異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
銀色と黒緑の卵を冷蔵庫に回収。
70階階層ボス部屋の宝はスベテ回収された。
危険のなくなったエリアでブク高パーティー一同は、校長の指示のもと小休憩を取ることになった────。
「ふむ、ダンジョンを知りダンジョンに慣れる、己の異能を知りあらたな己に成れる」
「連携も魔法と異能の練度も洗練されよくなってきたな。どうだピネスくん、敵は物足りないか?」
校長は珍しい銀色豹柄のマントを手に取りながめながら、そのようなことを言っている。
絶賛おにぎりを食べながら小休憩中だったピネスは、お茶でそれを流し込み。受け答えに若干困るような質問に先程の戦闘シーンを思い返しながらさらっと答えた。
「え、んーー…いつも通り殺気だらけでモンスターはモンスターっすけど? ってなんでサボってんすか…?(たしか参加してなかったよなぁ? ぅーー…あっ、校長はうまいし、影で援護してくれてたり?したか?)」
「私はブク高のスペシャルな校長だぞ? その校長に訳のわからん猫やサイと戦わせる気か?」
「えぇ…いやぁ…」
「ふっふ、冗談。キミたちが強くなりすぎたのだよ、こうして私のアシストがいらないほどにな。私の目にはこの勝利の光景も始まる前から見えていたさ(やはりピネスくんも魔力の方が上がっている。クリティカルの方も、キレ味というのか……効率の良い鍛え方を何か見つけたか? とまぁ、前衛タイプの彼には魔法教師のわたしから指導することは──ない。昔のモテヤバふぅーちゃんならば……側転ぐらいか、ふっふ)」
「あのぉーてことはやばくなったら、ちゃんとするんすよねぇ?」
「あぁヤバくならないように手と気を抜かず頑張りたまえー、冒険らしく男の子らしくな、ふっふ」
「まじ…すか、──はい…」
そろそろだらけた小休憩も終わり。
残りの体力・シールド値・魔力量を鑑みて次の方針も決まった。みどりのダンジョン70階、石像のチェックポイントは浄化され向かうは────
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▽▽
攻略順調区切りにはまだとおい道半ば、迎えた78階。未だみぬ冒険のページは次へと捲られた、勇気ある冒険者たちに未だみぬ展開を添えて────
⬜︎タコイカ学習帳
校長パーティーはきのこパーティーにでくわした。
奮闘したものの────
榎田椎名、緒方、木浪、サンチュ、タガヤはきのこぐりーんの魅了の胞子(ドピンク茸)にかかった。
サイ兵士×4:
サイ・人型
重装気味のサイの兵士である。
角に魔力を集める特性があるので、角が壊れれば魔法は使えなくなる。
不意の突進に注意
サイキックラゲ×5:
きのこ・海月型
ぷかぷかと浮遊しつつ念弾を吐き出す。
射程は短いが毒魔法に注意
きのこせくしーえりーと×2:
きのこ・人型
すらりと背の高いエリンギの戦士。
剣や槍を持つ前衛タイプ
きのこぐりーん:
きのこ・蜥蜴・人型
武装はしていないが体術を用いる。
尻尾にはアイテム茸がついており何をしでかすかわからない。
尻尾攻撃に注意
きのこを用いた魅了攻撃に注意
マッシュルームルーム:
不明
戦闘中きのこぐりーんが中からさっそうと現れた。
外観はきのこ型の家のようである。
中からモンスターが召喚される。
榎田椎名(魅了):
ふふふ…おきのこ様ぁー! きのこばたけぇー!
緒方結美(魅了):
すんすん…おにぎり…
木浪智火瑠(魅了):
きのこ…きのこ…きのすけ…えへへ…
サンチュ(魅了):
あはははははは…!!
紫紫刀(魅了):
素晴らしい! 天然かろりぃ……!
