかった。
「…………たしかサバット…つま先に仕込みナイフをする靴を想定した格闘技があった…ハズです……」
「…物騒じゃねそれ……」
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『これとか今履いているスニーカータイプにちかく良さそうです! 履いてみてください』
銀色の仕込みナイフの事件は、タガヤが驚かせたお詫びにピネスに新しいスニーカーをプレゼントするということで落着した。
自分より数段靴にくわしいタガヤにプレゼントされるのは断る理由もなく、ピネスはすんなり同意し事のなるがままに任せていた。
彼が新しいスニーカーを履いている間にタガヤが新たな靴を求めて靴棚の迷宮に消えていったとき、
「じぶんもらっておわりか?」
「あぁー?」
「心配せんとも靴のサイズはしっかり確認済みやで」
「あぁー、26.5だな」
ピネスは履いていたスニーカーの靴底を覗き、淡々とサイズを答えた。
答えるやいなや、椅子に腰掛けていたピネスの腹筋に女子店主のパンチが良い踏み込みでめり込んだ。
「どあほ! ぽんこつぅー! 誰がじぶんのくっさい靴のサイズや! こういうときは〝持ちつ持たれつ〟プレゼントされたらサプライズでお返しするもんやろ?(靴はもうそれにし前よりイケてんで)」
「いてっ? んーー? ──あぁっなるほどっ」
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「そうそうそこの台座に置いて、指輪を黒猫の肉球にかざすんや、それで購入完了や。(ちなみに商品ひとつひとつに識別番号あるからこっちのアプリでぜんぶ管理してて盗ったらバレるからな! 腹筋100発、ちひろちゃんが地獄の果てまで追うでぇ?)」
「それは盗るやついねぇな…」
無事2人分、合わせて4足のスニーカーを各々で購入。
最後に箱入れの同種サイズ違いのソレを、プレゼントし合った。
商品名は〝スーパースニーカー〟あらゆる運動とステップに汎用性をほこり、使うほどに持ち主に合わせて馴染んでくるスーパーなスニーカーであった。
ピネスはそんなスーパースニーカーを店主が行動を先読みし持ってきたシリーズのカタログから彼女に合う色を選ぶだけであったので、さほど難しく考える必要はなく。両足紫色のスーパースニーカーをプレゼントすることになった。
「さすがに履けないですね…」
「ん? かえてもらうか?」
「いえ、そうではなく…ごにょごにょ────」
ピネスの右耳をかり、タガヤはひそひそとこのスニーカーを履けない理由を打ち明けた。
というのも一大企業ぱーぷるまーくぐるーぷの紫家に仕えるタガヤはそのトレードマークである紫色を足元にするのを昔から嫌っていたからである。故に彼女のコレクトする靴下や靴や絨毯に紫色のモノはまったくなく……。
「あぁー、なるほど…たしかに。ならやっぱりかえて」
「いえ、ありがとうございます! 使いますインテリアとして!」
「おっおぅ? そうか、そりゃよかった?(靴のインテリア、履く以外のその発想はなかった)」
彼女がそう言うと少しショックを受けていたピネスの顔はにこやかに笑っていた。
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購入した手荷物のスニーカーは気遣う店主にいったん預かってもらい、訪れたのは韓国製品コーナー。
店主に誘われたサンチュに誘われてピネスがやってきた、此処だが……。
2人が足を止め目にした──驚愕の光景というのはこのこと。
戸棚には数多の韓国海苔のパック、
よく食べる乾麺の数々、欠かせない調味料コチュジャンやごま油、伝統的な薬菓、viewtubeで流行りのフレーバーアーモンドなどなど。
「あのぉー、サンチュ後輩さん……ラジオ体操ってぇ、たしかスタンプ全部でこれのイチマイ」
「でへへ…せんぱいこれ、反則ぅ……ですね…」
