異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
「で、どうだったかな? わざと見え透いた挑発に乗ってあげたがぁ? 何か満足のいくおおきな成果は得られたかな池原、ふっふ」
「あれわざとかなぁ…。ま、そこそこあったんじゃないのー」
再び校長室へとご機嫌をうかがいにいった用務員の池原はそう素直に校長の言うことを肯定した。
「ほぉ…ほぉほぉほぉっ!! じゃあウチのピネスくんの方は実力的にっっナンの問題はないということだな! キミの目から見て、モッ!!!」
「はいはいそれはもう、その言葉の通りじゃなーい。まぁ問題ないことが武闘家くずれのあたしにとっては大問題なんですがねぇ。あ、これお返しします、よっ」
池原は懐にしまっていた茶色い封筒を机の上へとそっと置き、お返しした。
「ん? なんだこれは?」
それを手に取った校長は芝居がかった反応をみせるが、池原は苦笑い。
「いやいやさすがに無理がありますよぉーっソレ…言っときますけど? そんなのイチ用務員に渡してもなんの効力もないですから、ねっ!」
「あー、はーはー。はて? 思い出したどうやら彼に渡す書類のほうを間違っていたようだ、こっちだったーー!! ふぅーちゃんモテヤバ恋愛極意Ⅳ!! はっはっはーーうっかりぃうっかりふぅーちゃんうっかりぃ」
テンションを1人で高めた校長は便利な上の者のはなつ咳払いの緩急でまた仕切り直した。
「でだ、かわいい生徒たちの方の武器の扱いやらなにやらは継続して頼めるということかな? 今度は表で」
「あたしは戦闘術デザインアドバイザー。ゆっくり丁寧にわかりやすく噛み砕いてアドバイスしまーす、よっ!」
「ふっふ、それは助かる。ん──どこへゆく?」
「ちょっとダンジョンー。校長様、なんかてきとうにあけといてー」
そう告げ、池原は校長室をあとにした。
「ふっ、池原叉鬼27歳。用務員あらためスーパー用務員とでもしておくか。我らブク高はこれから彼女の表立った助力とアドバイスと武力によりさらに一歩…いや段飛ばしッ、上のステージにいくことだろう。純粋武力では劣るがわたしも校長と魔法教師、この二足の草鞋をぞんぶんに活かして、生徒たち池原そしてピネスくんにも負けぬようにがんばらねばなーーっ!!!」
気合いを入れるかわりに、意味を成さない辞表は破かれた。
辞める気などさらさらない……こんなに向いていて面白い事を。
祝福の紙吹雪は白く舞う──
開放した灰色の瞳から覗く、不黒文の思い描くダンジョン攻略への道筋はまたひとつおおきなピースがそろい、先へ先へと鮮明に光り広がり続けるのであった。
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▽▽
ダンジョンは快晴のブルー、山道のような一風変わった景色を歩み出くわしたアルマジロの群れは陽気にぽかぽかと照らされながら可愛らしく──丸々。
スピードを上げ迫るうるさくて硬そうで転がる危険な音、構えては一直線に向かって来た殺気のタイミングを見計らい──
地を転がる岩は雷撃の剣のクリティカルで粉々に処された。
岩は内側から砕かれ数多の石粒と化しモンスターは見事に倒されていく。
しかしなおも手に汗を握る状況は変わらない。
ひとつのミスが命取り、構える翠の剣はこちらの気も知らずにじゃれるように向かってきた3つの岩玉に集中を高めた。
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《ちゃいろのダンジョン16階》
岩マジロ×8:
岩属性のアルマジロ型モンスター。
丸まった形態から転がり突進をしかけてくることが多い硬くて厄介なモンスターである。
仲間でごろごろレースをしたりやんちゃな性格である。
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「いきなりなんでダンジョン!? なんで犬が丸まって岩になってんの!? なんでこうなってんだぁ! 何から何までがわかんねぇ! それにさっきぃ! 会いま! ッしたよねぇ! たたかいって一週間後じゃないんですかぁ! なんかツワモノ感出してましたよねっ!」
「いやいや、アレからうーーん、考えてみたんだけど山で若い男と2人っきり古臭い修行シーンがあってもあたし的にも悪くないとおもってねっ! グギッ痛っ……!? …ほらほらっこんな丸っちょろいのに手こずってるようじゃ、せっかくこしらえた修行ステージに指輪の奴隷システムで呼んだ価値がないじゃーん。あ、言っとくけど絶対避けずに連続クリティカルでその転がる岩ころをぶっ壊すことね、じゃないとあたしペシャンコだから」
「プレッシャーの掛け方が笑えねぇよ!! これが修行ってまじかよ!!! うおおおおおおッて奴隷!?? ……──うおおおおおおッ」
おにぎりを頬張りすこし遅めの夕食をいただいていたブク高の一室から意を無視した強制転送──。
こんばんはもなしに始まった新たなダンジョンの新たなモンスターとの戦い。そして床で大の字に寝転ぶスーパー用務員の池原叉鬼に課せられた…謎の転がり襲うアルマジロをクリティカルでぶっ壊す修行クエスト。
状況を飲み込めないピネスは目の前に突如広がるカオスに丸々状況に対して悪態をつきながらも、脳のスイッチをダンジョン仕様へと切り替える。摂取したカロリーを消費しながら魔力を振り絞り、やはりその手はそれでもいつもの剣を握るしかなかった。
「あーがんばれーふんばれークリティカルシンデレラボーイ、校長様も地獄のどこかでみてるぞー」
「校長っ!? じごくっ!? んなことよりクリティカル!! ──あの、余計なこと…まじやめてほしいんですけどっ!」
池原は己の腰をトントンと叩きいたわりながら、途中強制参戦の彼が食べかけのおにぎりのつづきを頬張った。
若いツギハギブレザーのがんばる背をほんのすこしの粗を探すように見届ける。
荒い岩を砕くムラのあるクリティカル音を耳にし野次と応援、それとさながら彼の師範でもあるかのようにほんの少しの基礎的なアドバイスを笑いながらはなった。
池原叉鬼と浦木幸、仲がいいのか悪いのかも初めましてで未知数の2人の……
新たに開かれたちゃいろのダンジョンでの修行はなんとなく唐突に始まってしまった。