⬜︎
赤い学習帳から状況を再度確認した校長は納得いったように頷いた。
「装備に魅了耐性をつんでなかったのが仇となったか……。しかし一つ分かった、やはりピネスくんは素である程度の状態異常耐性持ちと判明か。luck値がレジストに関係するタイプのダンジョンものか? ふむ、でもまさかなんでもない道端戦でこんな搦手をつかうヤツが出てくるとはな…完全に油断だ、ふっふ…」
「んなこと言ってる場合じゃぁ…ないんじゃね…!」
冷静に分析し口角をあげる余裕綽々の校長に男子生徒は振り返りツッコんだ。比較的慌てる事の少ないなんとなく道をゆくピネスが校長のペースに付き合わない程に、目に入る状況はカオスの未知。
剣を構えてはいるものの、剣を向けるべき相手と、シてはいけない相手がいる状況は彼にとって初めて。
「うむ、ピネスくんソレを一発あの〝みどりきのこ〟へぶちかまして来い。もちろんクリティカル、イチゲキでな!」
「やっぱそうすかクリティカル……できればそうしてますけど…! でもアレをくぐるのは、」
再度前を向き緋色の剣を構える。
前衛に重装のサイ兵士が4体、その後ろにサイキックラゲが5体横一列に浮かび。
後方、ドピンク茸の効果で魅了された女子5人。
さらに後方、2体のきのこせくしーえりーとを左右等間隔に従える……最後に控えるみどりの人型きのこモンスター。
モンスターを呼ぶオシャレに聳えるマッシュルームルームの謎の拠点を背に、堂々と鉄壁布陣。
ピネスはソレは困難と感じた。
仮にサイ兵士とサイキックラゲの壁を食い破っても、魅了され敵となった女子たち相手にお茶を濁しながら最終的にみどりのきのこへと辿り着く事は……。
「私も全力でキミを援護しよう。ヤバくなった、こういうときの私の異能だろ? ふっふふーーふぅーちゃんはまだまだ本気ではないーー!!! ここからだ! 出席確認といこうかぁ?」
⬜︎タコイカ学習帳
不黒文は膨大な魔力と己の影を薄めて消費し、影の軍団とアンデッド族を召喚した。
シャドーゴブリン❶❷❸❹❺❻❼
蝙蝠猿❶❷❸❹
ブク高生徒×4
⬜︎
「ってソエジマぁ!? たちぃ!? ──…そっか、なんか今まで使ってなかったっすよね? ソエジマたち」
「しょうしょう大人の事情があってなぁ、ふっふ…! この場面だからこそ使える技もあるということを知りたまえー!」
「あぁー…なんとなく…想像…は、」
「ふふふ、おっと喋ってる暇は──なさそうだピネスくん。3、2、1、────!!!」
「出席番号22【波動ガン!】」
校長は出席番号22のボロ背に銀の刺股をブッ刺し、あんぐりと開けたアンデッドの口から【波動ガン!】は発射された。
「でぇ!? なにうってんだ!?」
「道は開けたっ! つづけい!!!
青白いマナレーザーは敵モンスターを貫き、敵パーティーの陣形が少し崩れた。
先制射撃に驚いている暇はない、檄を入れられたツギハギの背はシャドーゴブリンたちにつづき前へと駆け出した。
校長の影の軍団と4人のアンデッド族がピネスを護衛し目標までの露払い役を受け持つ。
前衛のサイ兵士とシャドーゴブリンたちがぶつかり合い、壁となり。
異能で敵を浮遊させた出席番号18は木浪と緒方を一時的に宙にとどめて無力化、やりにくい相手を搦手で封じ道をつくる。
それでもまだやって来る敵対した女子たちには、異能【カリスマ】を発動。
魅了には魅力的なアンデッドの男子を、出席番号23番のクールな挑発ポーズに女子たちは方向を変え群がり始めた。
「三河がボコボコに!?(助かったが…)」
残る障壁、ちゃんと武装していて強そうな〝きのこせくしーえりーと〟2体。
左右から駆けてきた伸びるふたつの槍捌きに足止めをくらってしまうピネスは、かわしながらもどうにか隙を見出そうと────
赤いブーメランの角はエリンギ頭に不意に突き刺さった。
赤いのはブーメランではなく、学習帳。ぱたぱたと蝶のようにページをひらき舞いながら──メガネをかけた出席番号14の手元へと綺麗に帰った。
「ソエジマぁ!? ナラっ!」
隙が出来た、些細で大きな隙。
槍を小刻みなステップでかわしながら臆せず前へ出るピネスは、頭に刺さったノートに気が散った〝きのこせくしーえりーと〟の1匹を──
慌ててその遠のこうとするツギハギ背に追撃に移ろうしたもう一体のエリンギは、──デリケートな笠に突き刺さる、またも学習帳のブーメラン。1匹のアンデッドが勝負を名乗り出た。
校長の宣言通りに〝キミを全力で援護〟
みどりのターゲットまでの障害は無くなった。
近く、
近づいていく、
もうこんなに近い、
