異能幸運レアドロップでイキ抜く♡学校最後の男子ピネスと眼帯プラチナ女校長の不気味なダンジョン冒険記 作:山下敬雄
50F山頂の大広間にて、大口を開く岩クジラの要塞から岩マジロの部隊は丸まり出撃した。
「どっちが壊せるか競争だ、よっ!」
「オレ数えるより斬るっすけどォ!」
内側から緑に湧き上がるクリティカル、青く轟くクリティカル。
刺股と剣は次々と競い合うように突進してきた岩マジロの部隊にクリティカルのイチゲキを決めていく。
しかし敵もやられてばかりではない。
知恵をしぼった岩マジロは丸々形態をぶつかる直前手前でとき、フェイントをかけた。
2人の虚をついた2匹の岩マジロはしてやったり、カラダを大きく広げて静止し尻尾をふりふりとご機嫌である。
「だからなんなの、さー!」
「だからってなんなんだァァ!!」
2人はへんてこな行動をみせた間抜け顔の岩マジロ、プラス2体を同時にトツゲキし倒した。
しかし先程の岩マジロの珍行動に気を取られていた2人は突如の岩石流に呑まれた。
巨大な岩クジラはその尾を俊敏に地に打ちつけ、数多の岩石の飛沫がステージを支配し飛んでゆく。
「よっ、よっ、よっ、」
岩石と、天から滴る岩ツララの鋭く痛い全体魔法を逆に足場と化して危険なアトラクションを飛び移りながら池原叉鬼は抜けていく。
そして素早く取り付いたクジラの硬い岩肌の背に────
「おわっと!? ──ふぅー…」
伸ばした銀の刺股はクジラの背の曲面から滑り落ちそうになっていた少年をひょいと掬い上げた。
「若いのにぃ?」
「ハァハァ…体育3なんでっ!」
巨大クジラの背に乗り上げた2人の異物に対して、魚が曲面を沿って猛スピードで泳いで来た。
頭部には金色の小判型の装甲がある、それでぶちかましをかますつもりだ。
2人はそんなクジラと共生するコバンザメ部隊の猛追を各々の武器でご自慢の小判を砕き捌きながら、別れた。
「空けるか【
追手を崩し集中した池原は、立つ岩肌の柔い部分を見つけ魔力を込めた刺股を突き刺した。
計6ポイント────クジラの背は緑の潮を吹きあげる。
「そろそろひよっこもいけるかな、おーいっあとはたのんだよー!」
池原は大声でそう告げた。彼女の下ごしらえとお膳立ては完了。
あとは────
ピネスは感じ取る湧き上がる魔力の流れに、良い期待感を募らせた。
翠の剣は向かってくる雑魚にこれ以上かまう意味はない、その場、地へと突き立て一気に貫いた。
「【ピネスサンダー】──のォ!? 【サクイチゲキ!】」
雑魚は焼き焦げ、緑雷柱は天へと昇り、テンションは昂る。
クリティカルからクリティカル、
必殺のイチゲキを放つには十分の利用可能な質の良い魔力がそこにはあった。
柱は次々と湧き上がり、赤と緑のスーパースニーカーは地を蹴り飛び退く。
魔力を存分にチャージした雷剣はかつて黒騎士が見せたような綺麗な三日月を描く、描いた三日月は宙を飛び、大口を開いたクジラのナカへと呑まれた。
切り刻まれ、生きる巨大な岩のアートは崩壊していく。
落雷が通ったようなヒビ割れは広がり、岩クジラは雷撃のクリティカルでド派手に潮を吹きながらその終わりを迎えた。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
⬛︎
バッチリと動画に収まっていた。
帽子のツバの裏に仕込んでいたくろまねき商店が開発した高性能小型カメラは戦いの模様を彼女視点で映し出し、きのうのダンジョンのことを振り返る。
水色の作業着は小部屋で集中するにはあつい、半脱ぎにし、黒のノースリーブと肩の肌が露わになる。
茶髪の彼女は有害な光をカットするおしゃれなメガネをかけた。
お菓子を片手にむさぼりながら、片手はマウスへと、パソコンモニターに流す映像を巻き戻し繰り返す。
「しかし、この子はなんなんだろうねー」
「夢幻流的に魔力をさらにわけると陰気と陽気だ」
「おもうにこの子はその陽気がずば抜けてんのよ」
「だからクリティカルっつまり内側の気を利用した破壊のイチゲキってのを偏りがあるぶんあまり整理整頓しなくても簡単に出せちゃうわけだ。そんな陽気に対抗できる存在がいねぇーんだからね、陽気に釣られて不思議な現象はポンポン起こっちまうのよきっと。ま、あたしは慣れてるから相手するときは簡単にはそうさせないしくらわないけど、あのーそーだそーだメタル化したきのこまんとかよっぽど特殊でよっぽど強くない限りはクリティカルは敵の硬さを理解すれば出るだろうね、まだそこが甘いねあたしの勝ってる部分だ(ま、あたしメタルきのこのときミスってんだけどそれは……いきなり殿に呼ばれたからねー!)」
「でも普通の人間チカラのバランスを取ろうとするから陽気だけ異様に高いとかそんなことってまずありえねーんだよねー。例えばこのもぐもぐ……カントリーパームは16個入りで、バニラとココアが同数ずつあんのが伝統なの。袋も開けてない状態のそん中でもしバニラだけが15個入ってたらはにゅはにゅ……ずずーーっ…ほっ……ブチ切れるよね?()」
「ま、ここダンジョンだけど。むしろありえねーのが普通であって、普通のヤツが異常なんだよね。校長にしろ生徒にしろ、みんなよさげな一芸もってるわ」
「なるほどねー陽気が多いから異能幸運、──本当にそれだけかな? なーんかずるくさい気がすんのよねぇーあたしの感覚てきには運の神様にでも祈ってるかんじだわ」
「ま、動きとか強さ的には観たところそれだけじゃないんだけど。アレはダンジョンって新作ゲームの中で育ったダンジョンっこってわけだ」
「チカラを持っていてもできない子はできない。できるって思い込める方が上手くいく場合もありってさ。これはあたしにも経験はあることだ、できないって思ってることって実は練習が圧倒的に足りないだけなんだよ。で、この子は少なくともダンジョンで自分なりにモンスターとたたかって色々どう斬るかを試行錯誤してきたわけだー、校長があたしに預ける前に余計な手を加えていなけりゃそうだよね。ん、それでクリティカルって出せるものなの? 敵と自分の陰気と陽気のながれの見極めと調整ができるもんなの? 山ん中こもって岩運び100回岩砕き100回、滝修行朝晩、小やりの上で踊って熊と仙人とのタイマン2回やらなくてもって?」
「もしあたしが同じラッキーな異能をもっていて、同じ肉体をもっていて、同じように馬鹿でまっすぐなんだかんだ腐らず言うことをきけるなら────できるんじゃない? ははは」
「はぁ……時代は変わったのさ池原叉鬼モダンなやり方でいきましょーよ。あー今日のダンジョン、あたしもまだまだ進化の余地ありな気がしてきたわ。いい練習環境にいい練習相手そしていい上司……いい上司? ──ははは、ダンジョンさいこー」
池原叉鬼、彼女は用務員兼戦闘術デザインアドバイザー。
時に映像を振り返り武を研究し、時にパソコンを操りタメになる資料をつくり、時に一日のうちに訪れたあらたな若い可能性にささやかな喜びを見出す。
浦木幸とクリティカル、陰気と陽気と魔力に関する資料その①は狭い用務員室でカタカタと……密かに体系立ててまとめあげられた。