異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
後方に控えるみどりのきのこには未だ刃は届かず────
スペシャルな校長は生徒を応援しなければならない。だが時に、物事を推しはかるものさしは夢や希望や熱意の度合いだけではない。
冷静に判断を下す。
指導者教育者、学校のトップに君臨する者には必要なバランス感覚と万事を見据えるセンスというものがある。
なにごとにも、たとえダンジョンであっても。
「想定していない状況に陥る…ここはダンジョンだったな。そしてこれはもはや十分、得られるものはない、潮時だな。DPをかなり使ってしまうが仕方ない。不気味なダンジョンも〝備えあれば憂いなし〟────」
校長は黒い指輪にイメージし願いを込めた。
情報の塊である赤い本は呼応するように光り登録された名簿から探し出す。そしてDPだけではない様々な代償と引き換えにひとつ願いは叶えられ、──砕けた。
▼
▽
突進する厄介な冷蔵庫を武器の魔力を込めたチェーンでぐるりと縛り付けた。開閉不可になった冷蔵庫は暴れながらコントロールを失い横倒れた。すると同時に魅了状態であった緒方もなぜか気絶、その場に力なく倒れ込んだ。
「たたかわずにたたかうって! こんなに難いのか!」
敵は魅了された冷蔵庫や緒方だけではない。四足で走り魔法の角を向け突進してきたサイ兵士を──
ピネスは雷撃のマジックを剣先から放つ。放ったマジックは一点を目掛けた。サイの角の魔力に引き寄せられるようにビリビリと集束し、ご自慢の角は焼き尽くされ、破砕。
デリケートな部分を焼き砕かれ悶絶したサイ顔に至近で、翠の雷剣がクリティカルでお見舞いされた。
次々に襲い来るモンスターをまた1匹始末。
しかしサイ兵士を倒した直後、その倒れたモンスターの背から現れた……サンチュの手から輝くまばゆき光がピネスを襲った。
「ぅがっ!? ────」
咄嗟に目を背けるも視界を真っ白に奪われてしまった。油断からか、いつもは使わない神経をすり減らすバトルの疲れからか、ピネスは直伝したサンチュの目潰しが効いてしまった。
困惑の白い視界の中、風切る剣、風切る斧の音と殺気にピネスの体は反応。
2人がかりで襲ってきた榎田椎名の斧とサンチュの剣が、目の調子がまだ少しもどらないピネスを追い詰めてゆく。
「ちょっ!? たんまたんま!? やばっ!?」
びゅん、
びゅん、と切る危険な風音の中をどうにかやりすごす。
頼りにならないぼんやりとした視界に神経を研ぎ澄ませていると……。
流れてやまない汗が伝う戦いの最中の突如に──
混じり込んだ低い笛の音がピネスの集中を削いだ────
それはなんだ、遺伝子を呼び覚ますような古風な音だ。
ソレは不意に後ろから現れた。
木の鈍器で次々と頸部を殴られた、サンチュと榎田椎名はどさり……その場にたおれた。
まだ耳に揺れる和の残響と、やっと戻ってきた彼の霞む視界には、
水色のコスチューム、
水色帽子、
茶色いポニーテール、
帽のツバを右手で下げ、十手ほどの長さの尺八を左手に携える。
「笛の音……? おわっ?」
「──よっ!」
目が合った──赤い目をしたそんなシルエットをピネスは知らない。
「なん…だ……って挟まれてる!!」
「んっ?」
新手の水色を目掛けて左右から駆けてきたきのこせくしーえりーとが、槍をブッ刺した。
──しかし貫いた手応えはない。
嘲笑うように2本の槍の上に、靴底が金色の黒いスーパースニーカーの両つま先が乗っていた。
おどろいた2体のエリンギ戦士は、破茶滅茶に振り回す。振り回される槍の梯子、その上で慌てたようなステップを踏み踊る水色作業着。
かんたたかんかんかん、
槍と槍が不審者を貫かんと躍起に交わり弾かれ、奏でる軽妙な木の音のやり取りに、
「あそれ!」
気付けばブッ刺さった、槍と槍は正面同士エリンギ同士そのボディへと操られたように。
急いでお互い刺さった槍を引き抜こうとするエリンギをニヤリ…眺めて、女は笛を吹いた。
