異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
その後魔力と体力、腹ん中のカロリーを使い過ぎたピネスは最後には充電が切れたようにふらふらと気絶した。
不思議なきのこの魅了にかかっていた女子生徒たちは全員校長のあやつる影の軍団に安全地帯へとひそかに回収され無事を得た。
敵モンスターの殲滅された拠点マッシュルームルームの中にあった緑の本を校長は回収し、冒険者たちは不黒高校へと帰還を果たした。
「あらら、手柄よこどりして眠っちゃって? ふぅん、そんなにばちばち全力出せちゃうんだー。──あ、まだあたしは稼働できます、よっ」
「いや、ありがたいがその必要はない。思わぬ敵軍とでくわした中途半端な階層だが……私の目で調べたところどうやら〝コレ〟で戻れるようだ。なるほど我々は今日、思いがけない鍵を手に入れたようだなふっふ」
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▽SP校長室▽にて…
満足気に椅子にかける校長の元へと1番最初に呼ばれたのは、
帽子をとった茶髪の水色作業着。
此度みどりのダンジョン78階でブク高パーティーの救援にひとり駆けつけた彼女であった。
「ふっふ、ご苦労だ池原。ちゃんと保険の新システムを試すために待機していてくれたようだな? こんな事もあろうかとキミをここに雇っていてよかったというものだ」
「あいっ。(待機もクソもぼけーっと桜をみながら尺八吹いてたら優雅な御貴族宴会途中でアイヤ強制転移、くそこわいシステムをお持ちで)ボーナス期待してます」
背筋よく立つ彼女は右手で敬礼などをする。この学校の校長という存在をえらくリ彼女なりにスペクトしているようだ。
「ふっふっふ、それは困ったな? わかった善処しておこう」
「ところでどうだったかな?」
ずいとカラダは前のめりに机上に両肘を置く。そして手を組み合わせるあのお気に入りのポーズを披露。校長はニヤニヤとわらいながら、池原へと主語のぬけた質問をした。
「はい、まぁまぁモンスターは強かったですよ。あのみどりキノコとかわからん殺しもオンパレードでこわいですね、あんなのいっぱい出て来たらいずれ対策必要じゃん?」
「あーあー今はそういう細かいのじゃない。それも恐ろしく厄介な強敵ではあったがな、こちら側のレベルが足りない訳でもなかった。ふっふ、それよりキミの目から見て気になる生徒は誰かいたかな?」
「あー、はいはいそっちか。たしかキックやってる小鬼ちゃんとか才能ありますね、とくに足運びとか目のつけどころが最高、オシャレ、センスある、さすがわたし、うん。他にも石の弾持ちの子、やっぱダンジョン、魔法使い相手にもばちばち練習したいからそう言う意味ではけっこー目ェ付けてる、よっ(さすがに校長様相手にはばちばちたたかえねーから)」
「そうかそうかうちの女子生徒はみんななにかしら優秀だからな、私もその2人には将来のおおきな戦力として期待しているところだ──で?」
「──で? とくに以上です、よっ」
校長は置いていた肘をガタッと崩した。
ニヤニヤ顔はコミカルに散り、咳払いで仕切り直した。
「待て待て、ごほんえほんっ! ────浦木幸、さいごにあの逃げるキノコ珍獣を討った彼の名だ。キミの目にはどう映ったかな? ふっふ、きかせたまえ」
またニヤニヤと、同じように両肘を置き直しあのポーズを形づくる。ソレは校長にとってよほど外せない池原に言及してほしかった本題のようだと、表情で物語る。
「あー、はいはいはいっ……校長様の言っていたクリティカルシンデレラボーイくん」
「そうだ! おなじよーーなっ、キミにも何かビビッとくるものがあったんじゃないか? んー??」
「──いや、ぜんぜん」
「そうかそうか……なに?」
「ほわぁー……あたしはあーいうのなしかな、なんか素人くさいの思い出したらネムたくなるわー」
まさかの、態度に。アクビまでしだした池原の態度に校長の形相は眉間にシワ寄せ、変貌した。
「なんだと!? おいっ! そんなはずはない! ピネスくんはわたしの自由に育てた最高天然傑作だぞ! そしてキミにこれから鍛えてもらうことで! よりっ」
机を叩きつけながら校長は必死で彼の素晴らしさを誇り、目の前の分からず屋に伝えるも──
「あー、ダメ。てんでダメ。お話になりません。あー、アレはダメだな。ダメだ、よっ! そんな慈善活動じゃないんだから。顔もあたしのタイプじゃないね。素直にイケメンよこして、ノレない。イヤ、無理。絶望。河童。きのこ。他人の孫自慢。一銭にもなりはしない。あー、寝よ」
「ナッなっ、なななななななななっ……なんだとおおおおおお!!!」
茶髪をかきながら再度のアクビでシメた用務員池原は、校長の絶叫をバックに言いたい放題告げ、長話でつかれた部屋からふらふらと退室した。
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「くしゅんっ!」
「どした風邪薬あんでぇ? 飴ちゃんいる? はちみつドリンクはどや? お湯沸いてんでぇー?(試飲は無料やで)」
「いやいい、(クシャミしただけでそんなにススメられるか…?)あぁー、それよりこれ────なおる?」
やってきた地下のくろまねき商店。
ピネスが持ち込んだのは緋色のショートソード、いつも使っていた愛武器……の無惨に刃の折れた姿であった。
風呂敷から現れたそれを皮のグローブをつけて拝借した店主ちひろは、自分がその剣のかわりに折られたかのように痛そうな顔をしている。
「あちゃこりゃポッキリ逝っとる! なんや今日は修理依頼かーうちの誇る開発部も天才であって神様やないからな…」
「まじか…やっぱ無理なかんじのぉー…」
「ざっと──20万DPや」
「ってとんのか! って直るのか!」
ダメそうな悲しげな雰囲気から一転、スマホの計算機で弾き出した数字をちんまい店主はピネスへと見せつけた。
「はぁDPとんのは当たり前やろ? じぶん直るだけ感謝感動やで?」
「…そ、そうだな? じゃ…お願いします」
「おーえらい今日は物分かりええな。せや、ウチの開発した試作の武器とか見てくか? 暇やろ、安くしとくで! こっちやついてき!」
「あぁー、っと、いや今日は…いい! あぁー、壊れたからってすぐ乗り換えたらアレ、無くなっちゃうから、えーっと……そ、験担ぎってヤツーーー! 直ったら教えてくれーじゃなークロマネキ!」
「おーいっっなんやそない急いで? ────んー験担ぎ…えらい物大事にする子やってんな? へぇー、人は見かけによらんなー。ひょっとして商人向きやな──ってなんでやねん、あんなぬぼーっとしたのん。ちひろちゃんがツッコまんと死んだようなもんやで?」
くろまねき商店店主の誘いを断り、ピネスは緋色のショートソードの修理依頼だけを取り付け、ひらり宙に現れた赤い学習帳とともに地下施設から消えた。