サンチュ後輩とともにいくつかの商品を購入した。(ピネスは無性に欲しかった韓国海苔を大人買い)
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彼女はホームセンターみたいでたのしいと言い、消しゴム製品の角消しに関する聞き齧った蘊蓄を彼相手に語っていた。
「登別さんってけっきょく何が好きなのかな?」
ぼーっと消しゴムの歴史を遡る蘊蓄のサンドバッグ相手にされていたピネスは、心の声が漏れていた。
「たい焼き、好きよ」
「おっ、たい焼きかぁー」
「──あるで?」
最新の消しゴム、古きキャラクター消しゴムを並べていた机席に地獄耳のちひろちゃん店主は現れた。
〝電動天然らくらくたい焼きメーカー〟を流れのままレンタル。
ちひろちゃん店主の親切チュートリアル付きで、ピネスは登別海とたい焼き作りに初挑戦することになった。
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チェックシートの項目はバツだらけ。
風紀委員部部長の光角灯は熱心だ。
店内をくまなく部屋から部屋に移動し、報告用の風紀違反の数々をチェックしていく。
そんな彼女にばったりと出くわしたピネスはあまり徘徊するなと、いつもの如く理不尽な指摘を受けてしまい。
それから彼のつま先から頭頂まで長々と始まる説教と風紀の乱れの指摘に、いつものように苦笑いと多少の気の抜けた反論をし付き合った。
そしてようやく、彼女が目を凝らせど指摘する部分も少なくなり。ピネスはふと思った。風紀委員部、登別海とセットのような存在であるピンク髪探偵帽の彼女の好きなものはなんなのかと。
おそるおそる頃合いをみて尋ねた。
「好きなもの……くぬぬぅー……たい焼きですか? ってなんでそんなこときくのですか!! さてはまたエッチなことを!」
「え?」
「なんです? くぬ? ちがうのですか?」
「あぁー……、いる?(焼きすぎた)」
手荷物のまだあたたかな紙袋をかかげ、ピネスはトモルに提案した。
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風紀委員部部長とて、好物の甘いニオイには抗えない。
合わせた四角い学校規格の学習机に向かい合い座り、男女はそれぞれ紙袋からごそごそと取り出したたい焼きを即席のフードコートでいただいていく。
「くぬっ!? 尻尾まであんこなのは風紀違反ですよ!」
(たい焼きに風紀違反とかある……たしか尻尾までのはアレだな、クロマネキがチュートリアルでしっかり作ってくれたヤツだな。なるほど性格ってヤツか?)
「うん、こっちはあんこの量が丁度いいのです! 尻尾もさっぱり!」
(登別さんが作ったやつだろうか。やたらぶつぶつ謎の数字を言いながらこだわってたからな。やはり性格か?)
「はむっ、──カスタードなのです!?」
「あぁー、ごめんそれ俺だ。(風紀違反かな? 尻尾まで詰めてるし邪道だし。そもそもたい焼きじゃなくてヒトデ焼きだし────ヒトデに尻尾はねぇな)」
黄色いクリームのつまった星型のたい焼きもどきは食い尽くされた。
特に何も言われることはなく、自分がつくった甘い星が彼女の口の中にひとつ消えたのをピネスは見届けた。
(どうやら風紀違反ではなかったようだ。味は良かった…か?)
甘い癒しのじかん────
腹の調子を考えずに風紀を正すため熱心に歩いていたからか、トモルはまたひとつ星を見つけて平らげた。
女子がいっぱい食べるところを見るのも悪い気はしないと、向かい合わせた男はまたひとつ取ったたい焼きに齧り付いた。
「ってカラーーーーーーー!??」
「ふぬっ──!? ごほっごほっ! ──ンンっ! なっ、なんです!?? 食べてるときにいきなり奇声を上げないのエッチアイ!!!」
「ちっ、ちがっ……みっ、みじゅ…」
店主のイタズラか登別のイタズラか、ワサビ味のたい焼きはぼーっとしがちのピネスに悶絶リアクションのダメージを与えた。