近くでみると蜥蜴のような手足と尻尾、茸のような頭と腹。
そんな冒険者の圧にびびるみどりの珍獣へと、緋色の刃は喉元まで一気に迫った。
金縛りにあったように気圧されて動かない茸頭へと、イマ──
「ここまでのこっとやるこたァッ──【バーンファイア】!!!」
頭部必中クリティカル陽術【バーンファイア】
校長命令をうけたピネスの魂の赤いイチゲキは────
そこに広がるはずの緋色の手ごたえは────手首痺れる鉄色の手ごたえ。
モンスターきのこぐりーんは尻尾の〝メタル茸〟を使用した。
「んなっ!? こいつ!?」
いきなり硬質化した笠、全体の肉質。
確実にクリティカルするつもりでぶち込んだ緋色のショートソードは鈍い音をたて、跳ね返された。
してやったり……芳しい緑から性能性質豹変、メタル化したきのこは一気呵成にうろたえるピネスを攻めた。
恐竜蜥蜴由来の爪で、引っ掻き引っ掻き引っ掻き回す。
思わぬミス、ミスショットをしてしまった。インファイトの防御に転じたピネスは剣とフットワークでメタルモンスターの猛攻に堪えるも──さらに誤算はひび割れて現実にあらわれてしまう。
疲労困憊、それはピネスの身体を表したことではない。
緋色の刃は硬質の打撃と引っ掻きに耐えきれず────ぽきりと折れた。
目の前で起こる武器の破損。それははじめての経験、ラッキーボーイの経験する特大のアンラッキーがもっとも大事な時と場面で起こってしまった。
いつも世話になっていた緋色が折れた。
いや、いつも世話になっていたから折れた。
ピネスの頭には別の理由がよぎるが、考えない。
メタル化が解けてみどりの体色を取り戻したモンスターはさらに尻尾を振り回した。
「やっべ!?」
体の回転を使ったみどりの尾はハイキックのようにピネスの頭を掠めた。
音速を超える紙一重、ギリギリの回避。
ほぼ反射で避けた結果相手の体勢は大振り後になった、メタル化も失せている。アンラッキーの後に目まぐるしく訪れた幸運はチャンス。
ピネスには未だつづいて見えた。
「まだあるだろ! 【ピネスサンダー】!!!」
右の剣鞘ホルダーから素速く抜き出した雷剣はみどりの腹を貫いた。
ありったけの雷撃を込める勢いで、きのこ体へと流れる──痺れるダメージ。
「うおおおおお──へっ?」
緑の尾の尾先には、石色の茸。
激しい雷撃を受けた末、石色の茸はみるみるとおおきく膨らみ育った。
ピネスはとてつもないイヤな予感を察し──その場からバックステップで離れた。
小ジャンプで叩きつける、【回転尻尾石茸爆砕】
尻尾を激しく打ちつけ破砕する大きな石のきのこ。凄まじい衝撃と広範囲にショットガンのように飛ぶ礫、ダイナミックな大技が大地を揺るがす。
暴威暴風────理不尽なイチゲキの余波に巻き込まれたピネスは綿菓子のように強風に吹き飛ばされた。
「くっそなんで今の手ごたえで俺がヤられてんだっ! ナラもういっ──ぐふっ!?」
うまく着地し考えごとをしていたピネスに、いきなり冷蔵庫の突進が決まる。
パカパカと狂ったように扉を開け閉めする冷蔵庫の中には、溢れるほどの賄賂茸が詰め込まれていた。
「冷蔵庫までかよ、まさかの敵ってのは! いてて……」
すってんころりん。
冷蔵庫の体当たりに鼻を弾かれたピネスは元のスタート位置まで戻ってしまった。
「ふむ、一部属性耐性もち、さらに尻尾のきのこでトリッキーに戦う珍モンスターか。……ご苦労だピネスくん、またひとつヤツの習性が分かったぞ!」
「ご苦労って……やばいっすよ、そんなのわかっても!」
「あぁ、──ヤバい…!」
影の軍団は己の影へと撤退。容赦なしの女子生徒にヤられたアンデッド生徒たちは土に還る。
大作戦は見るからに大失敗、
それでも不黒文校長は微笑う。
転んだ地から見上げるその女性の微笑いがなんなのかを……まだある気力で起き上がったピネスは、残った翠の刃で並ぶ壮観の敵陣を遠くから刺してみるが分からない。
ただ、きのこの家から続々とこんにちはする更なるモンスターの補充兵に、彼はため息混じりの苦笑いを浮かべつぶやいた。
「あぁー…うそだろ、これってぇ終わりある…?」
「万一にも終わらないように注意だな、ふっふ!(やけにながいな? 魅了の重ねがけしていないか、ふふっ?)」
やはり校長は微笑っている。
みどりの尻尾の先にはドピンク茸、ピンク色のパフューム胞子は風にふわふわ散布され、そろそろ魅了の薄れた女子たちの鼻をぽわぽわと心地よくくすぐっていく。
ダンジョン78階なんの気なしに進んででくわした中部屋、校長と男子生徒ふたりの構え見据える雲行きは、また一段とカオスに芳しく染まってゆく────────