水色作業着は魔力宿る尺八を上から強く叩きつけた。長い柄の中央を叩かれしなる2本の槍は、それが弦のように音を奏でてやがて繋がっていた2体のエリンギを──内側から魔力爆砕。
「尺八娘──きのこづくしのB級映画に迷い込んだ?」
横一列で横切った浮遊するサイキックラゲが念弾を順々発射する。
「よっ! はっ! はっひっほっへっ!」
目にも止まらぬ尺八捌き、笛をバットのように扱い弾かれた念弾はスベテお返し。
サイキックラゲの集団は威力魔力速度倍になり帰ってきた己の念弾をくらい破裂、壊滅した。
隙あり──サイ兵士ははしゃぐ新参水色の後ろから大剣を叩きつけた。
と、おもったら投げ捨てられていた。
水色は一瞬にてくるり…サイドへと回り込む。
そして尺八をサイ兵士の脇にぐいと挟み込み、持ち上げながら支柱とし足をかけ崩しそのまま巨体ごとを崩し投げる。
モンスターは投げ技など知らない。
追撃で天から叩きつけられた硬い木の鈍器で、ノックダウン──瞬く間にお陀仏。
「てんサイってね?」
だが、息つく間もなくさらなる挑戦者。
不意の回し蹴りをしゃがみ回避。つづけたハイキックは調子に乗っていた尺八の武器を高く天へと弾き飛ばした。
風にはげしく靡く茶色いポニーテールを、蹴り上げ掠めて執事は追い続ける。
身軽な水色作業着もバテたのか、気になる執事の足さばきに注意がいったところを、ついにお留守な腕を掴まれてしまった。
「グラッピング…?」
「【
上中下段、乱れ咲く脚技の危険な部屋。
相手の腕や手を掴みはじまる危険な脚技は、爽快な打撃音をうちならす。
打ち鳴らす、そう、脚と脚の動き、足裏と足裏つま先とつま先が完璧にレシピ手順通り示し合わせたように黒と水色の2人は重なり合った。
「おーおー完璧アドバイスゼロ!」
「かろっ???」
「オッケー!!! 最高にクール!!! いいねぇ小鬼ちゃんまた後で回してやろう、よっ!」
まるで鏡合わせ、止まっていた伸ばした脚の足裏と足裏の状態で、不意に水色の足は相手の片足を反時計回りに巻き取るように動いた。
そして一瞬の間に地に踵で痛く叩き落とされたタガヤの右足。それで体勢を崩したタガヤはすぐさま左足で回し蹴りを放つが──隙ありに空からキャッチした尺八強襲。
首筋にかろやかな回転打ちは決まり、紫紫刀は見事な尺八打撃音に一本取られ倒れた。
一息尺八に口をつけ吹こうとしたそのとき、石の壁が地を滑るように左右真横から押し寄せた。
まるで危険な合掌、2枚の石壁がものすごい衝撃音で合わさったところを前転で水色作業着は抜けた。
「うひょキタっ弾持ちの魔法使い! そーそーダンジョンこれがあるの、よっ!」
さらに真正面からせりあがり前方へとどういうからくりかスピードを上げ放たれた石壁の四角を飛び越えて避けた。
飛んだポニーテールへと石弾の3way魔法は発射され、尺八は空中でその対空で放たれた石弾を砕いた。
地へ戻り、水色作業着の吹く尺八は低い唸りから高い独特の音色を立てながら、前へ前へと疾走する。
(遠距離タイプは近付けば! どぅするぅ!)
近付けば────木浪は練り上げた3枚のストーンウォールで自身がいる場を囲った。
急遽築かれた石の籠城目掛けて、水色作業着は跳躍し着地した。
「ソレ大正解ッ──【
一寸早く、既に石の三角城へと投げ込まれていた尺八武器はその音色を遅れ咲かせる。弾けるポップで和風な魔力と音色で、崩れ去る石の三角城と膝から崩れ落ちるオレンジ髪のお姫様。
「日ノ本一ぃ! よっ!」
くるくると空を舞った尺八は、水色の背を追いかけるように彼女の手元へと戻った。
「ここで恒例の検証結果。尺八はこのように打音魔投混合のダンジョン武器向きィィ! 握り心地はよくその辺の棍棒より使いやすい、よっと! ただ、縦じゃなく横で吹ければもうまんてん最高にクール言う事なし! はいでは次、あのみどりの変なのこのままいってみよーっ!」
「なっ、なんだこれ…!」
側から見ていたピネスはとんでもないモノを目撃してしまったと、乾いた口をあんぐりあけたまま今やっと瞬きをした。